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積極的な後輩
SNSでやり取りするようになって早1週間。段々と後輩として接せられるようになってきて、相変わらず俺を見付けたら走り寄って来る戸守に耳と尻尾の幻覚が見え始めてきてた。
俺、疲れてるのかもしれない。
「柚琉」
「?」
「あそこ」
体育の授業中、柔軟をしている時に優里に呼ばれて振り向くと校舎の上の方を指差される。つられて見上げればこっちを見ている戸守と目が合い驚いた。
アイツ、もしかしてずっと見てたのか?
「真面目に授業受けろよな」
眉を顰め手でシッシッと払うとにこっと笑って手を振ってくる。それを先生に咎められたのかハッとしたように前を向き照れ笑いを浮かべるけど、きっとあの教室内にはほのぼのした空気が流れてんだろうな。
戸守はそういう雰囲気を持ってるから。
「あいつ、また告白されてたぞ」
「ある意味凄いな。そのうち全学年の女子から告白されたりして」
「告白したの、男だけどな」
「え」
俺に告白してきたとはいえ、戸守はたぶんノンケだ。それも、タチネコどころか受け攻めも分かんないくらいまっさらな。
そうか、男にも告白されるか。
「お前が靡かねぇなら、他の奴に行くんじゃねぇの」
「アイツがそうしたいなら、そうすればいいんじゃないか?」
当分恋人はいらない宣言してるし、それで諦めて次に行くならそっちの方がアイツにとってもいいだろう。
そう答えれば、優里は呆れたような溜め息をついた。
「お前は本当に馬鹿だな」
「何だと?」
「柊也が可哀想だ」
それを言われると俺だって悪いなって気持ちにはなるけど、今までが今までだし慎重になるのも仕方ないじゃんか。もう、あんな思いはしたくないし。
何かを言おうとして口を開けたけど、何を言えばいいか分からなくて噤んだら先生から号令がかかり、先に歩き出した優里を見て俺は目を伏せる。
そんな俺の背中を、戸守がずっと見ていた事には気付かなかった。
「宮脇先輩」
放課後は2人と帰る日もあれば一人の時もあり、今日は寄りたいところがあったから莉央と優里には先に帰って貰った。
目的の場所に向かって歩いたら声をかけられると同時に肩に手が置かれ、誰かは声で分かってるから普通に振り向いたら人差し指が頬に刺さり顔を顰める。
なんて古典的な⋯。
睨むように見上げるとヘラリと笑った戸守が両手を上げる。
「⋯子供みたいな事やってんなよ」
「すみません。お1人ですか?」
「そー。ちょっと行きたいとこあって」
「ついて行ってもいいですか?」
何となく言われるような気はしてたけど、果たしてコイツにとって面白い場所なのかどうか⋯まぁいっか、つまらなければ帰るだろ。
「それはお前の自由だろ」
「じゃあ行きます」
こんな事でそんな笑顔になるのか。何かほんと、調子狂うな。
ぶんぶん振られる尻尾の幻覚を見なかった事にして、俺は止めていた足を動かす。その隣に立って同じように歩き出した戸守は、何とも鮮やかに俺の手を取ると指を絡めてきた。
「⋯おい」
「駄目ですか?」
「ダメも何も、ただの先輩と後輩は手ぇ繋がない」
「あ」
俺よりも大きな手に多少なりともドキッとしつつ手を振り解き、また繋がれないようポケットへと突っ込む。油断も隙もない⋯というか、何でそんな平然と誰に見られるかも分からないのにあんな事出来るんだ。
残念そうに自分の手を見る戸守に気付かれないよう息を吐き、見えてきた店へと真っ直ぐに向かい中へと入る。
個人経営のここは中古本を扱っている古書堂で、たまーに本を読みたくなった時に買いに来てた。
「俺、こういうとこ初めてです」
「騒ぐなよ」
「はい」
ぽかんとしながら後から入ってきた戸守がそうヒソヒソと話したあと、物珍しそうに店内へと視線を走らせる。でも俺から離れる気はないのか、移動するたびについてきて俺が開く本を背中から覗き込んでた。
ちなみに俺が読もうとしてるのはSF小説で、冒頭だけ見て面白そうだと思ったら買ってる。
「先輩」
「⋯っ」
これは当たりかもと思って読んでたら耳元で呼ばれてビクリと肩が跳ねた。
慌てて耳を押さえて振り向くと思ったよりも近い位置に顔があり、離れようとしたら今度は壁に肩が当たってそれ以上下がれなくなる。
目を瞬く戸守を見て自分が過剰に反応してしまった事に気付き、恥ずかしくて腕で押し退けようとしたら逆に壁に手をつかれて囲われた。いわゆる壁ドンってやつだ。
いくら客も少なくて店主からも見えないからって、この距離はどう考えてもおかしい。
「と、戸守⋯」
「先輩って、こういうの慣れてない?」
「ふ、普通は男相手にしないだろ」
「おふざけとかで友達とやる事ありますよ?」
「⋯⋯⋯」
それは俺には縁のない遊びだ。
そもそも、友達と呼べるのは莉央と優里だけだったし、2人とはこんな事しない。
緩く首を振ると柔らかく笑った顔が近付いてきて、反射的に目を閉じて首を竦めたら頬に何かが触れた。それが戸守の唇だって分かったのはわりとすぐだけど、唖然として固まってる俺に眼前の男は目を細め首を傾げる。
「先輩って、綺麗なだけじゃなく可愛いんですね」
嬉しそうにはにかみながらそんな事を言う戸守にぽかんとしたあと、揶揄われてると感じた俺はイラっとして今度こそ押し退けてレジへと向かった。
慣れてなくて悪かったな。
俺、疲れてるのかもしれない。
「柚琉」
「?」
「あそこ」
体育の授業中、柔軟をしている時に優里に呼ばれて振り向くと校舎の上の方を指差される。つられて見上げればこっちを見ている戸守と目が合い驚いた。
アイツ、もしかしてずっと見てたのか?
「真面目に授業受けろよな」
眉を顰め手でシッシッと払うとにこっと笑って手を振ってくる。それを先生に咎められたのかハッとしたように前を向き照れ笑いを浮かべるけど、きっとあの教室内にはほのぼのした空気が流れてんだろうな。
戸守はそういう雰囲気を持ってるから。
「あいつ、また告白されてたぞ」
「ある意味凄いな。そのうち全学年の女子から告白されたりして」
「告白したの、男だけどな」
「え」
俺に告白してきたとはいえ、戸守はたぶんノンケだ。それも、タチネコどころか受け攻めも分かんないくらいまっさらな。
そうか、男にも告白されるか。
「お前が靡かねぇなら、他の奴に行くんじゃねぇの」
「アイツがそうしたいなら、そうすればいいんじゃないか?」
当分恋人はいらない宣言してるし、それで諦めて次に行くならそっちの方がアイツにとってもいいだろう。
そう答えれば、優里は呆れたような溜め息をついた。
「お前は本当に馬鹿だな」
「何だと?」
「柊也が可哀想だ」
それを言われると俺だって悪いなって気持ちにはなるけど、今までが今までだし慎重になるのも仕方ないじゃんか。もう、あんな思いはしたくないし。
何かを言おうとして口を開けたけど、何を言えばいいか分からなくて噤んだら先生から号令がかかり、先に歩き出した優里を見て俺は目を伏せる。
そんな俺の背中を、戸守がずっと見ていた事には気付かなかった。
「宮脇先輩」
放課後は2人と帰る日もあれば一人の時もあり、今日は寄りたいところがあったから莉央と優里には先に帰って貰った。
目的の場所に向かって歩いたら声をかけられると同時に肩に手が置かれ、誰かは声で分かってるから普通に振り向いたら人差し指が頬に刺さり顔を顰める。
なんて古典的な⋯。
睨むように見上げるとヘラリと笑った戸守が両手を上げる。
「⋯子供みたいな事やってんなよ」
「すみません。お1人ですか?」
「そー。ちょっと行きたいとこあって」
「ついて行ってもいいですか?」
何となく言われるような気はしてたけど、果たしてコイツにとって面白い場所なのかどうか⋯まぁいっか、つまらなければ帰るだろ。
「それはお前の自由だろ」
「じゃあ行きます」
こんな事でそんな笑顔になるのか。何かほんと、調子狂うな。
ぶんぶん振られる尻尾の幻覚を見なかった事にして、俺は止めていた足を動かす。その隣に立って同じように歩き出した戸守は、何とも鮮やかに俺の手を取ると指を絡めてきた。
「⋯おい」
「駄目ですか?」
「ダメも何も、ただの先輩と後輩は手ぇ繋がない」
「あ」
俺よりも大きな手に多少なりともドキッとしつつ手を振り解き、また繋がれないようポケットへと突っ込む。油断も隙もない⋯というか、何でそんな平然と誰に見られるかも分からないのにあんな事出来るんだ。
残念そうに自分の手を見る戸守に気付かれないよう息を吐き、見えてきた店へと真っ直ぐに向かい中へと入る。
個人経営のここは中古本を扱っている古書堂で、たまーに本を読みたくなった時に買いに来てた。
「俺、こういうとこ初めてです」
「騒ぐなよ」
「はい」
ぽかんとしながら後から入ってきた戸守がそうヒソヒソと話したあと、物珍しそうに店内へと視線を走らせる。でも俺から離れる気はないのか、移動するたびについてきて俺が開く本を背中から覗き込んでた。
ちなみに俺が読もうとしてるのはSF小説で、冒頭だけ見て面白そうだと思ったら買ってる。
「先輩」
「⋯っ」
これは当たりかもと思って読んでたら耳元で呼ばれてビクリと肩が跳ねた。
慌てて耳を押さえて振り向くと思ったよりも近い位置に顔があり、離れようとしたら今度は壁に肩が当たってそれ以上下がれなくなる。
目を瞬く戸守を見て自分が過剰に反応してしまった事に気付き、恥ずかしくて腕で押し退けようとしたら逆に壁に手をつかれて囲われた。いわゆる壁ドンってやつだ。
いくら客も少なくて店主からも見えないからって、この距離はどう考えてもおかしい。
「と、戸守⋯」
「先輩って、こういうの慣れてない?」
「ふ、普通は男相手にしないだろ」
「おふざけとかで友達とやる事ありますよ?」
「⋯⋯⋯」
それは俺には縁のない遊びだ。
そもそも、友達と呼べるのは莉央と優里だけだったし、2人とはこんな事しない。
緩く首を振ると柔らかく笑った顔が近付いてきて、反射的に目を閉じて首を竦めたら頬に何かが触れた。それが戸守の唇だって分かったのはわりとすぐだけど、唖然として固まってる俺に眼前の男は目を細め首を傾げる。
「先輩って、綺麗なだけじゃなく可愛いんですね」
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