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複雑
俺が通う高校には、学校の創立記念日を祝う〝創立祭〟なるものがあり、先生や生徒のみ参加可能で少ないものの模擬店やちょっとしたイベントが開かれる。
毎年文化祭にはミスコンかミスターコンが開催されるんだけど、本戦出場者を決めるその予選がこの創立祭で行われるからみんな浮き足立ってた。
ちなみに今年はミスコンで、自薦他薦問わず学年も関係なく応募可能だ。
(もしミスターコンだったら、戸守が優勝してたんだろうな)
何せ学校一のイケメンと称されてる男だ。オマケに今や同性にまで告白されるようになってて、ますますモテ街道を走ってた。
全部断ってるらしいけど、応えるかどうかも分からない俺よりも自分を好きだって言ってくれる子を選べばいいのに⋯ほんと、物好きだよな。
「今年の優勝は絶対純鈴だよ」
「純鈴ほど可愛い子、見た事ないもん」
「そんな事ないよぉ。でも、一生懸命アピールはするつもり」
自分のクラスで使う資材を運んでる途中、階段の方からそんな会話が聞こえてきて思わず足を止めた。そんなに可愛い子がこの学校にいるのか。
俺は同じ学年でも女の子をあんまり知らないからなぁ。
盗み聞きも良くないからさっさと立ち去ろうとしたのに、知った名前が口にされたから再び立ち止まる。
「純鈴、予選突破したら戸守くんに告白するって言ってたもんね」
「純鈴なら即答でオーケーでしょ」
「ずっと前からお似合いだって思ってたし」
「ホント? 嬉しい。でも戸守くん、あんまり教室にいないんだよね」
「休み時間、すぐどっか行くよね」
「何か、友達から聞いたけど、ある先輩に会いに行ってるって」
「ある先輩?」
そこまで聞いてギクッとする。
自惚れとかじゃなく、戸守は休み時間のたびに俺のところにくるから、3年の間ではちょっと有名になってるんだ。
イケメンが尻尾振って飼い主に会いに来てるって。あんまいい表現じゃないけどな。
ただでさえ睨まれる事多いのに、あの子たちにまで目の敵にされるのはたまったもんじゃない。
「そう、3年の綺麗な先輩」
⋯⋯ん? 綺麗な先輩? って事は、俺の話じゃないのか。
アイツは他の先輩にも会いに行ってて、そっちの方が噂になってるって感じか。ふーん、いいご身分だな。
「あー、あの人? 私、初めて見た時びっくりしたもん」
「ね。だってあの人おと⋯」
「ねぇ、どこでその先輩と会ってるの?」
「え? 自販機とか、先輩の教室とかじゃない?」
「自販機⋯」
いやいや、さすがにこれ以上聞くのはダメだろ。
どこまでが本心なのか分からない会話に首を振った俺は資材を抱え直すと、自分のクラスへと戻るべく早足で教室へと向かった。
何か、いろいろ聞いたせいか頭の中ぐちゃぐちゃだ。
週中から午後の授業を潰して行われる準備が着々と進む中、あれだけあった戸守の訪問は現在昼休みだけになってた。
全体的に忙しいからそれ自体はおかしくないし、別に来ようと来まいとどっちでも良かったんだけど⋯何だろうな、今まであったものがなくなって物足りなくなってる。
(戸守が来るの、俺にとってはもう当たり前になってたんだな)
最初こそ面倒だって思ってたのに、まさかここまで馴染むとは思わなかった。 まぁあの莉央と優里が受け入れてる時点で2対1だし、もともと人懐っこい奴だからいても嫌だと感じないんだよな。
「さて、片付けて帰るか」
1人残って創立祭の準備をしていた俺は、時間を見てそう零した。
立ち上がって伸びをし、もう使わない物を倉庫に運ぶべくそれなりの重さがある箱を持ち上げ作業場にしていた空き教室から出たら、階段の方から話し声が聞こえて目を瞬く。
まだ誰かいたのかと驚きつつ進行方向だからと向かえば、戸守と例の純鈴ちゃんが見えてドキッとした。結構近い距離で話してたけど、気付いた戸守が笑顔になる。
「先輩!」
「⋯もう時間も遅いのに何やってんだ」
戸守はともかく、もう日も落ちて女の子には危ない時間なのに⋯もしかしたずっと2人で残ってたのか?
純鈴ちゃんは誰が見ても恋する乙女状態で戸守しか見てなかったけど、戸守が俺の方へと寄ったら途端にムッとして俺を睨んできた。
女の子怖い。
「先輩を待ってました」
「何で?」
「一緒に帰りたくて」
「それなら連絡くれれば良かったのに」
いつから待ってたのかは知らないけど、俺が1人で残ってからはもう1時間は経ってる。完全下校までやろうと思ってたからだけど、せめて一報あれば早めに終わらせたのに。
戸守はにこっと笑うと、俺の手から箱を取り上げ階段を降り始める。
「ちょ、待て。俺が運ぶから⋯」
「結構重いんで、このまま俺が持ちます」
「いや、お前はこの子を家まで⋯」
「迎えが来るって言ってましたよ」
夜道に女の子を1人で帰らせるなんて危ないと思ったんだけど、戸守がそう言うから思わず純鈴ちゃんに「そうなのか?」って聞いてしまった。素直に頷いてくれたけど、この子、たぶん戸守と帰りたいから待ってたんじゃないかな。
俺は少し考えて、純鈴ちゃんへと声をかける。
「じゃあさ、心配だし、迎え来るまで一緒に待ってようか」
「え⋯」
「1人で待つのも寂しいだろ? ほら、行くよ」
「⋯はい」
男ならじゃあなーで済むけど、女の子1人はさすがに見過ごせない。
階段を降り始めた純鈴ちゃんを見て笑みを零したら、数段下にいる戸守の拗ねた顔と目が合った。
純鈴ちゃんが先に行っても俺が降りるまで待ってるから、1段上で止まった俺は仕方ないなと戸守の髪を少し乱暴に撫でる。それに目を瞬いた戸守は表情を緩めると、俺の頬に軽くキスして再び階段を降り始めた。
(またされた⋯)
古書堂といい今といい、俺ってもしかして隙を突かれやすいんだろうか。
もしくは戸守の手が早いだけなのかも。
⋯⋯ぜひ後者であって欲しい。
毎年文化祭にはミスコンかミスターコンが開催されるんだけど、本戦出場者を決めるその予選がこの創立祭で行われるからみんな浮き足立ってた。
ちなみに今年はミスコンで、自薦他薦問わず学年も関係なく応募可能だ。
(もしミスターコンだったら、戸守が優勝してたんだろうな)
何せ学校一のイケメンと称されてる男だ。オマケに今や同性にまで告白されるようになってて、ますますモテ街道を走ってた。
全部断ってるらしいけど、応えるかどうかも分からない俺よりも自分を好きだって言ってくれる子を選べばいいのに⋯ほんと、物好きだよな。
「今年の優勝は絶対純鈴だよ」
「純鈴ほど可愛い子、見た事ないもん」
「そんな事ないよぉ。でも、一生懸命アピールはするつもり」
自分のクラスで使う資材を運んでる途中、階段の方からそんな会話が聞こえてきて思わず足を止めた。そんなに可愛い子がこの学校にいるのか。
俺は同じ学年でも女の子をあんまり知らないからなぁ。
盗み聞きも良くないからさっさと立ち去ろうとしたのに、知った名前が口にされたから再び立ち止まる。
「純鈴、予選突破したら戸守くんに告白するって言ってたもんね」
「純鈴なら即答でオーケーでしょ」
「ずっと前からお似合いだって思ってたし」
「ホント? 嬉しい。でも戸守くん、あんまり教室にいないんだよね」
「休み時間、すぐどっか行くよね」
「何か、友達から聞いたけど、ある先輩に会いに行ってるって」
「ある先輩?」
そこまで聞いてギクッとする。
自惚れとかじゃなく、戸守は休み時間のたびに俺のところにくるから、3年の間ではちょっと有名になってるんだ。
イケメンが尻尾振って飼い主に会いに来てるって。あんまいい表現じゃないけどな。
ただでさえ睨まれる事多いのに、あの子たちにまで目の敵にされるのはたまったもんじゃない。
「そう、3年の綺麗な先輩」
⋯⋯ん? 綺麗な先輩? って事は、俺の話じゃないのか。
アイツは他の先輩にも会いに行ってて、そっちの方が噂になってるって感じか。ふーん、いいご身分だな。
「あー、あの人? 私、初めて見た時びっくりしたもん」
「ね。だってあの人おと⋯」
「ねぇ、どこでその先輩と会ってるの?」
「え? 自販機とか、先輩の教室とかじゃない?」
「自販機⋯」
いやいや、さすがにこれ以上聞くのはダメだろ。
どこまでが本心なのか分からない会話に首を振った俺は資材を抱え直すと、自分のクラスへと戻るべく早足で教室へと向かった。
何か、いろいろ聞いたせいか頭の中ぐちゃぐちゃだ。
週中から午後の授業を潰して行われる準備が着々と進む中、あれだけあった戸守の訪問は現在昼休みだけになってた。
全体的に忙しいからそれ自体はおかしくないし、別に来ようと来まいとどっちでも良かったんだけど⋯何だろうな、今まであったものがなくなって物足りなくなってる。
(戸守が来るの、俺にとってはもう当たり前になってたんだな)
最初こそ面倒だって思ってたのに、まさかここまで馴染むとは思わなかった。 まぁあの莉央と優里が受け入れてる時点で2対1だし、もともと人懐っこい奴だからいても嫌だと感じないんだよな。
「さて、片付けて帰るか」
1人残って創立祭の準備をしていた俺は、時間を見てそう零した。
立ち上がって伸びをし、もう使わない物を倉庫に運ぶべくそれなりの重さがある箱を持ち上げ作業場にしていた空き教室から出たら、階段の方から話し声が聞こえて目を瞬く。
まだ誰かいたのかと驚きつつ進行方向だからと向かえば、戸守と例の純鈴ちゃんが見えてドキッとした。結構近い距離で話してたけど、気付いた戸守が笑顔になる。
「先輩!」
「⋯もう時間も遅いのに何やってんだ」
戸守はともかく、もう日も落ちて女の子には危ない時間なのに⋯もしかしたずっと2人で残ってたのか?
純鈴ちゃんは誰が見ても恋する乙女状態で戸守しか見てなかったけど、戸守が俺の方へと寄ったら途端にムッとして俺を睨んできた。
女の子怖い。
「先輩を待ってました」
「何で?」
「一緒に帰りたくて」
「それなら連絡くれれば良かったのに」
いつから待ってたのかは知らないけど、俺が1人で残ってからはもう1時間は経ってる。完全下校までやろうと思ってたからだけど、せめて一報あれば早めに終わらせたのに。
戸守はにこっと笑うと、俺の手から箱を取り上げ階段を降り始める。
「ちょ、待て。俺が運ぶから⋯」
「結構重いんで、このまま俺が持ちます」
「いや、お前はこの子を家まで⋯」
「迎えが来るって言ってましたよ」
夜道に女の子を1人で帰らせるなんて危ないと思ったんだけど、戸守がそう言うから思わず純鈴ちゃんに「そうなのか?」って聞いてしまった。素直に頷いてくれたけど、この子、たぶん戸守と帰りたいから待ってたんじゃないかな。
俺は少し考えて、純鈴ちゃんへと声をかける。
「じゃあさ、心配だし、迎え来るまで一緒に待ってようか」
「え⋯」
「1人で待つのも寂しいだろ? ほら、行くよ」
「⋯はい」
男ならじゃあなーで済むけど、女の子1人はさすがに見過ごせない。
階段を降り始めた純鈴ちゃんを見て笑みを零したら、数段下にいる戸守の拗ねた顔と目が合った。
純鈴ちゃんが先に行っても俺が降りるまで待ってるから、1段上で止まった俺は仕方ないなと戸守の髪を少し乱暴に撫でる。それに目を瞬いた戸守は表情を緩めると、俺の頬に軽くキスして再び階段を降り始めた。
(またされた⋯)
古書堂といい今といい、俺ってもしかして隙を突かれやすいんだろうか。
もしくは戸守の手が早いだけなのかも。
⋯⋯ぜひ後者であって欲しい。
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