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真っ直ぐな気持ち
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「あ、あの、私、先輩が好きです。付き合って下さい」
「俺、世界一大切な恋人がいるから。ごめんね」
中庭に面した廊下を通りがかった時、不意にそんなやり取りが聞こえて俺は口を引き結んだ。隣では莉央がにんまりしていて、優里がやれやれと肩を竦めてる。
ほんっとによく見る光景なんだけどさ、断り文句もうちょっとどうにかなんないものか。
「柊くん、恋人いるって宣言してるのに告白減らないね」
「自分なら奪えるとか思ってんじゃねぇの」
「ポジティブだなぁ」
しょっちゅう見てるからってのもあるだろうけど、柊也の事は本当に信じてるから誰に告白されてようともう気にも留めなくなった。だってアイツ、俺を見付けると告られてる途中だろうとお構いなしに駆け寄ってくるから。
そうなると女の子が可哀想ではあるもののぶっちゃけ優越感もあって⋯俺ってこんな嫌な奴だったかって思う事も良くある。
「に、2番目でも⋯っ」
おお、今回の子はめげないな。ってか2番目でもいいって、ダメだろ。
食い下がる女の子に目を瞬いた柊也は、ハッキリと首を振ったあと真顔になった。
「その人が唯一なんだから1番とか2番とかないよ。俺が好きなのも、大事にしたいのもその人だけ」
「⋯そ、そんなに好きなんですね⋯」
「うん、すっごく好き。その人しか考えられない。綺麗で可愛くて優しくて、最高の恋人」
物凄くいい笑顔に変わってとんでもなく恥ずかしい事を言ってやがる。見ろ、女の子の方が若干引いてるじゃんか。
あと、聞いてる俺の方が恥ずかしい。
「熱烈だ」
「バカ正直っつーか⋯あれで照れもしねぇのがすげぇわ」
「優里は言えないもんね」
「あ? ベッドでならいくらでも言ってやるよ」
「ホント? じゃあ楽しみにしてる」
優里が口より態度で示す派なのは分かってるのに、莉央はたまーにこうして意地悪な事を言っては反応を見て楽しんでる。
口調の荒い優里だけど、莉央にだけは勝てないんだよなぁ。
それにしても、アイツずっと俺の話してる⋯あ、女の子の方が居た堪れなくなって泣きながら去ってったぞ。
「⋯行くか」
「声かけなくていいの?」
「捕まったら長いから。どうせあとで家行くし」
「お泊まり?」
「うん。今は毎週末泊まってる」
受験生だし勉強が絶対条件ではあるけど、うちの親は割と寛大だから高校生活も最後だしって感じで許してくれてる。今まで泊まりとかした事がなかったってのもあるかな。
ちなみに付き合ってる事は言ってない。
教室へと向かいながら答えたら少しの間のあと、莉央が唐突に腕に抱き着いてきた。
「?」
「柚琉が幸せで嬉しいなって」
それは俺自身も思ってる。
今までの男運って何だったんだってくらい愛されて大切にされてて、そんな見えない事も分かるようにしてくれる柊也の愛情の深さに俺は感激してた。
誰かと付き合うたびにあんな思いするんならもう1人でいいやって投げ槍になってたから、柊也が諦めないでいてくれて本当に良かったなって。
莉央と優里にもたくさん心配かけたし、こうして安心してくれてる姿を見るとホッとする。
俺は莉央の頭に自分の頭を寄せてふっと口元を緩めた。
「ありがとう」
何かあるたびに傍にいてくれて、慰めてくれる2人は色んな意味で俺の支えだった。
これからは2人を安心させられるように、柊也に飽きられないように俺に出来る精一杯で頑張らなきゃな。
柊也の部屋に、少しずつ自分の物が増えていく現象が不思議で仕方ない。
歯ブラシや着替えから始まり、食器類やクッション、枕まで揃えられてもう一緒に住んでる感覚に見舞われる。
気付いたら部屋着までお揃いになってたし、何だこのむず痒さは。
「柚琉さん」
「はいはい」
夕飯を食べて風呂に入って、ソファに並んで座りテレビや映画を見るのが俺たちの日常なんだけど、今日はホラーに挑戦するらしく俺の座る場所は柊也の膝の間になった。
俺がホラーやサスペンスを好きで観るから怖がりを克服したいそうだけど、無理する必要はないと思うんだよなぁ。人には得意不得意があるんだから。
「柚琉さんの好きなものは俺も好きになりたいです」とかはいじらしくて胸きゅんだったけど。
「本当にいいのか? 再生するぞ?」
「はい、ドンと来いです」
「映画館と違って一時停止可能だからな。無理ならここ押せ」
「頑張ります!」
「や、別に頑張らなくても⋯」
変に気合いが入ってる柊也に苦笑しながらメインメニューにある本編再生を押す。
これ、俺も結構前に見たけど幽霊バーンとかじゃなくてそこにいる? いない? みたいなじわ怖タイプだ。脅かしはまぁあるっちゃあるけど軽いし、前見た映画ほどじゃないとは思うんだけど⋯。
話が進んでホラー展開が増えると、腹に回された柊也の手に力が込められ若干苦しくなったりもしつつ半分流し気味に観てたら、洋画にありがちなベッドシーンが始まってそういえばこんなんだったと思い出す。
洋画のこういうシーンって直接的な表現なくてもなーんかえっちぃんだよな。
「⋯⋯柚琉さん」
「んー? ⋯あ、ちょ⋯っ」
見慣れたもんだと思ってたんだけど、低めの声で名前を呼ばれて返事をしたら柊也の手が裾から入ってきた。
ギョッとして押さえつつ振り向くと明らかに興奮してる柊也がいて俺は困惑する。
「何映画に当てられてんだ!」
「すいません! でもずっとムラムラしてました!」
「ずっと!?」
「柚琉さんいい匂いだから⋯」
「今はお前と同じ匂いのはずだけど!?」
「柚琉さんには柚琉さんの匂いがあるんです! それがいい匂いなんです!」
俺の匂いって何だと思い袖を嗅ぐけど、柊也の家の柔軟剤の匂いしかしない。
試しに柊也の匂いも嗅いでみようかと襟元に鼻を寄せたらそのまま抱き締められた。
「柚琉さん⋯シたい」
「⋯発情期か、お前は」
「柚琉さんといるだけで常に発情してます」
だから、なんでそんな恥ずかしい事を恥ずかしげもなく言えるんだお前は。
⋯⋯とはいえ俺も気持ちいい事は好きだし、むしろこんな求められたら嬉しいからとてもじゃないけど嫌とは言えない。
我慢出来ずに髪に口付けてくる柊也に仕方ないなと笑った俺は、映画もテレビも消して柊也の首に腕を回した。
「明日出掛けるんだから、手加減しろよ」
それを聞いて貰えるかどうかは、柊也の理性にかかってるんだけどな。
「俺、世界一大切な恋人がいるから。ごめんね」
中庭に面した廊下を通りがかった時、不意にそんなやり取りが聞こえて俺は口を引き結んだ。隣では莉央がにんまりしていて、優里がやれやれと肩を竦めてる。
ほんっとによく見る光景なんだけどさ、断り文句もうちょっとどうにかなんないものか。
「柊くん、恋人いるって宣言してるのに告白減らないね」
「自分なら奪えるとか思ってんじゃねぇの」
「ポジティブだなぁ」
しょっちゅう見てるからってのもあるだろうけど、柊也の事は本当に信じてるから誰に告白されてようともう気にも留めなくなった。だってアイツ、俺を見付けると告られてる途中だろうとお構いなしに駆け寄ってくるから。
そうなると女の子が可哀想ではあるもののぶっちゃけ優越感もあって⋯俺ってこんな嫌な奴だったかって思う事も良くある。
「に、2番目でも⋯っ」
おお、今回の子はめげないな。ってか2番目でもいいって、ダメだろ。
食い下がる女の子に目を瞬いた柊也は、ハッキリと首を振ったあと真顔になった。
「その人が唯一なんだから1番とか2番とかないよ。俺が好きなのも、大事にしたいのもその人だけ」
「⋯そ、そんなに好きなんですね⋯」
「うん、すっごく好き。その人しか考えられない。綺麗で可愛くて優しくて、最高の恋人」
物凄くいい笑顔に変わってとんでもなく恥ずかしい事を言ってやがる。見ろ、女の子の方が若干引いてるじゃんか。
あと、聞いてる俺の方が恥ずかしい。
「熱烈だ」
「バカ正直っつーか⋯あれで照れもしねぇのがすげぇわ」
「優里は言えないもんね」
「あ? ベッドでならいくらでも言ってやるよ」
「ホント? じゃあ楽しみにしてる」
優里が口より態度で示す派なのは分かってるのに、莉央はたまーにこうして意地悪な事を言っては反応を見て楽しんでる。
口調の荒い優里だけど、莉央にだけは勝てないんだよなぁ。
それにしても、アイツずっと俺の話してる⋯あ、女の子の方が居た堪れなくなって泣きながら去ってったぞ。
「⋯行くか」
「声かけなくていいの?」
「捕まったら長いから。どうせあとで家行くし」
「お泊まり?」
「うん。今は毎週末泊まってる」
受験生だし勉強が絶対条件ではあるけど、うちの親は割と寛大だから高校生活も最後だしって感じで許してくれてる。今まで泊まりとかした事がなかったってのもあるかな。
ちなみに付き合ってる事は言ってない。
教室へと向かいながら答えたら少しの間のあと、莉央が唐突に腕に抱き着いてきた。
「?」
「柚琉が幸せで嬉しいなって」
それは俺自身も思ってる。
今までの男運って何だったんだってくらい愛されて大切にされてて、そんな見えない事も分かるようにしてくれる柊也の愛情の深さに俺は感激してた。
誰かと付き合うたびにあんな思いするんならもう1人でいいやって投げ槍になってたから、柊也が諦めないでいてくれて本当に良かったなって。
莉央と優里にもたくさん心配かけたし、こうして安心してくれてる姿を見るとホッとする。
俺は莉央の頭に自分の頭を寄せてふっと口元を緩めた。
「ありがとう」
何かあるたびに傍にいてくれて、慰めてくれる2人は色んな意味で俺の支えだった。
これからは2人を安心させられるように、柊也に飽きられないように俺に出来る精一杯で頑張らなきゃな。
柊也の部屋に、少しずつ自分の物が増えていく現象が不思議で仕方ない。
歯ブラシや着替えから始まり、食器類やクッション、枕まで揃えられてもう一緒に住んでる感覚に見舞われる。
気付いたら部屋着までお揃いになってたし、何だこのむず痒さは。
「柚琉さん」
「はいはい」
夕飯を食べて風呂に入って、ソファに並んで座りテレビや映画を見るのが俺たちの日常なんだけど、今日はホラーに挑戦するらしく俺の座る場所は柊也の膝の間になった。
俺がホラーやサスペンスを好きで観るから怖がりを克服したいそうだけど、無理する必要はないと思うんだよなぁ。人には得意不得意があるんだから。
「柚琉さんの好きなものは俺も好きになりたいです」とかはいじらしくて胸きゅんだったけど。
「本当にいいのか? 再生するぞ?」
「はい、ドンと来いです」
「映画館と違って一時停止可能だからな。無理ならここ押せ」
「頑張ります!」
「や、別に頑張らなくても⋯」
変に気合いが入ってる柊也に苦笑しながらメインメニューにある本編再生を押す。
これ、俺も結構前に見たけど幽霊バーンとかじゃなくてそこにいる? いない? みたいなじわ怖タイプだ。脅かしはまぁあるっちゃあるけど軽いし、前見た映画ほどじゃないとは思うんだけど⋯。
話が進んでホラー展開が増えると、腹に回された柊也の手に力が込められ若干苦しくなったりもしつつ半分流し気味に観てたら、洋画にありがちなベッドシーンが始まってそういえばこんなんだったと思い出す。
洋画のこういうシーンって直接的な表現なくてもなーんかえっちぃんだよな。
「⋯⋯柚琉さん」
「んー? ⋯あ、ちょ⋯っ」
見慣れたもんだと思ってたんだけど、低めの声で名前を呼ばれて返事をしたら柊也の手が裾から入ってきた。
ギョッとして押さえつつ振り向くと明らかに興奮してる柊也がいて俺は困惑する。
「何映画に当てられてんだ!」
「すいません! でもずっとムラムラしてました!」
「ずっと!?」
「柚琉さんいい匂いだから⋯」
「今はお前と同じ匂いのはずだけど!?」
「柚琉さんには柚琉さんの匂いがあるんです! それがいい匂いなんです!」
俺の匂いって何だと思い袖を嗅ぐけど、柊也の家の柔軟剤の匂いしかしない。
試しに柊也の匂いも嗅いでみようかと襟元に鼻を寄せたらそのまま抱き締められた。
「柚琉さん⋯シたい」
「⋯発情期か、お前は」
「柚琉さんといるだけで常に発情してます」
だから、なんでそんな恥ずかしい事を恥ずかしげもなく言えるんだお前は。
⋯⋯とはいえ俺も気持ちいい事は好きだし、むしろこんな求められたら嬉しいからとてもじゃないけど嫌とは言えない。
我慢出来ずに髪に口付けてくる柊也に仕方ないなと笑った俺は、映画もテレビも消して柊也の首に腕を回した。
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それを聞いて貰えるかどうかは、柊也の理性にかかってるんだけどな。
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