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2人のこれからの為に
季節が冬になりあっという間に冬休みも目前となった今日この頃、俺は受験勉強に追われて半泣き状態だった。もともと勉強は得意じゃなくて、テスト順位もせいぜい真ん中かちょっと下くらいだから微妙なんだよな。
でも志望大学の判定がCで親に憐れまれたから、冬期講習申し込んで絶対意地でも上げてやるって意気込んで数日、頭の中は既にパンパンになってた。
「もーやだ。数式見たくない」
「受験生は大変ですね」
「来年はお前もこうなるんだぞ」
「俺は就職予定なので」
「え?」
柊也の家の方が落ち着くからってお邪魔して、1時間参考書と睨めっこしていた俺は目がぐるぐるしてきてテーブルに突っ伏した。
その頭を柊也が撫でてくれるけど、明日は我が身だと睨めば予想もしなかった言葉が返ってきて顔を上げる。
「就職?」
「はい。父と母にはこれ以上苦労はかけたくないし、瑠璃の事もあるから大学行くより就職した方が諸々助かるかなって」
「そっか⋯瑠璃ちゃんの自立を支援したい、だっけ」
たった1人の妹が幸せに暮らせるように手伝ってあげたいなんて、ホントいいお兄ちゃんだよな。俺も少しでも力になれたらいいんだけど。
1時間も頑張ったし休憩するかとテーブルの上を片付けてたら、柊也がなぜかもじもじし始めた。そういう時は大抵えっち関係だったりするけど、今はそれとはちょっと違う感じ。
「どした?」
「あの、もちろん瑠璃の事も大事ではあるんですけど⋯」
「うん」
「⋯⋯俺、柚琉さんと一緒に暮らしたいんです」
「へ」
それは俺も少し前から考えていた事で、まさか柊也まで同じ気持ちでいてくれたとは思わず驚きのあまり間抜けな声が出てしまった。
それをどう捉えたのか、柊也はバツが悪そうな顔で俯く。
「柚琉さんが本当に好きだから⋯ずっと一緒にいたいし、幸せにしてあげたいなって。大人になってからでもいいじゃんって思われるかもしれないんですけど、それだと待つのがツラいっていうか⋯」
「⋯⋯」
「本心は今すぐにだって同棲したいんですけど、さすがに親に面倒を見て貰ってる状態じゃ無理だし⋯なので、俺が就職したらもう少し広いところに引っ越して、一緒に暮らしませんか?」
いつも以上に饒舌な柊也に必死さを感じて嬉しくなるけど、これは安易に頷けない話だ。
志望している大学に行くなら一人暮らしは必須だけど、一緒に住むとなると場所の問題が出てくる。なぜなら俺は。
「俺が行こうとしてる大学、県外だぞ」
「⋯え?」
「だから、県外に行くんだよ」
もっと早くに話しておくべきだったんだろうけど、柊也がそこまで俺との将来を考えてくれてたなんて思わなかったからこのタイミングになってしまった。
もちろん、遅くても受験前には話すつもりではいたけど。
呆然と目を瞬く柊也に申し訳なさを感じつつ顔を覗き込んだら、手を掴まれて抱き締められた。
「もし万が一落ちても行くんですか?」
「そうなったら来年も受けるからな」
「⋯分かりました。俺もそっちで職探します」
「は? いやいや、お前こっちでアタリつけてるとこあるんじゃないのか? そこがいい会社だったらどうすんだよ」
迷いなくそう言ってくれるのは嬉しいけど、それで柊也が選ぼうとしてる道が閉ざされるのだけは納得出来ない。
軽く胸元を押し返して見上げると額に頬擦りされる。
「アタリと言っても、ここはどんな会社なんだろうって思ったくらいです。本格的には探していないので、こっちじゃなくても問題ありません。そもそも家族もこっちにはいませんし」
「や、でも⋯」
「嫌です。柚琉さんと離れるなんて、俺には耐えられません」
「そんな感情論だけで決めるもんじゃないだろ?」
「俺にとっては一番重要な事です」
うーん⋯柊也の気持ちはもちろん分かるし、出来れば俺も離れたくはない。でも自分の将来に関わる事だから、ちゃんと悩んで考えた末で決めて欲しいんだよな。
俺があっちに行ったあと、ここで1人で暮らす柊也を思うと胸は痛むけど。
「なぁ、柊也。お前はまだ1年ある。自分のしたい事とか就きたい職業とか、ゆっくり考えてくれないか?」
「⋯⋯」
「考えて考えて、その上で出した答えが〝あっちで働きたい〟になるなら俺は受け入れるから。だから、俺と離れたくないって理由で決めないで欲しい」
「柚琉さん⋯」
柊也の未来は柊也のものだ。俺を基準にしていい話じゃない。
今は離れてたとしても、俺が大学を卒業してからだって一緒には住めるんだから。
「⋯⋯県外なんて遠いです⋯会いたい時に会えない⋯」
「遠距離だと、俺たちはダメになるのか?」
「そんな訳⋯っ」
「だろ? 俺は、お前には自分の事を第一に考えて欲しいんだよ。もちろん瑠璃ちゃんの件が解決したあとでもいい。後悔だけはして欲しくないし、この先長く一緒にいる為にも、お互いが納得出来る形にしないか?」
前までの俺なら少し離れるだけでも不安になってただろうけど、柊也なら電話だけのやり取りでも大丈夫だって信じられるから、出来るならその先の事を考えたい。
俺だって柊也とずっと一緒にいたいって思ってるんだし。
そう言って柊也の頬を挟めば見るからにしゅんとした顔になる。
「会いに行くから。一緒に頑張ろう?」
「⋯柚琉さん⋯」
「好きだよ、柊也。シワシワのじいさんになっても一緒にいような」
ないはずの耳が垂れて見えるし、今にも泣きそうな柊也が俺といる事にどれだけの重きを置いてくれてるか分かるからこそ愛おしい。不安だろうけど、共に乗り越えていけたら俺たちはもっと前に進めるはずだ。
軽く唇を触れ合わせて微笑めば、くしゃりと顔を歪めた柊也の腕の力が強くなりいつもよりしっかりと包まれる。
「柚琉さん⋯⋯柚琉さん⋯」
「ずっと離れてる訳じゃないからな」
「⋯⋯はい」
「よし、いい子だ。じゃ、今からはイチャイチャタイムにするか」
「⋯えっちしたいです」
「お前な⋯」
何か、会うたびにそんな事言ってないか?
ある意味凄いなと感心しつつ柊也の頭を撫でた俺は、これも健全な男子高校生あるあるかと思いながら「いいよ」と受け入れた。
何度も名前を呼ばれて、キスされて、めちゃくちゃ激しく抱かれて気付いたら朝だったけど、まぁ今日くらいはいいか。
でも志望大学の判定がCで親に憐れまれたから、冬期講習申し込んで絶対意地でも上げてやるって意気込んで数日、頭の中は既にパンパンになってた。
「もーやだ。数式見たくない」
「受験生は大変ですね」
「来年はお前もこうなるんだぞ」
「俺は就職予定なので」
「え?」
柊也の家の方が落ち着くからってお邪魔して、1時間参考書と睨めっこしていた俺は目がぐるぐるしてきてテーブルに突っ伏した。
その頭を柊也が撫でてくれるけど、明日は我が身だと睨めば予想もしなかった言葉が返ってきて顔を上げる。
「就職?」
「はい。父と母にはこれ以上苦労はかけたくないし、瑠璃の事もあるから大学行くより就職した方が諸々助かるかなって」
「そっか⋯瑠璃ちゃんの自立を支援したい、だっけ」
たった1人の妹が幸せに暮らせるように手伝ってあげたいなんて、ホントいいお兄ちゃんだよな。俺も少しでも力になれたらいいんだけど。
1時間も頑張ったし休憩するかとテーブルの上を片付けてたら、柊也がなぜかもじもじし始めた。そういう時は大抵えっち関係だったりするけど、今はそれとはちょっと違う感じ。
「どした?」
「あの、もちろん瑠璃の事も大事ではあるんですけど⋯」
「うん」
「⋯⋯俺、柚琉さんと一緒に暮らしたいんです」
「へ」
それは俺も少し前から考えていた事で、まさか柊也まで同じ気持ちでいてくれたとは思わず驚きのあまり間抜けな声が出てしまった。
それをどう捉えたのか、柊也はバツが悪そうな顔で俯く。
「柚琉さんが本当に好きだから⋯ずっと一緒にいたいし、幸せにしてあげたいなって。大人になってからでもいいじゃんって思われるかもしれないんですけど、それだと待つのがツラいっていうか⋯」
「⋯⋯」
「本心は今すぐにだって同棲したいんですけど、さすがに親に面倒を見て貰ってる状態じゃ無理だし⋯なので、俺が就職したらもう少し広いところに引っ越して、一緒に暮らしませんか?」
いつも以上に饒舌な柊也に必死さを感じて嬉しくなるけど、これは安易に頷けない話だ。
志望している大学に行くなら一人暮らしは必須だけど、一緒に住むとなると場所の問題が出てくる。なぜなら俺は。
「俺が行こうとしてる大学、県外だぞ」
「⋯え?」
「だから、県外に行くんだよ」
もっと早くに話しておくべきだったんだろうけど、柊也がそこまで俺との将来を考えてくれてたなんて思わなかったからこのタイミングになってしまった。
もちろん、遅くても受験前には話すつもりではいたけど。
呆然と目を瞬く柊也に申し訳なさを感じつつ顔を覗き込んだら、手を掴まれて抱き締められた。
「もし万が一落ちても行くんですか?」
「そうなったら来年も受けるからな」
「⋯分かりました。俺もそっちで職探します」
「は? いやいや、お前こっちでアタリつけてるとこあるんじゃないのか? そこがいい会社だったらどうすんだよ」
迷いなくそう言ってくれるのは嬉しいけど、それで柊也が選ぼうとしてる道が閉ざされるのだけは納得出来ない。
軽く胸元を押し返して見上げると額に頬擦りされる。
「アタリと言っても、ここはどんな会社なんだろうって思ったくらいです。本格的には探していないので、こっちじゃなくても問題ありません。そもそも家族もこっちにはいませんし」
「や、でも⋯」
「嫌です。柚琉さんと離れるなんて、俺には耐えられません」
「そんな感情論だけで決めるもんじゃないだろ?」
「俺にとっては一番重要な事です」
うーん⋯柊也の気持ちはもちろん分かるし、出来れば俺も離れたくはない。でも自分の将来に関わる事だから、ちゃんと悩んで考えた末で決めて欲しいんだよな。
俺があっちに行ったあと、ここで1人で暮らす柊也を思うと胸は痛むけど。
「なぁ、柊也。お前はまだ1年ある。自分のしたい事とか就きたい職業とか、ゆっくり考えてくれないか?」
「⋯⋯」
「考えて考えて、その上で出した答えが〝あっちで働きたい〟になるなら俺は受け入れるから。だから、俺と離れたくないって理由で決めないで欲しい」
「柚琉さん⋯」
柊也の未来は柊也のものだ。俺を基準にしていい話じゃない。
今は離れてたとしても、俺が大学を卒業してからだって一緒には住めるんだから。
「⋯⋯県外なんて遠いです⋯会いたい時に会えない⋯」
「遠距離だと、俺たちはダメになるのか?」
「そんな訳⋯っ」
「だろ? 俺は、お前には自分の事を第一に考えて欲しいんだよ。もちろん瑠璃ちゃんの件が解決したあとでもいい。後悔だけはして欲しくないし、この先長く一緒にいる為にも、お互いが納得出来る形にしないか?」
前までの俺なら少し離れるだけでも不安になってただろうけど、柊也なら電話だけのやり取りでも大丈夫だって信じられるから、出来るならその先の事を考えたい。
俺だって柊也とずっと一緒にいたいって思ってるんだし。
そう言って柊也の頬を挟めば見るからにしゅんとした顔になる。
「会いに行くから。一緒に頑張ろう?」
「⋯柚琉さん⋯」
「好きだよ、柊也。シワシワのじいさんになっても一緒にいような」
ないはずの耳が垂れて見えるし、今にも泣きそうな柊也が俺といる事にどれだけの重きを置いてくれてるか分かるからこそ愛おしい。不安だろうけど、共に乗り越えていけたら俺たちはもっと前に進めるはずだ。
軽く唇を触れ合わせて微笑めば、くしゃりと顔を歪めた柊也の腕の力が強くなりいつもよりしっかりと包まれる。
「柚琉さん⋯⋯柚琉さん⋯」
「ずっと離れてる訳じゃないからな」
「⋯⋯はい」
「よし、いい子だ。じゃ、今からはイチャイチャタイムにするか」
「⋯えっちしたいです」
「お前な⋯」
何か、会うたびにそんな事言ってないか?
ある意味凄いなと感心しつつ柊也の頭を撫でた俺は、これも健全な男子高校生あるあるかと思いながら「いいよ」と受け入れた。
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