愛が重めの年下ワンコに懐かれました

ミヅハ

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久し振り

 柊也が出張に行って3日が経った。
 瑠璃ちゃんと2人なのが初めてだからあの子が気まずくなければいいと思ってたけど、意外にも普通の兄妹みたいに過ごせてて安心してる。

「妹ちゃんと仲良しなんだね」

 今年もあと僅かになった頃、莉央と優里がこっちに遊びに来てくれた。
 久し振りの再開が嬉しくて、駅で出迎えた時思わず飛び付いて周りの視線を浴びたの恥ずかしかったな。莉央が笑顔で合わせてくれたから良かったけど、友達に会えたからってぴょんぴょんするもんじゃない。
 せっかくだしと家に招いたら友達と約束があるという瑠璃ちゃんがちょうど出掛けるところで、莉央と優里を見て珍しくポカンととしてた。
 腕を引かれて耳元で「柚くんの友達綺麗すぎじゃない?」って言われ、自慢の友達を褒められて嬉しくなった俺は大きく頷く。そうなんだよ、2人とも綺麗なんだよ。
 俺の反応ににこにこ顔で出掛けて行った瑠璃ちゃんを見送って戻ってきたら、莉央に冒頭の事を言われたから照れ笑いを浮かべる。

「俺の事、兄みたいに思ってくれてる」
「柚琉がお兄ちゃんとか、楽しそうだね」
「楽しいなら嬉しいんだけどな」
「柚琉はいい子だから大丈夫だよ」
「いい子って⋯」

 子供に向けるような言葉に苦笑するけど、2人に飲み物を用意してテーブルに並べるとお土産だよって焼き菓子の詰め合わせが渡された。瑠璃ちゃんのは分けておいて、あとはお茶請けにしようと真ん中に置いて向かいに座る。
 何か、この構図も懐かしいな。

「柊くんとは仲良くしてる?」
「うん。毎日寂しいってメッセージは来るけど」
「今出張行ってるんだっけ。柚琉も寂しいんじゃない?」
「寂しいけど、俺はまだ瑠璃ちゃんいるし。やる事もあるから」

 1人じゃないってだけでまだ気が楽だ。特に瑠璃ちゃんは会話をしてくれる子だから、朝食や夕飯は変わらず賑やかだし。
 どっちかというと、仕事して帰って寝てってしてる柊也の方が孤独感はあるだろうな。

「いつ帰って来るの?」
「4日後。帰って来たら俺の飯食いたいって言ってたから、瑠璃ちゃんと一緒にアイツの好きな餃子作ってやるつもり」
「すっかり主夫だね」
「何とかなってるってレベルだよ。莉央の足元にも及ばないし」
「僕は小さい頃からやってたってだけだから」

 それでもお菓子作りまでマスターするのは好きな気持ちがないと無理だと思う。
 俺は節約の為と、忙しい柊也と育ち盛りの瑠璃ちゃんにちゃんとしたのを食べて欲しいから練習したけど、今だって作る時はレシピ必須だ。
 いつかはレシピもなし、目分量で味付けとかしてみたいんだよなぁ。

「莉央と優里はどうなんだ?」
「僕たちは変わらないよ。優里がちょっとヤキモチ妬きになったくらい?」
「優里は元々ヤキモチ妬きだろ」
「莉央に近付く奴が悪い」
「道聞いてくる子供にまで嫉妬するんだよ?」
「高学年のマセガキは色目使ってっからな」
「そんな訳ないでしょ」

 確かに、それはさすがに嫉妬深いを通り越してるというか何というか⋯柊也は大人相手だったら男女関係なく妬くけど、子供はむしろ好きな方だからヤキモチはないな。
 さも当然のように答える優里に苦笑し、クッキーを取って封を切り齧り付く。

「まぁでも、恋人がイケメンだったり可愛かったりしたら心配になるから妬く気持ちも分かる。特に莉央は庇護欲擽るタイプだし」
「自分ではしっかりしてると思ってるんだけど⋯」
「しっかりはしてるな。それに、優里は基本的に話し掛けんなオーラ出してるから。無条件に優しいのは莉央にだけだぞ」

 別に怒ってる訳じゃないのは分かってるけど、遠目に見ても怖い顔して立ってるからどっちかというと道行く人が大回りで避けてくんだよな。それでも強気な女の人は声をかけたりして、冷たい言葉であしらわれてるのを何度も見てきた。
 軽く口元を緩めたりってのはともかく、ちゃんと笑った顔なんて俺でさえ見た事ない。
 優里には莉央だけだからなと思いながら頬杖をついたら、莉央が不思議そうな顔で首を傾げた。

「柚琉にも優しいよ?」
「それは友達だからだろ?」
「僕と優里が友達だと思ってるのは、柚琉だけだから」
「他はいらねぇだろ」
「ありがと」

 いつだって真っ直ぐに言ってくれて、友達として大事にしてくれる2人ににっと笑えば莉央も笑顔になり、隣にいる優里の表情がふっと緩んだ。
 こうしてたまに会うだけの関係でも、俺たちの友情は変わらないだろうな。おじいちゃんになっても他愛ない話してる姿が容易に想像出来る。
 そんな友達が2人もいてくれて、俺は本当に幸せ者だ。


 夕方、夕食を誘ったものの明日が早いからと断られてしまい、駅まで見送った俺は買い物をして家に帰る事にした。
 瑠璃ちゃんは夕飯までには帰って来るって言ってたから2人分で、昨日が和食だったから洋食にしてあげようかな。寒いし、シチューとかどうだろ。メッセージで聞いてみるか。
 俺はスマホを取り出すと瑠璃ちゃんとのトーク画面を開いて今日のメニューを提示する。
 買い物してる間に返ってくれば別メニューに対応は可能だけど、残念ながら家に着いてからも返事はなかったからシチューで決定した。
 ちなみにアレルギー検査はとっくにしてるから、卵も牛乳も大丈夫だ。
 シチューを完成させ、あとは仕上げだけの状態までした俺は先に風呂に入る事にして着替えを手に浴室に向かう。
 柊也から電話がかかってくるのはだいたい21時から22時くらいで、それまでに全部終わらせればゆっくり話せるからな。

「⋯あ、そうだ」

 いつメッセージが来てもいいようにスマホを洗面所まで持ってきた時、ふと柊也に伝えたい事があったのを思い出しSNSを開いた。

『クリスマスプレゼント、リクエストあるなら聞く』

 果たして、一体どんなものを所望されるのか。
 俺は何となくの予想をつけながらほくそ笑むと、防水のケースにスマホを入れてさっさと服を脱ぎ浴室へと入ったのだった。
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