59 / 73
柚琉の為に(柊也視点)
『⋯⋯くだらないな』
何かは忘れたけど、テレビで同性愛者の話が出た時に父親がそう吐き捨てて電源を落とした事を覚えてる。
その時にはもう柚琉を好きだった俺は、その反応を見て父さんに好きな人の話はしない方がいいんだと思った。この気持ちが実るかどうかも分からないけど、もし付き合えたとしても紹介も出来ないって。
でも大人になって、これから先を考えたら両親の理解は少なからず必要なんだって思った。受け入れて貰えるかどうかは別としても、話くらいはしておくべきだったって。
そうしたら、柚琉にあんな顔させずに済んだのに。
優しい柚琉は、俺が親に言わずにいた事を自分のせいだって思ってる。相手が男だから俺が言えないんだって。
でも、その理由をちゃんと説明すれば分かってくれたし、話し合いの席に隣にいるって言ってくれた。それだけで勇気が湧く俺って単純かもしれないけど、柚琉の為なら剣にだって盾にだってなれる。
俺にとって柚琉は、何を捨てでも失えない大切な人だから。
昼休憩で会社の傍にある公園まで足を運んだ俺は、ベンチで1人柚琉が作ってくれた弁当を食べながらスマホを弄っていた。
まだ返事は来てないけど父さんへの連絡は既に済ませてて、今は別で〝ある物〟を調べている最中だ。
(柚琉は綺麗だから、絶対シンプルな方が似合う。でもピアスはイメージ湧かないな⋯ネックレスも面倒だとかって着けなさそうだし⋯)
ブラウザに表示されたジュエリーショップを1つ1つ開いて、商品一覧にあるアクセサリーをタップしては柚琉と結び付けるけど、どうにもピンとくるものがない。
柚琉と付き合って4年も経つのに俺たちは今だにお揃いの物を持ってなくて、せっかくだし身に着けられる物がいいと思っていろいろ悩んでた。俺としてはペアリングが1番周りからも分かりやすくて牽制にはいいんだけど⋯⋯やっぱ重いかな。
「でも、柚琉の細い指に俺とお揃いの指輪があるのは堪んないなぁ⋯」
悩むくらいなら本人に聞けばいいんだけど、俺はこれをサプライズで渡したいんだ。
驚いたあとに喜ぶ柚琉が見たい。
「あ、戸守先輩じゃないですかー」
「一色さん」
「やだ、麗奈って呼んで下さいよ~」
「呼ばないよ」
柚琉の綺麗な笑顔を思い浮かべてたら、名前が呼ばれて隣に誰かが腰を下ろす。
見ると同じ部署の後輩がいて、顎に手を当てながら上目遣いにそう言ってきた。これ毎日やってるけど飽きないのかな。
さりげなく距離を空け、食べ終わった弁当箱を片付ける。
「お昼は食べたの?」
「はい。ランチに行って来ました」
「そう。なら会社に戻ったら?」
「先輩冷たーい。そうだ、そろそろID教えて下さいよ」
「教える必要性を感じない」
「もー」
どうしてみんな知りたがるのか分からないけど、会社の人とSNSでやり取りする気はこれっぽっちもない。柚琉からの連絡が埋もれるのも嫌だし。
そうだ、調べ物まだ途中だった。
「先輩、何見てるんですか?」
「秘密」
「えー、気になるー。あ、もしかしてえっちな画像だったりして」
「君の思考回路、どうなってるの」
俺にとってのえっちな画像は柚琉のあんな姿こんな姿だし、誰に覗かれるかも分からない公共の場で見たりしない。
呆れて返すと笑いながら謝ってたけど、突飛な事を言うのは辞めて欲しいものだ。
「わ、電話だ! それじゃあ、お先に失礼します!」
「はいはーい」
無機質な着信音に飛び上がった一色さんは、俺に頭を下げると電話に出ながら慌ただしく戻って行った。悪い子じゃないんだけど、遠慮がないんだよなぁ。
「それよりも続き⋯⋯あ」
改めて探そうとスマホの画面を見たらちょうど父さんから返事が返ってきてた。
俺の『話があるんだけど、いつ時間作れる?』の問い掛けには何とびっくり『今日の夜なら空いてる』と来てて、さすがに無理だろ! って突っ込みたい気持ちになる。
でもそのあとに送られてきたメッセージには住所が載ってて、そこが思いの外ここから近くて更に驚いた。え、今度はこっちの支部に転勤?
(そんな偶然⋯)
話をしようと決めたら両親はいつの間にかこっちにいて、今日にでも聞いてくれるという。ある意味ありがたいけど、話の内容を纏める時間はなかったか。
とりあえず少し遅くなる連絡を柚琉に送った俺は、そろそろ休憩時間も終わるしとベンチから立ち上がり会社へと足を向ける。
そういえば、親と直接話すのは久し振りだ。
定時で仕事を終え、電車に揺られて自分が住んでいる区域の最寄り駅で降りた。
まさかここまで一緒だとは⋯マンションの住所は教えていないから本当にたまたまなんだろうけど、何か変な力が働いてそうで心配になる。
そんなファンタジーみたいな事は当然ないんだけど。
「手土産でも買って行こうかな」
会話の糸口にでもなれば御の字だし、それで場が和めばなおの事いい。
話の結果がどうなろうと帰ったら柚琉に癒して貰おうと思いつつ、地図アプリで表示されたマンションまで行き部屋のある階数まで上がる。
表札は出てないけど、何度もスマホと部屋番号を見比べて間違いない事を確信した。
数回深呼吸をしてインターホンを押すと、モニターで確認したのか応答なしに玄関扉が開かれる。
「久し振りね、柊也くん」
「久し振り、義母さん。父さんいる?」
「ええ、リビングにいるわ。でも今お客様が来てるから⋯」
「お客さん?」
「とりあえず入って」
目を瞬いて中に入るとスニーカーが1足揃えて置いてある。どこかで見た事あるなと思いつつ上がってリビングに入った俺の耳に、ここにいるはずのない人の声が聞こえてきた。
「柊也!?」
リビングにはソファに座った父さんと、その斜め前で物凄く驚いた顔をした柚琉がいて俺は固まった。
何でここに柚琉がいるの?
何かは忘れたけど、テレビで同性愛者の話が出た時に父親がそう吐き捨てて電源を落とした事を覚えてる。
その時にはもう柚琉を好きだった俺は、その反応を見て父さんに好きな人の話はしない方がいいんだと思った。この気持ちが実るかどうかも分からないけど、もし付き合えたとしても紹介も出来ないって。
でも大人になって、これから先を考えたら両親の理解は少なからず必要なんだって思った。受け入れて貰えるかどうかは別としても、話くらいはしておくべきだったって。
そうしたら、柚琉にあんな顔させずに済んだのに。
優しい柚琉は、俺が親に言わずにいた事を自分のせいだって思ってる。相手が男だから俺が言えないんだって。
でも、その理由をちゃんと説明すれば分かってくれたし、話し合いの席に隣にいるって言ってくれた。それだけで勇気が湧く俺って単純かもしれないけど、柚琉の為なら剣にだって盾にだってなれる。
俺にとって柚琉は、何を捨てでも失えない大切な人だから。
昼休憩で会社の傍にある公園まで足を運んだ俺は、ベンチで1人柚琉が作ってくれた弁当を食べながらスマホを弄っていた。
まだ返事は来てないけど父さんへの連絡は既に済ませてて、今は別で〝ある物〟を調べている最中だ。
(柚琉は綺麗だから、絶対シンプルな方が似合う。でもピアスはイメージ湧かないな⋯ネックレスも面倒だとかって着けなさそうだし⋯)
ブラウザに表示されたジュエリーショップを1つ1つ開いて、商品一覧にあるアクセサリーをタップしては柚琉と結び付けるけど、どうにもピンとくるものがない。
柚琉と付き合って4年も経つのに俺たちは今だにお揃いの物を持ってなくて、せっかくだし身に着けられる物がいいと思っていろいろ悩んでた。俺としてはペアリングが1番周りからも分かりやすくて牽制にはいいんだけど⋯⋯やっぱ重いかな。
「でも、柚琉の細い指に俺とお揃いの指輪があるのは堪んないなぁ⋯」
悩むくらいなら本人に聞けばいいんだけど、俺はこれをサプライズで渡したいんだ。
驚いたあとに喜ぶ柚琉が見たい。
「あ、戸守先輩じゃないですかー」
「一色さん」
「やだ、麗奈って呼んで下さいよ~」
「呼ばないよ」
柚琉の綺麗な笑顔を思い浮かべてたら、名前が呼ばれて隣に誰かが腰を下ろす。
見ると同じ部署の後輩がいて、顎に手を当てながら上目遣いにそう言ってきた。これ毎日やってるけど飽きないのかな。
さりげなく距離を空け、食べ終わった弁当箱を片付ける。
「お昼は食べたの?」
「はい。ランチに行って来ました」
「そう。なら会社に戻ったら?」
「先輩冷たーい。そうだ、そろそろID教えて下さいよ」
「教える必要性を感じない」
「もー」
どうしてみんな知りたがるのか分からないけど、会社の人とSNSでやり取りする気はこれっぽっちもない。柚琉からの連絡が埋もれるのも嫌だし。
そうだ、調べ物まだ途中だった。
「先輩、何見てるんですか?」
「秘密」
「えー、気になるー。あ、もしかしてえっちな画像だったりして」
「君の思考回路、どうなってるの」
俺にとってのえっちな画像は柚琉のあんな姿こんな姿だし、誰に覗かれるかも分からない公共の場で見たりしない。
呆れて返すと笑いながら謝ってたけど、突飛な事を言うのは辞めて欲しいものだ。
「わ、電話だ! それじゃあ、お先に失礼します!」
「はいはーい」
無機質な着信音に飛び上がった一色さんは、俺に頭を下げると電話に出ながら慌ただしく戻って行った。悪い子じゃないんだけど、遠慮がないんだよなぁ。
「それよりも続き⋯⋯あ」
改めて探そうとスマホの画面を見たらちょうど父さんから返事が返ってきてた。
俺の『話があるんだけど、いつ時間作れる?』の問い掛けには何とびっくり『今日の夜なら空いてる』と来てて、さすがに無理だろ! って突っ込みたい気持ちになる。
でもそのあとに送られてきたメッセージには住所が載ってて、そこが思いの外ここから近くて更に驚いた。え、今度はこっちの支部に転勤?
(そんな偶然⋯)
話をしようと決めたら両親はいつの間にかこっちにいて、今日にでも聞いてくれるという。ある意味ありがたいけど、話の内容を纏める時間はなかったか。
とりあえず少し遅くなる連絡を柚琉に送った俺は、そろそろ休憩時間も終わるしとベンチから立ち上がり会社へと足を向ける。
そういえば、親と直接話すのは久し振りだ。
定時で仕事を終え、電車に揺られて自分が住んでいる区域の最寄り駅で降りた。
まさかここまで一緒だとは⋯マンションの住所は教えていないから本当にたまたまなんだろうけど、何か変な力が働いてそうで心配になる。
そんなファンタジーみたいな事は当然ないんだけど。
「手土産でも買って行こうかな」
会話の糸口にでもなれば御の字だし、それで場が和めばなおの事いい。
話の結果がどうなろうと帰ったら柚琉に癒して貰おうと思いつつ、地図アプリで表示されたマンションまで行き部屋のある階数まで上がる。
表札は出てないけど、何度もスマホと部屋番号を見比べて間違いない事を確信した。
数回深呼吸をしてインターホンを押すと、モニターで確認したのか応答なしに玄関扉が開かれる。
「久し振りね、柊也くん」
「久し振り、義母さん。父さんいる?」
「ええ、リビングにいるわ。でも今お客様が来てるから⋯」
「お客さん?」
「とりあえず入って」
目を瞬いて中に入るとスニーカーが1足揃えて置いてある。どこかで見た事あるなと思いつつ上がってリビングに入った俺の耳に、ここにいるはずのない人の声が聞こえてきた。
「柊也!?」
リビングにはソファに座った父さんと、その斜め前で物凄く驚いた顔をした柚琉がいて俺は固まった。
何でここに柚琉がいるの?
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています