異世界に勇者として勝手に呼んどいてギフトが弱いから追放します?~裏切りから始まる復讐劇 今さら謝られても止まれない~

明夜

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召喚編

13話 調子に乗るもの乗られるもの

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「おい氷室暇なら俺と組み手やろうぜ!」

 
 戦闘訓練が始まり数日。状況は俺の想像より悪い方向に進展していた。他のクラスメイトと違い俺のギフトには前例がない。故にギフトの訓練もどうすればいいか誰もわからず効果があるかも定かではないことをするくらいなら体を動かしたほうがまだいいと自分から言った結果肉体系のギフト組に混ざって剣術やらを習うことになった。元々運動神経はいいほうだし才能もあるのか教師役の兵士には筋がいいと褒めてもらえる。しかしそれでも


「俺と森野とじゃ勝負にならないだろう。報恩寺とか隆吾とやれよ」

「大丈夫だって。今日はほら短槍っていうの? 初めての武器だからよそれに報恩寺は今鎧とやってるしな」


 森野は不良と呼ばれている。しかし漫画や底辺校にいるような気合が入ったやつではなく基本的に授業も出るなんちゃって不良だ。自分より弱そうなやつに絡んでそいつがビビるのを見て楽しむ。たまに菓子やらジュースやらを奢らせて悦に浸る。そんな感じの不良だ。本物からしたら失笑物かもしれないが俺たちの学校は進学校だったので立派に不良扱いされている。勿論日本にいた頃俺と森野は仲良く話すような関係ではない。俺がスキルを使いこなせていないのを見て絡んできはじめたのだ。当然以前は上位者だった俺をいたぶるために。


「お前のギフトは武芸百般だろ? 武器をなんでも使いこなせるならあんまり関係ないと思うが」

「あるある超あるから! ほら早く構えて」


 そう言うと森野は短槍で軽く突いてきた。慌ててそれを剣で弾く。しかしそれを予想していたのか素早く手元に戻すと今度は腹に向けて横から薙いで来る。俺は落ち着いてそれを剣の腹で防いだ。数日間の訓練の成果かなんとか森野の動きに対応できる。しかし先ほどの言葉が本当なら森野は短槍を初めて使うらしい。それと数日とはいえ剣を使い続けている俺が同じくらいとはへこみそうになる。

 
 数回似たような動きを繰り返すが俺は中々森野の間合いに入れずにいた。短槍のほうが間合いが長いせいで俺の攻撃が当たらないのだ。しかし突きに合わせて行こうにも中々覚悟が決まらない。相手の懐に飛び込むのは成功しても失敗しても大きく戦況が動くのだ。

 森野のほうも同じことの繰り返しに飽きてきたのか動きが単調になってくる。そのチャンスを逃さないため俺は森野が短槍を戻す瞬間にあわせて飛び込んだ。


「ほい、とみせかけてこっち」

「ぐっ」


 突っ込んでくる俺に合わせる形で短槍を上段から振り下ろす森野。それを剣で防ぎそのまま懐に入ろうとするが俺は腹に森野の前蹴りをくらい後ろに倒れこんでしまった。上段の振り下ろしで上に注意を振られた直後にやられたせいでもろに食らってしまい地面に手をついてせき込む羽目になる。


「駄目だよ氷室くーん。あんな見え見えのフェイントに引っかかっちゃ。今みたいにいいのもらっちゃうよ」


 そう言いながら手を差し出してくる森野。他の人間は報恩寺と鎧の戦いを見ていてこっちには注目していない。加えて森野は俺を立ち上がらせようと手を差し出しているのだ。誰も気にしないだろう。こいつが不良をやれていたのはこの要領のよさのおかげだろう。今さらながらそれを理解した。


「特に氷室みたいに弱い奴はさ」


 起こしざま俺にしか聞こえない音量でぼそりと言うと森野は飽きたのか他の奴らと組み手をしに離れていった。残されたなんとか手放さずにいた剣を両手で握り素振りを始めた。……今はそれしか出来ないのだから。
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