14 / 26
召喚編
13話 調子に乗るもの乗られるもの
しおりを挟む
「おい氷室暇なら俺と組み手やろうぜ!」
戦闘訓練が始まり数日。状況は俺の想像より悪い方向に進展していた。他のクラスメイトと違い俺のギフトには前例がない。故にギフトの訓練もどうすればいいか誰もわからず効果があるかも定かではないことをするくらいなら体を動かしたほうがまだいいと自分から言った結果肉体系のギフト組に混ざって剣術やらを習うことになった。元々運動神経はいいほうだし才能もあるのか教師役の兵士には筋がいいと褒めてもらえる。しかしそれでも
「俺と森野とじゃ勝負にならないだろう。報恩寺とか隆吾とやれよ」
「大丈夫だって。今日はほら短槍っていうの? 初めての武器だからよそれに報恩寺は今鎧とやってるしな」
森野は不良と呼ばれている。しかし漫画や底辺校にいるような気合が入ったやつではなく基本的に授業も出るなんちゃって不良だ。自分より弱そうなやつに絡んでそいつがビビるのを見て楽しむ。たまに菓子やらジュースやらを奢らせて悦に浸る。そんな感じの不良だ。本物からしたら失笑物かもしれないが俺たちの学校は進学校だったので立派に不良扱いされている。勿論日本にいた頃俺と森野は仲良く話すような関係ではない。俺がスキルを使いこなせていないのを見て絡んできはじめたのだ。当然以前は上位者だった俺をいたぶるために。
「お前のギフトは武芸百般だろ? 武器をなんでも使いこなせるならあんまり関係ないと思うが」
「あるある超あるから! ほら早く構えて」
そう言うと森野は短槍で軽く突いてきた。慌ててそれを剣で弾く。しかしそれを予想していたのか素早く手元に戻すと今度は腹に向けて横から薙いで来る。俺は落ち着いてそれを剣の腹で防いだ。数日間の訓練の成果かなんとか森野の動きに対応できる。しかし先ほどの言葉が本当なら森野は短槍を初めて使うらしい。それと数日とはいえ剣を使い続けている俺が同じくらいとはへこみそうになる。
数回似たような動きを繰り返すが俺は中々森野の間合いに入れずにいた。短槍のほうが間合いが長いせいで俺の攻撃が当たらないのだ。しかし突きに合わせて行こうにも中々覚悟が決まらない。相手の懐に飛び込むのは成功しても失敗しても大きく戦況が動くのだ。
森野のほうも同じことの繰り返しに飽きてきたのか動きが単調になってくる。そのチャンスを逃さないため俺は森野が短槍を戻す瞬間にあわせて飛び込んだ。
「ほい、とみせかけてこっち」
「ぐっ」
突っ込んでくる俺に合わせる形で短槍を上段から振り下ろす森野。それを剣で防ぎそのまま懐に入ろうとするが俺は腹に森野の前蹴りをくらい後ろに倒れこんでしまった。上段の振り下ろしで上に注意を振られた直後にやられたせいでもろに食らってしまい地面に手をついてせき込む羽目になる。
「駄目だよ氷室くーん。あんな見え見えのフェイントに引っかかっちゃ。今みたいにいいのもらっちゃうよ」
そう言いながら手を差し出してくる森野。他の人間は報恩寺と鎧の戦いを見ていてこっちには注目していない。加えて森野は俺を立ち上がらせようと手を差し出しているのだ。誰も気にしないだろう。こいつが不良をやれていたのはこの要領のよさのおかげだろう。今さらながらそれを理解した。
「特に氷室みたいに弱い奴はさ」
起こしざま俺にしか聞こえない音量でぼそりと言うと森野は飽きたのか他の奴らと組み手をしに離れていった。残されたなんとか手放さずにいた剣を両手で握り素振りを始めた。……今はそれしか出来ないのだから。
戦闘訓練が始まり数日。状況は俺の想像より悪い方向に進展していた。他のクラスメイトと違い俺のギフトには前例がない。故にギフトの訓練もどうすればいいか誰もわからず効果があるかも定かではないことをするくらいなら体を動かしたほうがまだいいと自分から言った結果肉体系のギフト組に混ざって剣術やらを習うことになった。元々運動神経はいいほうだし才能もあるのか教師役の兵士には筋がいいと褒めてもらえる。しかしそれでも
「俺と森野とじゃ勝負にならないだろう。報恩寺とか隆吾とやれよ」
「大丈夫だって。今日はほら短槍っていうの? 初めての武器だからよそれに報恩寺は今鎧とやってるしな」
森野は不良と呼ばれている。しかし漫画や底辺校にいるような気合が入ったやつではなく基本的に授業も出るなんちゃって不良だ。自分より弱そうなやつに絡んでそいつがビビるのを見て楽しむ。たまに菓子やらジュースやらを奢らせて悦に浸る。そんな感じの不良だ。本物からしたら失笑物かもしれないが俺たちの学校は進学校だったので立派に不良扱いされている。勿論日本にいた頃俺と森野は仲良く話すような関係ではない。俺がスキルを使いこなせていないのを見て絡んできはじめたのだ。当然以前は上位者だった俺をいたぶるために。
「お前のギフトは武芸百般だろ? 武器をなんでも使いこなせるならあんまり関係ないと思うが」
「あるある超あるから! ほら早く構えて」
そう言うと森野は短槍で軽く突いてきた。慌ててそれを剣で弾く。しかしそれを予想していたのか素早く手元に戻すと今度は腹に向けて横から薙いで来る。俺は落ち着いてそれを剣の腹で防いだ。数日間の訓練の成果かなんとか森野の動きに対応できる。しかし先ほどの言葉が本当なら森野は短槍を初めて使うらしい。それと数日とはいえ剣を使い続けている俺が同じくらいとはへこみそうになる。
数回似たような動きを繰り返すが俺は中々森野の間合いに入れずにいた。短槍のほうが間合いが長いせいで俺の攻撃が当たらないのだ。しかし突きに合わせて行こうにも中々覚悟が決まらない。相手の懐に飛び込むのは成功しても失敗しても大きく戦況が動くのだ。
森野のほうも同じことの繰り返しに飽きてきたのか動きが単調になってくる。そのチャンスを逃さないため俺は森野が短槍を戻す瞬間にあわせて飛び込んだ。
「ほい、とみせかけてこっち」
「ぐっ」
突っ込んでくる俺に合わせる形で短槍を上段から振り下ろす森野。それを剣で防ぎそのまま懐に入ろうとするが俺は腹に森野の前蹴りをくらい後ろに倒れこんでしまった。上段の振り下ろしで上に注意を振られた直後にやられたせいでもろに食らってしまい地面に手をついてせき込む羽目になる。
「駄目だよ氷室くーん。あんな見え見えのフェイントに引っかかっちゃ。今みたいにいいのもらっちゃうよ」
そう言いながら手を差し出してくる森野。他の人間は報恩寺と鎧の戦いを見ていてこっちには注目していない。加えて森野は俺を立ち上がらせようと手を差し出しているのだ。誰も気にしないだろう。こいつが不良をやれていたのはこの要領のよさのおかげだろう。今さらながらそれを理解した。
「特に氷室みたいに弱い奴はさ」
起こしざま俺にしか聞こえない音量でぼそりと言うと森野は飽きたのか他の奴らと組み手をしに離れていった。残されたなんとか手放さずにいた剣を両手で握り素振りを始めた。……今はそれしか出来ないのだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる