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本編
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私とエミリーはひとまず着替えをもらうためにカリンのところを訪れた。
「カリンいる?」
「ん~。どうしたのティア?」
「ごめんなさい。いきなりで申し訳ないのだけど、持ってきた服が全部だめになってしまったの。替えの服をもらえたらありがたいのだけど」
「そういえば、服ボロボロだね。いいよ、案内してあげる」
てっきりカリンから直接服をもらうのかと思ったら、ついてきてと言われるので、言われるがままついていく。
着いた先は、村の中央からやや奥に行ったところの一軒家だ。入口の方は狭く見えるが中に行くほど広くなっている。
「じゃ~ん。ここがこの村で唯一の仕立て屋ケイトの店だよ」
中に案内されてカリンから店を紹介される。といっても肝心のケイトさんはいないみたいだけど。
「あら、この声はカリンね。今日はどうしたの?」
おそらく彼女がケイトさんだろう。何度か食事の時にも見かけた事がある。服装が他のハーピーたちより色鮮やだったので覚えている。
「今日はお客さんを連れてきたんだよ」
「お客?わざわざ改めて一体…」
そう言って顔をのぞかせたケイトさんと目が合う。
「すみません。見た通り服がボロボロで、替えの服を探しているんです」
「これはティア様でしたか。失礼しました」
「こっちこそ急に申し訳ないです。あと、ティアと呼んでくださいケイトさん」
「では、ティアさんとお呼びしますね。私はケイトです。この村で服を作ってます。基本的にこの村の服はすべて私が作ってます」
「へぇ~ケイトさんってすごいんだね。村の人だって結構いるでしょ?」
「ええ。その分、色々なデザインや柄をたくさん作れますから助かってます。ハーピーは元々服を着る習慣がなかったので、みんな私に任せっきりなんです。だから、試行錯誤したものを常に着てもらえるんです」
偶に変なのができても黙って着てくれますしね。と、ケイトさんは笑いながら言う。確かに偶に微妙な柄のものとかを着ている人がいたなあと思い出す。あれはケイトさんの力作だったのか。
「それで今日はどんな服を探してます?」
「とりあえずは普段着れるような服であればかまいません。その服がなければ、王都までの帰りに着る服がないんです」
「では、その人の一杯いる王都というところにも着ていかれるのですか?」
「ええ、そうなりますね。2着あったんですが、どちらもこのありさまで」
「ちょーっと待ってくださいね。奥に行っていくつか見てきますので。あと、エミリーさんだったかしら?」
「はい?わたしですけど…」
「あなたも来てもらえますか。カリンはティアさんと少しお話していてね」
「は~い」
ケイトさんはエミリーを連れて奥に引っ込んでしまった。仕方ないので私はカリンとおしゃべりを始める。
「それでわたしに何の用ですか?」
ケイトさんに奥につれてこられたものの、何の用事か判らないので聞いてみた。
「あのですね、先ほどティアさんが言われていた"王都"というところは、最新の服装が集まるところでしょうか?」
「最新かはわからないけど、一番偉い人もいる街だから多分そうかな?」
「やはり。では、この奥にある服で一番ティアさんに似合いそうなのを一緒に探していただけませんか?」
「わたしでいいんですか?」
「ええ、ハーピーの服といっても私たちには最新の服装などありませんし、そういった場所に恥ずかしくない服を着ていただきたいのです」
「う~ん。わたしはそういう事はよくわからないですけど、頑張りますね」
そう言ってわたしとケイトさんは服を選んでいく。色んな服があったけど一応私たちも冒険者という事で動きやすいのにしてもらった。最終的に選んだのは、ワンピース型のちょっと裾が短く、肩から腰にかけて飾り布が付いた上着とタイツとまでもいかないものの、結構ぴっちりとしたズボンだ。それとは別にインナーシャツも選んでもらい、これでティアに着てもらうことになった。
「ティア、ただいま~」
カリンと話していると。エミリーとケイトさんが戻ってきた。手には何やらワンピースのような服を持ってきている。
「あら、ケイトさんと一緒に私の服を選んでくれてたの?」
「うん、せっかく王都まで着ていくんだから、わたしの意見も聞きたいって」
「だったら、私が行ったのに」
「ごめんなさいティアさん。でも、あまり服に興味のない人はすぐに地味な服を手に取ることが多くて」
「それでケイト、エミリーを連れて行ってたんだね」
「そうよ。あなたもすぐ動きにくいって、服を変えちゃうんだから今度選ばせなさい」
「確かにカリンの服装も、似合ってはいるけど地味なのが多いわね」
「だけど、ほんとに動きにくいんだもん」
「偶にはそういう服も着ないと、彼氏ができないぞ」
「できなくてもいいよ~。ほっとけばその内できるよ」
「生意気なこと言って」
バシバシと翼でカリンを叩くケイトさん。ちょっとカリンより年上のお姉さんな感じだ。
「じゃあ、ここで着替えるティア?」
「あ~、それなんだけど、服もそうだけど結構体も汚れてるし、お風呂に入ってから着替えようと思ってて…」
「お風呂?」
「ケイトは知らないんだっけ?お湯につかるんだよ。水浴びと違ってすごく気持ちいいんだから」
「ケイトさんも良かったら試してみます?」
「でも、一応お店開いてるしなぁ」
「1日位大丈夫だって行こうケイト?」
「しょうがないなカリンは。じゃあ行きましょうか」
「じゃあ、みんなで行こう。ケイトさんは着替えとタオル…拭くもの用意して」
「拭くものね。着替えはこれでいいかな。後はこの布でいいか」
ケイトさんはてきぱきと準備を済ませている。すぐにでも終わりそうだ。
「よし、完了っと」
「じゃあ、まずはカリンの家に寄って、カリンの着替えを取ってこないとね」
「そうだね。わたしも替えの服は決まってるからすぐに終わるよ」
カリンの家に寄ってから私たちは小屋に戻り、裏手に回る。
「じゃあ、とりあえずお風呂がどういうものか見てもらいましょうか」
そう言ってわたしはお湯を張り、これがお風呂ですっと紹介をする。
「これがお風呂ね。熱いのかしら?」
「人によってちょうどいい温度がありますから。でも、そんなに熱くはないと思います」
ケイトさんが興味津々にお湯を触ってみる。
「ん、確かに熱いという程ではないみたいね」
「良かった。じゃあ、申し訳ないですけど私が先に入らせてもらいますので、終わったら呼びますね」
「入るところは見せてもらえないの?」
「さすがにみんなに見られながら入るのはちょっと…」
カリンたちを見回して言う。自分だけみんなに見られながら入るなんてさすがにちょっと恥ずかしすぎる。
「でも、それじゃあ私はどうやって入れば?」
「その時は私が教えますから」
「じゃあ、わたしたち小屋にいるから2人で入ってみれば?2人ぐらいなら一緒に入れそうじゃない?」
「エミリー、そんなこと言って…」
「エミリー良いこと言うね。それなら2人だけだしティアも恥ずかしくないよね」
いや、知り合った人と2人きりでお風呂に入るとか、恥ずかしいでしょう。そんなことを言う暇もなく2人は小屋の入り口へと向かっていった。
「じゃあ入りましょうか?」
「はい…」
2人に去られてしまっては、もう拒否することもできず私はケイトさんと一緒にお風呂に入った。まずは自分が体を拭くのを見てもらってから、カリンと同じように翼や体を拭いてあげる。全体が洗い終わったところで、一緒に湯船に入る。
「どうですかお湯の温度は?」
「ちょっとぬるい位ですね。大丈夫です」
「私もそこまで熱いのは苦手ですが、ケイトさんは結構大丈夫みたいですね」
「そうなんですか。でも、これ気持ちいいですね。確かに水浴びとは全然違います」
「ええ、カリンにも言ったんですけど、もしかしたらこの周辺にも温泉といって、お湯が出ているところがあるかもしれません」
「それなら私たちでも簡単に入れますね」
「そうですね。後は今はカリンだけが使ってますけど、もしかしたら他のハーピーの中で火の魔法を使える人がいるかもしれません」
「それだったら、この村でも入ったりできるのですか?」
「ええ、ですが基本的に魔法は遺伝的なものも強いんです。ハーピーの皆さんは風の種族だと思いますから難しいかもしれません」
私は魔法についての意見を述べる。実際にあれだけの魔力を持つカリンだったが、試しに別の属性を試しても全く反応がなかった。魔物が使うには単純にその種族が持つ属性に縛られるかもしれない。
「でも、カリンがあんなに強いなんて聞いてびっくりしました」
「私もです。試しに教えただけだったんですけど、あれだけ使えるのは中々いないですよ」
「心配事が片付いたような増えたような感じです。両親が亡くなってからみんなを守ろうと無茶ばかりするようになって、気持ちは分かるんですけど。今は、強くなってしまって村のために無茶するんじゃないかと気が気ではないんです」
そう言ってケイトさんは湯舟で盛大にため息をつく。確かにカリンの性格上、私もその通りだと思う。
「どの道、無茶をする子だから良かったのかもね。それにしてもお風呂っていいわね」
「気に入っていただけたならよかったです」
「これは、明日から村の子供を集めて、お湯出せる子を探し回らなきゃね」
「そんな大げさな…」
「いや、これがあるのとないのは違いますよ。早速、カリンに話をしてみんなを集めなきゃね」
すごく意気込んでいるケイトさんだった。
「そろそろ上がりましょう。長く入ってるとのぼせちゃいますから」
「のぼせる?」
「頭がぼーっとして最悪倒れることもあるんです」
「それは大変ね。じゃあ上がりましょう」
お風呂から上がった私たちは、用意していた布で体を拭き、着替えを済ませる。
「やっぱり似合ってるよその服!来てもらえてうれしい」
「ありがとうございますケイトさん。頂いた服サイズもちょうど見たいで」
「こっちこそ。あまりそのサイズにあった人がいなくて、残ってしまったの。来てくれる人がいてよかったわ」
「じゃあ、エミリーやカリンも待ってると思いますし行きましょうか」
「ええ」
私たちは小屋へと向かう。てっきりリビングでくつろいでいるかなと思ってたら、真面目にうろこの選別をしていた。
「エミリー、続きやってくれてたのね。カリンもありがとう手伝ってくれて」
「ふふ~ん。わたしも素材のよしあし?って言うの分かるようになったよ」
「ふ~ん。どれどれっと」
カリンの選別したであろう山を見る。一見すると確かに分けられている様だが…。
「ねえカリン、ここ結構傷入ってるけど大丈夫なのこれ?」
「目立たないから大丈夫だよ」
「いや、これはダメでしょ。エミリーちゃんとみてたの?」
「最初はちゃんと見てたよ?でも、慣れたみたいだから大丈夫だと思って」
「こういうのは最初にちゃんと基準を教えないとだめよ。カリンちょっとあっちでランク分けしましょう」
「は、はい」
有無を言わせず引っ張っていく。
「ごめんカリン。あの状態のティアは私には無理だよ」
「エミリーさん、お風呂はいいんですか?」
「入りたいけど、ティアが元に戻るまでは無理かな。おとなしく続けます」
「じゃあ、私にも教えてください。こういうの好きですから」
ケイトさんとわたしはお話しながら、うろこを分け始める。あっちではカリンがティアに違うと言われながら、分け方を叩き込まれている。それからしばらくして、おとなしくなった2人が帰ってきた。
「お帰りなさい」
「た、ただいま。つかれた~」
「…ごめんなさい。お風呂入るでしょう?」
「うん、じゃあカリンちゃん行こう!」
「そうだね。いってきま~す」
「あっ。待って2人とも」
「なに?」
「ちょっと時間経ってるし、お湯入れ替えるわ」
2人に温度を確認してもらってわたしは小屋へ戻り作業を続ける。この調子なら今日中に大体終わるかな。ケイトさんにも手伝ってもらって作業もはかどる。彼女は服作りなどで鍛えているのかすぐに見方を覚えたようだ。
「でも、すみません。服を頂くばかりかこんなことまで」
「いいえ、私たちはあなた達には感謝してもしきれないぐらいです。いつでもいらして下さい」
「甘えさせてもらいます。少なくとも何度かは村を往復しないと運べませんしね」
そう言いながら私たちは2人で作業を進める。波長が合うというかカリンとは別の意味ですごく話しやすい人だ。私たちはカリンたちが戻ってくるまで、30分程度そのまま作業を続けた。
「カリンいる?」
「ん~。どうしたのティア?」
「ごめんなさい。いきなりで申し訳ないのだけど、持ってきた服が全部だめになってしまったの。替えの服をもらえたらありがたいのだけど」
「そういえば、服ボロボロだね。いいよ、案内してあげる」
てっきりカリンから直接服をもらうのかと思ったら、ついてきてと言われるので、言われるがままついていく。
着いた先は、村の中央からやや奥に行ったところの一軒家だ。入口の方は狭く見えるが中に行くほど広くなっている。
「じゃ~ん。ここがこの村で唯一の仕立て屋ケイトの店だよ」
中に案内されてカリンから店を紹介される。といっても肝心のケイトさんはいないみたいだけど。
「あら、この声はカリンね。今日はどうしたの?」
おそらく彼女がケイトさんだろう。何度か食事の時にも見かけた事がある。服装が他のハーピーたちより色鮮やだったので覚えている。
「今日はお客さんを連れてきたんだよ」
「お客?わざわざ改めて一体…」
そう言って顔をのぞかせたケイトさんと目が合う。
「すみません。見た通り服がボロボロで、替えの服を探しているんです」
「これはティア様でしたか。失礼しました」
「こっちこそ急に申し訳ないです。あと、ティアと呼んでくださいケイトさん」
「では、ティアさんとお呼びしますね。私はケイトです。この村で服を作ってます。基本的にこの村の服はすべて私が作ってます」
「へぇ~ケイトさんってすごいんだね。村の人だって結構いるでしょ?」
「ええ。その分、色々なデザインや柄をたくさん作れますから助かってます。ハーピーは元々服を着る習慣がなかったので、みんな私に任せっきりなんです。だから、試行錯誤したものを常に着てもらえるんです」
偶に変なのができても黙って着てくれますしね。と、ケイトさんは笑いながら言う。確かに偶に微妙な柄のものとかを着ている人がいたなあと思い出す。あれはケイトさんの力作だったのか。
「それで今日はどんな服を探してます?」
「とりあえずは普段着れるような服であればかまいません。その服がなければ、王都までの帰りに着る服がないんです」
「では、その人の一杯いる王都というところにも着ていかれるのですか?」
「ええ、そうなりますね。2着あったんですが、どちらもこのありさまで」
「ちょーっと待ってくださいね。奥に行っていくつか見てきますので。あと、エミリーさんだったかしら?」
「はい?わたしですけど…」
「あなたも来てもらえますか。カリンはティアさんと少しお話していてね」
「は~い」
ケイトさんはエミリーを連れて奥に引っ込んでしまった。仕方ないので私はカリンとおしゃべりを始める。
「それでわたしに何の用ですか?」
ケイトさんに奥につれてこられたものの、何の用事か判らないので聞いてみた。
「あのですね、先ほどティアさんが言われていた"王都"というところは、最新の服装が集まるところでしょうか?」
「最新かはわからないけど、一番偉い人もいる街だから多分そうかな?」
「やはり。では、この奥にある服で一番ティアさんに似合いそうなのを一緒に探していただけませんか?」
「わたしでいいんですか?」
「ええ、ハーピーの服といっても私たちには最新の服装などありませんし、そういった場所に恥ずかしくない服を着ていただきたいのです」
「う~ん。わたしはそういう事はよくわからないですけど、頑張りますね」
そう言ってわたしとケイトさんは服を選んでいく。色んな服があったけど一応私たちも冒険者という事で動きやすいのにしてもらった。最終的に選んだのは、ワンピース型のちょっと裾が短く、肩から腰にかけて飾り布が付いた上着とタイツとまでもいかないものの、結構ぴっちりとしたズボンだ。それとは別にインナーシャツも選んでもらい、これでティアに着てもらうことになった。
「ティア、ただいま~」
カリンと話していると。エミリーとケイトさんが戻ってきた。手には何やらワンピースのような服を持ってきている。
「あら、ケイトさんと一緒に私の服を選んでくれてたの?」
「うん、せっかく王都まで着ていくんだから、わたしの意見も聞きたいって」
「だったら、私が行ったのに」
「ごめんなさいティアさん。でも、あまり服に興味のない人はすぐに地味な服を手に取ることが多くて」
「それでケイト、エミリーを連れて行ってたんだね」
「そうよ。あなたもすぐ動きにくいって、服を変えちゃうんだから今度選ばせなさい」
「確かにカリンの服装も、似合ってはいるけど地味なのが多いわね」
「だけど、ほんとに動きにくいんだもん」
「偶にはそういう服も着ないと、彼氏ができないぞ」
「できなくてもいいよ~。ほっとけばその内できるよ」
「生意気なこと言って」
バシバシと翼でカリンを叩くケイトさん。ちょっとカリンより年上のお姉さんな感じだ。
「じゃあ、ここで着替えるティア?」
「あ~、それなんだけど、服もそうだけど結構体も汚れてるし、お風呂に入ってから着替えようと思ってて…」
「お風呂?」
「ケイトは知らないんだっけ?お湯につかるんだよ。水浴びと違ってすごく気持ちいいんだから」
「ケイトさんも良かったら試してみます?」
「でも、一応お店開いてるしなぁ」
「1日位大丈夫だって行こうケイト?」
「しょうがないなカリンは。じゃあ行きましょうか」
「じゃあ、みんなで行こう。ケイトさんは着替えとタオル…拭くもの用意して」
「拭くものね。着替えはこれでいいかな。後はこの布でいいか」
ケイトさんはてきぱきと準備を済ませている。すぐにでも終わりそうだ。
「よし、完了っと」
「じゃあ、まずはカリンの家に寄って、カリンの着替えを取ってこないとね」
「そうだね。わたしも替えの服は決まってるからすぐに終わるよ」
カリンの家に寄ってから私たちは小屋に戻り、裏手に回る。
「じゃあ、とりあえずお風呂がどういうものか見てもらいましょうか」
そう言ってわたしはお湯を張り、これがお風呂ですっと紹介をする。
「これがお風呂ね。熱いのかしら?」
「人によってちょうどいい温度がありますから。でも、そんなに熱くはないと思います」
ケイトさんが興味津々にお湯を触ってみる。
「ん、確かに熱いという程ではないみたいね」
「良かった。じゃあ、申し訳ないですけど私が先に入らせてもらいますので、終わったら呼びますね」
「入るところは見せてもらえないの?」
「さすがにみんなに見られながら入るのはちょっと…」
カリンたちを見回して言う。自分だけみんなに見られながら入るなんてさすがにちょっと恥ずかしすぎる。
「でも、それじゃあ私はどうやって入れば?」
「その時は私が教えますから」
「じゃあ、わたしたち小屋にいるから2人で入ってみれば?2人ぐらいなら一緒に入れそうじゃない?」
「エミリー、そんなこと言って…」
「エミリー良いこと言うね。それなら2人だけだしティアも恥ずかしくないよね」
いや、知り合った人と2人きりでお風呂に入るとか、恥ずかしいでしょう。そんなことを言う暇もなく2人は小屋の入り口へと向かっていった。
「じゃあ入りましょうか?」
「はい…」
2人に去られてしまっては、もう拒否することもできず私はケイトさんと一緒にお風呂に入った。まずは自分が体を拭くのを見てもらってから、カリンと同じように翼や体を拭いてあげる。全体が洗い終わったところで、一緒に湯船に入る。
「どうですかお湯の温度は?」
「ちょっとぬるい位ですね。大丈夫です」
「私もそこまで熱いのは苦手ですが、ケイトさんは結構大丈夫みたいですね」
「そうなんですか。でも、これ気持ちいいですね。確かに水浴びとは全然違います」
「ええ、カリンにも言ったんですけど、もしかしたらこの周辺にも温泉といって、お湯が出ているところがあるかもしれません」
「それなら私たちでも簡単に入れますね」
「そうですね。後は今はカリンだけが使ってますけど、もしかしたら他のハーピーの中で火の魔法を使える人がいるかもしれません」
「それだったら、この村でも入ったりできるのですか?」
「ええ、ですが基本的に魔法は遺伝的なものも強いんです。ハーピーの皆さんは風の種族だと思いますから難しいかもしれません」
私は魔法についての意見を述べる。実際にあれだけの魔力を持つカリンだったが、試しに別の属性を試しても全く反応がなかった。魔物が使うには単純にその種族が持つ属性に縛られるかもしれない。
「でも、カリンがあんなに強いなんて聞いてびっくりしました」
「私もです。試しに教えただけだったんですけど、あれだけ使えるのは中々いないですよ」
「心配事が片付いたような増えたような感じです。両親が亡くなってからみんなを守ろうと無茶ばかりするようになって、気持ちは分かるんですけど。今は、強くなってしまって村のために無茶するんじゃないかと気が気ではないんです」
そう言ってケイトさんは湯舟で盛大にため息をつく。確かにカリンの性格上、私もその通りだと思う。
「どの道、無茶をする子だから良かったのかもね。それにしてもお風呂っていいわね」
「気に入っていただけたならよかったです」
「これは、明日から村の子供を集めて、お湯出せる子を探し回らなきゃね」
「そんな大げさな…」
「いや、これがあるのとないのは違いますよ。早速、カリンに話をしてみんなを集めなきゃね」
すごく意気込んでいるケイトさんだった。
「そろそろ上がりましょう。長く入ってるとのぼせちゃいますから」
「のぼせる?」
「頭がぼーっとして最悪倒れることもあるんです」
「それは大変ね。じゃあ上がりましょう」
お風呂から上がった私たちは、用意していた布で体を拭き、着替えを済ませる。
「やっぱり似合ってるよその服!来てもらえてうれしい」
「ありがとうございますケイトさん。頂いた服サイズもちょうど見たいで」
「こっちこそ。あまりそのサイズにあった人がいなくて、残ってしまったの。来てくれる人がいてよかったわ」
「じゃあ、エミリーやカリンも待ってると思いますし行きましょうか」
「ええ」
私たちは小屋へと向かう。てっきりリビングでくつろいでいるかなと思ってたら、真面目にうろこの選別をしていた。
「エミリー、続きやってくれてたのね。カリンもありがとう手伝ってくれて」
「ふふ~ん。わたしも素材のよしあし?って言うの分かるようになったよ」
「ふ~ん。どれどれっと」
カリンの選別したであろう山を見る。一見すると確かに分けられている様だが…。
「ねえカリン、ここ結構傷入ってるけど大丈夫なのこれ?」
「目立たないから大丈夫だよ」
「いや、これはダメでしょ。エミリーちゃんとみてたの?」
「最初はちゃんと見てたよ?でも、慣れたみたいだから大丈夫だと思って」
「こういうのは最初にちゃんと基準を教えないとだめよ。カリンちょっとあっちでランク分けしましょう」
「は、はい」
有無を言わせず引っ張っていく。
「ごめんカリン。あの状態のティアは私には無理だよ」
「エミリーさん、お風呂はいいんですか?」
「入りたいけど、ティアが元に戻るまでは無理かな。おとなしく続けます」
「じゃあ、私にも教えてください。こういうの好きですから」
ケイトさんとわたしはお話しながら、うろこを分け始める。あっちではカリンがティアに違うと言われながら、分け方を叩き込まれている。それからしばらくして、おとなしくなった2人が帰ってきた。
「お帰りなさい」
「た、ただいま。つかれた~」
「…ごめんなさい。お風呂入るでしょう?」
「うん、じゃあカリンちゃん行こう!」
「そうだね。いってきま~す」
「あっ。待って2人とも」
「なに?」
「ちょっと時間経ってるし、お湯入れ替えるわ」
2人に温度を確認してもらってわたしは小屋へ戻り作業を続ける。この調子なら今日中に大体終わるかな。ケイトさんにも手伝ってもらって作業もはかどる。彼女は服作りなどで鍛えているのかすぐに見方を覚えたようだ。
「でも、すみません。服を頂くばかりかこんなことまで」
「いいえ、私たちはあなた達には感謝してもしきれないぐらいです。いつでもいらして下さい」
「甘えさせてもらいます。少なくとも何度かは村を往復しないと運べませんしね」
そう言いながら私たちは2人で作業を進める。波長が合うというかカリンとは別の意味ですごく話しやすい人だ。私たちはカリンたちが戻ってくるまで、30分程度そのまま作業を続けた。
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