妹を想いながら転生したら

弓立歩

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本編

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「それにしても、この草の多さ嫌になるわね」

森の入り口に入ったとたんに高く生い茂った草が立ちはだかる。この辺の木は多少であれば倒れたところで村で引き取ってもらえるので、一気に風の魔法で薙ぎ払ったのだがそれにしてもここまで生えているとは。

「この調子じゃ、剣で切るなんて芸当してたら手入れの時間がいくらあっても足りないね」

「全くだな。いっそのこと安物でも買ってくるか」

「その方がいいかもね。こんなに切る必要があるなんて思っても見なかったよ」

「それだけ、人の手が長く入っていないという事ね」

魔法で草を刈りつつ、奥へと進んでいく。しかし、大量の草を切りながらでは思うようにいかない。

「踏んで進めるようになるわけじゃないわね」

「そんなことしたら足元掬われちゃうねこれ」

「本当に面倒な依頼になるわね」

「駄目元でギルドマスターに話してみようよ~」

「そうだな。ちょっとこれは予想外だ。道を作るところからとはいっても精々、丈の高い草を切るだけだと思っていた」

「今で、ようやく村が遠ざかったぐらいだからまだまだね」

「キルドも木の上を渡ったりは出来なさそうか?」

「これはちょっと無理だね。足をのせるような形の枝も少ないし」

「索敵はエミリー頼りか。道はティアで俺たちは完全に守り役だな」

「どうしようもないなこれは」

悪態をつきながらも、少しずつではあるが道を切り開いていく。とはいってもここまでくれば簡単に木を倒して進むのも難しい。単純に真っすぐ道を作ればいいのだが、魔物がうようよいる場合には村に来ないようにしなければいけない。そう考えるとダミーの道と曲がった道も用意して時にはわざと刈らずに進まなくてはいけない。

「キルド。次の道はどうするの?」

「流石に作業性もあるし、ここからはできるだけ真っすぐにしとこう。これまでのダミーの道で行けるでしょ」

「そうね。後は切りのいいところで何本か作っていきましょう」

村が完全に見えないぐらいまで進んで道の作り方を変えた私たちはさらに進んでいく。

「今日はこの辺で終わりにしよう」

そのまま、30分ぐらい進んでカークスが作業の中断を宣言する。

「このぐらいで大丈夫?森の奥まではまだまだあるわよ?」

「そんなことを言っても、ティアも魔法を使い続けているだろう。これから毎日続くんだから1日の作業としては十分だ」

「確かに。これ以上頑張ってもらっても魔物が出れば対応が難しくなる」

フォルトも続いて言うので、今日はここまでで切り上げる。戻りは行きにきちんと作ったおかげで簡単に戻れた。
もっとも、ダミーの道のせいでところどころで全く刈られていないところを進むため、手間がかかったが。

「ふう。少し疲れたわね。ちょっと先にお風呂に入ってくるわ」

今日の探索を終え、私は一足先にお風呂に入る。おばさんに借りる旨を伝え、ここでも火魔法でお湯を作って湯加減を調節する。

「明日もあれが続くのよね」

思い出すだけでため息が漏れる。いくら何でも草が成長しすぎだ。あれだけ日差しの少ない場所であんなにも背が高く成長するなんて、生命力にあふれているのだろう。

「草もそうだけど、生物らしきものが見当たらないのよね」

思い返せば虫などの生物もほぼ見なかった。村の入り口付近は結構いたものだが、森に進むほど少ないように思えた。

「まあ悩んでいても仕方ないし、目的地に着けばわかるでしょ」

勢いよく湯船から上がって着替える。次は村の人らしいので、おばさんに上がったことを伝える。部屋に戻るとフォルトたちが何やら話をしている。

「なに話してるの?」

「ああ、ティア上がったのか。今日の調査結果と地図作りだ」

見ればカリンの村で行っていたように地図の作成中のようだ。ダミーの道もあるからあると便利だろう。

「調査結果について言えば今日は成果なしじゃない?」

「ないといえばないが、手つかずの森に異物が入ったにしてはえらく静かだっただろう。一応、それぐらいは報告書に記載しておかんとな」

「なるほどね。確かにそれは感じたけれどもう帰りを考えているのね」

「こういうことは大きい出来事があると、それまでのことはすぐにでも忘れてしまうからな。きちんと書いておくことが重要だ」

「カークスって見かけによらずきっちりしてるよね~」

「一言余計だエミリー。そういえばエミリーは索敵魔法を使っていて何か気になったことはあったか?」

「気になったこと…、前にもあったんだけど王都の森の奥の方みたいに結構魔力が充満してるみたいなんだ。入口の方からあって強くなるからわたしの方もあんまり当てにならないかも」

「厄介ね。魔力が充満した中では突然変異種が発生しやすいことが確認されているわ。森の中にはまだ見たことのないやつもいるかも」

「警戒は怠るなという事だな。隊列も少し考えるようにしよう」

そうして、2日目の準備を行いつつ1日目の調査を終える。後は、夕食を取り眠り明日に備える。

「それじゃあみんな、おやすみなさい」

「お休みティア、エミリー」


「おはよ~、ティア」

エミリーの目覚ましとともに今日も1日が始まる。昨日は調査で特に得るものはなかったで今日こそは何か分かるよう期待したい。

「あんたたち今日も行くのかい?」

「ええ、昨日の続きを」

「昨日は成果なしって言ってたし、頑張るねえ」

「形にしないと報酬貰えませんから」

「冒険者も大変だねえ。ほら、朝食だよ」

「ありがとうございます」

朝食を食べて、みんなと一緒に2日目の探索に向かう。昨日の帰りと同じで進んだところまでは何もなく来ることができた。

「ほんとにあっけない位、何も起きないね」

「キルド、変なこと言わないで」

「だってさ~、飛竜たちだって近くに住んでたわけだし―」

スッとキルドが構えて、森の奥に注意を向ける。エミリーの方を向くと、エミリーも頷く。どうやらこの森に入って初めての客のようだ。

グルルル。

「あれは…ワイルドウルフ!」

森にすむ非常に好戦的なオオカミ種だ。たとえ、子供ですら他の種族には懐かない獰猛な魔物だ。王都からさほど離れていないこんな場所に生息しているなんて。

「みんな、のどとか関節部を守って!一気に来るわよ!」

「俺とフォルトは前に出る!キルドはエミリーの後ろを!」

「私は間に入るわ!」

「頼む」

陣形を整えようとしたときには眼前に迫る勢いで、突進してくる。今避ければエミリーの正面に出ることを見越しているのだろう。誰を狩るのではなく、誰かから狩る。その時、目の前にいる狩りやすいものを仕留める習性だ。

「後衛職と一緒にされるなんてね!」

ギィン。

瞬時に剣を抜き、突進してきたワイルドウルフの牙に当てて防ぐ。ただし、そのせいでワイルドウルフに乗られる形で倒れこむ。

「水よ、わが前に現れ敵を打て」

エミリーがすかさず、上にいるワイルドウルフに向けて魔法を放つ。しかし、ワイルドウルフは爪で水の弾を簡単に引き裂く。

「面倒な。風よ、わが前に集いて解き放て」

通常とは違い、圧縮して弾丸のようにではなく強い風として放つ。狙い通り体重が軽いワイルドウルフは弾かれて行く。

「エミリー、気を付けて。あの爪自体に魔力がこもってるみたい」

「オッケー」

杖を構えなおしたエミリーと私は連携してワイルドウルフと対峙する。エミリーが魔法を放つとそれにワイルドウルフが対応する。その隙をついて剣を振るうが、身軽な動きで躱されてしまう。

「時間がかかるわね。キルド、任せた!」

私はキルドに跳躍の魔法を掛け、空中から攻撃できるようにする。

「みんな行くわよ!」

先ほどと同じように、エミリーが魔法を放つ。それをワイルドウルフが避けるが、その先に私が剣を振るう。それをぎりぎりで躱し今度こそ仕留めようとワイルドウルフが突っ込んでくる。

「残念でした」

もう少しで私の肩に食いつくというところで、キルドの矢がワイルドウルフの脳天を射抜く。

ギャン。

一瞬、再び襲おうとしたワイルドウルフだったが、流石に脳天を射られては動けず息絶えた。

「次は!」

周囲を確認すると、フォルトととカークスのところには3体いる様だ。すぐに向かわなくては。

ガサガサ。

「ティア、危ない!」

茂みからさらにもう1匹ワイルドウルフが飛び出してくる。肩口にかみつかれる。

「…くっ。邪魔をするなぁ!」

剣を素早く持ち替えるとかみついているワイルドウルフの首を切り落とす。

「大丈夫、ティア!」

「平気よ。それよりすぐに治療お願い!」

エミリーを急かし、すぐに治癒を施してもらう。

「ありがとう」

傷を治療してもらい私はカークスたちのもとへと向かう。キルドはさっきの襲撃もあり、エミリーについた。

「遅くなってごめんなさい」

剣を振りながらカークスたちに合流する。ついでにと風の魔法で跳びかかるワイルドウルフ1体を弾き飛ばす。当たりが良かったのか、木にぶつかり動きが少し鈍くなった。

「助かる」

「腕、大丈夫か?」

「平気よ。それより残り片付けるわよ」

フォルトが見事な槍さばきで食い止めてくれている間に私とカークスは鈍くなったワイルドウルフにとどめを刺しに行く。まずは私から一気に切りかかる。弱っているとはいえ軽快な動きをする種族だけあって流石に避けられる。そこへカークスが素早い動きで切りかかる。浅いものの胸から足にかけて傷をつけた。さらに動きが遅くなったところを一気に仕留める。

「終わりだ!」

これで3体目。残りの2体を倒すためフォルトのところへ向かう。フォルトの槍さばきにもかかわらず、2体のワイルドウルフは腕にかみついたりしている。しかし、飛竜のうろこを加工した大型の腕防具を傷付けることはできずに距離を取る。

「腕の分が完成していてよかった。無ければ倒れていただろう」

「全くだ。こっちも剣を軽くしていないければ当たらんかっただろう」

群れの中心なのか残りの2体はこれまでのワイルドウルフより動きがいい。

「裏をかく形の方がよさそうね」

私は2人に耳打ちする。2人も頷くと早速動き出す。まずはカークスが2体に切りかかり離す。私は自分に近い方に対して一気に差を詰める。フォルトはもう一方に対して、これ以上近づかないように威嚇する。

「一条の風よ、竜巻となりて敵を包め」

私は上から下に強い風を起こす。この風のためワイルドウルフの動きが少しだけ鈍る。そこに左から私が襲おうとした瞬間にワイルドウルフの右から槍が飛んで来る。意識を逆方向に向けていたワイルドウルフだったがそれをぎりぎりで躱すが、私の振るう剣までは避けられず右の脇腹付近を切り裂く。さらにそこへカークスが畳みかけてとどめを刺す。

キャウン。

一声鳴いた後でワイルドウルフは絶命した。最後の一体はそれを見た後で急におびえるようにして去っていった。

「フォルト大丈夫?」

槍を投げて武器を失ったフォルトに槍を届けて確認する。

「ああ、あいつが逃げたのもそうだが、この腕のおかげだ」

そう言ってフォルトは再び左手を掲げる。ワイルドウルフにかみつかれてもなお、傷がない鎧だ。しかし、以前のものであれば関節の弱い部分や金属の薄い部分から牙が届いたかもしれない。エミリーたちも合流して、全員の状態を確認する。

「ケガはティアだけか。大丈夫か?」

「ええ、噛まれたけれどそんなに深くはないわ」

私は傷口を確認するために少し肩を見せる。

「な~にしてるのティア!さっさとしまって!」

「何って傷口の確認をしてもらおうと。見た方が安心でしょ?」

「いいからしまって」

エミリーに怒鳴られて渋々しまう。元々肩近くはアーマーのおかげで、少し盛り上がっているからかみつきにくい場所なのだ。そのせいで深くまでかみつかれなかったようだ。

「それにしてもワイルドウルフとはな。この周辺での目撃情報は全くなかったようだが」

「王都周辺に出るとなったら即討伐だよ。ギルド、騎士団関係なくね」

実際にワイルドウルフの発見報告があったらすぐに討伐しないと、家畜や村の住民が次々にやられてしまう。単体ではなく群れの生活のため、必要とする食料も多く被害も続くのだ。

「何にせよ、この後の調査は慎重にやらないとな。エミリー、もう一度ティアの傷を見て、きちんと治っていることを確認してくれ」

「は~い」

エミリーが再び私の肩に触り、傷が治っているか確認する。

「問題はないみたい」

「よし、これまで以上に気を付けて行こう。それと襲撃があった以上、今日はそこまで進まないうちに戻る」

「了解!」

そうして私たちは再び調査を開始した。


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