家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩

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サブストーリー

リーナが泣いた日

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※注意、この話はギャグ回のショートストーリーです。本編のリーナ像がある方はご遠慮ください



これはカノンがフィストと結ばれ、無事に婚約発表を終えた後のお話です。

「カノン様、ダンスの足がまた逆になっておりますわ」

「ええ~、もう少しでできそうなのに…」

「言葉遣いもです。最近しっかりしてきたと思っておりましたのに…」

「そんなこと言っても、私は私だし…」

「お嬢様は方便を使うという悪しきところだけを覚えてますね」

「アーニャがうらやましいよ。運動もできるからダンスもきれいだし」

「普段から運動していれば、このぐらいは当然です。リーナ様もできているじゃないですか?」

「そうですよ。私はお嬢様に合わせるために男性パートを練習しているのですよ。フィスト様は結婚式の打ち合わせもあり忙しいからと」

ついつい口が多くなってしまいますが、これもお嬢様の為。

「今日もにぎやかですね。フィスト様からのお手紙です。どうやら、他国の方も参加するみたいですわね」

「メイド長、ありがとうございます」

「メイド長の持ってきた手紙も確認しないといけないからちょっと休憩しよう?」

「お嬢様!またそうやって」

ポカ

苦手なことから、そうやってまた逃げてと持っていたダンスの資料で頭を小突く。もう少し侯爵令嬢になるという事を考えて頂かないと…。

「あのう、前々から思っていたことなのですが…」

「どうしましたか?メイド長」

「いえ、ジェシカはまだ新人のようなものですし、アーニャもかなり言葉遣いは砕けているものの、一定の距離感があるのですが…」

「メイド長、何か言いにくいことでも?私たちは数少ないお嬢様の使用人ですし、何でも言ってくださいませ!」

「で、では、僭越ながら…。リーナ様って最近はカノンお嬢様を割とぞんざいに扱われておりますよね?」

「えっ!」

そ、そんな、私がお嬢様をぞんざいに…。い、いやでも、思い当たる節はあるような。今日もつい頭を叩いてしまったし、最近は手のかかる妹みたいになっていなかったかしら…。

「よくぞ言ってくれましたメイド長。最近リーナ様は心配して熱心に指導するあまり、ちょっと雑だったのです」

「ちょ、アーニャ!」

「確かに。さっきの頭をたたく動作もためらいがありませんでした」

「ジェシカまで」

「やっぱりみんなも思ってたんだ。よかった。私もちょっと気になってたんだ。それだけリーナが張り切ってたってことなんだろうと思ってたけど」

「そんな馬鹿な…人の気持ちに疎いお嬢様にまで…」

「ほら、そういうところですよリーナ様。以前なら口に出してはおられませんでした」

「えっ、リーナ。思ってはいたの?」

「い、いえ、そういうことは一切ありません。ええ」

「カノン様にもいろいろと直して頂いたり、覚えて頂いたりすることはあるのですが、しばらくはリーナ様も改めて頂く必要がありますね」

そういうとメイド長が私を連れていこうとする。

「ちょ、ちょっと待ってください。私は王立学園のメイド科でも過去数名しかいないレベルの首席ですよ。こんなことがあるはずが…」

「リーナ様」

「ア、アーニャ。あなたなら、わかってくれるわよね?」

「私の代でもリーナ様の偉大な話は残っておりました。そして私もそれに次ぐ成績を修めました。王立学園メイド科首席の名をこれ以上汚さないように、頑張ってください」

「そんな…私は、私は…」

それから私はメイド長から特別レッスンを4日間受けた。それ以降、数日間はお嬢様にも優しくしようと思ったのですが。

「この数日間はどうされていたのです。全く進んでおりませんが?」

「ちょっとだけ、気分転換に研究をしておりました」

「どのようないい方でもサボっていいというわけではありません。きちんとその分はとり返しますよ」


「う~ん、きちんと改善したんでしょうか?」

「あれがお二人の距離ですので…」

「最悪はパーティーの時に離しておきましょう」

「お嬢様が絡まなければ本当に優秀な方なのですが…」

「では、もう治りませんか…」

「唯一、お嬢様の薬でも治せない症状かと」

「お2人とも厳しいですね」

「主人の素行に関係しますからね。把握はしておきませんと。ジェシカもそういうところはきちんとしなさい」

「は、はい」

飛び火してしまった。これ以上は突っ込まない方がいいですね。

「さて、しばらくあのやり取りも続くし、ジェシカも私と手合わせをして時間をつぶしますよ」

「えっ!」

「これもそれぞれの関係の一つです」

そう言って私はコテンパンにのされたのだった。きっと、今日はカノン様をリーナ様に取られてイライラしていたんだろう。だけど私はそれを言わない。言ったらきっと、もっとつらい訓練が待っているから。本当にグレンデル王国のメイド科にはまともな首席がいない。そう思うジェシカだった…。





お嬢様に一つの区切りが訪れたことで、ちょっと安心してしまったリーナのお話でした。ほんとはこれぐらいの分量を想定してました。キャラの感じから今回はif story的でしょうか。



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