私のお嬢様はちょっと変わっています

弓立歩

文字の大きさ
4 / 4
本編

3

しおりを挟む
お嬢様と運命の日


今日はいよいよ第2王子であるカリス殿下が来られる日だ。無礼の無いように準備を整え、お嬢様も侍女たちによってドレスアップされている。

「サリア、ちょっとこれきつすぎない?」

「そんなことはありません。お嬢様は普段からワンピースなどの楽な格好ばかりされているからですよ」

「ああいうのでいいのにな。あっ、ワンピース姿で出迎えたら王子も幻滅して帰るかも!」

「おやめください。どんな教育をしているのかと、侯爵家に醜聞がついてしまいます。それに家庭教師の伯爵夫人の立場もありませんわ」

「それはいやだわ。このまま対応する」

「はい。ではもうすぐ来られるということですので、控室でお待ちください」

「サリアは?」

「私は段取りのチェックをしてまいります」

私はお嬢様と別れ、あわただしくしている侍女長と打ち合わせをする。そして、しばらくするとカリス殿下が来られた。

「ようこそ、カリス殿下。本日はよろしくお願いいたします」

まずは侯爵様が挨拶をされ殿下を迎える。

「うむ。今日は無理を言って済まないな。侯爵家は隣国と国境を接していてまだ忙しいところを」

「いえ。この時期に王族の方の訪問を受けられるなど光栄です」

「それでリーア嬢は?」

「リーアは向こうで控えております。お呼びしても?」

「ああ、今日は彼女に会いたかったのだ」

「では、サリア!」

「はっ!」

「リーアをここへ」

「かしこまりました」

私は命令通りにお嬢様を呼ぶ。

「お嬢様、サリアです」

「入って」

「旦那様がお呼びです。どうやら、カリス殿下はお嬢様に会いに来られたようですね」

「きちんとフラグは回避したのにどうして…。わかったわ、広間へお願い」

お嬢様は運命と出会われたようです。



お嬢様とカリス殿下


「ようこそクロス侯爵家にいらっしゃいました、カリス殿下。わたしはリーア・クロスと申します」

「君がリーア嬢…噂って当てにならないものだね。頭はいいけど元気いっぱいでマナーもなってないって聞いていたのに」

「殿下!そのようなお話をどこで?」

「うん?コルランド侯がね」

「コルランド侯爵が!?あいつめ、このような忙しい時に政略闘争などしおって…」

「お父様、よろしいではありませんか。別に事実とそう違うわけではありませんし」

「しかしだな…」

「おや、リーア嬢は特に否定しないのかい?」

「はい。殿下には不釣り合いなほど邸でも小言をいただく毎日でして」

「自分では悪評だと思っていないと?」

「事実を事実として広められたところで構いません。それより、なぜそれを確かめるためにクロス邸まで。使いの者にでも言えばよかったのでは?」

「リーア嬢は頭がいいと聞いていたからね。使いがだまされるかもと思ってね」

「まぁ!そのようなことができるほど賢くありませんわ」

「そうだね。少なくとも僕の前ではそうみたいだ。ところでリーア嬢は僕との婚約話が出ていることは知っているかい?」

「そうなんですの!?初めて聞きました」

お嬢様はびっくりした演技をして侯爵様の方へと顔を向ける。この辺りの演技は中々、堂に入っている。

「侯爵、話をしていないのかい?」

「したつもりなのですが、本人にその意思がなく…。このような娘ですので、王室は合わないかと」

「う~ん、でもねぇ~。先の戦争で活躍した侯爵に褒美をやろうにも国も疲弊していてね。父上もそれならばと王太子妃の座を考えたんだ。僕としてもここで受けてもらえると、実績にもなるし他の候補者を切り捨てられていいんだけど」

「で、殿下のお相手は王族派から選べばどうですか?うちは中立派ですし、ここは地盤固めをするという意味でも…」

ちらりとカリス殿下に目線を向けられて焦ったお嬢様はご自身の意見を述べられました。確かに一理あるように感じます。

「それもまあ悪くはないんだけど」

「では!」

「でもね。王家としては中立派でも王家に牙を立てないクロス侯爵家の後ろ盾を得ることも十二分に価値があることなんだ。王族派の力も強まるしね。早期に国を立て直すのにリーア嬢は一番都合がいいんだよ。そこで、ひとつ提案があるんだけど…」

「ご提案ですか?」

どうやらお嬢様と殿下は駆け引きをされるようです。



カリス殿下のご提案


「どのような内容ですか?」

「なに、簡単なことだよ。君は予定通り僕と婚約をする。僕は君の興味のある分野に注力できるように取り計らう。それだけさ。君だってわかっているだろう?どこかには嫁がないといけないし、かといって今噂されているように自由に動けることを許容してくれる家もないってことを」

「まあ、それはわかりますけれど…。カリス殿下と婚約をすればゆくゆくは王妃となって、国を支えなければいけません。今のような生活はどの道、望めないのではありませんか?」

「もちろん、王妃としての義務や行事・パーティーへの出席は必要だ。しかし、それ以外の時間を多く作ることは私にはできる。これは他の貴族へ嫁いで得られるものではないよ。何なら一筆書いてもいいし」

「ですが、他の貴族に嫁いでもできなくはないのでは?もちろん、夫の理解は必要でしょうが」

「それってうまくいった場合でしょ?君の相手にふさわしいのは最低でも伯爵家。近い年齢を考えれば、領地に問題があるか、そういったことに理解を持たない古風な家が多いけど?」

「そ、それはあくまで多いということで全てではありませんわ!」

「でも、そうなる可能性は高いよ。それなら、僕と婚約した方がいいと思うけどね」

「それはそうですが。でも、殿下は将来…」

「将来なんだい?」

「いえ。で、でしたら、そこに文章を追記することは可能ですか?」

「追記?まあ、内容にもよるよ。流石に王権をくれといわれても無理だしね」

「そんなこと言いません!あっ、申しわけありません」

「いいよ。で、追記したい内容はなんだい?」

「もし、殿下に結婚したいと思う方ができたら、婚約を解消するという一文を加えていただきたいのです」

「そんなことでいいの?それだと君にメリットがないけど?」

「ええ、構いませんわ。私としても解消なら別に構いませんし」

「…ふ~ん、わかったよ。この内容を追記しておけばいいんだね?」

「はい!ぜひお願いします」

お嬢様は満面の笑みで提案を受け入れている。対して殿下の方は冷めた目でそれを見つめている。ただし、何やら笑みを浮かべている辺りは、流石小さくても王族ということでしょう。果たして、お嬢様の未来はどうなるのか不安です。このままではお嬢様の前世の記憶通りになってしまうでしょう。

お嬢様はカリス殿下の提案を受け入れたようです。



庭で殿下と話すお嬢様


「では、これで契約成立ですわね。期待しておりますから」

「こ、こら、そんなことを言うんじゃない、リーア」

「あっ、お父様もいらしたんでしたわ」

「侯爵、心配することはない。こうして文書も交わした訳だから、今回のことに関しては父上も口を挟まないさ」

「しかし、娘が大変失礼を…」

「それなら、代わりといってはなんだけど、これから婚約者として月に何度か行き来することを了承してくれればいいよ」

「その程度でしたらいくらでも!」

「お、お父様!私の承認は取ってませんわ」

「いいかいリーア。殿下と婚約したのにお互い行き来がないというのでは、せっかくの婚約も無意味なんだよ。なに、どうしても難しいというのなら私の方で調整してあげるから」

「ほっ、それならいいですわ。ありがとう、お父様」

お嬢様は安心したのかホッとしたご様子です。

「じゃあ、話もまとまったし庭にでも出ようか?」

「えっ!?お帰りにならないのですか?」

「やだなぁ。縁談がまとまってすぐに帰っただなんて噂が広まったら、それこそ意味がないじゃないか。お互いを知る第一歩だよ」

「そんなぁ~。せっかくの読書の予定が…」

「まあまあ、たまには人と話すのもいいよ。それに僕も普段から本はよく読むから紹介できると思うしね」

「分かりましたわ」

渋々ながら庭のテラスへと足を運ぶお嬢様。一方殿下はそれを後ろから楽しそうに眺めていらっしゃいます。

「では、本の話ですわね。殿下はどういったものを読まれるのですか?まあ、経済学の本とかでしょうけど」

「残念。そういうのは普段の学習でも読むから他のジャンルだよ。冒険活劇ものとかもたまには読むし」

「えっ!?そうなんですか?意外です…」

「流石にまじめな本ばかりだと窮屈だしね。この前読んだのは竜の落とし子だったかな?中々面白かったよ」

「それなら私も読みました!侍女に買ってきてもらって、一日で読み切ったんですよ!」

「あれだけ分厚い本を一日で?すごいな」

「まあ、サリアには怒られましたけど」

「サリア?」

「そこにいる私専属の侍女ですわ。これからも会う機会が多いと思いますから紹介しますわね。サリア、カリス殿下に挨拶を」

「お嬢様の専属侍女を務めているサリアです」

「ああ。さっきもいた人だね。よろしく。でも、聞きなれない名前だね。大体の貴族の名前は覚えてるんだけど…」

「あっ、それは…」

「サリアは私が自ら見つけてきた人材ですわ」

「おや、それなら僕が知らないのも納得だよ。何はともあれ迷惑をかけると思うが頼む」

「はっ!」

その後もお互いの読んだ本の話をして殿下は帰られた。途中からはお嬢様も身を乗り出すように会話されていて、良い気分転換になったと思います。

お嬢様は庭での殿下との会話を楽しまれたようです。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

munepi72
2023.12.17 munepi72

久々の更新ですね、気付くのが遅れました。
ストーリーがグッと進んでいく予感。
次のお話が楽しみです。

2023.12.18 弓立歩

感想ありがとうございます。

夏にやり終えたかったのですが、一時期流行った病気でずっとダウンしておりなんとか冬にまた更新できればと思っています。

その時はまたお願いします。

解除

あなたにおすすめの小説

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

予言姫は最後に微笑む

あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。 二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。