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本編
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1限目の授業が終わったところで、私は持ってきていたカバンからさらにちょっと小さい鞄を取りだす。ここの中には普段お世話になっている人や、クラスでも割と話をする人向けにお菓子を詰めている。とりあえずは近いところから行こう。
「グライム様今いいですか?」
「ああ、ティアナ何か用か?」
「これよかったらどうぞ、昨日いっぱい作ったので」
そう言って鞄の中から、ビタークッキーを取りだす。確か以前にシナモン香りが苦手だと言っていたので、こっちにした。ビタークッキーは茶色のリボン。シナモンクッキーはオレンジ。パウンドケーキは白だ。こうやっておけば流石に間違えないだろう。
「いいのか、悪いな」
「次の剣術の授業は負けませんから、それでは」
「俺だって負けないぜ」
そう言って挨拶をして次の方のところに。次の方はクラスの図書委員の方だ。私がお菓子作りや剣術の資料を探すときにいつもお世話になっているのだ。
「おはようございます。これよかったら」
「おはようございます。ティアナ様。よろしいんですか?」
「まだまだ、たくさんありますので、ほら」
私はカバンの中身を彼女に見せる。こうやって数を見せておけば、遠慮せず受け取ってもらえるだろう。
「まあ、こんなに!お高かったでしょう?子爵家の料理人が作りましたの?」
「いいえ、今はガーランド騎士爵様のところに厄介になっておりますので。いつも、探していただいている料理の本は実は私が作るためのものですの。ですから手作りです」
「ほ、ほんとですか!あ、ありがとうございます!!」
そういうと彼女はすごい勢いでペコペコしながらパウンドケーキを取った。聞けばシナモンが好きなのだけど、王都では高いので滅多に食べられないとのこと。そこで私はクッキーの方も渡した。まだまだいっぱいあるし、何だったら追加で作れるしいいよね。最後はとっても恐縮されたけど、そんな大したものじゃないと押し付けるように置いてきてしまった。
「さあ、残りも配ってしまいましょうか!」
私は2限目と3限目の終了後の休み時間を使って、クラスの子や、友人に配り終えた。みんなとっても喜んでくれて、作った甲斐があったというものだ。やっぱり自分のために作ってしまうとどうしても手抜きになりがちだけど、こうやって喜んでくれる人がいると励みになる。
「もう配り終えたのティアナ?」
「うん、クラスの子とかお世話になっている人の分は終わったね」
「結構あったと思うんだけど、早いわね」
「普段から鍛えてるから。こういう時に役に立つんだ。生地をこねたりするときもスムーズだし」
「まあ、剣術取ってるぐらいだし今更よね」
「そうそう」
サーラとそんな風に話をしていると4限目の担当の教師が入ってきた。実はまだ本命を配ってないからちょっと心配なんだよね。そう思うとちょっと緊張してきちゃった。私は1限目に続き、またもや集中力を切らして授業を受けるのであった。
「それじゃあ、今日はここまで」
4限目が終わると、持ってきたかばんを下げて、学食に向かうレミリア様たちを呼び止める。この学校は貴族向けだけあって、学食といえどかなり豪華な食事が提供される。また、温かい食事ができるとあって、ほとんどの生徒は利用している。私は混むのが嫌いでそこまで利用しないけど。
「レミリア様、クレア様方。皆さま学食へ向かわれるのでしょうか?」
「そうですけれど?」
「でしたら、ご一緒してもよろしいですか?先日お約束したお菓子を持ってきましたので」
「えっ、でも配り終えたと…」
「聞こえてらしたんですね。勿論、普段お世話になっている方たちの分は配り終えました。でも、お約束通りレミリア様方の分は別で用意してありますわ、ほら」
私はカバンの中を開いて、きちんとラッピングされたお菓子を見せる。ちょっと急だったのでそこまで豪華ではないけれど結構きれいにできている。
「まあまあ、本当ですわ!きれいにラッピングまでされて、私達のために?」
「はい、ラッピングも自分と家のメイドでしたのでうまくできているか…」
「ラッピングまでできますの!?素晴らしいですわね。さあさあ、すぐに学食へ向かいましょう」
レミリア様は早足で学食へと向かわれ始めた。私はついていくのがやっとだ。それでもスイーっと優雅に歩かれる姿はさすが侯爵令嬢というべきだろう。私にはとてもできない。後ろを振り返るとサーラがバイバイと手を振っていた。お助けキャラは使用禁止のようだ。
「行かれましたわね」
「ええ」
図書委員の子が話しかけてくる。この子は結構演技もうまい子だ。入学そうそうファンクラブ会員となって№3なのだ。当然、ティアナが剣術も料理もしていて本を借りるのはどちらも自分のためだと知っている。剣術はともかく、料理を令嬢がやるのは色々言われるので流石にティアナも料理長のためといっていたみたいだが。
「よかったわね、2つももらえて」
「はい、いつもサーラ様から言われていたお菓子が2つも頂けるなんて夢のようです!」
交友関係が狭いティアナが自作のお菓子を配るなんて、内々のお茶会ぐらいだからね。ちらりと周りを見渡すとうらやましそうに見ている。
「気をつけなさいよ。みんな狙ってるわよ」
「大丈夫です。これを持ち帰るためなら手段を厭いません」
「それはちょっと…」
なんだかこのクラス狂信者めいていてちょっと怖いと思うサーラだった。しかし、クラス中が知っている。サーラがおてんば姫と噂されているティアナにちょっかいをかけようとする輩を、中々一緒に帰れないわねと言いながら毎日排除していることを。朱に交われば赤くなる、サーラこそがこの集団のトップだ。
「グライム様今いいですか?」
「ああ、ティアナ何か用か?」
「これよかったらどうぞ、昨日いっぱい作ったので」
そう言って鞄の中から、ビタークッキーを取りだす。確か以前にシナモン香りが苦手だと言っていたので、こっちにした。ビタークッキーは茶色のリボン。シナモンクッキーはオレンジ。パウンドケーキは白だ。こうやっておけば流石に間違えないだろう。
「いいのか、悪いな」
「次の剣術の授業は負けませんから、それでは」
「俺だって負けないぜ」
そう言って挨拶をして次の方のところに。次の方はクラスの図書委員の方だ。私がお菓子作りや剣術の資料を探すときにいつもお世話になっているのだ。
「おはようございます。これよかったら」
「おはようございます。ティアナ様。よろしいんですか?」
「まだまだ、たくさんありますので、ほら」
私はカバンの中身を彼女に見せる。こうやって数を見せておけば、遠慮せず受け取ってもらえるだろう。
「まあ、こんなに!お高かったでしょう?子爵家の料理人が作りましたの?」
「いいえ、今はガーランド騎士爵様のところに厄介になっておりますので。いつも、探していただいている料理の本は実は私が作るためのものですの。ですから手作りです」
「ほ、ほんとですか!あ、ありがとうございます!!」
そういうと彼女はすごい勢いでペコペコしながらパウンドケーキを取った。聞けばシナモンが好きなのだけど、王都では高いので滅多に食べられないとのこと。そこで私はクッキーの方も渡した。まだまだいっぱいあるし、何だったら追加で作れるしいいよね。最後はとっても恐縮されたけど、そんな大したものじゃないと押し付けるように置いてきてしまった。
「さあ、残りも配ってしまいましょうか!」
私は2限目と3限目の終了後の休み時間を使って、クラスの子や、友人に配り終えた。みんなとっても喜んでくれて、作った甲斐があったというものだ。やっぱり自分のために作ってしまうとどうしても手抜きになりがちだけど、こうやって喜んでくれる人がいると励みになる。
「もう配り終えたのティアナ?」
「うん、クラスの子とかお世話になっている人の分は終わったね」
「結構あったと思うんだけど、早いわね」
「普段から鍛えてるから。こういう時に役に立つんだ。生地をこねたりするときもスムーズだし」
「まあ、剣術取ってるぐらいだし今更よね」
「そうそう」
サーラとそんな風に話をしていると4限目の担当の教師が入ってきた。実はまだ本命を配ってないからちょっと心配なんだよね。そう思うとちょっと緊張してきちゃった。私は1限目に続き、またもや集中力を切らして授業を受けるのであった。
「それじゃあ、今日はここまで」
4限目が終わると、持ってきたかばんを下げて、学食に向かうレミリア様たちを呼び止める。この学校は貴族向けだけあって、学食といえどかなり豪華な食事が提供される。また、温かい食事ができるとあって、ほとんどの生徒は利用している。私は混むのが嫌いでそこまで利用しないけど。
「レミリア様、クレア様方。皆さま学食へ向かわれるのでしょうか?」
「そうですけれど?」
「でしたら、ご一緒してもよろしいですか?先日お約束したお菓子を持ってきましたので」
「えっ、でも配り終えたと…」
「聞こえてらしたんですね。勿論、普段お世話になっている方たちの分は配り終えました。でも、お約束通りレミリア様方の分は別で用意してありますわ、ほら」
私はカバンの中を開いて、きちんとラッピングされたお菓子を見せる。ちょっと急だったのでそこまで豪華ではないけれど結構きれいにできている。
「まあまあ、本当ですわ!きれいにラッピングまでされて、私達のために?」
「はい、ラッピングも自分と家のメイドでしたのでうまくできているか…」
「ラッピングまでできますの!?素晴らしいですわね。さあさあ、すぐに学食へ向かいましょう」
レミリア様は早足で学食へと向かわれ始めた。私はついていくのがやっとだ。それでもスイーっと優雅に歩かれる姿はさすが侯爵令嬢というべきだろう。私にはとてもできない。後ろを振り返るとサーラがバイバイと手を振っていた。お助けキャラは使用禁止のようだ。
「行かれましたわね」
「ええ」
図書委員の子が話しかけてくる。この子は結構演技もうまい子だ。入学そうそうファンクラブ会員となって№3なのだ。当然、ティアナが剣術も料理もしていて本を借りるのはどちらも自分のためだと知っている。剣術はともかく、料理を令嬢がやるのは色々言われるので流石にティアナも料理長のためといっていたみたいだが。
「よかったわね、2つももらえて」
「はい、いつもサーラ様から言われていたお菓子が2つも頂けるなんて夢のようです!」
交友関係が狭いティアナが自作のお菓子を配るなんて、内々のお茶会ぐらいだからね。ちらりと周りを見渡すとうらやましそうに見ている。
「気をつけなさいよ。みんな狙ってるわよ」
「大丈夫です。これを持ち帰るためなら手段を厭いません」
「それはちょっと…」
なんだかこのクラス狂信者めいていてちょっと怖いと思うサーラだった。しかし、クラス中が知っている。サーラがおてんば姫と噂されているティアナにちょっかいをかけようとする輩を、中々一緒に帰れないわねと言いながら毎日排除していることを。朱に交われば赤くなる、サーラこそがこの集団のトップだ。
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