狂騎士の冒険譚

弓立歩

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3 ただいま修行中

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あれから、さらに1年が経ちました。最初は子供だと手を抜いていてくれた人たちも今では割と真剣にしてくれています。とは言ってもどうしても私が子供なのでやりづらいようですけど。

「たぁっ!」

「うおっ!」

「それまで!」

「ふぅ、相変わらずいい腕してるなクレアは」

「お褒めいただきありがとうございます。ですが、まだまだ未熟ものですので…」

「そうですね。騎士たるものもう少し腕を上げて頂かないと、ウルス様が心配です」

「いやいや、これでも騎士団では中ぐらいですよ私?ここがおかしいんですよ。クレアは十分強いですよ」

「でも、実力的にはまだまだみんなを守るためには足りませんので」

そう言いながら私は残った時間を素振りに費やす。半年ほど前から私は魔法の訓練も始まって、剣だけの時間も取れなくなってきているので、こういう時間も貴重なのだ。ちなみに私が使える魔法は火と水と闇だった。生活に役立つ火と水が同時に使えるのはとてもありがたい。お邸にも魔法が使える人はいるけど、私は使用人でも下位という事で、もっぱらお呼びがかかるのは私だ。練習にもなるという事でサラさんも何も言わないしね。

「クレア、ちょっと火を頼む」

「はい!ただいま」

「クレア、夕方のお風呂の用意お願いね」

「はい。一緒に使用人の方も沸かしておきますね!」

「よろしくね」

こうして様々なことに関わらせてもらっているわけだが、それでもまだ実戦の機会はない。無いに越したことはないけれど、早くこの剣がどこまで通じるか確認したいものだ。

「クレアさん。では今日も魔法の訓練です。以前は火の魔法についてでしたが、今日からは闇の魔法です」

「闇の魔法はイメージが難しいと聞きましたがどうなのでしょうか?」

「誰から聞いたのか知りませんが、そのようなことはありませんよ?その人の得手不得手というだけです」

「そうなんですね。よかったです」

「では基本の魔法からですね。基本はあたりを暗闇に包むというのと、これは戦いの時に便利ですが、影を渡るという魔法です。どちらも基本ですが、扱いやすく相手の虚をつけます。ただし、これに頼ってばかりだと強敵との戦いに勝てなくなりますので注意しなさい。では行きますよ?」

「よろしくお願いします」

そうして、何とか苦戦しながらも1週間かけてどちらも習得したのだった。



さらに時は過ぎてあれから2年。私もとうとう10歳になりました。最近はちょっとだけ緊張しています。なぜなら、来月からとうとう冒険者ギルドで登録して、冒険に出ることが許されたのです。監視の3年間を終え、それから1年間何事もなく邸の使用人として過ごした私が認められたという事でもあります。

「クレア、最近気もそぞろですよ?」

「すみません、サラさん。どうしても来月のことが気になって…」

「そんなことでは立派なメイドになれませんよ」

「そ、そうですよね。申し訳ありません」

「さあ、今日はウルス様と手合わせの日です。ちゃんと準備はしましたか?」

「はい、ばっちりです。ウルス様から今日こそ一本取って見せます!」

こういうのにも訳がある。最近では来てもらう騎士さんには悪いのだけど、簡単に勝ててしまうのであまり訓練にならないのだ。サラさんといつもは手合わせするのだけど、やはり男の人と戦うのとは勝手が違うからそちらの経験も積んでおきたいのだ。守るのには斬らないといけないし、斬り方だって変わってくるのだから。そうは言っても流石に現役の騎士団長。まだ、一度たりとも勝てたことはない。今日こそは勝ちたい!

「もう準備は万端のようだな」

「ウルス様!はい、今日こそ勝ちます!」

「やれやれ、さすがにまだその年齢の奴には負けられんな」

「始めっ!」

カンキン

剣戟の音が鳴る。去年から私は短い剣を捨て、70cmほどの剣を愛用している。これなら簡単に弾かれたり押し負けたりしないはずだ。最も、体格差は大きいのでそこはあきらめるしかないんだけど…。

ギィン

何度も打ち合うが徐々に下がらされていく。一応、動ける範囲も設定されているので、このままだと場外扱いだ。

「これならっ!」

剣を抱え込むようにしてくるりと回って、ウルス様の後ろに入る。

「むっ!」

行ける!と思ったが、次の瞬間にはウルス様の姿がそこにはなかった。

「ここまでだな」

声の方向は私の後ろ。どうやら私が勝つのはまだ先の様らしい。

「ううっ、今日も勝てませんでした…」

「だが、剣筋も良くなってきている。もう少しで勝てるようになるかもな」

「本当ですか!」

「ああ。しかし、なんだ最後の動きは?」

「サラさんの動きを参考にしてアレンジしたんですけど…勝つための戦い方っていうので」

「それでか。騎士には絶対にするなよ。あいつ等じゃ対応しきれないし、そんな相手と戦うこともないだろうからな」

「気をつけます」

「では、今日の訓練も終了ですね。お疲れさまでした」

私は訓練を終えてメイドの仕事に戻る。今年から私も見習いの文字が消えて、晴れてメイドに昇格したのだ。

「さて、仕事仕事」


「ウルス様、入ります」

「うむ。今日の戦いを見てどう思う?」

「やはり、血筋なのでしょうか。我々とは才能の違いを感じます。近頃では私でも勝てるとは言い切れなくなってきています」

「そうか。私も今日は驚いた。あの調子なら私もあと数年で抜かれるだろう」

「そんな…」

「実際、今の体格差であの調子だ。もう少し背が伸びればいずれ追い抜く。しかし、そのことで心配事がある。確かにクレアは邸にも慣れ、かわいがられているがどうにも邸のものとそれ以外への対応が違いすぎる」

「そうですね。身分、強さに関わらず常に外敵かどうか見極めようとしています。この前も買い物で絡まれたというメイドの話に真剣に聞き入っておりました。そのままだと何かしそうだったので、対応をしたと伝えましたが」

「このままでは、何かあった時に問題になりかねん。そういうことも含めて、学んで欲しいとギルドに行くことを認めたのだが、よく見ておいてくれ」

「はい」

「全く、我が子が手がかからんのはよいが、あいつはとんだ問題児だな」

「元王女だという事がいまだに信じられません」

「私は逆にだからこそだと思っている。そうして自分を守っているのではないかとな」

「寂しい話ですね…」


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