デュラハンちゃんの旅日記

弓立歩

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第1部 2章 辺境の町メルキス

一日の終わりとライラ

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「メイリア!このままでは…」

「任せて!伊達に守護者を名乗ってはいないわ!」

「ちょっと、あなた一人でどうする気?」

「まあ見てなさい!これでも、あなた達より知識も経験も豊富なんだから!!」

 あれ?これは誰だろう?この景色も全く見慣れないものだ。でも、夢に見るぐらいだからどこかで見たのかなぁ?でも、登場人物はみんな真剣な顔をしている。そして、中には見覚えのある姿があった。確かあれは…そんなぼんやりとした思いと共に私の意識は微睡みの中に消えていった。


「あぅ、さっきの夢は一体?」

 何か夢を見ていた気がする。でも、よく思い出せない。せめてもう少し長く見ていられたらと思いながらも、私はベッドの上で身を起こす。

「とりあえず、今は何時だろ?」

 カーテンの所に向かい、ちらりとめくるとまだ夜の帳は降りたままだ。普段睡眠を取る習慣がないから早く目覚めてしまったようだ。

「こうしててもしょうがないか。ちょっとだけ戻ってみようかな?」

 さっきの夢も気になるし、デュラハンに戻ったら何かわかるかもと私は頭を外した。

 ガシャンガシャン

「何者っ!?」

 ヒュン

 カン

「わっ!?危ないなぁもう」

 デュラハンの姿に戻ると、いきなり暗闇から攻撃が飛んできた。殺気はそこまでじゃなかったから防ぐに留めたけど、貴族の邸で危ない人がいるもんだ。

「あれ、ライラさん?」

 攻撃してきた方に向き直ると、そこにはライラさんがいた。なんでまた攻撃なんてしたんだろ?

「そっ、その声はミツキ様!?」

「そうだけど、どうしてこんなことしたの?」

 じろりと私はライラさんを見つめる。

「ヒッ…も、申し訳ございません。し、侵入者かと思いまして」

 私が視線を合わせるとなぜか体を震わせるライラさん。一体どうしたんだろう?

「侵入者なんていました?いたら今ならすぐに分かるんですけど…」

 私は自分の力を使って周囲を探るもおかしな感覚はない。

「やっぱり侵入者なんていませんよ?」

「あ、あの、ミツキ様のそのお姿が…」

「姿?」

 言われて私は始めて部屋にあった鏡に目をやる。そこには全身に鎧を身にまとい、剣を構え、兜の奥からは赤い眼がきらりと光るデュラハンの姿があった。

「わっ、わわっ!?こここっ、これは違うんです!!」

「お、落ち着いてくださいませ。大きな声を出しては他の方に聞こえます」

「すみません…」

「それでどうしてそのようなお姿に?」

「あはは、実を言うと私はこっちが本当の姿でして…」

「えっと、デュラハンでよろしいのでしょうか?」

まだ声を震わしながらも、私の正体について聞き返すライラさん。

「はい。正真正銘のデュラハンです。まあ、偽物を見たことはありませんが」

 少し落ち着いて来たのでちょっとしたデュラハンジョークを混ぜながらライラさんの質問に答える。

「…分かりました。ですが、どうしてここへ?」

「えっと、ガイエルに町へ連れていってもらう約束をしてて…」

「そうでしたか。申し訳ございませんでした。事情を知らぬとはいえ、主に手を上げるとは…」

「いえ、仕方がないですよ。急に魔物がいたら警戒しますから。でも、どうして気づいたんですか?」

「あちらの椅子で休ませていただいておりまして」

 申し訳なさそうにライラさんが指を指した先には少しゆったりした椅子があった。ひょっとして、部屋に戻らず見守ってくれていたのかな?

「あの、このことは秘密に…」

「もちろんでございます。ひとつだけお聞きしても?」

「何ですか?」

「ミツキ様のことは他にどなたがお知りに?」

「他にはガイエルとクウィードさんですね。クウィードさんはガイエルから直接聞いたみたいです」

「ガイエル様から…ひょっとしてガイエル様を昔助けたというのは」

「一応、私本人だよ。デュラハンは年も取らないからね」

「そうでしたか。それにしても、流石は魔族ですね。私の不意の一撃にも反応されて…」

「あっ、まあ、殺気も薄かったし。もうちょっと強かったら真っ二つだったかな?」

「そこまで余裕だったとは。格の違いを思い知らされました」

 がっくりと肩を落とすライラさん。自分の腕には自信があったらしい。でも、私は百年以上生きてる訳だし、しょうがないよね。

「ライラも凄いよ。だって、メイドさんなのに戦えるんだもん!」

「私も騎士の家に生まれましたので。もっとも、騎士の適性はあまりなく、こうして護衛も兼ねた暗殺術の方を学びましたが。ですが、今回の事で自分の未熟さを知りました。これでも、冒険者ランクで言えばBランク相当だったのですが…」

「そ、そうだったんだ」

 本当にごめんね。私はBランクがどれぐらい強いか分からないけど、多分負けることはないかな?私のデュラハンアイ(特に意味はない)によると、ライラさんは素早さを生かして手数で押すタイプだと思うけど、その素早さにしても私の3分の1ぐらいだし。

「そうそう、私のことはリスティルって呼んで。こっちの姿の時は」

「リスティル様ですか?」

「うん。一応それが本当の名前なの。ミツキっていうのは人の時の仮の名前だから」

「分かりました。今後、そのお姿の時はリスティル様とお呼びいたします」

 ちょっとライラさんが落ち込んでいたので、本当の名前を教えてあげた。ちょっと表情も明るくなったので、教えてあげてよかった。

「それにしても、どうしてこのような危険な真似を?」

「あ~、ちょっと変な夢を見ちゃって。それで気晴らしに戻ったんだけど、人間の姿だと、あんまり注意力もないから失敗しちゃった」

「そうでしたか。こちらは貴族の邸でもありますから、今後は慎んで頂けますと助かります」

 私がちょっと冗談めかして言うと、ライラさんも笑顔で返してくれた。

「気を付ける」

「では、まだ夜明けまでは2時間ほどございます。あまり物音を立てると騒ぎになりますから、お休みください」

「分かった」

 そう言うとライラさんは踵を返し、部屋を出ようとする。

「あれ?どこか行くの?」

「先程の動きで衣服が乱れてしまいましたので、直してまいります」

「そっか、それじゃあね」

「はい。失礼いたします」

 パタンと小さくドアが閉まる音がして、ライラさんが出ていった。

「あ~びっくりした。まさか、初日で正体がばれると思ってなかったよ。なんとかなったからよかったけど、気を付けないとね」

 そう反省しながら私は首に頭を持っていき。ゆっくりと鎧を脱ぐと目を瞑った。


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