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第23話_地下水路の試算
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夜の帳が落ちる頃、一行は王都の裏通りにある古井戸に辿り着いた。そこは、古くから商人たちが脱税用の密輸路として使ってきたという“地下水路”への入り口でもあった。
「本当に、ここを通るんですか……?」
萌衣の不安げな声に、暖大は頷いた。
「地上はすでに白帳派の巡察が強化されてる。地下を通れば、追跡の目をかいくぐれる上に、王宮の近くに接続するルートもある」
一成が暗視用の魔導灯を掲げ、井戸の下を覗き込んだ。
「深さは……八尺程度か。梯子はまだ使えそうだ。俺が先行する」
「待って、一成さん」祐香が後ろから声をかけた。「進行ルートと、荷重制限の予測を立てるから、先走らないで。崩落や水流の変化も、帳簿と照らせばある程度読めるはずよ」
暖大は荷物から分厚い“旧上下水整備費帳”を取り出した。数十年前の都市整備に関する帳簿だ。
「この中の“工費過剰”と“予備予算未請求”の項を比較すれば、構造的に“設計だけして手抜きされた箇所”がわかる。そこが危険区間の可能性が高い」
祐香はその言葉にうなずき、書き込み用の羊皮紙に手を走らせた。
「ふむ……総延長三百尺。中間地点に“南検水楼”がある。ここで通風と勾配を調整しているはず。たぶんこのあたりで帳簿の中継もできる」
「じゃあ、俺が行って確かめよう。出口がふさがれてたら意味ないしな」
誠が腰の剣を軽く叩き、暗がりへと身を滑り込ませる。すぐに水音が遠のき、やがて「通れる!」という低い声が反響して戻ってきた。
一行は順に井戸を降り、湿り気を含んだ石のトンネルを進み出す。空気は重く、どこか鉄と油の混ざった匂いが鼻を刺した。
「この先、王宮図書館に繋がる支路がある。だが、決戦前に証拠が足りないなら、あそこへ潜り込むしかない」
暖大の言葉に、祐香が表情を引き締めた。
「王宮文庫か……。簡単には入れない。でも、今の私たちなら……」
「入れるさ」と、愛弓が静かに言った。「必要とされている言葉は、ただの紙の上の真実じゃない。帳に綴られた“嘘の継ぎ目”を暴く言葉なら、きっと扉を開ける」
「ええ」と祐香。「この先に、もう一つ試算が必要。今夜のうちに“必要証拠の欠損分”を洗い出す。それが決戦日の鍵になる」
暖大が頷き、足を止める。
「ではこの分岐で、俺は王宮文庫へ向かう準備を始める。一成、同行してくれるか」
「……了解した。今回は俺の狙撃じゃなく、“沈黙して運ぶ”役目だな」
石壁の向こうには、千年前の帳簿と、この国の命運が眠っている。
「本当に、ここを通るんですか……?」
萌衣の不安げな声に、暖大は頷いた。
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一成が暗視用の魔導灯を掲げ、井戸の下を覗き込んだ。
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「待って、一成さん」祐香が後ろから声をかけた。「進行ルートと、荷重制限の予測を立てるから、先走らないで。崩落や水流の変化も、帳簿と照らせばある程度読めるはずよ」
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「ふむ……総延長三百尺。中間地点に“南検水楼”がある。ここで通風と勾配を調整しているはず。たぶんこのあたりで帳簿の中継もできる」
「じゃあ、俺が行って確かめよう。出口がふさがれてたら意味ないしな」
誠が腰の剣を軽く叩き、暗がりへと身を滑り込ませる。すぐに水音が遠のき、やがて「通れる!」という低い声が反響して戻ってきた。
一行は順に井戸を降り、湿り気を含んだ石のトンネルを進み出す。空気は重く、どこか鉄と油の混ざった匂いが鼻を刺した。
「この先、王宮図書館に繋がる支路がある。だが、決戦前に証拠が足りないなら、あそこへ潜り込むしかない」
暖大の言葉に、祐香が表情を引き締めた。
「王宮文庫か……。簡単には入れない。でも、今の私たちなら……」
「入れるさ」と、愛弓が静かに言った。「必要とされている言葉は、ただの紙の上の真実じゃない。帳に綴られた“嘘の継ぎ目”を暴く言葉なら、きっと扉を開ける」
「ええ」と祐香。「この先に、もう一つ試算が必要。今夜のうちに“必要証拠の欠損分”を洗い出す。それが決戦日の鍵になる」
暖大が頷き、足を止める。
「ではこの分岐で、俺は王宮文庫へ向かう準備を始める。一成、同行してくれるか」
「……了解した。今回は俺の狙撃じゃなく、“沈黙して運ぶ”役目だな」
石壁の向こうには、千年前の帳簿と、この国の命運が眠っている。
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