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第6章: 亡き王女のための旋律
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扉を抜けると、有美と渉は再び森の中に立っていた。しかし、先ほどまでの鬱蒼とした暗闇とは違い、周囲には優しい青白い光が差し込んでいる。木々はまるで天へと向かって整然と立ち並び、風が揺らす葉の音が美しい調べを奏でているように聞こえた。
「なんだ、ここは…?」
渉が驚いたように呟く。その声も空気に吸い込まれるように静かに消えた。有美もまた、目の前に広がる光景に息を飲んだ。そこには古びた石造りの舞台があり、その中央には一台のグランドピアノが置かれていた。
「ピアノ…どうしてこんな場所に?」
有美が近づくと、ピアノの表面に細かな彫刻が施されているのが見えた。蔓草の模様とともに、小さな王冠が彫られており、それが薄く光を放っている。
「誰かがここで弾いていたのかな…?」
有美はその鍵盤にそっと手を置いた。冷たく滑らかな感触が指先に伝わる。それは長い間放置されていたものには思えないほど、丁寧に手入れされているようだった。
その時、ふと目を凝らすと、譜面台に一枚の楽譜が置かれているのに気づいた。
「亡き王女のための旋律」
楽譜のタイトルを見た瞬間、有美の胸に奇妙な感覚が走った。それはどこかで聞いたことがあるような、けれども決して思い出せない旋律に対する懐かしさと不安が入り混じった感情だった。
「有美、それって…何だ?」
渉がそっと近づいてきた。彼もまた、その楽譜に何かを感じ取ったのか、言葉を飲み込むようにして見つめている。
楽譜には五線譜が描かれていたが、そこには音符が一つも記されていなかった。ただ、ページの端に手書きの文字でこう書かれている。
「この旋律を思い出せ。それが真実の扉を開く」
「どういうことだろう…?」
有美が呟く。楽譜の表面をじっと見つめていると、ふいに耳の奥で何かが響いた。それは夢の中で聞いた音楽のようでもあり、幼い頃の記憶の断片のようでもある不確かな調べだった。
「聞こえる…でも、どこから…?」
有美の言葉に渉も耳を澄ませたが、彼には何も聞こえないようだった。ただ、彼の表情にも何かを感じ取ったような緊張が浮かんでいる。
「弾いてみるしかないよな。これが試練なんだろう?」
渉がそう言うと、有美はゆっくりと鍵盤の前に座った。冷たい風が森を駆け抜け、木々がざわめく音が耳に響く。彼女は深呼吸をして、指を鍵盤に置いた。
最初に鳴らした音は、低く重い響きだった。それはまるで空間全体を揺らし、森全体がその音に応じて動き始めるように感じられた。
次に指を動かすと、旋律が徐々に形を成していく。単なる音の連なりが、次第に一つの調べとなり、空間を満たしていく。音は透明感を増し、空間全体を包み込むような温かさを持ち始めた。
「それだ、有美…その旋律だ!」
渉が叫ぶ。彼にも旋律が聞こえ始めたのか、その目が輝いていた。有美はその言葉に背中を押されるようにして指を動かし続けた。音楽は次第に加速し、彼女の心に刻まれた何かを呼び覚ますような力を持ち始める。
音が頂点に達した瞬間、森全体が眩い光に包まれた。有美と渉は思わず目を閉じたが、その光の中で何かが変わるのを感じた。
光が収まると、目の前には一人の女性が立っていた。長い金色の髪を持ち、透き通るような青い瞳が有美と渉を見つめている。彼女の姿は半透明で、まるで幽霊のようだった。
「私を呼び覚ましたのですね」
その声は柔らかく、どこか哀しみを帯びていた。
「あなたは…誰?」
有美が震える声で尋ねると、彼女は静かに微笑んだ。
「私はこの森に囚われた亡き王女。あなたたちが奏でた旋律は、私を目覚めさせるための鍵でした」
「この森に囚われたって…どういうこと?」
渉が問うと、彼女はふと目を伏せた。
「この森は、かつて私の住んでいた王国の跡地です。しかし、ある時から森そのものが呪われ、私の魂もここに縛られることになりました」
「じゃあ、この森の不気味な現象や、道化師は…?」
有美の問いに、王女は悲しげに首を振った。
「道化師は、この森の呪いの具現化。森に迷い込んだ者を試し、その魂を縛る存在です。しかし、あなたたちが奏でた音楽はその呪いを打ち破る力を持っています」
彼女の言葉を聞き、有美の胸に安堵と不安が入り混じる感情が広がった。
「この森の呪いを完全に解くためには、真実を見つけなければなりません。そしてその真実は、私ではなく、あなたたち自身が持っています」
そう言うと、王女の姿は徐々に薄れ、光とともに消えていった。彼女が立っていた場所には、新たな扉が現れていた。その扉は透明で、向こう側の光景がぼんやりと見えている。
「行こう、有美」
渉が手を差し出し、有美はそれを握り返した。二人は新たな扉に向かって歩き出した。その先には何が待っているのか――それを確かめるために。
「なんだ、ここは…?」
渉が驚いたように呟く。その声も空気に吸い込まれるように静かに消えた。有美もまた、目の前に広がる光景に息を飲んだ。そこには古びた石造りの舞台があり、その中央には一台のグランドピアノが置かれていた。
「ピアノ…どうしてこんな場所に?」
有美が近づくと、ピアノの表面に細かな彫刻が施されているのが見えた。蔓草の模様とともに、小さな王冠が彫られており、それが薄く光を放っている。
「誰かがここで弾いていたのかな…?」
有美はその鍵盤にそっと手を置いた。冷たく滑らかな感触が指先に伝わる。それは長い間放置されていたものには思えないほど、丁寧に手入れされているようだった。
その時、ふと目を凝らすと、譜面台に一枚の楽譜が置かれているのに気づいた。
「亡き王女のための旋律」
楽譜のタイトルを見た瞬間、有美の胸に奇妙な感覚が走った。それはどこかで聞いたことがあるような、けれども決して思い出せない旋律に対する懐かしさと不安が入り混じった感情だった。
「有美、それって…何だ?」
渉がそっと近づいてきた。彼もまた、その楽譜に何かを感じ取ったのか、言葉を飲み込むようにして見つめている。
楽譜には五線譜が描かれていたが、そこには音符が一つも記されていなかった。ただ、ページの端に手書きの文字でこう書かれている。
「この旋律を思い出せ。それが真実の扉を開く」
「どういうことだろう…?」
有美が呟く。楽譜の表面をじっと見つめていると、ふいに耳の奥で何かが響いた。それは夢の中で聞いた音楽のようでもあり、幼い頃の記憶の断片のようでもある不確かな調べだった。
「聞こえる…でも、どこから…?」
有美の言葉に渉も耳を澄ませたが、彼には何も聞こえないようだった。ただ、彼の表情にも何かを感じ取ったような緊張が浮かんでいる。
「弾いてみるしかないよな。これが試練なんだろう?」
渉がそう言うと、有美はゆっくりと鍵盤の前に座った。冷たい風が森を駆け抜け、木々がざわめく音が耳に響く。彼女は深呼吸をして、指を鍵盤に置いた。
最初に鳴らした音は、低く重い響きだった。それはまるで空間全体を揺らし、森全体がその音に応じて動き始めるように感じられた。
次に指を動かすと、旋律が徐々に形を成していく。単なる音の連なりが、次第に一つの調べとなり、空間を満たしていく。音は透明感を増し、空間全体を包み込むような温かさを持ち始めた。
「それだ、有美…その旋律だ!」
渉が叫ぶ。彼にも旋律が聞こえ始めたのか、その目が輝いていた。有美はその言葉に背中を押されるようにして指を動かし続けた。音楽は次第に加速し、彼女の心に刻まれた何かを呼び覚ますような力を持ち始める。
音が頂点に達した瞬間、森全体が眩い光に包まれた。有美と渉は思わず目を閉じたが、その光の中で何かが変わるのを感じた。
光が収まると、目の前には一人の女性が立っていた。長い金色の髪を持ち、透き通るような青い瞳が有美と渉を見つめている。彼女の姿は半透明で、まるで幽霊のようだった。
「私を呼び覚ましたのですね」
その声は柔らかく、どこか哀しみを帯びていた。
「あなたは…誰?」
有美が震える声で尋ねると、彼女は静かに微笑んだ。
「私はこの森に囚われた亡き王女。あなたたちが奏でた旋律は、私を目覚めさせるための鍵でした」
「この森に囚われたって…どういうこと?」
渉が問うと、彼女はふと目を伏せた。
「この森は、かつて私の住んでいた王国の跡地です。しかし、ある時から森そのものが呪われ、私の魂もここに縛られることになりました」
「じゃあ、この森の不気味な現象や、道化師は…?」
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「道化師は、この森の呪いの具現化。森に迷い込んだ者を試し、その魂を縛る存在です。しかし、あなたたちが奏でた音楽はその呪いを打ち破る力を持っています」
彼女の言葉を聞き、有美の胸に安堵と不安が入り混じる感情が広がった。
「この森の呪いを完全に解くためには、真実を見つけなければなりません。そしてその真実は、私ではなく、あなたたち自身が持っています」
そう言うと、王女の姿は徐々に薄れ、光とともに消えていった。彼女が立っていた場所には、新たな扉が現れていた。その扉は透明で、向こう側の光景がぼんやりと見えている。
「行こう、有美」
渉が手を差し出し、有美はそれを握り返した。二人は新たな扉に向かって歩き出した。その先には何が待っているのか――それを確かめるために。
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