後宮日和は、旬の野菜と木漏れ日の彼

乾為天女

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第8話 八方ブスの張り紙騒動

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 陽苑の廊下の角には、一枚の板が掛けられている。

 行事の知らせや当番の表、なくし物のお知らせ。紙が重なり合うその板は、陽苑で働く者たちの「今」が集まる場所だった。休憩に向かう女官たちは、そこを一度のぞいてから茶を飲みに行くのがいつもの流れだ。

 「……ねえ、見た?」

 その朝、最初に声を上げたのは若い女官だった。廊下の真ん中で足を止め、掲示板の一角を指さす。

 「何あれ。誰が貼ったの?」

 「知らない。でも、字はやたらと勢いがあるよね」

 二人の視線の先には、新しい紙が一枚、真ん中近くに貼られていた。太い筆で、大きくこう書かれている。

 『八方ブスに注意』

 意味を考える前に、その言葉の強さが胸に刺さる。周囲にいた女官たちも、つられるように足を止め、その紙を見つめた。

 「……これって、どういう意味?」

 「八方美人なら聞いたことあるけど」

 「『ブス』って、さすがにひどくない?」

 ひそひそ声が、廊下の片側からもう片側へと流れていく。誰かが紙をはがそうと手を伸ばしかけて、慌てて引っ込めた。

 「でも、勝手にはがしたら、それはそれで怒られそうだし……」

 「規則とか、あるのかな」

 そんな噂の渦が、洗濯を終えて休憩に向かっていた奈津海の耳にも届いた。

 「何騒いでるの」

 桶を片手に通りかかると、女官のひとりが気まずそうに道を開ける。

 「あ、奈津海さん。あの、その……掲示板、見ました?」

 「掲示板?」

 奈津海は首をかしげ、視線をそちらに向けた。一瞬で、その紙が目に飛び込んでくる。

 『八方ブスに注意』

 太い筆跡。真ん中を少しだけ外した場所に貼られているのが、余計に目立った。

 「……」

 胸の奥が、きゅっと縮む。

 (誰か、何かやらかした? それとも——)

 ここ最近、自分が何度「顔がこわい」と言われたか、指折り数えられるほどだ。洗濯場で、廊下で、まかないの席で。「真剣なだけですよ」と笑い飛ばしてきたけれど、心のどこかでは引っかかっていた。

 (もしかして、私のこと?)

 そう思ってしまった瞬間、紙の文字が、自分に向けられた矢印のように見えてくる。

 「……休憩室、行ってくる」

 奈津海は、桶を少し強く抱え直し、掲示板から視線をそらした。ひそひそ声が背中を追いかけてくる気がして、歩幅は自然と大きくなる。

 その頃、厨房では、みうが配膳用の盆を整えていた。昼の献立を書いた紙を一枚ずつ確認し、菜園から届いた野菜の名前が間違っていないか、慎重に目を通す。

 「……あれ?」

 配膳当番の女官が、戸口のところで立ち止まった。

 「みうさん、掲示板見ました?」

 「掲示板ですか?」

 「うん。あんな言い方、ちょっとひどいですよね」

 みうは、盆の上の器を見つめたまま首をかしげた。

 「何か、貼ってあったんですか?」

 「『八方ブスに注意』って。誰かの悪口なんじゃないかって、みんな言ってます」

 その言葉が、みうの胸に重く落ちた。

 (八方……)

 みうは、自分がどれだけあちこちの部署に顔を出しているかを、知っている。配膳係として、陽苑だけでなく周囲の部屋へも足を運ぶ。洗濯場、警備の詰所、事務室。あいさつをしながら、つい余計なひと言を添えてしまうことも多い。

 (もしかして、私のことを……)

 あちこちに顔を出しては笑っているだけで、肝心な時に何もできない。そんなふうに思われているのではないか。誰かを困らせたことがあったのではないか。

 胸が、きゅっと苦しくなった。

 「……とりあえず、配膳に行ってきますね」

 みうは笑顔を作ろうとしたが、頬の筋肉が少しぎこちなかった。

 掲示板の紙一枚が、陽苑の空気を少しだけ重くする。笑い声の合間に、探るような視線が混じり始めた。

 昼前、菜園から戻ってきた晴矢も、その紙を目にした。

 「……八方ブス?」

 桶を抱えたまま立ち止まり、紙の文字をじっと見つめる。言葉の意味はなんとなく想像できる。しかし、それをあえてここに書いて張り出す理由がわからなかった。

 そこへ、ちょうど通りかかった愛祈が立ち止まる。

 「お、ようやく気づいたか」

 「知っていたんですか」

 「朝の見回りの時にはもう貼ってあった。誰が貼ったのかは、まだ見てないがな」

 愛祈は紙に近づき、腕を組んだ。

 「『八方ブス』か。字面だけ見ると喧嘩を売ってるとしか思えんが……」

 「意味、どう取ればいいんでしょう」

 「八方美人の反対、ってところか? どこから見ても愛想のない奴、みたいな」

 その説明に、晴矢の胸が少しざらついた。

 「それを『注意』しろ、と。誰に向けての話なんでしょう」

 「そこが問題だ」

 愛祈は、廊下の向こうをちらりと見やった。休憩室に向かう女官たちが、わざと掲示板から目を逸らすように歩いていく。

 「誰も自分のことだとは言わないが、誰も『自分のことじゃない』とも言い切れない。妙に後味の悪い張り紙だな」

 「……はがしたほうがいいんじゃないですか」

 「勝手にはがしたら、『図星の奴がやった』って噂されるぞ」

 愛祈の言葉に、晴矢は言葉を失った。紙一枚で、人の心はこんなにも揺れるのか。

 「誰か、落とし物のお知らせでも重ねて貼ってくれないかな」

 「上書きしても、噂は残る。そういうものだ」

 愛祈は小さく息を吐き、紙を指先で軽く叩いた。

 「こういう妙な火種は、放っておくと面倒なことになる。事務室にも一度知らせておいたほうがいいな」

 その日の夕方、事務室の机の上には、掲示板の張り紙がそっくりそのまま置かれていた。

 「……字は、誰かが意識して崩しているね」

 敏貴は、眼鏡越しに紙を覗き込みながら言った。

 「普段からこういう字を書く人の筆跡ではない」

 「わざと、ですか」

 晴矢が問うと、敏貴はうなずいた。

 「気づかれたくないけれど、読んでほしい。そんな感じかな」

 「厄介ですね」

 「厄介だけど、だからこそ放っておけない」

 敏貴は、机の端に積んであった紙束に目をやった。

 「この紙、見覚えがある気がするんだ」

 そう言って、一枚の帳簿を開く。端に余白が多い紙が数枚挟まれていた。その質感が、張り紙とよく似ている。

 「王宮の書庫に眠っていた古い本を写すために、最近この紙を何束か下ろしてきたんだ。礼儀作法の本だったかな」

 「礼儀作法……」

 愛祈が眉をひそめた。

 「その礼儀作法の本に、『八方ブスに注意』なんて言葉が?」

 「確認してみよう」

 敏貴は立ち上がり、棚から鍵束を取り出した。

 「書庫は一人じゃ退屈だろう。ついでに運ぶのを手伝ってくれないか」

 「俺たちを荷物持ち扱いか」

 愛祈は苦笑しながらも、先に立って扉を開けた。

 王宮の書庫は、ひんやりとした空気に満ちていた。背の高い本棚がいくつも並び、古い紙の匂いが静かに漂う。

 「礼儀作法の本は……この辺りだね」

 敏貴が指先で背表紙をなぞり、一冊を抜き出した。布張りの表紙に、かすれた金文字が残っている。

 『婦徳筆記』

 「いかにも古そうな名前だな」

 愛祈が半分あきれた声を出す。敏貴は本を机に置き、慎重にページをめくっていった。

 「『起床の心得』『歩き方』『言葉の選び方』……お、ここだ」

 指が止まった先に、小さな見出しがあった。

 『八方ブスの戒め』

 三人は顔を見合わせる。

 「本当に書いてあるとはな」

 愛祈が思わず笑い、すぐに真面目な顔に戻る。

 「何て書いてある?」

 敏貴は声に出して読み上げた。

 「『八方ブスとは、己が機嫌の悪さを八方にまき散らし、目に入る人ごとに不快の種を投げることなり』……ふむ」

 「……外見の話じゃないんですね」

 晴矢がぽつりと言った。

 「『顔かたちの美しさを言うにあらず、どの方角から見られても不機嫌なる様を戒むる言葉なり』」

 敏貴は続けて読み、ページの端に小さな線が引かれているのに気づいた。

 「ここ、最近誰かが読んだんだろう。新しい線だ」

 「誰がこの本を? 書庫の出入りは決まっているはずだ」

 「書記官と、礼儀作法係の女官、それから――」

 敏貴は顎に手を当てた。

 「陽苑の中で『古い言葉を調べていた』って話をしていた人は、いなかったかな」

 晴矢と愛祈は顔を見合わせる。ふと、みうの姿が頭に浮かんだ。

 「……みうが、最近言ってました」

 晴矢が口を開いた。

 「『昔の言葉には、心をまっすぐにさせる力がある気がします』って。札に書く言葉の幅を増やしたいから、本を探していると」

 「みうさんが?」

 愛祈は、目を丸くした。

 「だが、あいつがこんな乱暴な張り紙を?」

 「いや、みうが張り紙をしたとは限らない」

 敏貴は首を振った。

 「本を読んだ誰かが、面白半分で写しただけかもしれない。文の続きにもこうある」

 敏貴は、指で文章を追っていく。

 「『互いに顔見合わせて笑ひ合ひ、己を省みるべき戒めとして掲ぐるはよし。ただし、誰か一人を指す文言として用ふるべからず』」

 「……なるほど」

 愛祈の口元に、皮肉ではない笑みが浮かんだ。

 「この本を書いた人が、今の騒ぎを見たら頭を抱えそうだな」

 「本来は、『自分たちで気をつけようね』って笑い合うための言葉、ってことですか」

 晴矢が、本の活字を見つめる。

 「それを、誰か一人を指す悪口みたいに掲示板に貼ったから、こんなことになっている」

 「つまり、張り紙をした本人も、意味をちゃんと知らなかった可能性が高い」

 敏貴は本を閉じた。

 「まずは、掲示板から紙を外そう。その上で、『この言葉は本来こういう意味です』ってきちんと伝えるのがいいと思う」

 「誰にだ?」

 「掲示板をいつも見ているみんなに、だよ」

 その夕方、休憩室の前の廊下に、人だかりができた。

 掲示板の前には、八方ブスの張り紙をはがした跡と、その隣に新しく貼られた紙が一枚。

 『本日の読み合わせ
 「八方ブス」は、顔立ちのことではなく、
 どの方角にも不機嫌を向けてしまう人のこと。
 一人を指して使ってはいけません――婦徳筆記より』

 その下に、小さくこう書き添えられていた。

 『誰もどこから見ても不機嫌な人にはなりたくないね。
 だから、疲れたら休憩室で一息ついてください。 陽苑 事務』

 「……敏貴さん、やるわね」

 紙を見上げながら、奈津海がぽつりとつぶやいた。昼前に見た張り紙が頭をよぎり、胸の奥がまだ少しざわつく。

 (自分のことだって、決めつけてたのは私のほうか)

 そこへ、隣から遠慮がちな声がした。

 「奈津海さん」

 みうだった。昼の配膳のときから、なんとなく互いに視線を外してきた相手。今日に限って、言葉を交わすタイミングを逃していた。

 「その……さっきは、休憩室に顔を出さなくてごめんなさい」

 「こっちこそ。洗濯場にお茶を持っていこうと思ったけど、行きづらくて」

 二人は顔を見合わせ、同時に苦笑した。

 「みう、もしかして、自分のことだと思ってた?」

 「……はい。奈津海さんは?」

 「……まあ、少し」

 言葉を重ねるうちに、肩の力が抜けていく。掲示板の新しい紙が、さっきより少し優しく見えた。

 「本当の意味がわかって、よかったですね」

 「うん。でも」

 奈津海は、掲示板から目を離さないまま言った。

 「本来の意味も、ちょっと耳が痛いわ」

 「八方に不機嫌をまき散らす、でしたっけ」

 「そこそこ心当たりがあるから、余計に」

 二人は同時に笑った。

 「じゃあ、わたしたち、八方ブスにならない練習をしましょうか」

 「どうやって?」

 「まず、疲れたらちゃんと休憩室に来ること」

 みうは、掲示板の紙の一文を指さした。

 「『疲れたら休憩室で一息ついてください』って。これ、わたしたちへの宿題みたいなものですよね」

 「勝手に宿題にしないで」

 そう言いながらも、奈津海の声は柔らかかった。

 少し離れたところで、その様子を愛祈と晴矢が眺めていた。

 「やれやれ。紙一枚でこれだけ揺れるとはな」

 「でも、本来の意味を知ったうえで笑い合えるなら、まだいいほうですよね」

 「そうだな」

 愛祈は、掲示板の新しい紙を見上げる。

 「誰もどこから見ても不機嫌な人にはなりたくない。警備としても、気をつけておくか」

 「愛祈さん、十分笑ってますよ」

 「それは仕事中に緩みすぎって意味か?」

 二人の軽口に、晴矢の口元にも笑みが浮かんだ。

 その夜、事務室の机の上には、はがした張り紙と礼儀作法の本が並んでいた。

 「面白半分で写しただけ、かもしれないけど」

 敏貴は、本の背表紙を指で撫でた。

 「言葉は、誰かの胸に刺さることもある。だからこそ、どう貼るか、どう伝えるかも一緒に考えたいね」

 「次からは、『八方ブス』じゃなくて」

 みうが、札用の小さな紙を手の中でくるりと回した。

 「『八方、おだやかでありたい』とかなら、どうでしょう」

 「それもまた、ずいぶん難しい宿題だね」

 敏貴はくすりと笑い、それでもその言葉をどこか気に入ったようにうなずいた。

 「十年計画の余白に、こっそり書いておこうかな」

 陽苑の掲示板から、乱暴な言葉は消えた。その代わりに、「本日の読み合わせ」と題した紙が、ときどき貼られるようになる。

 そこに書かれるのは、古い本から拾ったひと言や、菜園の札に書ききれなかった小さな願い。通りかかるたびに、誰かがふっと笑ったり、ほんの少しだけ背筋を伸ばしたりする。

 誰もどこから見ても不機嫌な人にはなりたくない——そんなささやかな共通認識が、陽苑の空気を、少しずつ柔らかくしていった。
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