底辺冒険者、連鎖視で王都を救う！逆境ブレイク成り上がり

第17話_道化の仮面を脱いだ友

　定期試験の成功から数日後、学院内の空気は誠人に対する見方を一変させていた。
　 以前はただの平民出身者として陰口を叩かれていたが、今では一目置かれる存在になりつつある。
　 しかし、全てが順風満帆というわけではなかった。
　 ある日の放課後、誠人は廊下で声を荒げる樹を見つけた。
　「ふざけんなよ！ あんたら、ずっと誠人の悪口ばっか言ってたくせに、手のひら返しかよ！」
　 相手は貴族階級の生徒たちだった。
　「我々はただ、彼の力を正しく評価しただけだ」
　「今さら何を……」
　 樹は拳を握りしめて震えていた。普段は温厚で感情を抑える彼だが、この日は違った。
　 誠人は慌てて駆け寄り、樹の肩を掴んだ。
　「樹、落ち着け！」
　「でも誠人、お前がどんなに努力したか、俺は見てきたんだ！」
　 その言葉に周囲の空気が変わる。
　 貴族生徒たちは気まずそうに視線を逸らし、やがてその場を去っていった。
　 誠人は樹を見つめ、静かに言った。
　「ありがとう。でも、怒りだけじゃ何も変わらない」
　 樹はしばらく黙っていたが、やがて苦笑した。
　「……俺、今まで仮面をかぶってたんだな。お前が変わったから、俺も変わらなきゃな」
　 その夜、樹と誠人は酒場でグラスを交わし、互いの決意を確かめ合った。


　樹はグラスを置き、ぽつりと話し始めた。
　「俺、ずっと周りに合わせてばかりだった。怒った顔を見せると嫌われるって思って……感情を抑え込んでたんだ」
　 誠人は静かに聞いていた。
　「でも、お前を見て気づいた。恥をかいても、笑われても、前に進むやつが一番強いんだって」
　 彼は拳を握りしめ、真っ直ぐに誠人を見た。
　「だから、俺も変わるよ。もう道化なんかじゃなくて、胸張って生きてみせる」
　 誠人は笑い、グラスを掲げた。
　「じゃあ、これからは本当の仲間としてだな」
　「おう！」
　 二人が笑い合ったその瞬間、長く覆っていた仮面は完全に外れた。
　 樹は仲間としてだけでなく、誠人にとって信頼できる“友”となったのだ。
　 酒場を出ると、夜空には満天の星が輝いていた。
　 樹が空を見上げてつぶやく。
　「この星の下なら、どこまででも行ける気がするな」
　「俺たちなら行けるさ」
　 その言葉に、二人は静かに拳を合わせた。