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第14話「罠と火薬」
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8月4日、午前2時30分。
島の南側――かつての旧弾薬庫跡地。
鬱蒼としたヤブをかき分けてたどり着いた先に、それはあった。
地面の窪みに、半ば崩れた煉瓦と鋼材。そこに埋もれるようにして、朽ちた木箱が並んでいる。
瑛美が膝をつき、手袋越しに木箱を開けた。
「……黒色火薬、あった。湿ってない。使えるわ」
彼女は口元をわずかに持ち上げて笑った。
その笑みを背後で見ていた一平が、思わず声を上げる。
「な、なんでニヤニヤしてんの……」
「怖い時ってさ、笑うしかないじゃん」
瑛美は淡々と答える。「心の準備、できてないって顔してる」
「そりゃ……こんな時間に、火薬掘り出すとか、頭おかしいだろ。っていうか、これマジで爆発すんの?」
「火薬ってのはね、保存状態さえ良ければ100年経っても爆発するよ。だから“火薬庫”っていう隔離建物が必要だったの」
横で見ていた悠が口を挟んだ。「扱いは慎重に。湿気のある空気でも反応が不安定になる。熱源を近づけるのは絶対に禁止」
「それくらい分かってるって」瑛美が鼻で笑う。
黒色火薬の詰まった小瓶を、慎重にクッション材で包みながら、彼女はリュックの底に収納していく。
その作業の最中、背後でガサリと音がした。
「うわっ――!」
叫んだのは一平だった。立ち上がろうとして、足元の木箱に蹴つまずき、ガタンと大きな音を立てて転倒した。
瑛美が凍りつく。
「一平、今、何蹴った?」
「いや、あの……木箱?」
「その木箱、何色だった?」
「え? 緑?」
瑛美の目が見開かれた。
「それ、照明信号弾。衝撃で――」
その瞬間。
パンッ!
小規模ながら、火花とともに一瞬の閃光。
爆発というよりは“点火”のような感覚。しかし、その音は十分に夜の静寂を破った。
「バカッ!!」瑛美が叫ぶ。「発火音、周囲に響いた! 蔓が反応する!」
駈の無線が鳴った。
『音、聞こえた! 大丈夫か!?』
「一平が……! でも火薬は無事! とにかく戻る!」
「……ご、ごめん……」
うつむく一平に、瑛美はしばらく視線を向けていたが、やがてフッと笑った。
「今のでやっと、私より目立ったね。……まぁ、半分死ぬかと思ったけど」
「ほめてんのか、怒ってんのか分かんねぇよ……」
「どっちでもいい。使える火薬が手に入ったんだから、それがすべて」
戻りながら、悠がぽつりと言った。
「これを使って、“島を封じる罠”を張る……そのために、まず場所の選定が必要だ」
駈の声が返る。
「蔓の中枢を焼き払える地点……“心臓部”がどこか、絞り込まないといけない」
そしてもう一つ、誰も言葉にはしなかったが、全員が心の中で感じていたこと――
“火薬の使用は、最終手段になるかもしれない”
つまりそれは――命を賭ける準備、ということだった。
島の南側――かつての旧弾薬庫跡地。
鬱蒼としたヤブをかき分けてたどり着いた先に、それはあった。
地面の窪みに、半ば崩れた煉瓦と鋼材。そこに埋もれるようにして、朽ちた木箱が並んでいる。
瑛美が膝をつき、手袋越しに木箱を開けた。
「……黒色火薬、あった。湿ってない。使えるわ」
彼女は口元をわずかに持ち上げて笑った。
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「そりゃ……こんな時間に、火薬掘り出すとか、頭おかしいだろ。っていうか、これマジで爆発すんの?」
「火薬ってのはね、保存状態さえ良ければ100年経っても爆発するよ。だから“火薬庫”っていう隔離建物が必要だったの」
横で見ていた悠が口を挟んだ。「扱いは慎重に。湿気のある空気でも反応が不安定になる。熱源を近づけるのは絶対に禁止」
「それくらい分かってるって」瑛美が鼻で笑う。
黒色火薬の詰まった小瓶を、慎重にクッション材で包みながら、彼女はリュックの底に収納していく。
その作業の最中、背後でガサリと音がした。
「うわっ――!」
叫んだのは一平だった。立ち上がろうとして、足元の木箱に蹴つまずき、ガタンと大きな音を立てて転倒した。
瑛美が凍りつく。
「一平、今、何蹴った?」
「いや、あの……木箱?」
「その木箱、何色だった?」
「え? 緑?」
瑛美の目が見開かれた。
「それ、照明信号弾。衝撃で――」
その瞬間。
パンッ!
小規模ながら、火花とともに一瞬の閃光。
爆発というよりは“点火”のような感覚。しかし、その音は十分に夜の静寂を破った。
「バカッ!!」瑛美が叫ぶ。「発火音、周囲に響いた! 蔓が反応する!」
駈の無線が鳴った。
『音、聞こえた! 大丈夫か!?』
「一平が……! でも火薬は無事! とにかく戻る!」
「……ご、ごめん……」
うつむく一平に、瑛美はしばらく視線を向けていたが、やがてフッと笑った。
「今のでやっと、私より目立ったね。……まぁ、半分死ぬかと思ったけど」
「ほめてんのか、怒ってんのか分かんねぇよ……」
「どっちでもいい。使える火薬が手に入ったんだから、それがすべて」
戻りながら、悠がぽつりと言った。
「これを使って、“島を封じる罠”を張る……そのために、まず場所の選定が必要だ」
駈の声が返る。
「蔓の中枢を焼き払える地点……“心臓部”がどこか、絞り込まないといけない」
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つまりそれは――命を賭ける準備、ということだった。
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