前作元ランカーの遊戯

結使

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エンターテインメント

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 神威の配信が始まった
 内容は問題になっている件について、そして今日、大会を中止するのかしないのか

『声は聞こえてるね。それじゃ早速本題に入るけど今日の大会は……あれ』

 神威はとあるアプリの通知音が鳴った事に気づいた
 基本通知は切っているが今日は偶然、切り忘れたようだ
 この配信自体緊急で配信に集中していて確認忘れをしたのだろう。いつもならしないようなミスをするくらいには神威でも焦っていると見える

『何かあったのか?』
『何だ今の音は』
『この音知ってる。確かなんかのアプリの通知だったはず』
『今通知音入ったね。通話アプリの』
『放送事故? 神威が珍しい』
『そんなのいいからどうするのか言えよー。謝罪しろー』
『そうだー、大会を中止するのかしないのか。どっちなんだ?』

 話す前に深呼吸をする。普段通りでは印象が薄い。確実に視聴者が聞きたがるようにキャラを作る
 配信をこっちの流れにする

「ハロハロー、聞こえてるかな? 聞こえてないかも? 返答ないと叫ぶよー。モスキート音で」

 配信に声が乗る
 ボイチェンを使ったちゃんとした調整などされていない中性声
 僕が通話の時に使っていた声だ

『うわっ、誰!?』
『誰の声? 配信に乗っちゃってるよ』
『この変な声、ボイチェンだよね』
『まじで放送事故じゃん』
『何何、何が起きたん?』
『誰かが神威に通話アプリで話し掛けてるのか?』

『その独特な変な調整されたボイチェンの中性声……まさかクロか?』
「ピンポーン! 大正解! 流石神威! はーい、ボクはクロさんですよー。皆様やっほー」

『誰?』
『クロ? 誰?』
『配信者?』
『いや、そのまま通話するんかい!』
『元々この予定だった?』
『関係者?』

 当然そんな訳はない、思いっきり放送事故である
 放送事故過ぎて配信の枠を閉じるべき事態、しかし、神威は閉じない
 いや、そんな思考が今の彼には無いのだろう
 何せ連絡を取ってくるはずのない人物からの通話なのだから
 でも残念ながら再会を祝ったりはしない

『クロ、すまないけど今は配信中で』

 神威はすぐに気を取り直す
 配信の枠を閉じるのではなく軌道修正をしようとする、流石配信者非常事態にも対応出来る
 僕はそれをさせない。妨害する、軌道修正したらわざわざ出てきた意味が無くなる

「大丈夫、ボクは知ってて殴り込みしてるからお気にならさず~、さてさて、ここで大会運営の神威に質問です」
『は?』
「嘘偽りなく答えてください。答えないとタライを投げます。嘘の場合はタワシを投げます」

 神威すら僕が何を考えているかわかっていない。それでいい。このままごり押す、こちらとしても分からない方が都合がいい
 僕の考えが分かり神威に話を合わせられるのは困る
 考える間もなく押し付ける

『質疑応答?』
『突然』
『タライを落とすんじゃなくて投げるのか』
『タワシも結構痛そう』
『まぁ大会の件の質問なら無関係では無いからな』
『クロ!?? なんで!??』
『質疑応答か』
『これは普通に気になる』

『はぁ、それで何を答えるんだ?』

 神威が折れて話を聞く姿勢になった

「では質問、神威以外に運営に関わってる人は居る?居ない?」
『居る。俺1人では難しいからな』

『居るんだ』
『まぁ神威だけじゃないとは思ってた』
『その人達はどこに?』
『記載無かったけどな』
『その人達は謝罪配信に出てこないの?』

「質問その2です。SNSで当日に大会中止という話が出ましたが中止の案は今日出た話ですか? それとも前日に出てた話ですか?」
『その質問、本当に必要か? 案が出た日なんて……』
「必要です。答えるのです」

 (おっ、この反応はもしかして)
 質問2つ目でもう重要な質問をする。1つ目も重要と言えば重要な質問
 僕は30分で関係のある複数の質問内容なんて考えられない。これは即興劇だ
 配信という事も考えて少し特徴的に話を続ける

『はいはい、ええっと中止の案だよね。あれ自体は昨日の時点で出ていた話だよ。誰が出したとかは言わないけどね』
「誰が案出したとかそこは別に要らないから捨てといて、ゴミ出しよろしく」
『いや、別に捨てないけど』

『いや、捨てるなよ』
『捨てるの草』
『あれ、昨日の時点で?』
『誰が出したか重要じゃねぇの?』
『よく分からない』

 神威は今の状況を上手く飲み込めておらず反応が素直だ。演技では無い素の反応をしている
 それで良い、寧ろこうじゃないと意味が無い
 声音や反応からしても嘘をついているようには見えない

「昨日の時点で出ていた話、つまり今日突然中止の案が出た訳は無いと」
『あぁ、中止の案は昨日の時点で話に出てはいた。まぁ案として出ていたってだけだからSNSで伝えていないだけで……それが?』
「はい、皆さん、ここテストに出ますよ。メモってくださ~い。さて次は質問3……4だっけ?」
『次は3』
「質問3! 3人が不参加になったと言う事は大会関係以外の人に誰かに言いましたか? これは大会参加者に関しては関係者以外って判定でよろ」
『それなら何人かには、知人に参加出来る人知らないかって感じで……それが?』
「ふふふ、実はこれ伏線なのです」
『伏線?』
「そう! この後の質問の伏線! 壮大な」
『伏線は言ってはいけないのでは?』
「気にしたら負け!」

『伏線は言ったらダメだろ』
『ふふふじゃねぇんだよなぁ』
『変な人』
『ボイチェンな上にキャラ濃いな。やっぱ配信者?』
『配信気になるわぁ』

「次の質問です。3人不参加になった後、2人参加者集めた話は誰かにしましたか? PS 運営以外」
『運営以外に? していないよ。3人集まりきったならともかく2人集まったって話はする必要無いからね』
「誰にも?」
『……一応1人にはしたけど』

 1人、それはお茶っ子の事で間違いないだろう

「それ以外にはしてないと、嘘ついたのでスローイングタワシ確定ね。最速機動でお届けします」
『してない。クロ、何がしたい? 意図が分からない』
「その人物に話した事は真実? そう焦らない焦らない。謎解きにはまだ早いんだよホームズくん」
『真実だよ。少なくともあの人に嘘をつく理由は無い。ってそっちがワトソンなのか』

 (質問はもう良いかな。揃った)
 僕がお茶っ子と繋がっている事を神威は知らない、だから本当に訳が分からない質問にしか思えないだろう
 真実を神威から聞けた、これでほぼ確定した

『おふざけは終わりにして欲しい。本題入りたいんだけど』
「いやぁボク大真面目だよー。今の質問の回答でSNSで出た話の元は完全に潰したから」
『潰した?』

 僕がやりたかった事は殆ど終わった、あと1つでこの配信でやりたかった事は終わる
 何とか流れを切らずに進める事が出来た
 (神威がちゃんと乗ってくれてよかった。途中で強制的に通話落とされたら終わってた)

「神威さ~、反応からしてSNS見てないでしょ?」
『確かに忙しくて軽く見た程度だけど大まかな内容は知っている』
「神威が突然当日に中止を宣言したって話?」
『は? なんだそれ』
「多分神威、人数足りないから大会を中止にするって案が今日何故かSNSに当然流れたくらいの認識でしょ」
『そうじゃないのか? それで大会中止するかどうかをこの配信で言うつもりだったんだが』

 神威の認識と現状SNSで流れている情報は食い違っている
 元の参加人数に達していないから大会が中止になるという情報が何故かSNSで広がった(提案したのが誰かは伏せられている。提案された日も不明)
 と
 神威が大会開催当日の今日に突然元の参加人数に達していないから大会を中止にすると決めた(提案したのが神威、その上今日その案を出した)
 では全く異なる
 この食い違いは気付かないと大きい行動のミスを犯す原因になりかねない

「違うんだなぁそれが……まぁ、もうどうでもいいか」
『もうどうでもいい?』
「大会は予定通り進む訳だし」
『どういう事だ?』

『どういう事?』
『このクロって人も運営って事?』
『いや、運営側の人間ではないだろ。質問の内容も隠したい事だろうし』
『大会は予定通り進む?』
『よく分からん』
『何言ってんだ?』
『なるほど、分からん』

「元々大会はやる予定でしょ? 神威は最初から大会中止する気ない、合ってる?」
『勿論、そうだ。俺は中止する気なんてない、3人だったら厳しかったが1人欠けている程度なら調整すればいい。案としてはオンラインのくじ引きを考えている』

『くじ引きか。ランダムだね』
『引いた人は1回戦なしってことか良いなぁ』
『ランダムならまぁ文句は出ないか?』

「くじ引きもやる必要ない」
『事前に誰か決めるって事か?』
「いや?」

『?』
『よく分からない』
『なるほど、参加するって事だね。確かに満たしているから』

「正解、正解、大正解~! 気づいた人居るんだ」
『何を言って』
「コラコラ配信者、ちゃんとコメント見ないとダメでしょ? 職務怠慢は行けないんだぞ~」
『コメント……そういう事か』
「そう、ボクが最後の1人」

 僕なら大会の条件を満たしている、今使ってる機体は充分に使い慣れた
 流石にまだランカー時代に比べたら操作は鈍いかもしれない、だけど充分優勝を狙えるだけの技量はある
 本当は参加する気はなかった、でも僕はまだ子供心を忘れていない人間でちょっと楽しんじゃった詫びをしないと

『最後の1人?』
『つまりこの人も最高ランク到達者?』
『そういう事か』
『それか前作ランカーかも』
『あっ、クロって名前、思い出した』
『前作で長い期間ランカーやってたクロか』

『参加なんてどういう風の吹き回しだ?』
「おいおい、風って奴はいつどのように吹くか分からないものだぜ神威」

 僕、前作ランカーのクロが最後の大会参加者
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