空色の瞳に映るわたしは、あなたへ伝える言葉すら知らない

神崎みこ

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ゆがめたのにただしたい(おまけ:王女視点)

 小競り合いはやがて大きな争いの渦となっていき、あっという間に国中へと拡がっていった。
歪みを正し、輝いた方向へと導いていくはずの王族はただうろたえた。
神子が去って幾つかの季節が過ぎたとき、終焉ははっきりとした形で彼らの前にぶら下がっていた。



「お兄様」


聖女、と呼ばれていた王女が兄を呼ぶ。
もはや彼女をそう呼ぶものはおらず、王宮内の半数はどこかへ逃げ出してしまった。
眉間の皺を直そうともせず、兄王子は妹姫を抱き寄せた。

二人きりの兄妹。

同じ父母を持ち、そして誰よりも高い場所へ登ることを約束された青年と、誰よりも神に近く尊き人となるはずだった妹は肩を寄せ合う。

いつのまにか始まった反乱は、あっという間に国を飲み込み、もはやこの都ですらあちこちで、そののろしが上がっている。

どうしてこうなってしまったのか。

悔やんだところで、彼らにはもはや理由すら理解することはできない。
それが、わずかばかり上げた税のせいだったのか、厳しすぎる戒律のせいだったのか。
親密な関係にあった神殿ですら、もはや彼らとは距離を置き、そして勝手に神の声を垂れ流す。

その神殿も、徐々に求心力を失いつつあり、この国でのより所は反乱軍の中心にあるのだろう。
だが、ここまできても、彼と彼女はその役割を降りることはできない。
王子として、王女としてしか育てられていないのだから。


「あんなこと、しなければ良かったのか」

それは、神子を呼んだ儀式のことなのか、神子に対する扱いそのものなのか。
兄の言葉の真意がわからず、ただ妹は彼の胸に縋る。

ただ、伝統ある儀式にのっとっただけだ。

王も、神官長も、「偉大なる祖が決めたこと」としか言わない儀式に、何の疑問も抱いてはいなかった。
歪みが出ればそれを正すのは王家の仕事だ。
そして、それを担うことは誉れである。
信じて疑わなかった事実が、彼の足元から崩れ去る。
とても同じ人だとは思えない神子を見るたび、王子は不安になった。

あれ、を召喚したのは自分だ。

だが、自分は出来損ないなどでは決してない。
神子が神子であると断定されるまでの間、全ての視線に脅え、それを見せないように虚勢を張った。

私の、せいではない。

戦火が広がる都を見下ろしながら、彼は剣を携える。


「お兄様!」


縋りつく妹を置き去りにし、彼は残り少なくなった兵と供に戦場へと向かう。



ゆがみは正され、そして王家は消滅した。

彼らが望んだ形とは、異なったけれど。

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お題はcapriccio様(http://noir.sub.jp/cpr/)のいろはにほへとより


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