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第29話 オッサン、ハーフエルフと対面する
ダスクが閉じ込められていたのは木の家ではなく、自然の洞窟を利用した牢だった。
見張りのエルフ達と入れ替わりに、俺達三人は今回の事件の首謀者と相対した。
「へえ、今日の客人は『歌姫』か。こりゃ豪華だな。そろそろ俺の処刑も近いってことか」
一昨日俺に半殺しにされた男は、牢の中でピンピンしていた。
やっぱりムジカの治癒魔法は凄いなあと彼を見ると、「この男の所持していた高いポーション全部ぶっかけてやったので、傷の治りが早かったんでしょう」と身も蓋もない事を言われた。
ムジカは牢の前まで来ると腕を組み、ゾッとする程冷ややかな目で、この森の住民を害そうとした男を見下ろした。今は族長としての立場に徹しているのだろう。
「あなたを消したいのはやまやまですが、利用価値があるうちは生かします」
「それはお優しい事で。でも何度も言ってるように、俺はドゥエル王国内での噂以上の事は知らない。ゼルドナ王国での仕事も最近請け負ってないからな」
「では、この森の情報はどこで仕入れました」
「見当はついてるんだろ。南の森のエルフに聞いたんだよ。この北の森に腹違いの兄弟がいるって嘘ついてな」
殴り合いをしているわけでも、口汚く罵ってるわけでもないが、美形同士の腹の探り合いは何だか空気が冷え冷えしてくる。
「ラヴァンドさん。ここ以外にもエルフの森があるんですか?」
俺は小声でラヴァンドに、気になった事を聞いてみた。
「ああ、そこも結界が張られているから、ヒトには気付かれにくいがな」
ダスクはハーフエルフだからそこにも出入り出来て、ここの詳しい地理や住民の情報を入手したのか。
俺はまだこの世界の歴史や地理を詳しく知らない。
この森で生きて行くにしても、最低限の知識は後でムジカに教えて貰おう。
それから台所の使用許可と、食べられる動物の捌き方とか、とにかくエルフの幼児レベルを脱する事から始めよう。
今後の方針が決まってひとり悦にいっていると、どこからか視線を感じた。
金色の目——ダスクが俺をジッと見て、口の端を歪める。
「本当に異世界から来たお姫様なんだな、お前。エルフ達にこんなに大事に守られてるんだから」
嫌味なのだろうか?
俺はお姫様とは対極の存在であるオッサンなので、そう言われてもピンと来ない。
出会って間もない敵の男の性格など、俺に分かるわけもないが、好意を持たれて無い事だけは確かだ。
「ダスクだっけ、あんたは俺の事憎んでるのか? 仲間を殺したから」
「ユイ! そんなヤツと口をきいてはいけません! あなたの教育上良くありません!!」
「ムジカ。反面教師という言葉があってだな」
ギャンギャン後ろで騒いでいるムジカを、ラヴァンドが押さえてくれているうちに、俺はダスクとの会話を続けた。
「どうなんだ? アイツら仲間だったんだろう?」
「別に。今回の仕事は人手がいるから誘っただけだ。仮にアイツらを殺せって依頼があったら、俺は殺すし、逆でも同じ事だろう」
「そうか」
親友の仇と憎まれても困るが、ここまでドライだともう価値観が違うと理解するしかない。
俺を観察していたダスクがフンと鼻を鳴らした。
「お姫様が俺に改心しろとでも説得するつもりか? 真っ当に生きろとか、他人の命を大事にしろとか。残念ながら俺は生まれた時からこんな感じだ。利益のない殺しはしないがな」
「………じゃあ、あんたは話が通じない相手でもないんだな」
「え?」
金色の目が俺を真っ直ぐ見た。
「利益の有無で交渉の余地はあるんだろう? そもそも俺は説得しに来たわけでもない。あんたが今まで殺した総数には負けるだろうが、一日の記録なら俺の方がきっと上だからな」
最後の言葉はもちろん自虐だ。
別に彼が今までもこれからも、どんな生き方をしようと俺には関係ない。
ムジカの様子から、ダスクを処刑する気がないのは予想出来たが、ダスク自身がそれをいい事に再度エルフ達に害をなす気なら、俺だって黙っちゃいない。
殺しを除外して、攻撃を無効化する方法を考えなくてはいけない。
「フハッ」
何がツボだったのか、ダスクが吹き出した。
「なかなかどうして、強かなお姫様じゃないか。こりゃ一国の王なんかに献上するのは勿体無いな」
「そのお姫様ってのは、やめてくれないか? ムズムズする」
さっきから気になってた点を指摘すると、ダスクはあっさりと「分かった。ユイ」と俺の意見を聞き入れてくれた。
「なあ、ユイ。俺と一緒に来ないか? 俺がお前を姫どころか王様にしてやるよ。お前の力があれば、この世界だって牛耳れる」
牢で囚われの身だっていうのに、なんでコイツは自信満々に俺を勧誘出来るんだ。
「お断りだ。俺は彼らに——エルフに助けられた。この森の住民に危害を加えられることがなければ、ヒトに干渉するつもりは無い」
「そりゃ勿体無い」
「おしゃべりの時間は終わりです」
尚も何か言い募ろうとしたダスクを、ムジカがピシャリと遮った。
「嫉妬は見苦しいぜ、族長さん。余裕の無い男は嫌われるもんだ」
「なっ!?」
話を遮られたのにイラついたのか、挑発するような事を言う。
ムジカも「コイツの言ってる事は本当ですか!?」とばかりに、俺とダスクを交互に見る。
「俺は君を嫌わないから、安心しろ」と伝えれば、ムジカはあからさまにホッとした後、一つコホンと取り繕うように咳払いをする。
「茶々を入れないでいただきたい。私達はあなたをこれから解放するつもりでいるのですから」
「は?」
ムジカの言葉はダスクには意外だったらしく、ポカンと口開けている。
「無論、あなたが我々にした事は看過出来ないので、無条件というわけにはいきませんが」
彼が目で合図を送ると、待機していたエルフが三人、ムジカと共に牢の中に入り込んだ。
そして有無を言わさずダスクの身体を押さえつけた。
「お前! 俺に何をするつもりだ!?」
今まで斜に構えていた男も、さすがにこの状況に危機感を覚えたか、ジタバタと暴れ始める。
「動かない方が良いですよ。私の手元が狂う恐れがある」
そう言ってムジカが取り出したメスによく似たナイフに、ダスクの顔が色を失う。
ダスクが静かになった隙に、ムジカはラヴァンドを振り返り「お願いします」と何かを任せた。
「何を?」と俺が問う前に、視界と耳がラヴァンドの大きな手によって塞がれた。
しかしそれは完全にでは無い。
少し身じろぎして背後を振り返ると、指の隙間から苦笑している顔が見えた。
ムジカはこの先の光景を俺に見せたく無いが、ラヴァンドはそうでも無いらしい。
いや、積極的ではないにしろ、見ろと言う事だ。
「死ぬよりマシだと思って、少しだけ我慢なさい」
ダスクの右耳の付け根に鋭く光る刃が当てられたと思ったら、トマトを切るよりも簡単に、彼の耳が削ぎ落とされた。
「———っ!!」
当然、切られた方は堪ったもんじゃない。
切断面は髪に隠れて見えないが、ボタボタと血を流しながらダスクが痛みに身悶える。
ムジカは切り取った右耳を瓶に詰めると、別の瓶を取り出した。
その中にも何故か耳が入っている。
瓶から耳を慎重に取り出し、ダスクの右耳があった辺りに押し付けた。
時間にして三分もなかっただろう。
ムジカが手を離すと、まるで元からそうであったかのように、ダスクの物ではない耳がしっかりとくっついていた。
「もう良いですよ」
ムジカの言葉はラヴァンドと、ダスクを拘束していたエルフ達に向けられたものだった。
俺の目隠しが外されると同時に、エルフ達も牢から出て行った。
牢の中には、ややぐったりしたダスクが恨めしそうにムジカを睨む。
「…………あの南の森のエルフ共、俺にガセ情報掴ませたな。北の森の現族長は温厚な美人だって話だったのに、とんだ鬼畜だ」
「それはそれは。ご期待に添えず申し訳ありませんでした。今ここでその情報は更新して下さい」
ツンと澄まして言うムジカを面白そうに見て、ラヴァンドがコソッと俺に、
「私が族長に成り立ての頃だったら、情報を全部引き出したらコイツの命はないだろうから、ムジカは優しい方だよ」と、聞かなかった事にしたい情報をくれた。
「それで、新しい耳の調子はどうですか?」
労わりの欠片もない冷たい声音で、優しい族長が牢の中の男に問いかける。
「恐ろしい事に良好だよ。俺を放して、情報収集の駒に使おうって腹か」
「話が早くて何よりです。それに加えて、裏ギルドへこの依頼は不可能で割に合わないと、伝えて貰う役割もあります」
ムジカは先程切り取った耳を入れた瓶を、嫌な顔をするダスクの目の前に翳して告げる。
「この耳は未だあなたと繋がっています。あなたがエルフに対して裏切り行為をしたとみなした場合、この耳を通じてあなたを死に追いやります。その手段が毒蛇か炎の矢か、選択権はありません」
「拒否権もだろう?」
「ユイのお陰で未遂に終わりましたが、あなたが我らにしようとした行為をお忘れではないでしょう?」
はーっと、ダスクが長い息を吐いた。
「分かったよ、美人でおっかない族長さん。生殺与奪を握られてるんだ、命令には従う。それで良いか?」
「ええ、結構です」
抵抗するだけ無駄だと分かると、あっさりダスクは恭順の意を示した。
それから最後にチラリと俺の方を見る。
「エルフの敵には金輪際ならないと約束するから、歌姫——ユイを俺に預けてみないか? 悪いようにはしないから」
「駄目です、無理です、絶対許可しません、寧ろ何故許されると思っているのか、理解に苦しみます。年端のいかないユイを、あなたのように倫理観の壊れた人に預けるわけないでしょう? 馬鹿なんですか? それとも、今ここで死にたいのですか??」
「いや、今はやめとく………」
怒涛のムジカの反論に、ダスクも若干引き気味で言葉を引っ込めた。
その後、出立の準備が整ったダスクはエルフ数名に囲まれて、この森を去って行った———
見張りのエルフ達と入れ替わりに、俺達三人は今回の事件の首謀者と相対した。
「へえ、今日の客人は『歌姫』か。こりゃ豪華だな。そろそろ俺の処刑も近いってことか」
一昨日俺に半殺しにされた男は、牢の中でピンピンしていた。
やっぱりムジカの治癒魔法は凄いなあと彼を見ると、「この男の所持していた高いポーション全部ぶっかけてやったので、傷の治りが早かったんでしょう」と身も蓋もない事を言われた。
ムジカは牢の前まで来ると腕を組み、ゾッとする程冷ややかな目で、この森の住民を害そうとした男を見下ろした。今は族長としての立場に徹しているのだろう。
「あなたを消したいのはやまやまですが、利用価値があるうちは生かします」
「それはお優しい事で。でも何度も言ってるように、俺はドゥエル王国内での噂以上の事は知らない。ゼルドナ王国での仕事も最近請け負ってないからな」
「では、この森の情報はどこで仕入れました」
「見当はついてるんだろ。南の森のエルフに聞いたんだよ。この北の森に腹違いの兄弟がいるって嘘ついてな」
殴り合いをしているわけでも、口汚く罵ってるわけでもないが、美形同士の腹の探り合いは何だか空気が冷え冷えしてくる。
「ラヴァンドさん。ここ以外にもエルフの森があるんですか?」
俺は小声でラヴァンドに、気になった事を聞いてみた。
「ああ、そこも結界が張られているから、ヒトには気付かれにくいがな」
ダスクはハーフエルフだからそこにも出入り出来て、ここの詳しい地理や住民の情報を入手したのか。
俺はまだこの世界の歴史や地理を詳しく知らない。
この森で生きて行くにしても、最低限の知識は後でムジカに教えて貰おう。
それから台所の使用許可と、食べられる動物の捌き方とか、とにかくエルフの幼児レベルを脱する事から始めよう。
今後の方針が決まってひとり悦にいっていると、どこからか視線を感じた。
金色の目——ダスクが俺をジッと見て、口の端を歪める。
「本当に異世界から来たお姫様なんだな、お前。エルフ達にこんなに大事に守られてるんだから」
嫌味なのだろうか?
俺はお姫様とは対極の存在であるオッサンなので、そう言われてもピンと来ない。
出会って間もない敵の男の性格など、俺に分かるわけもないが、好意を持たれて無い事だけは確かだ。
「ダスクだっけ、あんたは俺の事憎んでるのか? 仲間を殺したから」
「ユイ! そんなヤツと口をきいてはいけません! あなたの教育上良くありません!!」
「ムジカ。反面教師という言葉があってだな」
ギャンギャン後ろで騒いでいるムジカを、ラヴァンドが押さえてくれているうちに、俺はダスクとの会話を続けた。
「どうなんだ? アイツら仲間だったんだろう?」
「別に。今回の仕事は人手がいるから誘っただけだ。仮にアイツらを殺せって依頼があったら、俺は殺すし、逆でも同じ事だろう」
「そうか」
親友の仇と憎まれても困るが、ここまでドライだともう価値観が違うと理解するしかない。
俺を観察していたダスクがフンと鼻を鳴らした。
「お姫様が俺に改心しろとでも説得するつもりか? 真っ当に生きろとか、他人の命を大事にしろとか。残念ながら俺は生まれた時からこんな感じだ。利益のない殺しはしないがな」
「………じゃあ、あんたは話が通じない相手でもないんだな」
「え?」
金色の目が俺を真っ直ぐ見た。
「利益の有無で交渉の余地はあるんだろう? そもそも俺は説得しに来たわけでもない。あんたが今まで殺した総数には負けるだろうが、一日の記録なら俺の方がきっと上だからな」
最後の言葉はもちろん自虐だ。
別に彼が今までもこれからも、どんな生き方をしようと俺には関係ない。
ムジカの様子から、ダスクを処刑する気がないのは予想出来たが、ダスク自身がそれをいい事に再度エルフ達に害をなす気なら、俺だって黙っちゃいない。
殺しを除外して、攻撃を無効化する方法を考えなくてはいけない。
「フハッ」
何がツボだったのか、ダスクが吹き出した。
「なかなかどうして、強かなお姫様じゃないか。こりゃ一国の王なんかに献上するのは勿体無いな」
「そのお姫様ってのは、やめてくれないか? ムズムズする」
さっきから気になってた点を指摘すると、ダスクはあっさりと「分かった。ユイ」と俺の意見を聞き入れてくれた。
「なあ、ユイ。俺と一緒に来ないか? 俺がお前を姫どころか王様にしてやるよ。お前の力があれば、この世界だって牛耳れる」
牢で囚われの身だっていうのに、なんでコイツは自信満々に俺を勧誘出来るんだ。
「お断りだ。俺は彼らに——エルフに助けられた。この森の住民に危害を加えられることがなければ、ヒトに干渉するつもりは無い」
「そりゃ勿体無い」
「おしゃべりの時間は終わりです」
尚も何か言い募ろうとしたダスクを、ムジカがピシャリと遮った。
「嫉妬は見苦しいぜ、族長さん。余裕の無い男は嫌われるもんだ」
「なっ!?」
話を遮られたのにイラついたのか、挑発するような事を言う。
ムジカも「コイツの言ってる事は本当ですか!?」とばかりに、俺とダスクを交互に見る。
「俺は君を嫌わないから、安心しろ」と伝えれば、ムジカはあからさまにホッとした後、一つコホンと取り繕うように咳払いをする。
「茶々を入れないでいただきたい。私達はあなたをこれから解放するつもりでいるのですから」
「は?」
ムジカの言葉はダスクには意外だったらしく、ポカンと口開けている。
「無論、あなたが我々にした事は看過出来ないので、無条件というわけにはいきませんが」
彼が目で合図を送ると、待機していたエルフが三人、ムジカと共に牢の中に入り込んだ。
そして有無を言わさずダスクの身体を押さえつけた。
「お前! 俺に何をするつもりだ!?」
今まで斜に構えていた男も、さすがにこの状況に危機感を覚えたか、ジタバタと暴れ始める。
「動かない方が良いですよ。私の手元が狂う恐れがある」
そう言ってムジカが取り出したメスによく似たナイフに、ダスクの顔が色を失う。
ダスクが静かになった隙に、ムジカはラヴァンドを振り返り「お願いします」と何かを任せた。
「何を?」と俺が問う前に、視界と耳がラヴァンドの大きな手によって塞がれた。
しかしそれは完全にでは無い。
少し身じろぎして背後を振り返ると、指の隙間から苦笑している顔が見えた。
ムジカはこの先の光景を俺に見せたく無いが、ラヴァンドはそうでも無いらしい。
いや、積極的ではないにしろ、見ろと言う事だ。
「死ぬよりマシだと思って、少しだけ我慢なさい」
ダスクの右耳の付け根に鋭く光る刃が当てられたと思ったら、トマトを切るよりも簡単に、彼の耳が削ぎ落とされた。
「———っ!!」
当然、切られた方は堪ったもんじゃない。
切断面は髪に隠れて見えないが、ボタボタと血を流しながらダスクが痛みに身悶える。
ムジカは切り取った右耳を瓶に詰めると、別の瓶を取り出した。
その中にも何故か耳が入っている。
瓶から耳を慎重に取り出し、ダスクの右耳があった辺りに押し付けた。
時間にして三分もなかっただろう。
ムジカが手を離すと、まるで元からそうであったかのように、ダスクの物ではない耳がしっかりとくっついていた。
「もう良いですよ」
ムジカの言葉はラヴァンドと、ダスクを拘束していたエルフ達に向けられたものだった。
俺の目隠しが外されると同時に、エルフ達も牢から出て行った。
牢の中には、ややぐったりしたダスクが恨めしそうにムジカを睨む。
「…………あの南の森のエルフ共、俺にガセ情報掴ませたな。北の森の現族長は温厚な美人だって話だったのに、とんだ鬼畜だ」
「それはそれは。ご期待に添えず申し訳ありませんでした。今ここでその情報は更新して下さい」
ツンと澄まして言うムジカを面白そうに見て、ラヴァンドがコソッと俺に、
「私が族長に成り立ての頃だったら、情報を全部引き出したらコイツの命はないだろうから、ムジカは優しい方だよ」と、聞かなかった事にしたい情報をくれた。
「それで、新しい耳の調子はどうですか?」
労わりの欠片もない冷たい声音で、優しい族長が牢の中の男に問いかける。
「恐ろしい事に良好だよ。俺を放して、情報収集の駒に使おうって腹か」
「話が早くて何よりです。それに加えて、裏ギルドへこの依頼は不可能で割に合わないと、伝えて貰う役割もあります」
ムジカは先程切り取った耳を入れた瓶を、嫌な顔をするダスクの目の前に翳して告げる。
「この耳は未だあなたと繋がっています。あなたがエルフに対して裏切り行為をしたとみなした場合、この耳を通じてあなたを死に追いやります。その手段が毒蛇か炎の矢か、選択権はありません」
「拒否権もだろう?」
「ユイのお陰で未遂に終わりましたが、あなたが我らにしようとした行為をお忘れではないでしょう?」
はーっと、ダスクが長い息を吐いた。
「分かったよ、美人でおっかない族長さん。生殺与奪を握られてるんだ、命令には従う。それで良いか?」
「ええ、結構です」
抵抗するだけ無駄だと分かると、あっさりダスクは恭順の意を示した。
それから最後にチラリと俺の方を見る。
「エルフの敵には金輪際ならないと約束するから、歌姫——ユイを俺に預けてみないか? 悪いようにはしないから」
「駄目です、無理です、絶対許可しません、寧ろ何故許されると思っているのか、理解に苦しみます。年端のいかないユイを、あなたのように倫理観の壊れた人に預けるわけないでしょう? 馬鹿なんですか? それとも、今ここで死にたいのですか??」
「いや、今はやめとく………」
怒涛のムジカの反論に、ダスクも若干引き気味で言葉を引っ込めた。
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~お知らせ~
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