パークラの荷物持ちと魔法使いがパーティーを組んだら

クロタ

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第5話 事前準備は大事

「良かったですね、ラントさん。これで新しいパーティー結成ですね」

相変わらず真意の読めない笑顔のオルコギルド長に、俺のパーティーメンバーとなった魔法使いロワ。
ギルド長は常態がアレなので置いておくとして、何でロワはそんな嫌そうな顔してるんだ。
数合わせで仕方なくなら、俺よりもっとレベルの高い冒険者を勧誘すれば良いだろう!?

「そうと決まればさっさと行くぞ」
「うわっ! どこへだよ!?」

猫の子のように首根っこを掴まれ、引き摺られそうになったので俺は激しく抵抗した。
今度はロワが不機嫌な顔のまま「解せん」と呟く。
いや、確かに今の俺に彼の誘いを断る選択肢はないが、言動が強引過ぎる。
俺も仕事仲間と割り切って、仲良しこよしするつもりは無い。
だけどギスギスするのも嫌だから、同じパーティーメンバーなら相互理解に努めたいんだ。

「私とお前で総合レベル60の条件は満たした。大ダンジョンに行くに決まっているだろ」
「今から!?」

「何か問題が?」とでも言いたげな不満顔だが、大ありだ!
冒険者として、なんて常識知らずなんだ、この男は!!
しかしふと冷静になると、さすがに彼の言動はあり得なさ過ぎると思い至った。
…………………………………………………。
まさかロワって、ひょっとして………………?
嫌な予感が外れてますようにと祈りながら、俺はおずおず聞いてみた。

「えーと、ロワ? あんた、ダンジョンに入った経験は? そもそも冒険者になって何年目なんだ? 正直に言ってくれないか? 大事なことなんだ」

真っ直ぐ俺を射抜いていたヤツの視線がフッと外される。

「…………先程、冒険者カードを貰ったばかりだ」

やっぱりシロウト同然か!!!

「しかし問題ない。魔物討伐の経験はあるし、私の目は『鑑定眼』だ。経験が無くとも魔物の急所は即座に分かる。あと、それ以外もな」
ロワが自分で『鑑定眼』だと言った瞳で、ジロリと俺を睨め付ける。

『鑑定眼』———確か別名『真実を見破る目』だと言われてるのは知ってる。
ただそれを保持しているのは稀で、俺は今までお目にかかった事がない。
ロワの言う通り、魔物の急所を見抜く力があるなら、ダンジョンで有利に働くだろう。
加えてロワはレベル50の魔法使いだ。
先程のゴルフォへの攻撃だけで彼の力の全体像は測れないが、大ダンジョンの魔物相手でも通用するだろう。
問題は、どこまで潜るかだ。

「ロワ、採取が目的と言ったな。何を取りに行くつもりなんだ?」
「お前、さっき59階層まで行ったと言ったな?」
質問を質問で返された。
「『お前』じゃなくて、俺の名前は『ラント』だ」
「そんなのどうでもいい」
「『ラント』だ」
「………………………………ラント」
「良し!」

こういうのは最初が肝心だからな。即席とは言え、パーティーメンバーの名前くらい覚えてもらわないと。
さて、話を戻そう。

「で、俺が59階層まで行ったのが何だって?」
「お前……ラントは、その時も荷物持ちで行ったのだろう? 覚えているか」
「もちろん! 59階層から命からがら戻ってきたからな!」


———そう、あれは1年前の事。
ギルド主体で募集をかけて、大ダンジョンの完全攻略を目指したのだ。
俺はそのパーティーの末席に、荷物持ちとして参加させてもらった。
幸運な事に女性冒険者がパーティーにいなかったのが、俺が入れた理由だ。

大ダンジョンには入り口が一つ、出口が二つある。
出口の一つ目は10階層、二つ目は30階層だ。
ちなみに出口からは外に出られるが、そこから中に入ることは出来ない。
原理は不明だが、同じ階層にいる筈の別のパーティーとなかなか中で出会わないように、ダンジョンはどこか空間が歪んでいる。

要するに、この大ダンジョンは一度外に出たら最初からやり直さなければいけないのだ。
俺がその前に所属していたパーティーでは、42階層まで行けた。
レベル40が2人、加えて俺というパーティーだったけど、それが限界だった。

しかし、完全攻略を目的としたパーティーは規模が違う。
レベル30台が20人、レベル40台が20人、レベル50が5人、俺を加えた荷物持ち3人。
レベル総合1650越えのパーティーだ。
誰しも今度こそ深層部まで到達し、完全攻略を成し遂げると思い込んでいた———


「59階層で『モザイク』の襲撃に遭ったそうだな」
ロワの低い声が俺を現実に戻す。

ああ、そうだ。
『モザイク』はこの街の大ダンジョンに限らず、ある程度の高レベルのダンジョンで最深部を守るように、その手前の階層に出没する魔物だ。
いろんな魔物の特徴を有し、個体差が激しいので討伐に骨が折れる。
ただ、『モザイク』が出たという事は、最深部に限りなく近づいた証だ。

「あれだけの戦力があったのに、3頭倒すのがやっとだったな……」

レベル10で戦力外の俺は、ひたすら邪魔にならないよう隅っこで見守ってるしか出来なかった。
レベル50とレベル40の冒険者全員が戦闘不能になって、これ以上は死人が出ると、パーティーは泣く泣くダンジョンから撤収したんだ。うん。今でも不甲斐ない苦い思い出だ。

「そこで『モザイク』を1頭回収したな?」

ロワの質問は意外なものだった。
『モザイク』の生態はよく分かってないから、食材や資材以前に研究対象として、その死骸はギルドから然るべき研究施設に引き取られた筈だ。
まあ3頭倒して、1頭持ち帰るのが精一杯だったが。

「ああ、それが何だって言うんだ?」
「その体内から新種の植物が採取された。黒い花で、薄紫の実がついている。59階層で見なかったか? 報告書には書かれていなかったが」
「黒い花で薄紫の実……………………いや、覚えていない」
正直50階層以上は、襲い来る魔物から逃げるのに必死だった。
新しく踏み行った階層は、その地形などをギルドに報告する義務があるから、ぼんやり覚えている。
しかし植物となると…………。
心に余裕がある時なら気に留めただろうが、正直俺の記憶には無い。
俺の報告にロワは落胆をあらわにする。

「しょうがないだろう! 59階層で生きるか死ぬかの状況だったんだぞ!?」
「私はそこまで行くつもりだ」
「は?」

いくらレベル50と言えどシロウトで、ほぼダンジョン最下層を目指すなんて自殺行為だ。
それが顔に出たのだろう、ロワは不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「最深部への踏破を目指すつもりはない。私の目的はあくまでその植物の採取だ」
「でも魔物と対峙するのは避けられないぞ? 階層一面がお花畑とかなら、採取してすぐに引き返せるかもしれないけど……さすがにそんな場所は記憶にないからな」
「………………………………………説明が面倒だな。おい、ギルド長」
深々と溜息を吐くと、渋面の男は横柄にオルコギルド長を呼んだ。

「はい、何でしょう? ロワさん」
「このギルドに訓練場みたいな場所はないか?」
「それならこの地下にございます。ご案内しましょう」

ギルド長の後についてロワはさっさと行ってしまう。
何だ、この流れは?
俺は困惑しながらも、2人の後を追った。

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