白き時を越えて

蒼(あお)

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第3章雑談:空山

千秋さんのこと

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「ちあちゃんは可愛いよー。
 なにより、仕事が出来るってのは大きい」

「出来る女性って格好いいですよね」

「そうそう。
 はるちゃんのミスも全部無かったことにしてるし」

「へぇ、お姉さんのフォローまでして
 えらいですね」

「フォローってレベルじゃない
 完璧で華麗なフォローだよ。
 はるちゃん、
 実は試験の成績も基準以下だし
 身体能力も並の女性と同じくらいだから
 本来はこんなところには
 いられない筈なんだけど」

「……へ?」

「試験の結果が送られる前に
 全部、データを改竄しちゃってね。
 はるちゃんは
 データベース上では
 トップクラスのエリートなんだよ」

「えぇぇっ!?
 それって、駄目なんじゃないですか?」

「本当に駄目なら、ここにはいないはずさ。
 それこそ、仕事についていけなくてさ。
 最初こそ駄目だったけど
 はるちゃんは決して出来ない人でもない」

「それに、ちあちゃんのやったことに
 上の奴が誰も気づいてないなら、
 本当の馬鹿しかいないってことになる」

「うーん、そういうものでしょうか」

「ま、ちあちゃんが出来るから
 手放さなくて良い間は手放したく
 なかっただけで、
 きっと気づかれてはいたんだろうね。
 いつからなのかは、知らないけど」

「……えっ?」

「じゃなきゃ、こんなところで
 見捨てられる側の人間にはなっていないよ。
 本当に必要と思われているなら
 どんな手を使ってでも
 向こうの世界に連れて行かれたはずさ」

「は、はぁ……」

なんか怖い話になって来たなぁ。

「そんなちあちゃんの弱点、教えようか?」

「……え?」

「日本語だよ。つまり国語」

「……はぁ?」

「苦手って言っても、
 彼女の場合、普通の人と同じくらいは
 できるんだけど……
 あれほど出来る人が
 そこだけ平均値ってのは、おかしいだろ?」

「な、なるほど……」

「秘密だぜ」
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