【完結済】高校時代に書いたファンタジー小説を原文ママで投稿してみる

蒼(あお)

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外伝(連載初期に「読んでも読まなくてもいい」扱いでサイトの片隅に置いていた)

1ー3

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「・・・・・どしたの?」
「・・・殺りたいなら殺れよ・・・・・・・・。」
しかし覇累は首を横に振った。
「やだ。だってこんなのつまんない。」
「な・・・・・・。」
覇累は剣をしまった。
「でもさー、魔王の命令だから兄貴に怒られるかなぁ?」
「・・・・・知るか。」
シヴァの息は相変わらず荒い。
覇累はシヴァの体調が戻るのを期待して待っていた。彼はもっとシヴァと闘いたいらしい。
「ねぇ、それってすぐ治る?」
「・・・わからん。」
シヴァはますます不機嫌になった。
「まぁいいや。おれ待ってるから。」
「・・・・・・・・・・。」
シヴァは返事をしなかった。・・・出来なかったのだ。なぜならそのとき既に彼は気を失っていたのだから。

神力という大きな攻撃方法を奪われた聖夜。
羅唯が放つダーツを避けるので精一杯だった彼には、シヴァの身を心配する余裕などなかった。
「どうだ?久しぶりに無力化した気分は。もう何千年ぶりなんだ?」
神力に頼らない闘いなど、ここ数千年は全くしていないと言っていい。
聖夜は "生身"の身体での自分の実力を信じて闘うしかなかった。
幸い、羅唯は剣ではなくダーツを武器としている。
うまく懐に入り込めれば、この呪縛を解くことが出来るかもしれない・・・・。
しかし、羅唯の龍のような強固な身体に神力なしで太刀打ちできるんだろうか・・・・・・。
聖夜は汗ばんだ手を握った。
羅唯は間合いを詰め聖夜に蹴りを入れる。聖夜は左腕で受け止めたがあまりの威力に腕が痺れた。
「・・・・・っ!」
羅唯は連続して蹴りを入れてくる。
全てをかわしきるなど不可能に近く、何発かはもろに食らった。
とどめだと言わんばかりの最後の一撃が一番強く、
それを受け止めた左腕の感覚は完全に失われてしまった。・・・・痛覚さえない。
羅唯は容赦なく次の攻撃を仕掛けてくる。
懐から短剣をとりだし、素早く斬りつける。
こればかりは受け止めるわけにはいかないので、全てを避ようと試みたが
やはり反則的に速い相手のスピードに対応しきれず、身体にいくつもの紅い筋が入った。
「どうした?動きが緩慢だな。」
羅唯はまだまだ余裕だ。聖夜は顔の血をぬぐった。左腕に感覚が戻ってくる。
痛覚が・・・痛みが増していく。
このまま逃げ回っていてもこちらが参ってしまう。
こうなったら、捨て身で相手の懐に潜り込むしかない。
羅唯が斬り込んできた瞬間、聖夜はさっと真横にかわす。
刃は聖夜の肩を切り裂き、その場を紅く染める。
そこに映る影は、しっかりと相手の腕を捕らえていた。聖夜は羅唯の腕を背中に回し奴を拘束した。
「・・・・・呪縛を解いてもらおう。」
「・・・・誰が。」
羅唯は強引に腕を放させ、そのまま振り返って聖夜の腕を手の平で叩いた。
「!?」
聖夜はすぐに叩かれた部位を見た。
「・・・・毒針だ。」
そう言うと羅唯は素早く聖夜から離れた。
「・・・・やってくれるな。」
針の刺さった部位のまわりの衣服の色が少しずつ変色していく・・・・
羅唯はこんな物まで用意していたのか。
聖夜は針を抜き投げ捨てた。そしてぼろぼろになった衣服を破いて、そのぼろ切れで腕を縛った。
粗末な応急処置だが、しないよりはマシだ。
「・・・・いよいよ時間がなくなったな。」
聖夜は独り言を言うと、また羅唯と対峙した。

男達が闘っている間、韻唄はひたすらハープを弾き続けていた。
その音で雨を降らせ、侵入者を防いでいるのだ・・・・・・つまり、助けは来ない。

気を失っていたシヴァは、よろよろと立ち上がった。
「やっと起きた?」
覇累は明るく言う。
「・・・殺れと言っただろうが。」
「やだよ。強い人には実力で勝たなきゃ。」
シヴァは剣を出す。それだけで目眩がした。
「・・・・その甘さ、後悔させてやる。」
「わぁ、嬉しいなぁ。」
「・・・・・・。」
全くもって、予測不可能な思考回路の持ち主だ。
シヴァは聖夜の方を横目で見た。
先ほどのように1対1でやっていては、とても身体が持たない。
考えようによっては、2対2の方が有利になるかも知れない・・・・・。
そう思っていると聖夜もこちらに視線を送って来た。どうやらふたりとも考えることは同じようだ。
シヴァは素早く退いて、聖夜の方へ行った。
「あ!待ってよ!!」
覇累はシヴァを追う。シヴァはさっと聖夜の傍に来た。
「シヴァ!」
「随分苦戦しているようだな。」
「ははは・・・・。」
覇累が追いついてきたのを見て、聖夜とシヴァは背中を合わせた。
覇累がシヴァに斬りかかった瞬間彼はそれを避け、聖夜は覇累の背後に回る。
聖夜を止めようとした羅唯をシヴァは剣で足止めした。
「!!」
聖夜は覇累の後頭部を手刀で打つ。
覇累の身体は羅唯ほど強くないらしく、それなりのダメージを受けてくれた。
シヴァは羅唯を斬りつける。ダメージはあまり無いらしいが奴は剣圧で壁に突っ込んだ。
そこですかさず奴を追い、奴が身体を起こしたときには既に首元に剣先があった。
「私の呪縛を解かせてくれ!」
聖夜は叫んだ。シヴァは片手をあげて了解の意志を伝える。
「俺の剣は神界で一番大きな破壊力を持つ・・・・。これで斬りつけられたらどうなるかな?」
「やってみろ?」
シヴァは剣を振り上げる。羅唯は逃げようとしなかった。
剣が振り下ろされる。しかしシヴァは空振りをしたようによろけた。
「・・・・!?」
「甘いな。」
「・・・・実体が・・・無い!?」
シヴァの剣は羅唯を貫通している。だが感触はない。
「あ、兄貴・・・・。」
「悪いな覇累。」
羅唯はシヴァに手をかざす。
「!?」
羅唯の手から邪龍が発せられる。シヴァがかわすと邪龍は暴れ出した。
「うわ!」
邪龍は聖夜にも襲いかかる。
「聖夜!」
シヴァが聖夜に近寄った。それとほぼ同時に、聖夜に神力が戻った。
「・・・呪縛が・・・解けた・・・・?」
「・・・なんだと?」
シヴァが慌てて羅唯が居たところを見ると、そこに羅唯は居なかった。
「・・・いない・・・まさか!?」
「・・・・・そうよ。」
ふたりが驚いているところに、韻唄が割り込んできた。
「あれは羅唯・・・。羅唯の神力を喰らって邪龍が暴れているのよ。
それがあの子にかけられた永遠に解けない呪詛。」
「・・・・・なんだお前は?」
無愛想にシヴァが聞いた。
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