【完結済】高校時代に書いたファンタジー小説を原文ママで投稿してみる

蒼(あお)

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外伝(連載初期に「読んでも読まなくてもいい」扱いでサイトの片隅に置いていた)

3ー5

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3輪目と4輪目の彼岸花が、交わるように置かれた。

「聖夜、わしとローザ、ちょっと焼刃らぁんとこ行くけどええか?」
「・・・構わないが・・・気を付けろよ。」
「こんなことが起こっとんのに気ィつけへん奴はおらんって。」
波人が軽い口調で返す。
「ははは・・・そうだな。」

山沿いの道。
雪を踏む足音が、増えた気がした。
怪しいと思ってふたりが振り向くと、思った通りもうひとり男が自分たちの後を尾けてきていた。
「・・・・あんたか・・・。」
波人が言うと男・・・イーヴルはフフフと笑った。
「七大神と妻は全員死ぬのですよ?自分は間違いなくその対象だと、わかっていたはずです。」
「確かに・・・わかってたなぁ。」
呑気な波人。ローザもそれを黙ってみている。
「なら結城聖夜に護ってもらえばよかったのに。」
人をバカにしているような言い方。
「・・・・あほ。」
「!?」
イーヴルは波人が吐き捨てた言葉に少しだけ興味を持った。
「焼刃んとこ行くなんて嘘やで。わしらがふたりとかひとりになったら、
またあんたが出てくるんやろな~と思て。」
「不敵な・・・・あなた方ふたりで僕を倒すと?」
波人は手を小さく振る。
「まっさかぁー。わしらがそんなに強いわけないやん。」
「足手まといになりたくないだけ。」
ローザも言った。
「つまり進んで殺されに来た・・・と?」
「それもちゃうけどね。出来るだけおまぁさんの邪魔したろ思てるから。」
イーヴルはマントを広げる。波人は手をかざして握った。
・・・水が・・・集まってくる。
「神域乗り込む気やったん?」
「僕なら無理ですが・・・・"澄麗"なら入れるでしょうから。」
澄麗・・・・魔王の持つ人格のひとりで、
澄麗自身自分が魔王だということを知らない、"清らかな"人格。
澄麗で神域に乗り込んで、初衣達を襲うつもりだったのだろう。
「せこいやっちゃな・・・・。」
イーヴルは返事をせずに、いきなり間合いを詰めてきた。
「!!」
波人は素早く退こうとするが、
そのときにはすでに後ろに奴がいて、結局一歩も動けなかった。
「遅いですね・・・・。」
イーヴルは手刀で波人の背中を殴る。
彼は為す術もなく吹っ飛ばされた。
イーヴルはまだ空中にいる彼に追い討ちをかけようとするが邪魔が入る。地面が急に激しく揺れ
たのだ。一応雪の上を走っていたイーヴルは一瞬動きが止まり、
その間に波人は雪に落ちた。
「・・・・ローザ!?」
イーヴルは振り向いた。
ローザは地面・・・雪の上に手の平を乗せたまま、イーヴルを睨んでいた。
「大自然の恐ろしさを教えてあげる。」
「・・・・?」
何かが崩れる音がした。

地震を感じた聖夜達は、急いで外へ出た。
誰が何をしたかは言われなくてもわかるし、
それがどんなに危ないことかも誰もがわかっていた。
波人とローザは焼刃達のところへ行くと言っていたが、
もしその途中で奴と鉢合わせたとしたら・・・・。胸の鼓動は激しくなっていく一方だった。

「ごめんね波人。」
「アホ!!!」
山の上の方で崩れた雪は速さを増しながら押し寄せてくる。
「雪崩・・・・!」
イーヴルは目を閉じフッと笑った。
「死にものぐるいの者達の反撃は面白いですね・・・・。」
ポケットに手を突っ込んだまま、余裕で立っているイーヴル。
波人が奴の横を横切ったかも知れない。しかしそれは定かではない。
なぜならそこにいた者達の視界は白い流れに完全に遮られたからだ。
流れは小さな木々を巻き込んで、下へ下へ流れていく。
上空から見れば、それは砂山の砂が崩れる程度にしか見えない、
小規模な雪崩だったが。
流れが治まると、聖夜達が姿を現す。・・・・一足・・・一足遅かった・・・・。
「・・・・・ばかやろ・・・。」
風真がぽつりと言った。
「・・・・焼刃がいれば助かるだろうがな。」
シヴァが腰に手を当てて言う。それは諦めきっているようにも見える。
「波人は水の使い手だ。何か上手い方法で助かっている可能性が無いわけではない。
・・・・・・問題は・・・。」
聖夜は話題を変えた。
ここには、彼らの他にもうひとり・・・・危険人物が埋まっている。
「魔王か・・・。」
風真とシヴァが同時に言った。
「死んではいないだろう・・・・・奴は。」
シヴァは舌打ちをした。・・・無性に腹が立つ。
仲間が命懸けで闘ったところで、奴の分身にすら敵わないことが。シヴァは剣を出した。
「・・・何をするんだ?」
風真が問うとシヴァは言った。
「・・・・・・剣圧で雪を吹っ飛ばす。」
「・・・えらく過激だな。」
風真はため息をついた。
「安心しろ・・・吹っ飛ばすだけだ。波人達も居るかもしれないしな。」
そう言うとシヴァは豪快に剣を振り下ろし、辺りの雪を一気に吹き飛ばした。
「・・・・・!」
そこには波人達の姿は無かった。
あったのは余裕でシールドを張っているイーヴルの後ろ姿だけ。
「・・・・また会いましたね。」
「・・・・。」
風真もシヴァも返事をせずに目を逸らした。

5輪目の彼岸花が、静かに落とされた・・・・・。
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