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本編(聖の旅編)
第五話 休息?
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七大神はあとひとり、とはいっても先は長かった。
理由は佐久 時雨の神殿が遠すぎるためだ。
神殿は全部で七つあるが、時の神殿はこの辺りからいうと地の果て、
地球の反対側のようなものである。
はっきり言って、何ヶ月で着けるか見当もつかない。
・・・・・邪魔も入るだろうし。
ここは焦らず、落ち着いてゆっくりと旅するのが賢い方法。
海も砂漠も越えなければならないのだから。
聖達は今、結構にぎやかな街で宿をとって休んでいた。
「やった~いベッドだ~~!」
聖はベッドにダイブする。シヴァ達と出会ってから、
ちゃんとした寝床で寝るのは初めてだ。
「ねぇ、この辺に闘技場ないの?稼いできたいんだけど。」
楓が頭の後ろで腕を組みながら、暇そうに言う。
「さぁ・・・?宿のおっさんに聞いてみよか。わしも付き合うわ。」
波人はあくびをしながら楓の傍に寄った。
「えー?いいよ波人さまは。疲れてるでしょ?」
「何言うとんねん。オナゴをひとりで街に行かせるほど、わしは腐っとらんでぇ!」
楓は照れながら、
「・・・・・・・・・気をつけてよ・・・・闘技場はヤバい人も結構いるから・・・・・。」
と言う。
「七大神をなめんといてな。」
波人はいつになく上機嫌で返した。笑顔が少し怖い・・・・・・。
波人と楓が出ていってしまったので、聖はシヴァとふたりきりになった。
「なぁ・・・・・・。」
聖が言いかける。
「何だ?」
「俺に剣術教えてくんない?魔法の使い方とか。」
聖はベッドに寝転がったまま。シヴァは聖の顔を見た。
「・・・・・・そうだな・・・・やっと暇になったしな。」
「やりたいことができたからさ・・・・・・さっさと強くなりたいんだ。」
シヴァはマントを翻す。
「・・・・・・強くなれるかどうかはお前次第だ。」
「じゃあ頑張るわ。」
シヴァは少しだけ笑って、ドアを開けた。そして手招きする。
「・・・・・・・・・・・え?今日から始めんの?」
「当たり前だ。」
いつになく楽しそうなシヴァ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オニ。」
聖はシヴァに聞こえないよう、いつも呟く時よりもずっと小さな声でぼそっと言った。
夕暮れ。
カラスの間の抜けた鳴き声が響いていく。
「あーーーーーっづがれだ・・・・・。」
聖は地面に寝ころんで叫んでいる。
「おい、まだ始まったばかりだぞ?そんな体力でどうする?」
「んなこと言われたって!昼から夕方まで走りっぱなしだったんだぜ!?
死ぬって普通。」
「だから鍛えろと言っているんだ。
言っておくが俺達は一週間飲まず食わずで闘い続けたことだってあるんだぞ。」
それを聞いて聖はむくりと起きあがる。
「い・・・・一週間!?なんも食わずに?マジで?嘘だろ??」
「・・・・・・・本当だ。相手が悪ければそんなことだってある。
その名の通り七人しかいないからな・・・・・神界七大神は。」
「・・・・・たった七人で・・・・・。」
聖は驚きを隠せない様子。
「まぁ殆ど聖夜が闘っていたが。
あいつは七大神の残り六人が束になってかかっても倒せなかっただろうな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
絶句。
絶句するしかなかったのだ。驚きすぎて。
「・・・・・・・・俺、そいつの代わりやんの?無理だ・・・・。
ぜってー無理!そこまでは期待しないでくれっ!」
「安心しろ、期待してない。」
即答のシヴァ。それはそれで、虚しい気が・・・・・。
・ ・・・・・・"お前もそのうちなれる"とか"強くなれ"とか言えねぇのかよ・・・・・・・。
心の中だけで言った。
「よっと。」
聖は飛び上がるようにして立った。
「!」
「・・・・・・・で?次は何やんの?」
その言葉を聞いて、シヴァはにやっとした。
口ではごちゃごちゃ言っている聖だが、やる気までなくしたわけではないようだ。
「・・・・・そうだな・・・なら腕立て千回・腹筋五百回・バク転二百回だ。」
「・・・・・ちょっと待て!前ふたつはいいとしてバク転ってなんだよバク転って!」
聖は声をあげる。
「・・・闘いで吹っ飛ばされて目を回す奴がどこにいる!?いいからやれ。」
聖とシヴァの猛特訓の始まりだった。
一方波人と楓は、闘技場で勝ちまくって稼いだ金を抱えながら宿に帰る途中だった。
「ほんっま強いのな!尊敬するわ!!」
帰り道にあった店で買ったホットドッグをくわえながら波人が言う。
「・・・それはいいんだけどさ・・・・。」
楓はなにかあるような口調で返す。
「何?どないしたん?」
「なんであんなこと言ったの?波人さまは。」
楓は頬を少し紅く染めている。
「え?」
「え?じゃないわよっ!!闘技場から出るときのこと!」
「あぁ~あれか。気にしぃな。おなご護るんはわしの使命や!」
「・・・・・・・はぁ!?」
・ ・・闘技場でのこと。
三十人抜きをして大もうけをした楓に、
ちょっかいをかけてくる馬鹿な男三人組がいた。
「姉ちゃん、大もうけできてよかったなぁ・・・・!」
・・・・・・男というよりは、チンピラか?
「・・・・・・・何?」
楓は上目遣いで男達を見る。
「そんな怖い顔しないでさ、俺らにもちょっと分けてよ。」
「ヤだね。この金はあたし達のだ。」
すると一番背の高い男が楓の横の壁を殴る。
「・・・・・・脅しのつもり?」
呆れた口調の楓。
「・・・あんまり逆らわない方がいいよ~。金くれないのなら身体もらうから。」
「・・・・・・・お笑いだね。そんなことできないわよ。」
楓は更に呆れた。そして最近の野郎どもはヤラシイねぇ、という顔をする。
この男、お目当ては金ではなかったようだ
「・・・・・・楓ちゃんだっけ?疲れてるんでしょ~三十人抜きもしちゃって。」
そう言って男は上着を他の男に渡す。
「やる気?」
楓は構えた。
喧嘩を始めようとすると、ある男の抜けた声が響く。
「タ~~イム!!」
「・・・・・・え?」
楓と男達は声のした方向を見た。
声の主は波人、彼は楓と男の間に堂々と入る。
「おっさん、この女に手ぇ出すんは一億年早いね。」
波人はポケットに右手を突っ込んだまま少し気取って言った。
「・・・・・波人さま?」
楓は不思議そうな顔で波人を見るが彼はにやっとするだけだった。
「なんだぁ?邪魔すんのか!」
「なんや弱そうやのぅ。」
波人は男の言葉をまるで聞いていない。
「・・・っ・・・・・貴様ぁ・・・・!」
「わしでも充分倒せるわな。」
次の瞬間男達は一斉に殴りかかって来たが、波人はひょいとかわした。
男がよろけると波人は口笛を吹きながらふたりを蹴飛ばして着地。
その時点でふたりとものびてしまったらしく、動かなくなった。
最後のひとり・・・・一番身長の高い男は叫びながら突っ込んでくる。
「ホレ!」
波人は突っ込んでくる男の殴りをしゃがんでかわしたかと思うと、
すぐに立ち上がって男の顎に頭突きを喰らわせた。
「がぎっ!」
男は仰向けに転ぶ。
「あ、悪い悪い。まだ上におってんな。」
波人は手を合わせて言うがもちろん嘘だ。狙って頭突きしたのである。
「・・・・・・・・俺を本気にさせる気か貴様・・・・。」
明らかにキレた口調の男。
「ん~何?」
波人はそれに無造作に近寄る。
男の目の前まで来るとニカッと笑って奴に背を向けた。
「・・・・・・・・!?」
「いえ~い♪」
その上波人は両手をあげて、踊り出す。
男も楓もあっけにとられる。
「・・・・ちゃっちゃちゃっちゃ、ちゃ~んちゃらちゃちゃ・・・・・・♪」
・・・・・・しかも鼻歌付き。
「・・・・・・な・・・・・なめてんのか・・・・!?」
男が再び怒り始める。
「・・・・・・ウぅー!!」
その時波人が踊り終えて、尻で男をはじき飛ばした。
男が弱いのか波人のドンケツが強いのか、最後のひとりもあっさりのびてしまった。
「・・・・・・・・・波人様・・・・・。」
顔に似合わない彼の下品さに楓は笑いつつも呆れた。
「・・・・・今度楓に手ぇ出してみ?今度はこんなんで済ませへんぞコラ!」
また気取った口調に戻る波人だが、カッコいいとは思えなかった・・・・・。
道の街灯が灯っていく。もう薄暗い。
「こんな可愛い女を、みすみすあんな不細工な男にやれる訳ないやろ~?」
上機嫌な波人。
「・・・・・あぁ~あたし何変なこと考えてたんだろ~・・・・。」
「え?」
「何でもないっ!!」
楓は怒鳴るように言う。
「なんで?助けられるん嫌いか?」
「違うわよっ!!」
楓の頬は相変わらず紅い。
・ ・・・・・・・・・ぁあ~もうヤダっ!!
波人さまが女好きだなんて知らなかったから、
私に気があるのかと思って焦っちゃったじゃない!!
楓は波人を追い越して、ずんずん歩いて行った。
「あ!?ちょ、ちょう待ってや楓~!!」
空にカラスの姿は見えなくなって、代わりに星が瞬いている。
聖は満足そうに叫んだ。
「終わったぞ!!終わったぞ!!終わったぁ!!」
両手を上げて飛び跳ねる聖。
「・・・・・・・・・・。」
「何?コメントなし?」
聖は喜ぶのをやめてシヴァを見る。
するとシヴァは後ろを向いてこう言った。
「そんだけ飛び跳ねられるなら、次は素振り千回。」
「・・・・・・・。」
聖は肩をがっくり落とした。
「終わったら言いに来いよ。」
シヴァは宿に帰るらしい。
「・・・・・・・・へい・・・・。」
それでもちゃんとやろうとするあたり、やはり聖は本気らしい。
シヴァが宿に帰ると、ベッドで寝転んでいた波人が起きあがった。
「お帰り~。」
楓も賞金がしこたま入っている袋を持ち上げてにっこりした。
「お帰りなさい。ところでシヴァさま・・・・・・・聖は?」
「・・・・・あいつは素振り千回終わったら帰ってくるはずだ。」
シヴァはそう言いながら、ベッドに座った。
「とうとう始めたんやな。」
「・・・・・・・・さっさと強くなってもらわなければ困る。」
「さよか・・・・・・。まぁ始めっから締めすぎんなや。」
波人は大あくびをしながら、部屋を出ていこうとする。
「波人さまどこ行くの?」
「ん?ちょっと散歩・・・・・。」
ドアが閉まってからシヴァがぼそっと言った。
「・・・・・・・・・散歩?ナンパの間違いじゃないのか?」
「・・・・・・・・・・・。」
やはり波人は女好き・・・イヤ、女たらしらしい・・・・。
波人が出ていったから一時間くらい経っただろうか。
ドアの外からバタバタという廊下を走る音が聞こえてくる。
「・・・・・・・・聖かな?」
楓が聞くとシヴァはコーヒーをすすりながら
「聖だろう。」
と答えた。
「ただいまっ!」
帰ってきた聖は勢いよくドアを開けて言った。
「・・・・・・・うるさい、隣の奴らに迷惑だ。」
シヴァがコーヒーカップを置きながら注意する。
しかし聖はそれも聞かずにベッドに寝転がった。
「おい・・・・・聞い・・・・・。」
シヴァは言うのをやめた。
聖は既にぐぅぐぅ眠っているのだ。
「寝付くのはやすぎだね。」
楓がくすっと笑った。
「疲れたんだろう。それにしてもこの寝付きのはやさは異常だが。」
シヴァはやれやれという顔で、聖の自分の布団を聖にかけてやった。
「・・・・・・・いいとこあんじゃん。」
楓が意外だな、という感じで言う。
「別に。」
シヴァの口の方は無愛想なままだった。
ナンパに行った波人は、宿の門限を過ぎてから帰ってきたらしく、
朝まで中に入れてもらえなかったらしい・・・・・・。
理由は佐久 時雨の神殿が遠すぎるためだ。
神殿は全部で七つあるが、時の神殿はこの辺りからいうと地の果て、
地球の反対側のようなものである。
はっきり言って、何ヶ月で着けるか見当もつかない。
・・・・・邪魔も入るだろうし。
ここは焦らず、落ち着いてゆっくりと旅するのが賢い方法。
海も砂漠も越えなければならないのだから。
聖達は今、結構にぎやかな街で宿をとって休んでいた。
「やった~いベッドだ~~!」
聖はベッドにダイブする。シヴァ達と出会ってから、
ちゃんとした寝床で寝るのは初めてだ。
「ねぇ、この辺に闘技場ないの?稼いできたいんだけど。」
楓が頭の後ろで腕を組みながら、暇そうに言う。
「さぁ・・・?宿のおっさんに聞いてみよか。わしも付き合うわ。」
波人はあくびをしながら楓の傍に寄った。
「えー?いいよ波人さまは。疲れてるでしょ?」
「何言うとんねん。オナゴをひとりで街に行かせるほど、わしは腐っとらんでぇ!」
楓は照れながら、
「・・・・・・・・・気をつけてよ・・・・闘技場はヤバい人も結構いるから・・・・・。」
と言う。
「七大神をなめんといてな。」
波人はいつになく上機嫌で返した。笑顔が少し怖い・・・・・・。
波人と楓が出ていってしまったので、聖はシヴァとふたりきりになった。
「なぁ・・・・・・。」
聖が言いかける。
「何だ?」
「俺に剣術教えてくんない?魔法の使い方とか。」
聖はベッドに寝転がったまま。シヴァは聖の顔を見た。
「・・・・・・そうだな・・・・やっと暇になったしな。」
「やりたいことができたからさ・・・・・・さっさと強くなりたいんだ。」
シヴァはマントを翻す。
「・・・・・・強くなれるかどうかはお前次第だ。」
「じゃあ頑張るわ。」
シヴァは少しだけ笑って、ドアを開けた。そして手招きする。
「・・・・・・・・・・・え?今日から始めんの?」
「当たり前だ。」
いつになく楽しそうなシヴァ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オニ。」
聖はシヴァに聞こえないよう、いつも呟く時よりもずっと小さな声でぼそっと言った。
夕暮れ。
カラスの間の抜けた鳴き声が響いていく。
「あーーーーーっづがれだ・・・・・。」
聖は地面に寝ころんで叫んでいる。
「おい、まだ始まったばかりだぞ?そんな体力でどうする?」
「んなこと言われたって!昼から夕方まで走りっぱなしだったんだぜ!?
死ぬって普通。」
「だから鍛えろと言っているんだ。
言っておくが俺達は一週間飲まず食わずで闘い続けたことだってあるんだぞ。」
それを聞いて聖はむくりと起きあがる。
「い・・・・一週間!?なんも食わずに?マジで?嘘だろ??」
「・・・・・・・本当だ。相手が悪ければそんなことだってある。
その名の通り七人しかいないからな・・・・・神界七大神は。」
「・・・・・たった七人で・・・・・。」
聖は驚きを隠せない様子。
「まぁ殆ど聖夜が闘っていたが。
あいつは七大神の残り六人が束になってかかっても倒せなかっただろうな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
絶句。
絶句するしかなかったのだ。驚きすぎて。
「・・・・・・・・俺、そいつの代わりやんの?無理だ・・・・。
ぜってー無理!そこまでは期待しないでくれっ!」
「安心しろ、期待してない。」
即答のシヴァ。それはそれで、虚しい気が・・・・・。
・ ・・・・・・"お前もそのうちなれる"とか"強くなれ"とか言えねぇのかよ・・・・・・・。
心の中だけで言った。
「よっと。」
聖は飛び上がるようにして立った。
「!」
「・・・・・・・で?次は何やんの?」
その言葉を聞いて、シヴァはにやっとした。
口ではごちゃごちゃ言っている聖だが、やる気までなくしたわけではないようだ。
「・・・・・そうだな・・・なら腕立て千回・腹筋五百回・バク転二百回だ。」
「・・・・・ちょっと待て!前ふたつはいいとしてバク転ってなんだよバク転って!」
聖は声をあげる。
「・・・闘いで吹っ飛ばされて目を回す奴がどこにいる!?いいからやれ。」
聖とシヴァの猛特訓の始まりだった。
一方波人と楓は、闘技場で勝ちまくって稼いだ金を抱えながら宿に帰る途中だった。
「ほんっま強いのな!尊敬するわ!!」
帰り道にあった店で買ったホットドッグをくわえながら波人が言う。
「・・・それはいいんだけどさ・・・・。」
楓はなにかあるような口調で返す。
「何?どないしたん?」
「なんであんなこと言ったの?波人さまは。」
楓は頬を少し紅く染めている。
「え?」
「え?じゃないわよっ!!闘技場から出るときのこと!」
「あぁ~あれか。気にしぃな。おなご護るんはわしの使命や!」
「・・・・・・・はぁ!?」
・ ・・闘技場でのこと。
三十人抜きをして大もうけをした楓に、
ちょっかいをかけてくる馬鹿な男三人組がいた。
「姉ちゃん、大もうけできてよかったなぁ・・・・!」
・・・・・・男というよりは、チンピラか?
「・・・・・・・何?」
楓は上目遣いで男達を見る。
「そんな怖い顔しないでさ、俺らにもちょっと分けてよ。」
「ヤだね。この金はあたし達のだ。」
すると一番背の高い男が楓の横の壁を殴る。
「・・・・・・脅しのつもり?」
呆れた口調の楓。
「・・・あんまり逆らわない方がいいよ~。金くれないのなら身体もらうから。」
「・・・・・・・お笑いだね。そんなことできないわよ。」
楓は更に呆れた。そして最近の野郎どもはヤラシイねぇ、という顔をする。
この男、お目当ては金ではなかったようだ
「・・・・・・楓ちゃんだっけ?疲れてるんでしょ~三十人抜きもしちゃって。」
そう言って男は上着を他の男に渡す。
「やる気?」
楓は構えた。
喧嘩を始めようとすると、ある男の抜けた声が響く。
「タ~~イム!!」
「・・・・・・え?」
楓と男達は声のした方向を見た。
声の主は波人、彼は楓と男の間に堂々と入る。
「おっさん、この女に手ぇ出すんは一億年早いね。」
波人はポケットに右手を突っ込んだまま少し気取って言った。
「・・・・・波人さま?」
楓は不思議そうな顔で波人を見るが彼はにやっとするだけだった。
「なんだぁ?邪魔すんのか!」
「なんや弱そうやのぅ。」
波人は男の言葉をまるで聞いていない。
「・・・っ・・・・・貴様ぁ・・・・!」
「わしでも充分倒せるわな。」
次の瞬間男達は一斉に殴りかかって来たが、波人はひょいとかわした。
男がよろけると波人は口笛を吹きながらふたりを蹴飛ばして着地。
その時点でふたりとものびてしまったらしく、動かなくなった。
最後のひとり・・・・一番身長の高い男は叫びながら突っ込んでくる。
「ホレ!」
波人は突っ込んでくる男の殴りをしゃがんでかわしたかと思うと、
すぐに立ち上がって男の顎に頭突きを喰らわせた。
「がぎっ!」
男は仰向けに転ぶ。
「あ、悪い悪い。まだ上におってんな。」
波人は手を合わせて言うがもちろん嘘だ。狙って頭突きしたのである。
「・・・・・・・・俺を本気にさせる気か貴様・・・・。」
明らかにキレた口調の男。
「ん~何?」
波人はそれに無造作に近寄る。
男の目の前まで来るとニカッと笑って奴に背を向けた。
「・・・・・・・・!?」
「いえ~い♪」
その上波人は両手をあげて、踊り出す。
男も楓もあっけにとられる。
「・・・・ちゃっちゃちゃっちゃ、ちゃ~んちゃらちゃちゃ・・・・・・♪」
・・・・・・しかも鼻歌付き。
「・・・・・・な・・・・・なめてんのか・・・・!?」
男が再び怒り始める。
「・・・・・・ウぅー!!」
その時波人が踊り終えて、尻で男をはじき飛ばした。
男が弱いのか波人のドンケツが強いのか、最後のひとりもあっさりのびてしまった。
「・・・・・・・・・波人様・・・・・。」
顔に似合わない彼の下品さに楓は笑いつつも呆れた。
「・・・・・今度楓に手ぇ出してみ?今度はこんなんで済ませへんぞコラ!」
また気取った口調に戻る波人だが、カッコいいとは思えなかった・・・・・。
道の街灯が灯っていく。もう薄暗い。
「こんな可愛い女を、みすみすあんな不細工な男にやれる訳ないやろ~?」
上機嫌な波人。
「・・・・・あぁ~あたし何変なこと考えてたんだろ~・・・・。」
「え?」
「何でもないっ!!」
楓は怒鳴るように言う。
「なんで?助けられるん嫌いか?」
「違うわよっ!!」
楓の頬は相変わらず紅い。
・ ・・・・・・・・・ぁあ~もうヤダっ!!
波人さまが女好きだなんて知らなかったから、
私に気があるのかと思って焦っちゃったじゃない!!
楓は波人を追い越して、ずんずん歩いて行った。
「あ!?ちょ、ちょう待ってや楓~!!」
空にカラスの姿は見えなくなって、代わりに星が瞬いている。
聖は満足そうに叫んだ。
「終わったぞ!!終わったぞ!!終わったぁ!!」
両手を上げて飛び跳ねる聖。
「・・・・・・・・・・。」
「何?コメントなし?」
聖は喜ぶのをやめてシヴァを見る。
するとシヴァは後ろを向いてこう言った。
「そんだけ飛び跳ねられるなら、次は素振り千回。」
「・・・・・・・。」
聖は肩をがっくり落とした。
「終わったら言いに来いよ。」
シヴァは宿に帰るらしい。
「・・・・・・・・へい・・・・。」
それでもちゃんとやろうとするあたり、やはり聖は本気らしい。
シヴァが宿に帰ると、ベッドで寝転んでいた波人が起きあがった。
「お帰り~。」
楓も賞金がしこたま入っている袋を持ち上げてにっこりした。
「お帰りなさい。ところでシヴァさま・・・・・・・聖は?」
「・・・・・あいつは素振り千回終わったら帰ってくるはずだ。」
シヴァはそう言いながら、ベッドに座った。
「とうとう始めたんやな。」
「・・・・・・・・さっさと強くなってもらわなければ困る。」
「さよか・・・・・・。まぁ始めっから締めすぎんなや。」
波人は大あくびをしながら、部屋を出ていこうとする。
「波人さまどこ行くの?」
「ん?ちょっと散歩・・・・・。」
ドアが閉まってからシヴァがぼそっと言った。
「・・・・・・・・・散歩?ナンパの間違いじゃないのか?」
「・・・・・・・・・・・。」
やはり波人は女好き・・・イヤ、女たらしらしい・・・・。
波人が出ていったから一時間くらい経っただろうか。
ドアの外からバタバタという廊下を走る音が聞こえてくる。
「・・・・・・・・聖かな?」
楓が聞くとシヴァはコーヒーをすすりながら
「聖だろう。」
と答えた。
「ただいまっ!」
帰ってきた聖は勢いよくドアを開けて言った。
「・・・・・・・うるさい、隣の奴らに迷惑だ。」
シヴァがコーヒーカップを置きながら注意する。
しかし聖はそれも聞かずにベッドに寝転がった。
「おい・・・・・聞い・・・・・。」
シヴァは言うのをやめた。
聖は既にぐぅぐぅ眠っているのだ。
「寝付くのはやすぎだね。」
楓がくすっと笑った。
「疲れたんだろう。それにしてもこの寝付きのはやさは異常だが。」
シヴァはやれやれという顔で、聖の自分の布団を聖にかけてやった。
「・・・・・・・いいとこあんじゃん。」
楓が意外だな、という感じで言う。
「別に。」
シヴァの口の方は無愛想なままだった。
ナンパに行った波人は、宿の門限を過ぎてから帰ってきたらしく、
朝まで中に入れてもらえなかったらしい・・・・・・。
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