【完結済】高校時代に書いたファンタジー小説を原文ママで投稿してみる

蒼(あお)

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本編(神の書死守編/謎の勢力編)

第七十話 賭け

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 「ああ、良かった。」

フレアは胸を撫で下ろした。

「君のお陰で助かったよ・・・。でも、どうしてここへ?」

聖夜は訊く。

「もの凄い爆発音が聞こえたから・・・とてもビックリして。兄と大急ぎでここへ。

その前から、何度も兄とここに来ようかと相談してたんですが、

足手まといになってもいけないと思って・・・。」

「そうか・・・あの音のお陰で私たちは救われたのか・・・。」

言いながら、フィアルの方を見る。

波人がフィアルを治癒しようとしていたが、彼はひたすら嫌がっていた。

「もう神の書は守られたんだろう!!俺は帰る。」

「だから治癒ぐらいさせろ言うてるんや!!」

フィアルは、傷の割に素早く逃げ回っている。

「敵に助けられてたまるか!今回は特別だったんだ。」

「だから“今回の”お礼やっちゅうねん!わしかてもうお前となんか組みたくないわ!」

波人はフィアルに追いつけない。

「フィアル・・・お前がどう思っていようと、今回私たちはお前に救われた。

また敵同士に戻るのなら、ここで借りを返させてくれないか。」

聖夜は、うまいことを言う。結局のところ波人の治癒を受けろという意味だ。

「・・・・・・貸し・・・貸しか。それも悪くない。」

「何?」

フィアルは、少し笑うと波人を軽く突き飛ばして走り去った。

「あっ、待て・・・!」

「行ってしもた。じゃ、聖夜。お前さんの治癒といくか。」

波人は、あっさり乗り換える。

「・・・・頼むよ。」

聖夜はフィアルが走り去った方を見つつ、座った。

「・・・フレア。あなたってすごい魔力の持ち主だったのね。」

すばるは、彼女に笑いかける。

「いえ、そんな事は・・・。

確かに私、“幻”と言われている青い炎を扱う火龍ですけど、

あんな無茶な封印術は使えません。」

「・・・・・・・!?」

「ハッタリ、です。」

天使のような笑みで発する言葉は、あまりにも衝撃的だ。

「・・・・ハッタリの通用する相手だったのか?あいつは。」

シヴァは、呆れかえった。しかしその声は少し嬉しそうである。

「幻の青い火龍って、ものすごい希少種ですから魔界にも情報が殆ど無いんです。

だから、魔界政府に見つかったりしたら間違いなく研究材料にされちゃいます。

それで私、ずっと氷龍って事にして生きてきてたんですけど。最近、ばれちゃったし。

もしかしたら・・・私のことを知っていたら・・・・

無駄に動揺してくれるかもって、思うじゃないですか。」

フレアは本当ににこにこしている。

「賭けたのか。自分の命を・・・そんな不確かな情報だけで。」

「聖様は、会ったこともないお兄様のために命を懸けてくださいましたよ。

それに比べたら・・・小さな賭けです。

私の大切な人達を、助けられる可能性だって大いにある作戦ですから。」

「・・・・・・・・!」

「フレア・・・訊くのも怖いんだけど・・・・。

相手が退いてくれなかったときは、どうするつもりだったの?」

すばるは少しうろたえていた。

「その時は・・・言ったとおり、私は舌を噛んで死ぬつもりでした。

後は兄にうまく芝居をしてもらって・・・

ここにいるはずの時雨様と転移してもらうとか、そんな事を考えてました。」

フレアは明るい声で答える。

「・・・・よくリーダが許してくれたね。」

聖夜は驚きのあまり動きが止まっていた。

「ええ。兄には感謝してます。ひとことも、反対しませんでした。

・・・ところで・・・風真様と時雨様は怪我を・・・?」

「いや、怪我は無いよ。ふたりとも、神力の消耗が激しくてね。

韻唄に癒しの調べを奏でて貰ったことだし、心配はない。」

「そうですか。・・・よかった。」

フレアは、安心したようだ。

「フレア。」

「?」

彼女が振り向いた先には、楓がいた。

「あなた、怖くなかった?」

「楓様・・・?」

楓は、少しずつフレアに近づく。

「あたしは、怖かった。

魔界政府軍との闘いでも役に立てなかったから、絶対に闘うって決めてたのに。

怖くて、動くことも声を発することもできなかった。」

「・・・そんな・・・。」

「あたしは、怖くて動けなくて、自分の命を懸けて闘う事なんてできなかった。

・・・こんな馬鹿げた無茶な作戦を提案したのは・・・あたしなのに・・・・。」

楓は、震えている。

「楓、それは君のせいでは・・・。」

聖夜が楓に近寄りながら言った。

「あたし、何もわからなかった。この闘いで何が起こってて、今どうなってるのか。

聖夜さまは・・・・迷わず皆に指示してたよね。

フィアルの奴も・・・状況をよくみて、うまく闘ってた。

でもあたし・・・ただ怖くて・・・あんなに偉そうにしてたくせに・・・・隅で震えてた。」

「ええやん、それでも。わしかてなーんも意味わからんと、

聖夜に言われたとおりに祭壇に水まいただけや。」

波人が、明るい声で言う。

「だれもが聖夜やシヴァみたいにはなられへんよ。

わしかて、闘いに割り込んで助けることもできへんかった。

頼まれたことをひとつするだけで、精一杯やった。」

「波人さま・・・・。」

楓は、涙目になる。

「でも訳もわからずわしがまいた水で敵の位置をつかめたし、

その水をフィアルとすばるが爆発させて、リーダとフレアが来た。

けど聖夜かて、水が爆発することまでは考えてなかったみたいやし。」

「・・・・・・・波・・・・人さま・・・。」

「わしも、命なんて懸けられへんかったよ。意味もわかってなかったし。」

楓は、波人に抱きついた。そして彼の傍で、泣いた。

波人は右手で楓を抱く。

「あー・・・どないしょー。わし、両手で女の子抱かれへんのになぁー・・・。」

「・・・・楓様?私も怖かったです。

でも、私が死ぬよりもっと怖いのは、みなさんが死ぬことでしたから。

それだけです。」

フレアは、言った。

「楓。これだけは言っておく。」

「シヴァ・・・さま?」

シヴァは、高い身長で楓と波人を見下ろしている。

「お前があの作戦を提案しなかったら、

“計画者”がなんであろうと神界大戦は起こっていた。

相手の狙いは神の書だからな。神界大戦を避けられたのは、

誰がなんと言おうとお前のお陰だ。」

「・・・・・・・・・・・っ!」

七大神の、仲間。楓は、認められている。

楓がまた泣き出したとき、神の書の祭壇の近くに金色の光が出現した。

「!?」

「だ、誰・・・?」

金色の光は人の形になっていく。

その光が神の書の祭壇の近くに現れたにもかかわらず、

七大神はだれひとりその場を動かなかった。

「悪い、遅くなって。」

聖夜やシヴァの様に長い、薄紫色の髪。紫の瞳に、高い背。

その人物が神々しく見えるのは、決して気のせいではない。

「・・・在人様。」

聖夜が、跪いた。

「やめろ、そういうのは神琉にするだけでいい。」

「いいえ。あなたは私たちの・・・この神界の親。

創造主と、生み出された生命という関係なのですから・・・。」

「相変わらず真面目だな。俺は、お前のそういうところが苦手だよ、聖夜。」

在人と呼ばれた男は、頭を掻く。

「申し訳ありません。」

「もう、いいから。それよりお前ら、神域行くぞ。そのために俺が来たんだ。」

言われて、そこにいる者は顔を見合わせる。

「神域へ?・・・しかし、レタリアに向かわせた者もまだ帰ってきていないので・・・。」

「あっちは桜が迎えに行ってる。問題ない。行くぞ。」

言われて、聖夜達は戸惑いつつも在人に近寄った。

「何してる?もちろん、お前達も一緒に来るんだ、龍の子たち。」

離れた場所にいるリーダとフレアに、在人は言う。

「そ、そんな・・・。私たちは三大神様の神域へ行かせて頂ける身分では・・・。」

「何を言う。神域には七大神が認めた奴なら誰でも来れるよ。

それに神の書ももうここには置いておけないしな。

かと言って、それを俺達がどうにかすることもできない。

だから一緒に来て貰わないと困るのはむしろこっちだ。」

それでも困惑するふたりに、聖夜が言った。

「来るんだ、ふたりとも。」

「・・・・・・・・・・。」

リーダとフレアが神の書を手に取り、在人に近づくと、

金色の光と共にその場にいた者は全員転移した。
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