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第一章

ギースの面接

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 追放部門初めての隊長への面接は下げた頭を上げるところから始まった



「うちの部門員がご迷惑おかけして申し訳ありません」

「まぁいいけどよ、なんだもう部門員がいるのか早いな」

「あー・・・」



 微妙な顔をしてニーナをちらっと見る

 ギースさんから降ろされた彼女はしょぼんとしながら僕の横に立っている

 ギースさんが少し怪訝な顔をする



「キャサリンさんから譲り受けまして」

「あっ」



 戦闘部門の隊長に似つかわしくない声を出して納得したような顔になる

 それだけで伝わるのかぁ・・・



「とにかく・・・面接を始めましょうか、そちらの椅子にお掛けください」

「おう」



 彼は大手を振って椅子へと近づきドカッと座り腕を組んだ

 いつもと様子が違う気がする



「もしかして緊張なさってますか?」



 俺の質問は核心を突いたようで彼は照れ笑いをする



「まぁ・・・な

 普段こんなことしねぇからなぁ、がはは」



 頭をポリポリと掻いて緊張を誤魔化しているようだ



「いつも通り・・・とはいきませんよね

 出来る限り楽になさって結構ですよ

 では面接を担当します追放部門隊長のマークと申します」

「戦闘部門長のギースだ」



 自己紹介を終え質問を始める



「最近戦闘部門の調子はどうですか?」

「どう・・・って言われてもなぁ

 いつも通り討伐や護衛の仕事はこなしている」

「なるほど、では大きな怪我や体調不良を起こしている部門員はいますか?」

「あー・・・こないだのオーガ討伐で一人腕の骨を折ったなそれ以外は特にいないぞ」



 彼に聞いた質問をメモに取っていく

 これ秘書部門にいたニーナにやってもらうのがいいんじゃないだろうか

 彼女は今俺の横で面接には参加している体だが今立ち尽くしているようにも見える

 そうなれば椅子やテーブルなども増やさないとな



「どうしたマーク?」



 面接の途中なのに考え事をしてしまった

 ギースさんが不思議そうな顔でこっちを見ている



「あっすみません」

「なんだ、お前も緊張してたのか?」

「まぁそんなとこですね」



 ほんとは自分たちのこと考えてただけなんだけど

 これは終わったら考えよう



「次の質問ですが今の給金について不満はありますか?」

「無いな!かれこれ5年は隊長をやってるが給料は年々増え続けてるぞ!」

「なるほど・・・部門員で不満を言ってる人はどうでしょう?」

「入りたてで仕事のおぼつかないやつならわかるがそこまで不満を露にしてるやつはいないぞ」

「そうなんですね」



 給料はしっかり貰っているようだ

 隊長を続けると給料増えるのか・・・

 僕も頑張ろう



「経費や物資が足りないなどはありますか?」

「ポーションが足りないときはあるが購買部門でその都度買ってるから平気だ」

「わかりました」



 戦闘部門はしっかり運営されているようだ

 他の部門のことは初めてしっかり聞くなぁ

 この情報も後で裏を取らないといけないし参考にさせてもらおう

 これから忙しくなりそうだ



「では次が最後の質問です、これは絶対に聞いておかねばならないことですが・・・」

「なんだ?」



「追放に値する部門員の心当たりはいますか?」



 隣でニーナのつばを飲み込む音が聞こえる

 ギースさんの表情も硬くなる

 これが俺のやらなければならない仕事だ

 空気が重い・・・

 しばしの沈黙のあとギースさんが口火を切った



「・・・うちの部門はほぼ問題なく運営されている

 だが最近もギルドメンバーが増えたことで管理が行き届いてないところがあるのも事実だ」



 この国で五指に入る大手ギルドの『牡牛の角』の現在のギルドメンバーは800人に上る

 その中で一切の問題が起こっていないのはありえないだろう

 ギルド長が追放部門の設立を考えたのもそういうことだ



「最近遠征に出てたメンバーで一人いる」

「名前を伺っても?」

「奴の名前はステーレンだ」



 これが僕の初めてのギルド員追放となる人の名前だった
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