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第二章

スミスの尋問?

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 スミスとの戦闘があった翌日



「スミスが目を覚ましたって本当ですか?!」



 医務室に常駐している回復部門のギルド員からスミスが目覚めたという報告をもらった

 今までは本人の回りを調べて証拠を叩きつけていたが、今回は事情が違う

 本人から知りたい情報が多すぎるのだ

 どうして呪われたネックレスをつけていたのか

 どうやってそれを手に入れたか、など・・・

 ほかにもいろいろ聞かなければならない

 本人がしっかり受け応えできればいいんだが、どうなんだろう



「すぐ面会できますか?」

「ええ、意識もはっきりしてますしこちらの質問にもきちんと答えていました

 今から行っても大丈夫だと思います」

「ありがとうございます」



 僕は部屋にニーナを残し、ラビヤーとともに回復部門のギルド員に付いて、スミスを訪ねることにした

 ラビヤーを連れて行くのは、僕の気づかない何かがあるかもしれないのでプロの斥候に見てもらうため

 ニーナを置いていくのは・・・医務室で『何か』をやらかさないか心配なためである

『何か』がどんな出来事か、正直想像したくないが・・・・

 他の怪我人や病人に危害が加わったり、医務室へ損害が出たら・・・

 想像するだけで肝が冷える





 医務室についた

 医務室は急患・・・主に帰還したときに怪我を負った冒険者が来るところである

 ここに来たほとんどの冒険者は回復魔法をかけてもらうのだ

 上位冒険者になると大体パーティに回復術師を入れるので、大体はソロか新人たちが利用している

 医務室には回復術師の他に、薬師などが常駐している

 大抵の怪我は回復魔法かポーションで治るが、病気となるとそうはいかない

 薬師は腹痛や古傷用の痛み止め、熱さましや咳止めなどを出してくれる

 利用者の中には二日酔いになり、酔い覚ましを貰いに来たりもしているけどね

 まぁそれも【解毒アンチドーテ】をかけると消えるのだが・・・

 魔法を使えない冒険者だって多いのだ

 あと酔い覚ましに【解毒アンチドーテ】を使うのを嫌がる回復術師だって多い

 無駄な魔力使いたくないもんね

 僕は前に一度、先輩冒険者が古傷のための痛み止めを貰いに行くのについていった時くらいしか、ここに来たことがない



 僕は近くにいた白いローブを羽織った、どこかぽやぽやとした女性に声をかける



「おはようございます、エリザベスさん

 スミスはどこにいます?」

「あら~マークちゃんいらっしゃ~い

 スミスは~奥のカギのかかった部屋にいるわよ~

 部屋の前に~見張りが二人いるから~すぐにわかると思うわ~」



 この女性は回復部門の隊長のエリザベスさん

 回復術師であり薬師でもある

 ギルド長のパーティの回復術師のお弟子さんらしい

 誰のことでも、ちゃん付けで呼んでくる

 初めて会ったのは広報部門に入ってからで回復部門の人員募集に関しての仕事の時だった

 ちゃん付けで呼ばれるのは恥ずかしい・・・

 結構長い付き合いだが、いまだに慣れない



「彼の容体はどうです?」

「なんて言ったらいいかしらねぇ~

 一応受け応えはしっかりしてるんだけど~

 まぁ・・・会ってみればわかるわ~」



 何とも曖昧な・・・

 僕を見た途端、暴れだしたりとかは無いよね?

 部屋の前で立番をしていた戦闘部門らしきギルド員に所属と名前を言い、部屋に入る



 入って初めに目にしたのは奇妙な光景だった



「だから儂の作った剣は魔法を受け止めるようになってて~」

「俺様だってそんなもん作れるが!そのうえ強度も高めちゃうんだが!」

「いやお前の剣は切れ味がなっとらんだろう、兄貴は切れ味だけだ

 その点ワシはどっちも十分に出せるし装飾だって~」

「剣は切れ味があってなんぼだろうが!お前さんの装飾だって冒険者で気にするやつなんぞ少ないだろう!」

「あ!言いやがったなクソ兄貴!」

「切れ味だって耐久無ければ数回使っただけで鈍るんだが?」

「「お前はだまってろ!」」



 ・・・なんか三人のドワーフが鍛冶について喧嘩してんだけど

 しかもよく見ると酒持ってる

 病人にいきなり酒って・・・

 しかも僕が来ることくらい分かってたんじゃないのか?

 酒は言った相手に今から尋問しないといけないのかよ!

 めんどくせぇぇぇぇえええええ!!!!

 連れてきたラビヤーも苦笑いである

 ごめんね、こんなとこ連れてきて・・・



「ん・・・?おう!マークじゃないか!こっちこいや!」



 ドアを開けたところで彼らの飲酒喧嘩を眺めていたら酒を勢い良く煽った酔っ払い(ゴブニュさん)に気付かれてしまった

 めんどくさいけど、この人たち放っておいたらいつまでも続けてそうだし腹をくくろう



「おはようございます、酔っ払いたち」

「なんでぇ、そんな言い草はないだろう!なぁお前ら」

「「そうだそうだ!」」

「そうですか?一人は呪われて鍛冶部門の素材を使い切りそうになったり?一人は鍛冶部門の隊長で?後の一人は目撃者兼素材の管理責任者ですよね?

 朝っぱらから酒囲んでぐだぐだしてる人たちに言われたくないですね?

 それに?彼が目を覚ましたら一番に僕がここにきて尋問するって言ったはずなのになんでお二人がいるんですか?」

「・・・酒持ってきたのワシじゃないし兄貴だし」

「あぁん!?ドワーフは病み上がりには酒だって言ったのはお前だろうが!」

「酒持ってこられたら飲むしかないんだが?二人は俺の大先輩で上司なんだが?」

「いいから黙って酒を置け!」



 まさかいい歳した人らが言い訳を始めるとは・・・

 若造に怒られた三人は持っていた酒を置きシュンとしている

 怒られるとは思わなかったのかよ・・・

 何も考えてなさそうな人たちだ



「はぁ・・・とりあえず落ち着いたら尋問を始めたいんですが?」

「じゃあ儂らはこの辺で・・・」

「いやあんたらも責任者だろ!同席しろ!!」



 逃がさんぞ!!!

 昨日だって書類仕事とか隊長の役割から逃げようとしていたゴブニュさん

 逃げることだけは絶対許さん



 朝から怒鳴ることになるとは思ってもいなかった

 しかもちょっと前まで自分より偉かった人たちに対してである

 なんか、追放部門の隊長に任命されてから、偉い人たちの威厳というか・・・今までのイメージは完全に崩れ去っている



「じゃあ始めますよ?

 知ってるかもしれませんが追放部門の隊長のマークと言います

 スミスさん、今からいろいろと質問をします

 嘘偽りなく、答えてください」

「ああ、わかった」



 やっと始められる

 朝から酒臭いおっさんたちに囲まれながらの尋問が・・・

 ラビヤーを僕の後ろに立たせ、スミスの反応をしっかりと見てもらうようにする

 質問への反応をチェックする役目だ



「まず最初の質問ですが、なんで素材を横領してたんですか?」

「あー・・・それはだな・・・」



 いきなり言い淀むのかよ!

 とりあえずの質問だったんだが・・・?

 スミスは少し考えこんだ後、恥ずかしそうにこう答えた



「魔剣が作りたかったんだ」

「はぁ?」



 何とも奇妙な返答に、僕は思わず変な声を出してしまった

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