14 / 39
じゅうよん
しおりを挟む
自分の名前が呼ばれたのだ、と。
気が付くまでにちょっと時間がかかったと思う。
5,6年生中心のAチーム。
当然ながら、4年生を中心にざわめきが広がっていった。
「まあ、女の子も入れないとねぇ…」
そう言う声を聞いたのは帰り支度の最中だったと思う。
納得がいかないとでも、誰かが親に訴えたんだろう。
そしてそれを宥めようとした親が言ったんだろう。
5年生にも6年生にも、女子はいなかったから、だからだろうと。
高みを目指すようなチームじゃない。
コーチだって、ほぼボランティアみたいなもんだ。
男の子も女の子も同じ部費を取るのだから―――と、公平を期した結果なのかと気が付いて、それでちょっと悔しくなった。
贔屓みたいなもんじゃん!
そう思ったのは、当の本人だけじゃなかったのだ。
言葉に詰まって硬直した大地に、もう一度微笑みかける。
バカじゃないの?
そんな理由で辞める訳ないじゃん?
これでも、好きだったんだからね?
「言いたいことはそれだけ?」
畳みかけるように聞いても、動かない。
肩を竦めて、背中を向けた。
『えー、結構楽しみにしてたのに~』
バレンタイン前日の練習後だった。
ん!と差し出された手の平に首を傾げた。
明日は練習が無いから、去年までだったら、渡すタイミングだっただろうけど。
『無いよ。“ひな”じゃないんだから。』
『え?!マジでか?』
3年生でやめた“ひな”。
実は大地の事が好きで、それで毎年作ってたチョコレート。
1人にだけあげると、受け取って貰えないかもしれないし。
自分の名前だけで渡すのは恥ずかしいから、と。
私と2人から、と言っていたのをこの時初めて知った。
『シズルは作れねぇの?』
『…作れなくはない、けど…』
『じゃあ、ちょうだい。』
無邪気に言われて呆れた。
手作りだって、タダじゃないんだけど?って。
それでも作ったのは、何処か引け目を感じていたからだったのかもしれない。
Aチームに選ばれてから、ちょっとだけ、4年生男子達と距離を感じる様になってたから、仲直りするのに良いかも…なんて思ったのが、大きな間違いだったのだ。
『バレンタインなんて、チョコレート会社の陰謀よね。』
手伝ってくれた、レイちゃんが言ってた。
外国だと、男の方からプレゼント贈ったりするものなんだと。
『昔は女の子から言うのがハシタナイっていう考えがあったから何だろうけど、今はねぇ…肉食女子とか言われる時代になったんだから、もっと何か別のやり方あっても良いのに…』
バターを溶かしながらブツブツ呟いてたのを、もっと良く聞いておけば良かった。
全員揃ってる所が良いだろうと差し出したそれを見て、大地が目を大きく見開いた、その瞬間だった。
周りに居た全員が、大きな声で笑い出したのは。
『受ける~っっ、マジで作ってきた!』
『一応、女子ですってか?!』
『大地~、お前が言い出したんだから、責任持って全部食えよ!』
囃し立てられた大地が真っ赤になって叫んだ。
『何でだよっっ!! 俺1人で全部とかっ、罰ゲームじゃねぇんだからっっ!!』
『でも作ってくる方に賭けたの、大地だけじゃん?』
その言葉に、大地がチラッとこっちを見て、徐にプイッと顔を背ける。
『誰も賭けないんじゃ、“賭け”にならないっ言ったじゃん!』
『そーだけどさぁ』
言いながらも、ずっと、アイツらは“嗤って”いた。
騒ぎに気付いたコーチがやってきて、拳固を食らわせるまで。
そして、お母さん方が必死で謝るのを、どこか遠くで聞いていた。
チームを辞めると告げた時、コーチは眉を下げて「残念だな」と言ってくれたけど。
でも、本音は。
厄介事が無くなったって、思われたんじゃないかな、と。
密かに思った。
なのに、何だアレ。
チョコ受け取って貰えなかったんじゃない!
渡さなかったんだっっ―――!!
心の中で叫びながら、駅の構内を鼻息荒く(気持ち的に)歩いた。実際に鼻の穴が開いていたかも知れない。
カバンのポケットからパスケースを出して改札をくぐり、いつものホームへ向かおうと顔を上げた、そこに。
見覚えのある、茶髪が。
もの凄ーくイヤな顔で笑って―――いや、嗤っていた。
気が付くまでにちょっと時間がかかったと思う。
5,6年生中心のAチーム。
当然ながら、4年生を中心にざわめきが広がっていった。
「まあ、女の子も入れないとねぇ…」
そう言う声を聞いたのは帰り支度の最中だったと思う。
納得がいかないとでも、誰かが親に訴えたんだろう。
そしてそれを宥めようとした親が言ったんだろう。
5年生にも6年生にも、女子はいなかったから、だからだろうと。
高みを目指すようなチームじゃない。
コーチだって、ほぼボランティアみたいなもんだ。
男の子も女の子も同じ部費を取るのだから―――と、公平を期した結果なのかと気が付いて、それでちょっと悔しくなった。
贔屓みたいなもんじゃん!
そう思ったのは、当の本人だけじゃなかったのだ。
言葉に詰まって硬直した大地に、もう一度微笑みかける。
バカじゃないの?
そんな理由で辞める訳ないじゃん?
これでも、好きだったんだからね?
「言いたいことはそれだけ?」
畳みかけるように聞いても、動かない。
肩を竦めて、背中を向けた。
『えー、結構楽しみにしてたのに~』
バレンタイン前日の練習後だった。
ん!と差し出された手の平に首を傾げた。
明日は練習が無いから、去年までだったら、渡すタイミングだっただろうけど。
『無いよ。“ひな”じゃないんだから。』
『え?!マジでか?』
3年生でやめた“ひな”。
実は大地の事が好きで、それで毎年作ってたチョコレート。
1人にだけあげると、受け取って貰えないかもしれないし。
自分の名前だけで渡すのは恥ずかしいから、と。
私と2人から、と言っていたのをこの時初めて知った。
『シズルは作れねぇの?』
『…作れなくはない、けど…』
『じゃあ、ちょうだい。』
無邪気に言われて呆れた。
手作りだって、タダじゃないんだけど?って。
それでも作ったのは、何処か引け目を感じていたからだったのかもしれない。
Aチームに選ばれてから、ちょっとだけ、4年生男子達と距離を感じる様になってたから、仲直りするのに良いかも…なんて思ったのが、大きな間違いだったのだ。
『バレンタインなんて、チョコレート会社の陰謀よね。』
手伝ってくれた、レイちゃんが言ってた。
外国だと、男の方からプレゼント贈ったりするものなんだと。
『昔は女の子から言うのがハシタナイっていう考えがあったから何だろうけど、今はねぇ…肉食女子とか言われる時代になったんだから、もっと何か別のやり方あっても良いのに…』
バターを溶かしながらブツブツ呟いてたのを、もっと良く聞いておけば良かった。
全員揃ってる所が良いだろうと差し出したそれを見て、大地が目を大きく見開いた、その瞬間だった。
周りに居た全員が、大きな声で笑い出したのは。
『受ける~っっ、マジで作ってきた!』
『一応、女子ですってか?!』
『大地~、お前が言い出したんだから、責任持って全部食えよ!』
囃し立てられた大地が真っ赤になって叫んだ。
『何でだよっっ!! 俺1人で全部とかっ、罰ゲームじゃねぇんだからっっ!!』
『でも作ってくる方に賭けたの、大地だけじゃん?』
その言葉に、大地がチラッとこっちを見て、徐にプイッと顔を背ける。
『誰も賭けないんじゃ、“賭け”にならないっ言ったじゃん!』
『そーだけどさぁ』
言いながらも、ずっと、アイツらは“嗤って”いた。
騒ぎに気付いたコーチがやってきて、拳固を食らわせるまで。
そして、お母さん方が必死で謝るのを、どこか遠くで聞いていた。
チームを辞めると告げた時、コーチは眉を下げて「残念だな」と言ってくれたけど。
でも、本音は。
厄介事が無くなったって、思われたんじゃないかな、と。
密かに思った。
なのに、何だアレ。
チョコ受け取って貰えなかったんじゃない!
渡さなかったんだっっ―――!!
心の中で叫びながら、駅の構内を鼻息荒く(気持ち的に)歩いた。実際に鼻の穴が開いていたかも知れない。
カバンのポケットからパスケースを出して改札をくぐり、いつものホームへ向かおうと顔を上げた、そこに。
見覚えのある、茶髪が。
もの凄ーくイヤな顔で笑って―――いや、嗤っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる