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Other than ④
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SNSは嫌いだ。
インスタ映えとか、バカじゃないのかと思う。
母親は、“ママ友”に自慢する為だけに弁当を作り、部屋を飾り立て、ガーデニングに励んだ。
毎日の様に投稿しながら、同じように投稿している“ママ友”達をフォローし続けるという日々の中で、ある日、違和感に気が付いた。
“ママ友”グループ内で、当たり前のように皆が知っている事を自分が知らない―――そういう事が度々起こっている事に。
自分だけがハブられていると、疑心暗鬼になるのに時間はかからなかった。
聞きたいのに聞けない、そのくせこの関係を終わりにする事も出来ずに、意味も無く投稿し続けている内に、少しずつ、母親は体調を崩していき、家の中に引き篭もるようになった。
その後、母親と“ママ友”達の関係がどうなったのかは知らない。なにせ会った事が無いのだ、父も俺も。
もしかして母親の妄想だったんじゃないだろうかと思うほどに、“ママ友”達からの現実での音沙汰は無かった。
友が付いてるだけで友達じゃない。
じゃあ“友達”ってなんなんだろう?
正直、ただ中身のない会話をするだけならいらなくね?と思う。
必要以上に誰かと関わり合いにならないように、クラスの中でも地味で目立たないように生活してた。
無駄に凝った弁当を見られるのも嫌だったから、校舎の端っこにあるような便所で食った。
オンラインゲームも、一人だけでやって、そのうち飽きた。
もちろん、必要な会話はする。
それなりに笑顔は作れる。
でもそれだけ。
たまに何考えてんのかわからなくてキモいって言われるけど、スルーしてたら距離を置かれて終了。
好きの反対は無関心だ。
自分がそれで困らなくて、相手もそれで困らないなら、それで良いと思う。
朝起きて学校行って、帰って寝る。
大学入ったらそれにバイトが加わって、でも変わらない毎日。
そんな中で出会ったのが、彼女だった。
「あの、この…これ、取らせてもらっても、いいですか?」
ぷるぷると震えながら言っていた。
白い肌に黒い髪。大きな瞳。
子供の頃に読んだ白雪姫って、こんなカンジだろうかとボンヤリと思いながら、「どうぞ」と言ったと思う。
その途端、彼女の全身から、喜びが湧き上がって溢れ出た。
なんて、大袈裟な表現かもしれない。
でも本気でそう感じるぐらい、彼女はこれ以上はないほどの、満面の笑顔で言ったのだ。
「ありがとうございます!」―――と。
そう言って、コンテナの中で、まだ棚出し出来てない商品のうちの1つを、彼女は大切な宝物のように、そっと手に取った。
手の平に乗せて、矯めつ眇めつするのを見ていたら、思わず聞いていた。
「そんなに好きなんですか?」
言って直ぐに“しまった”と後悔した。
彼女が驚いて目を見開いたからだ。
きっと次には、胡散臭そうな目で見られるに違いない、そう思って構えた。
それなのに。
「はいっ、大好きです!」
そう言って、彼女はもう一度微笑んだのだ。
それどころか、勢いよく身を乗り出して続けた。
あまつさえ、頰を上気させて。
「こないだ食べて、スッゴく美味しかったんです!口の中で蕩けるのが、もう、スッゴい美味しい!」
正直、食レポには向かないようだ、とは思った。
でも、熱量はスゴくて、ちょっと気圧されていると、彼女がまた笑う。
「でもこれ、どこにも置いて無くって。あちこち探して、やっと見つけたんですよ!これ、ここにはいつも置いてあります?」
「え…、あ~、どうだろう…。多分?」
「そうですか!じゃあ、また来ます!」
ありがとうございました!―――と、何もしてないのに礼を言われる。
いそいそと会計を済ませて、嬉しそうに店を出て行く彼女を見送った。
スラリと背の高い女の子。
スッと姿勢を伸ばして颯爽と歩いて行く姿は、とてもクールに見える。それなのに。
さっきの遣り取りを思い出して、ふと、頰が緩んだ。
『黒蜜きな粉のわらび餅』と書かれた、それ。
彼女が買う時、レジで手に取って初めてその商品を認識した。商品をそこまでまじまじと見たことが無かったからだ。
棚に並べるのにいちいち商品を気にするのは時間の無駄だし、レジに必要なスキルでも無い。間違えないように並べて、間違えないようにお釣りを渡すだけで良いのだから。
でもその日から、ほぼ毎日訪れるようになった彼女の為に、密かに発注データをいじり、入荷した商品をこっそり目立たない場所に避難させるようになった。
それは、自分自身にとって、生まれて初めて抱いた感情だった。
インスタ映えとか、バカじゃないのかと思う。
母親は、“ママ友”に自慢する為だけに弁当を作り、部屋を飾り立て、ガーデニングに励んだ。
毎日の様に投稿しながら、同じように投稿している“ママ友”達をフォローし続けるという日々の中で、ある日、違和感に気が付いた。
“ママ友”グループ内で、当たり前のように皆が知っている事を自分が知らない―――そういう事が度々起こっている事に。
自分だけがハブられていると、疑心暗鬼になるのに時間はかからなかった。
聞きたいのに聞けない、そのくせこの関係を終わりにする事も出来ずに、意味も無く投稿し続けている内に、少しずつ、母親は体調を崩していき、家の中に引き篭もるようになった。
その後、母親と“ママ友”達の関係がどうなったのかは知らない。なにせ会った事が無いのだ、父も俺も。
もしかして母親の妄想だったんじゃないだろうかと思うほどに、“ママ友”達からの現実での音沙汰は無かった。
友が付いてるだけで友達じゃない。
じゃあ“友達”ってなんなんだろう?
正直、ただ中身のない会話をするだけならいらなくね?と思う。
必要以上に誰かと関わり合いにならないように、クラスの中でも地味で目立たないように生活してた。
無駄に凝った弁当を見られるのも嫌だったから、校舎の端っこにあるような便所で食った。
オンラインゲームも、一人だけでやって、そのうち飽きた。
もちろん、必要な会話はする。
それなりに笑顔は作れる。
でもそれだけ。
たまに何考えてんのかわからなくてキモいって言われるけど、スルーしてたら距離を置かれて終了。
好きの反対は無関心だ。
自分がそれで困らなくて、相手もそれで困らないなら、それで良いと思う。
朝起きて学校行って、帰って寝る。
大学入ったらそれにバイトが加わって、でも変わらない毎日。
そんな中で出会ったのが、彼女だった。
「あの、この…これ、取らせてもらっても、いいですか?」
ぷるぷると震えながら言っていた。
白い肌に黒い髪。大きな瞳。
子供の頃に読んだ白雪姫って、こんなカンジだろうかとボンヤリと思いながら、「どうぞ」と言ったと思う。
その途端、彼女の全身から、喜びが湧き上がって溢れ出た。
なんて、大袈裟な表現かもしれない。
でも本気でそう感じるぐらい、彼女はこれ以上はないほどの、満面の笑顔で言ったのだ。
「ありがとうございます!」―――と。
そう言って、コンテナの中で、まだ棚出し出来てない商品のうちの1つを、彼女は大切な宝物のように、そっと手に取った。
手の平に乗せて、矯めつ眇めつするのを見ていたら、思わず聞いていた。
「そんなに好きなんですか?」
言って直ぐに“しまった”と後悔した。
彼女が驚いて目を見開いたからだ。
きっと次には、胡散臭そうな目で見られるに違いない、そう思って構えた。
それなのに。
「はいっ、大好きです!」
そう言って、彼女はもう一度微笑んだのだ。
それどころか、勢いよく身を乗り出して続けた。
あまつさえ、頰を上気させて。
「こないだ食べて、スッゴく美味しかったんです!口の中で蕩けるのが、もう、スッゴい美味しい!」
正直、食レポには向かないようだ、とは思った。
でも、熱量はスゴくて、ちょっと気圧されていると、彼女がまた笑う。
「でもこれ、どこにも置いて無くって。あちこち探して、やっと見つけたんですよ!これ、ここにはいつも置いてあります?」
「え…、あ~、どうだろう…。多分?」
「そうですか!じゃあ、また来ます!」
ありがとうございました!―――と、何もしてないのに礼を言われる。
いそいそと会計を済ませて、嬉しそうに店を出て行く彼女を見送った。
スラリと背の高い女の子。
スッと姿勢を伸ばして颯爽と歩いて行く姿は、とてもクールに見える。それなのに。
さっきの遣り取りを思い出して、ふと、頰が緩んだ。
『黒蜜きな粉のわらび餅』と書かれた、それ。
彼女が買う時、レジで手に取って初めてその商品を認識した。商品をそこまでまじまじと見たことが無かったからだ。
棚に並べるのにいちいち商品を気にするのは時間の無駄だし、レジに必要なスキルでも無い。間違えないように並べて、間違えないようにお釣りを渡すだけで良いのだから。
でもその日から、ほぼ毎日訪れるようになった彼女の為に、密かに発注データをいじり、入荷した商品をこっそり目立たない場所に避難させるようになった。
それは、自分自身にとって、生まれて初めて抱いた感情だった。
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