シスコン無双〜妹が生まれたので最強を目指す〜

つらら

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第一話 妹が生まれた

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無気力人間。
僕を一語で表すなら、これ以上の言葉は見当たらない。

別に歴史に名を残したいだとか、近衛騎士になって王に仕えたいだとか、大金持ちになって美女を侍らせたいなどといった、大きな夢は持っていない。
そこそこの収入を得て、一般的な家に住み、できれば結婚してお嫁さんと質素に暮らすのが、僕の理想だ。

これをほかの人に言うと、子供のくせに枯れてんなあ、とか、もっと夢を大きく持て、と言われる。
だが、考えを変えることはないだろう、平凡が僕の幸せなのだ―――

―――なんて思ってた。妹が生まれるまでは……。
***
僕はいつものように学園へ向かう。
ここはローズマリア王国の王都、ロザリオ。

僕が通っているローゼリア学園は王国一の実力を誇ると言われている。
王国にはいくつも学園があり、六才になった少年少女たちは、十五歳になるまで学園に通うことが義務付けられている。

僕は去年入学したから、今は七歳だ。

「おーい! グレン! 」

後ろから僕を呼ぶ声がした。
振り返ると、青髪の少年がこっちに走って来ている。

親友のバルトだ。

「おはよう、バルト。朝から元気だね」

「あったりまえだろ? 今日はお前の妹が生まれる日なんだからな! 俺にとってもおめでたい日だ!」

バルトは自分のことのように喜んでくれた。
そう、今日、僕に妹ができるのだ。

魔法が発達したこの世界では、出産の日がほぼ明確にわかる。
新たな家族ができる、その日が今日なのだ。

「今日は授業が終わったらすぐ帰るよ」

僕がそういうと、

「何言ってんだ。いっつもすぐ帰ってただろ」

バルトはそう言って笑った。
向上心の欠片もない僕は、入学してから今まで、放課後、学校に居残ったことがなかった。

その後、学園につくまで、僕とバルトは他愛もない話をして笑いあった。
***
バルトと一緒に教室に入ると、

「おはよう、グレン! ついでに、バルトも!」

元気に話しかけてきたのは、茶髪を肩まで伸ばした女の子、オリヴィアだ。
オリヴィエは子爵の位を得ている貴族だが、平民を見下したりすることは決してなく、僕やバルトと仲良くしてくれている。

ここ、ローゼリア学園は、身分の違いをとっぱらい、平等に教育をすることを謳っているが、現実はそううまくいかず、身分差別が横行している。

「ついでは余計だよ! 」

バルトがむっとして言い返すと、オリヴィエが、ふふっ、と笑う。
それにつられてバルトも笑った。

なんだかんだ仲のいい二人なのだ。
その後三人でおしゃべりをしていたら、教室の扉が開き、担任の先生が入ってきた。

「みんな、おはよう。それじゃ、ホームルームをはじめるぞー」

先生がそう言うとみんな自分の席に座る。
担任のリーシャ先生は、水色の髪を肩ぐらいまで伸ばしていて、小柄で、優しい先生だ。
でも、このクラスの子達はみんな知っている。

リーシャ先生は怒るととっても怖いのだ。
入学してから今まで先生が怒ったところは一回しか見たことがないけれど、その時は僕が怒られているわけでもないのに、泣きそうになってしまった。
***
今日の授業は、魔法入門の座学と、実際に魔力を感じてみる実戦授業だった。筋がいいと褒められて、ちょっぴり嬉しかった。

「じゃあ、僕はもう帰るよ」

僕はバルトとオリヴィアに言った。

「ああ、じゃあな」

「今度妹ちゃんに会わせてね! 」

オリヴィアは笑顔で言った。

「うん。もちろん! バルトもね」

僕がバルトのほうを見て言うと

「おう! 楽しみにしとく」

バルトはグッドサインをして答えた。

 なるべく早く帰ろうと、僕は走って家に向かった。
家の扉の前につくと、おぎゃあ、という声が聞こえた。

扉を開け、靴を脱ぎ捨て、泣き声のするほうに向かうと。
幸せそうな顔で赤ん坊を抱く母と、号泣して喜ぶ父、そして、出産を手伝ってくれたのであろう助産師さんがいた。

母は僕に気が付くと、

「おかえりなさい。お兄ちゃん」
と言った。

お兄ちゃん。
すごくいい響きだ。

母が手招いたので、僕は母のそばに行く。

「ほら、アリス、あなたのお兄ちゃんですよ。」

母が優しくそういうと赤ん坊が僕のほうを向いた。
母が触ってみなさい、優しくねと言ったので、僕は右手の人差し指を、赤ん坊の手のひらにおそるおそる近づけた。

すると、赤ん坊は僕の指を、ぎゅっと、握った。

「可愛いでしょう。あなたの妹よ。」
母は笑顔でそう言う。

「お兄ちゃんのグレンが、アリスを守ってあげてね」
母が言うと、父も

「そうだぞ! グレンも男なんだ。妹を守れるぐらい強くなれ! 」
と、同意した。

父は熱血な性格で、それに似合った体をしている。
そのおかげで、父は部下にすごく慕われている。

部下の人が家に遊びに来ることだってある。
部下の人に、親方の子供が、どうしてこんなにやる気のない子なんだろうと、言っているのを聞いたことがある。

そんな父に暑苦しいことを言われ、いつもは気が向いたらがんばるよー、とかテキトーに返事をするのだが、今回の僕は一味違った。

「うん! 僕がアリスを守るよ! がんばって強くなって、誰よりも強くなって、妹を守る! 」
予想と違った僕の反応に両親は、驚いた表情をしていたが、すぐに優しく笑って、

「「がんばれ、お兄ちゃん」」
といって応援してくれた。だが、だれも知らなかった。

この兄が重度のシスコンで、妹のために最強になるなんて…。
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