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第2部
番外編 これまでのヒガン一家2
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紙芝居側に魔眼を抑制する為にメガネを掛けているジゼルが加わり、少し小道具も増える。メイドの嗜みと言わんばかりに、4人ともこの劇では意気投合していた。
場面はさっきの続き。オレが豪奢な椅子に座っている場面からだ。
「国境防衛を果たし、伯爵様にその力を示した旦那様。この事は、デーモン殺しの名声は本物だったとエルディー南部に語り継がれる切っ掛けとなりました。
ですが、防衛戦はまだ続きます。エルディーに潜り込んでいた召喚者に騙され、南東の男爵が軍を率いて留守の伯爵領へ向かっているという報せが飛び込んできました。」
汎用黒幕の黒フードと悪そうな貴族が大軍と共に現れた。
「伯爵が留守の今こそ、この地を我が手に収める絶好の機会ぞ!
…ええい!忌々しい雪め!思うように進めぬではないか!」
「急いで戻らねばならぬと言うのに雪で進めぬ…ええい!」
男爵役のメイプルと伯爵役のココア。ココアもノリノリでこういう事がやれる辺り、やはりバニラなのだなと思い知らされる。
「雪で思うように進軍できなかったのは両軍同じ。その間に旦那様はユキさんと共にやって来て、一週間だけ守ると宣言し、都市全体を守る防御魔法を展開します。」
弾かれるように離れる男爵軍。実際はどうだったのか、この辺りをオレはよく知らない。
「旦那様の防御魔法を破れず、時間と体力と食糧のみを消費し続ける男爵軍。
2日目には伯爵軍が戻ってきてしまいます。」
睨み合う両軍。これを表現するのにジゼルの加入は良いタイミングだったかもしれない。
「我が領地を侵す痴れ者め!立ち去れぇ!」
「ええい!ここで引いたらただのマヌケだ!攻撃開始!」
ぶつかり合う両軍。だが、男爵軍はあっという間にその数を減らしていく。
「帰りの食糧が既に無く、ここで勝たねば帰れない腹ペコ男爵軍と、雪の中を強引に引き返してきた怒りの伯爵軍。
疲労の分で男爵軍が有利と思われた戦いは、伯爵軍の完勝で終わります。」
「あーれー」
弱気顔で退場する男爵。顔は知らんがご苦労様。
「南部の衛兵とも言われる伯爵軍は、今もエルディー最強の軍と言われております。
都市に逃げ込めばどうなるか分からなかったこの戦いは、旦那様の防御魔法と伯爵軍の日頃の鍛練により勝利を収めることが出来たのでした。」
『わー!』
歓声と拍手の娘達。
事態を知る他の面々は微妙な笑みを浮かべていた。その表情は先の事を思ってだろう。
伯爵軍と男爵軍の戦いは、何処までを兵の質と言うかは色んな論がありそうだが、士気の差が大きいように思える。
簡単に落ちると思った都市はびくともせず、焦りと戸惑いと雪で男爵軍側の士気はがた落ち。逆に伯爵軍側は絶対に都市を渡さない、という一致した思いで士気は極限まで高まっていたに違いない。
後の都市を挙げてと言っても過言ではない見送りは今も心に刻まれている。
「ついに英雄とまで言われるようになった旦那様。ですが、その栄誉の代償はとても大きいものでした。」
椅子に相変わらず座るオレだが、その姿はやつれていた。
「体を壊してしまうだけでなく、記憶まで失ってしまった旦那様…
春になり、帰宅した我が家は悲しみに覆われるのでした…」
当時よく着ていた服と、今も愛用する椅子に座るオレの姿。無理矢理ニコニコしているように見えるのが逆に辛い。というかあんな顔をしていたのかオレは。
祭のように送り出され、葬式のように迎えられた時は本当に参った。あの頃は何も覚えておらず、何を言われても戸惑うばかりだった。
「こうなってしまうと今まで通りとはいきません。パーティーを離脱するアリス様、一刻も早く一人前になれるよう勉学や訓練に励むようになった遥香様…
これからの全ては旦那様を元に戻す為にあるというかのように一家が動き出す事になります。」
「お母様…」
愛娘から非難めいた表情を向けられるアリス。
当時は知らなかったが実家との確執もあり、活動出来ず成果が上げられないのでは、あのまま抜けられていても仕方ない。
アリスとしては詳細を言えないのか、微妙な表情の笑顔を返すしかなかった。
あの時の魔法を使って見せた時の、酷い喪失感と絶望に覆われた顔はちゃんと覚えている…
恐らく、下の娘達を含め、この場の誰よりも下手だったのではないだろうか。
「抜けたと思われていたアリス様ですが、旦那様を戻す為に色々と調べられており、その中でジュリア様と一緒にビフレストについての伝承を集められていたのです。
戻ってきたアリス様はジュリア様、ユキさんと共に、カトリーナさんの元で鍛えられる事になりました。」
しっかりフォローを入れるアクア。
アリスの抜けるという決断も、悩み、苦しんでの決断だったようなのは泣き腫らした顔で分かっていたので、戻るという決断も辛いものだったはずだ。
溺愛していた妹のソニアにぶん殴られたのが一番堪えたそうだが…
今思うと、本気でぶん殴られたのがその頃で良かったと思う。もう少し後だと、オレと同じで再起が難しくなっていた可能性もあるからな…
「更に、ここで一家に一人新たに加わります。それがココアさんです。」
本人ではなく、薄汚れた感じのココアの紙人形が現れた。
当時は奴隷として売られていたのを買ったのだが、バニラが奴隷として売られているかと思い、我が目を疑ったものだ。
「かーしゃま!」
今度はココアとの娘であるジェリーが声を上げる。こちらもココアが北方エルフに転生したこともあり、灰色エルフとして生まれてきていた。
二人とも灰色エルフという事もあってか、ノエミはジェリーを子分のように連れ回し、ジェリーは面倒見の良い姉にベッタリだ。
チラッとバニラの方を見ると、『ジェリーはかわいいなぁ』というオーラ全開である。ほぼ自分の子供みたいなものだからな。
この劇中でのやり取りの後、ココア達が魔法で世界を増やしながらこれまでに20回以上やり直しているという事を知るのだが、紙芝居ではそこまで言及はしない。
その魔法の影響で異なるココアが時間や場所を変えて数人居るようで、その内の一人はオレたちの手で殺している。
全員がココアだが、ココアで合計100年以上、個体によっては数百年生きており、その内の一人であるミルクがエディさんを通じて支援してくれていた事をこの時に知った。
そのミルクは既に老齢で亡くなっており、色々と学びに行ったココアがしっかり看取ったようである。
遥香はお婆ちゃんと呼んで親しんでいた。
「ビフレストを目指すことになった一家は、遥香様が学校を卒業するまでの間、皆で力を合わせて互いを鍛え合っていく事になるのでした。」
紙人形をひっくり返し、娘達は育った姿に変化する。
やはり一番変化が大きいのは遥香。背はバニラと同じくらいに見せていたが、雰囲気も含めて別人にも思えた。
遥香の学生時代もまあ色々とあったが、割愛される。
「一家の活躍の場はエルディーからジュリア様とフィオナ様の実家のあるエルフの森の東側へと移ります。」
背景が東部の町並みに変わる。
相変わらず妙なニコニコ顔のオレが座っているだけだが、わりと皆が真顔だったり厳しい表情なので余計に妙な感じだ。
「うーん…アクアにはそんな風に見えてたのか?」
バニラが隣でそう呟く。
「なんだかちぐはぐだよね。」
「そうですわね…」
柊とフィオナも納得いかないようだ。
「さて、この頃になると、我々を召喚したヒュマス達はもう魔物に抗えなくなってしまいます。
亜人達は種族間で同盟を結び『亜人連合』として対処をしていますが、亜人嫌いなヒュマスはそうもいかず、ついにはスタンピードを抑え込めずに滅亡してしまいました。
魔物の海となった旧ヒュマス領、そこでバニラ様達はオリハルコンというとても強い魔物からだけ産み出される貴重な鉱石を求めて戦い、勝ち取ります。」
その時の巨大な狼型魔物がうちで訓練用ダンジョンを営んでいる、ピンク色の妖精であるサクラの前世だ。
今は転生直後で穢れがなく、話し合いが出来てしまい放置も出来ないので、私塾紛いの事をする上で活用させてもらっている。
ダンジョン内で万が一があっても死なないという事に出来るのはとてもありがたいが、自分の死に慣れられると危険すぎるのでそこまで追い詰める訓練はしていない。
「転生に必要なものも揃い、準備万端となった一行は長く立ち入り禁止なっていたイグドラシルを、今も誰も真似できない早さで攻略をしていきます。
最高の装備、最高の魔法、最高クラスの戦士達が揃うヒガン一家の名声はここから一気に広まっていくのでした。」
同時に厄介事も多く、新興宗教に襲撃されたり、各所から素材の提供を求められたりという事もあった。
社会に役立てる為ならいくらでも供出するが、同業者が楽をする為など受け入れられるはずがない。
その辺りは吹っ飛ばし、場面はイグドラシルに掛かる虹の橋となった。
アクアとメイプルが加入したのはこの間の時期なのだが、不要と判断したのか言及はない。オレとしては、二人にはとても救われたと思っているのだが…
「そして、ついに一行は虹の橋へと辿り着き、渡る為の試練として番人と戦う事になります。」
現れる筋骨隆々のヘイムダルが現れ、置いてあったメイプルの楽器がアレンジされたプレアデスを奏で始める。
戦闘の詳細には言及されなかったが、死闘の末の勝利で戦闘後はそこで一泊するハメになった。
「長い間準備をし、イグドラシルを登る間にも自分達を高め続けて来た一行はなんとか勝利します。」
「強き者らよ通るが良い。」
そう言って退場するメイプル演じるヘイムダル。何役目だろうか?
オレはと言うと、相変わらず妙にニコニコしながら隠れるように居るので妙な感じだ。
尺があればここでビフレスト専用BGMが流れるのだろうが、カットされて場面は花畑。ビフレストの向こう側だ。
「現れたのはイグドラシルから世界を見続ける神様のオーディン。
転生に必要なものを捧げると、最後の試練となります。」
オレだけが引き離され、他の皆に向けて光が放たれる。ここだけ普通の紙人形劇を越える演出である。
「それを防いだのは遥香様。」
「大丈夫!大丈夫だから!私なら耐えられるから!」
遥香役はココア。バニラもだが、妙に声真似が似ていた。
擬似的に防御魔法の光もココアが展開している。
「言葉とは裏腹に弾き飛ばされる盾。皆様を守る物は必死に維持し続ける防御魔法のみとなります。」
遥香の盾が離れ、息を飲む下の二人。
ジッとその様子を見つめたまま、水飴の入っていたポーション瓶を握り締めている。
「なにか…もう打つ手は無いのか!?
旦那様はあらゆる手段を考え、探し、そして、一つだけ自分が使えるものを見つけ出します。
それは、全身全霊というスキル。」
オレの紙人形が引っくり返ると、髪を逆立てスーパー感じで虹色の光を撒き散らしながら盾を構えて皆の前に立つ。
そんな感じだったのか。恥ずかしい。
居ても立ってもいられなくなり、周りを見ると全員が食い入るように見ていた。これは茶化せない空気…
「名前通り全てを出し切るスキルは、あの時の防衛の影響で限界を越えていた旦那様の肉体に牙を剥きます。遥香様に支えられないと、もう立つことすら出来ません。そして、守るだけではダメだと気付き遥香様にこう言います。
『リンゴ』、手を貸せ。剣を持って横に立て!
それは記憶を失い、忘れてしまったはずの遥香様の偽名。その名を呼ばれた遥香様は言われるままにお二人が愛用した剣をオーディンに向けて突き付けます。」
このシーンの為だけに用意された紙人形に切り替わり、オレの状態が鮮明になる。
よく見ると既に足がなく、自力で立ちようがなかったようだ。
「ファイナルストライク。
そう名付けられた魔法は正に最後の一撃。
同時に旦那様は盾も持てなくなりましたが、もう必要ありません。
最後の一撃はオーディンの攻撃を撃ち破り、見事に試練を乗り越えました。」
剣が光るとオーディンの放った光が押し返され、被弾させると同時に剣も砕け散っていた。
「見事だ。試練の突破を認めよう。」
「ですが、その言葉は旦那様には届きません。限界を越えた旦那様の体は既に塵となって消えてしまっていたのでした…」
どういう仕掛けなのか、消えるオレの紙人形。全員の視線がオレに集まる。
両手で両膝を叩き、ちゃんと腕も足もあるよ、とアピールする。
「全員が悲しみに暮れていましたが、ご覧の通り旦那様は無事に転生を果たし、ヒュマスの見た目からご覧の通りディモスへと姿を変えたのでした。」
『おとーしゃま!』
光の中から現れたしかめっ面なオレの紙人形の姿を見て、ノエミとジェリーが声を合わせて呼んだ。
「こうして転生を果たし、健常な肉体を取り戻した旦那様は今までの遅れを取り戻すかのように活動を始め、ヒュマス領の解放、バルサス大峡谷の探索に活躍する事になります。
そして、旦那様達の活躍はこれでは終わりません。今では誰も到達出来なくなった北の果て、遥か南の海に浮かぶ大珊瑚礁を目指す旅がもうすぐ始まります。」
『おー!』
声を揃える3人。
「いったい何があるのでしょうね?あたしも今から楽しみで仕方ありません。
では、駆け足ではございましたが、これまでのヒガン様の物語、一先ず終了とさせていただきます。お疲れ様でした。」
メイド達が並んで深々と礼をすると、皆が大きな拍手で労った。
「皆様、いかがでしたか?」
「内容は良かったが、父さんが壊れてからの表情がちぐはぐなのが気になる。」
というバニラの言葉に皆が頷いた。
「そうですか?出会った頃はあんな感じだったと思ったのですが…」
「攻略が上手くいったり、いかなかったりだったものね…」
「アリスは何かと胃の心配をされてましたわね。」
「ああ、確かにそうだったわ…実際、痛くて何もかも忘れて横になっていたい日もあったから…」
「なんか、すまんな。」
「良いのよ。だいたい、話が通じないのが悪いんだから。口約束は破られまくってたし。」
胃も痛くなるわけだ。
それが今のわりと強かな、実家との手切れ金にイグドラシルで稼いだ大金貨1800枚放出するアリスを形成していると思うと、なんとも言えなくなってしまうが。
「本当に大変な時期だったけど、過ぎれば良い思い出よ。
でも、きっとこれからも大変な事があると思うと、気が引き締まるわね。」
「重ね重ねすまない。」
「良いから良いから。その分、みんなには頑張ってもらうわよ?」
『はい…』
妙なプレッシャーに返事をするオレたち。
各所との調整にアリスは欠かせないからな。戦闘能力は劣っていても、料理、裁縫、交渉とやれる事はあるのだ。
「北の果てと大珊瑚礁、どんな場所か楽しみね。」
「北の果てはバニラと特にアリスには厳しすぎるのがなぁ…」
「そうなの?」
「天然のフロストノヴァだ。」
『あぁ…』
フィオナの代名詞とも言える魔法で説明する。
あの魔法、使い手が優れていると魔法を阻害してくるので、生粋の魔導師である二人には逆境過ぎる環境だ。
「すぐには無理だが、その内わたしたちでも踏破できるような魔導具を考えよう。」
「冒険者を名乗る以上、自力で景色を見なくちゃね。」
今回は無理でも、必ず踏破するという決意を見せる二人。
この様子なら、留守番をさせてもへそを曲げたりという事もないだろう。
「問題は遥香だよなぁ…」
この場に居ない四女の事を話題に出す。
梓も居ないのだが、こちらは冬場は専念出来るからと明るい内は作業所に籠りっきり。
遥香は思春期の爆弾が爆発して、5年ほど家には顔を出す程度しかしていない。政略結婚目的で加入した西方エルフのリリと、伝説上の存在だと思われていたフリューゲルのヒルデを付けてはいるが、入ってくる遥香の話は顔を覆いたくなることも多く、オレたちが北部へ直接謝罪に赴くこともあった。リリとヒルデはそんな話は聞かないのだが…
「まあ、大丈夫だろう。遥香は理想と現実とのギャップでもがいているだけだからな。」
と言うバニラ。
心を許すと遠慮なしで物を言う所があるバニラと言い合いになり、飛び出したのが5年前。
それからは年に数度、決まった時期に帰ってくるだけだ。
「頭を下げに行く親の気持ちも考えて欲しいが…」
「娘の尻拭いが出来るのも今だけかもしれないぞ?」
「今のままじゃとてもじゃないが嫁に出せない…」
「まあ、わたしたちは貰い手が居るか怪しいけどな。」
「そう卑下するな。全員、魅力的な女性なんだから。」
「そういう!そういうとこだぞ!?」
顔を赤くして肩をバンバン叩いてくる。
どういう事かと思って柊の方を見るが、意味深な笑みを浮かべるフィオナしか居なかった。いなくなるならせめて一言欲しい。
「自慢の娘を嫁に出す前に、皆で世界を少しでも暴いておかないとな。」
「はあ…そうだな。遥香もそれには同意してくれると思うよ。」
タメ息1つ吐いて同意してくれる。
頭を軽く撫でてやってから立ち上がると、やって来たカトリーナが手を叩いた。
「皆、そろそろ夕飯の準備にしましょう。旦那様、今日もお手伝いをお願いしてもよろしいですか?」
「承った。」
「おとーしゃま、きょうもしかられるの?」
ノエミの無邪気な一言が心を大きく抉る!
「だ、だいじょうぶだ…アクアとメイプルが手伝ってくれるから…」
そう、片付けさえしなければ大丈夫なはずなのだ。
「旦那様の補佐は我々にお任せください。」
「家事全般なら旦那様に負けませんよー?」
頼りになるメイドが多くて助かる。
こうして吹雪の日の昼下がりはのんびりと幕を下ろす。
部屋から出て外を見ると吹雪は収まり、夕焼けで白い庭が茜色に染まっていた。
「この光景が見れるという事は、冬の終わりも近いかもしれませんね。」
「遥香もそろそろ帰ってくるか。」
「そうだと良いのですが…」
ガラスに映るカトリーナの顔は不安げで、声も力がない。実子のレオンより可愛がっている気もするが、午後からは息子達を鍛えていたので気がするだけだと思いたい。
娘は当然可愛いが、息子だって同じくらい愛しく、区別をしているつもりはないのだが、長男のアレックスからは妙に距離を取りたがられているのも悩みの種だ。
「子育ては難しいな…」
「ままならないものですね…」
「だが、元気ならそれで良いさ。」
尻拭い出来るのは今の内。
バニラに言われた事を心の中で反芻し、夕食の準備に向かうことにした。
自分の事情も周りの事情もゲームの時とは大きく異なり、最適解を当て嵌められる事柄も少なければ、リタマラや乱数調整も出来ない。
バニラの魔法や魔導具への反発、体がダメで不能者扱いされていた頃のオレへの風当たり等、子供達にはまだ語れないこともある。他にも今日まで多くの失敗も重ねてきたが、それでも概ね成功を収めていると言って良い。
だが、人生も冒険者としても道半ばで目指したい場所はたくさんあり、満足はしていなかった。
子供達の成長に時の流れを感じつつ、時代の芽生えにも確かな手応えを得て、やって来た事に間違いは無かったと信じている。
前を歩く娘達の姿に希望と期待を抱き、ガラスに映るオレの顔が綻んでしまっている事に気付き、少し気恥ずかしくなった。
場面はさっきの続き。オレが豪奢な椅子に座っている場面からだ。
「国境防衛を果たし、伯爵様にその力を示した旦那様。この事は、デーモン殺しの名声は本物だったとエルディー南部に語り継がれる切っ掛けとなりました。
ですが、防衛戦はまだ続きます。エルディーに潜り込んでいた召喚者に騙され、南東の男爵が軍を率いて留守の伯爵領へ向かっているという報せが飛び込んできました。」
汎用黒幕の黒フードと悪そうな貴族が大軍と共に現れた。
「伯爵が留守の今こそ、この地を我が手に収める絶好の機会ぞ!
…ええい!忌々しい雪め!思うように進めぬではないか!」
「急いで戻らねばならぬと言うのに雪で進めぬ…ええい!」
男爵役のメイプルと伯爵役のココア。ココアもノリノリでこういう事がやれる辺り、やはりバニラなのだなと思い知らされる。
「雪で思うように進軍できなかったのは両軍同じ。その間に旦那様はユキさんと共にやって来て、一週間だけ守ると宣言し、都市全体を守る防御魔法を展開します。」
弾かれるように離れる男爵軍。実際はどうだったのか、この辺りをオレはよく知らない。
「旦那様の防御魔法を破れず、時間と体力と食糧のみを消費し続ける男爵軍。
2日目には伯爵軍が戻ってきてしまいます。」
睨み合う両軍。これを表現するのにジゼルの加入は良いタイミングだったかもしれない。
「我が領地を侵す痴れ者め!立ち去れぇ!」
「ええい!ここで引いたらただのマヌケだ!攻撃開始!」
ぶつかり合う両軍。だが、男爵軍はあっという間にその数を減らしていく。
「帰りの食糧が既に無く、ここで勝たねば帰れない腹ペコ男爵軍と、雪の中を強引に引き返してきた怒りの伯爵軍。
疲労の分で男爵軍が有利と思われた戦いは、伯爵軍の完勝で終わります。」
「あーれー」
弱気顔で退場する男爵。顔は知らんがご苦労様。
「南部の衛兵とも言われる伯爵軍は、今もエルディー最強の軍と言われております。
都市に逃げ込めばどうなるか分からなかったこの戦いは、旦那様の防御魔法と伯爵軍の日頃の鍛練により勝利を収めることが出来たのでした。」
『わー!』
歓声と拍手の娘達。
事態を知る他の面々は微妙な笑みを浮かべていた。その表情は先の事を思ってだろう。
伯爵軍と男爵軍の戦いは、何処までを兵の質と言うかは色んな論がありそうだが、士気の差が大きいように思える。
簡単に落ちると思った都市はびくともせず、焦りと戸惑いと雪で男爵軍側の士気はがた落ち。逆に伯爵軍側は絶対に都市を渡さない、という一致した思いで士気は極限まで高まっていたに違いない。
後の都市を挙げてと言っても過言ではない見送りは今も心に刻まれている。
「ついに英雄とまで言われるようになった旦那様。ですが、その栄誉の代償はとても大きいものでした。」
椅子に相変わらず座るオレだが、その姿はやつれていた。
「体を壊してしまうだけでなく、記憶まで失ってしまった旦那様…
春になり、帰宅した我が家は悲しみに覆われるのでした…」
当時よく着ていた服と、今も愛用する椅子に座るオレの姿。無理矢理ニコニコしているように見えるのが逆に辛い。というかあんな顔をしていたのかオレは。
祭のように送り出され、葬式のように迎えられた時は本当に参った。あの頃は何も覚えておらず、何を言われても戸惑うばかりだった。
「こうなってしまうと今まで通りとはいきません。パーティーを離脱するアリス様、一刻も早く一人前になれるよう勉学や訓練に励むようになった遥香様…
これからの全ては旦那様を元に戻す為にあるというかのように一家が動き出す事になります。」
「お母様…」
愛娘から非難めいた表情を向けられるアリス。
当時は知らなかったが実家との確執もあり、活動出来ず成果が上げられないのでは、あのまま抜けられていても仕方ない。
アリスとしては詳細を言えないのか、微妙な表情の笑顔を返すしかなかった。
あの時の魔法を使って見せた時の、酷い喪失感と絶望に覆われた顔はちゃんと覚えている…
恐らく、下の娘達を含め、この場の誰よりも下手だったのではないだろうか。
「抜けたと思われていたアリス様ですが、旦那様を戻す為に色々と調べられており、その中でジュリア様と一緒にビフレストについての伝承を集められていたのです。
戻ってきたアリス様はジュリア様、ユキさんと共に、カトリーナさんの元で鍛えられる事になりました。」
しっかりフォローを入れるアクア。
アリスの抜けるという決断も、悩み、苦しんでの決断だったようなのは泣き腫らした顔で分かっていたので、戻るという決断も辛いものだったはずだ。
溺愛していた妹のソニアにぶん殴られたのが一番堪えたそうだが…
今思うと、本気でぶん殴られたのがその頃で良かったと思う。もう少し後だと、オレと同じで再起が難しくなっていた可能性もあるからな…
「更に、ここで一家に一人新たに加わります。それがココアさんです。」
本人ではなく、薄汚れた感じのココアの紙人形が現れた。
当時は奴隷として売られていたのを買ったのだが、バニラが奴隷として売られているかと思い、我が目を疑ったものだ。
「かーしゃま!」
今度はココアとの娘であるジェリーが声を上げる。こちらもココアが北方エルフに転生したこともあり、灰色エルフとして生まれてきていた。
二人とも灰色エルフという事もあってか、ノエミはジェリーを子分のように連れ回し、ジェリーは面倒見の良い姉にベッタリだ。
チラッとバニラの方を見ると、『ジェリーはかわいいなぁ』というオーラ全開である。ほぼ自分の子供みたいなものだからな。
この劇中でのやり取りの後、ココア達が魔法で世界を増やしながらこれまでに20回以上やり直しているという事を知るのだが、紙芝居ではそこまで言及はしない。
その魔法の影響で異なるココアが時間や場所を変えて数人居るようで、その内の一人はオレたちの手で殺している。
全員がココアだが、ココアで合計100年以上、個体によっては数百年生きており、その内の一人であるミルクがエディさんを通じて支援してくれていた事をこの時に知った。
そのミルクは既に老齢で亡くなっており、色々と学びに行ったココアがしっかり看取ったようである。
遥香はお婆ちゃんと呼んで親しんでいた。
「ビフレストを目指すことになった一家は、遥香様が学校を卒業するまでの間、皆で力を合わせて互いを鍛え合っていく事になるのでした。」
紙人形をひっくり返し、娘達は育った姿に変化する。
やはり一番変化が大きいのは遥香。背はバニラと同じくらいに見せていたが、雰囲気も含めて別人にも思えた。
遥香の学生時代もまあ色々とあったが、割愛される。
「一家の活躍の場はエルディーからジュリア様とフィオナ様の実家のあるエルフの森の東側へと移ります。」
背景が東部の町並みに変わる。
相変わらず妙なニコニコ顔のオレが座っているだけだが、わりと皆が真顔だったり厳しい表情なので余計に妙な感じだ。
「うーん…アクアにはそんな風に見えてたのか?」
バニラが隣でそう呟く。
「なんだかちぐはぐだよね。」
「そうですわね…」
柊とフィオナも納得いかないようだ。
「さて、この頃になると、我々を召喚したヒュマス達はもう魔物に抗えなくなってしまいます。
亜人達は種族間で同盟を結び『亜人連合』として対処をしていますが、亜人嫌いなヒュマスはそうもいかず、ついにはスタンピードを抑え込めずに滅亡してしまいました。
魔物の海となった旧ヒュマス領、そこでバニラ様達はオリハルコンというとても強い魔物からだけ産み出される貴重な鉱石を求めて戦い、勝ち取ります。」
その時の巨大な狼型魔物がうちで訓練用ダンジョンを営んでいる、ピンク色の妖精であるサクラの前世だ。
今は転生直後で穢れがなく、話し合いが出来てしまい放置も出来ないので、私塾紛いの事をする上で活用させてもらっている。
ダンジョン内で万が一があっても死なないという事に出来るのはとてもありがたいが、自分の死に慣れられると危険すぎるのでそこまで追い詰める訓練はしていない。
「転生に必要なものも揃い、準備万端となった一行は長く立ち入り禁止なっていたイグドラシルを、今も誰も真似できない早さで攻略をしていきます。
最高の装備、最高の魔法、最高クラスの戦士達が揃うヒガン一家の名声はここから一気に広まっていくのでした。」
同時に厄介事も多く、新興宗教に襲撃されたり、各所から素材の提供を求められたりという事もあった。
社会に役立てる為ならいくらでも供出するが、同業者が楽をする為など受け入れられるはずがない。
その辺りは吹っ飛ばし、場面はイグドラシルに掛かる虹の橋となった。
アクアとメイプルが加入したのはこの間の時期なのだが、不要と判断したのか言及はない。オレとしては、二人にはとても救われたと思っているのだが…
「そして、ついに一行は虹の橋へと辿り着き、渡る為の試練として番人と戦う事になります。」
現れる筋骨隆々のヘイムダルが現れ、置いてあったメイプルの楽器がアレンジされたプレアデスを奏で始める。
戦闘の詳細には言及されなかったが、死闘の末の勝利で戦闘後はそこで一泊するハメになった。
「長い間準備をし、イグドラシルを登る間にも自分達を高め続けて来た一行はなんとか勝利します。」
「強き者らよ通るが良い。」
そう言って退場するメイプル演じるヘイムダル。何役目だろうか?
オレはと言うと、相変わらず妙にニコニコしながら隠れるように居るので妙な感じだ。
尺があればここでビフレスト専用BGMが流れるのだろうが、カットされて場面は花畑。ビフレストの向こう側だ。
「現れたのはイグドラシルから世界を見続ける神様のオーディン。
転生に必要なものを捧げると、最後の試練となります。」
オレだけが引き離され、他の皆に向けて光が放たれる。ここだけ普通の紙人形劇を越える演出である。
「それを防いだのは遥香様。」
「大丈夫!大丈夫だから!私なら耐えられるから!」
遥香役はココア。バニラもだが、妙に声真似が似ていた。
擬似的に防御魔法の光もココアが展開している。
「言葉とは裏腹に弾き飛ばされる盾。皆様を守る物は必死に維持し続ける防御魔法のみとなります。」
遥香の盾が離れ、息を飲む下の二人。
ジッとその様子を見つめたまま、水飴の入っていたポーション瓶を握り締めている。
「なにか…もう打つ手は無いのか!?
旦那様はあらゆる手段を考え、探し、そして、一つだけ自分が使えるものを見つけ出します。
それは、全身全霊というスキル。」
オレの紙人形が引っくり返ると、髪を逆立てスーパー感じで虹色の光を撒き散らしながら盾を構えて皆の前に立つ。
そんな感じだったのか。恥ずかしい。
居ても立ってもいられなくなり、周りを見ると全員が食い入るように見ていた。これは茶化せない空気…
「名前通り全てを出し切るスキルは、あの時の防衛の影響で限界を越えていた旦那様の肉体に牙を剥きます。遥香様に支えられないと、もう立つことすら出来ません。そして、守るだけではダメだと気付き遥香様にこう言います。
『リンゴ』、手を貸せ。剣を持って横に立て!
それは記憶を失い、忘れてしまったはずの遥香様の偽名。その名を呼ばれた遥香様は言われるままにお二人が愛用した剣をオーディンに向けて突き付けます。」
このシーンの為だけに用意された紙人形に切り替わり、オレの状態が鮮明になる。
よく見ると既に足がなく、自力で立ちようがなかったようだ。
「ファイナルストライク。
そう名付けられた魔法は正に最後の一撃。
同時に旦那様は盾も持てなくなりましたが、もう必要ありません。
最後の一撃はオーディンの攻撃を撃ち破り、見事に試練を乗り越えました。」
剣が光るとオーディンの放った光が押し返され、被弾させると同時に剣も砕け散っていた。
「見事だ。試練の突破を認めよう。」
「ですが、その言葉は旦那様には届きません。限界を越えた旦那様の体は既に塵となって消えてしまっていたのでした…」
どういう仕掛けなのか、消えるオレの紙人形。全員の視線がオレに集まる。
両手で両膝を叩き、ちゃんと腕も足もあるよ、とアピールする。
「全員が悲しみに暮れていましたが、ご覧の通り旦那様は無事に転生を果たし、ヒュマスの見た目からご覧の通りディモスへと姿を変えたのでした。」
『おとーしゃま!』
光の中から現れたしかめっ面なオレの紙人形の姿を見て、ノエミとジェリーが声を合わせて呼んだ。
「こうして転生を果たし、健常な肉体を取り戻した旦那様は今までの遅れを取り戻すかのように活動を始め、ヒュマス領の解放、バルサス大峡谷の探索に活躍する事になります。
そして、旦那様達の活躍はこれでは終わりません。今では誰も到達出来なくなった北の果て、遥か南の海に浮かぶ大珊瑚礁を目指す旅がもうすぐ始まります。」
『おー!』
声を揃える3人。
「いったい何があるのでしょうね?あたしも今から楽しみで仕方ありません。
では、駆け足ではございましたが、これまでのヒガン様の物語、一先ず終了とさせていただきます。お疲れ様でした。」
メイド達が並んで深々と礼をすると、皆が大きな拍手で労った。
「皆様、いかがでしたか?」
「内容は良かったが、父さんが壊れてからの表情がちぐはぐなのが気になる。」
というバニラの言葉に皆が頷いた。
「そうですか?出会った頃はあんな感じだったと思ったのですが…」
「攻略が上手くいったり、いかなかったりだったものね…」
「アリスは何かと胃の心配をされてましたわね。」
「ああ、確かにそうだったわ…実際、痛くて何もかも忘れて横になっていたい日もあったから…」
「なんか、すまんな。」
「良いのよ。だいたい、話が通じないのが悪いんだから。口約束は破られまくってたし。」
胃も痛くなるわけだ。
それが今のわりと強かな、実家との手切れ金にイグドラシルで稼いだ大金貨1800枚放出するアリスを形成していると思うと、なんとも言えなくなってしまうが。
「本当に大変な時期だったけど、過ぎれば良い思い出よ。
でも、きっとこれからも大変な事があると思うと、気が引き締まるわね。」
「重ね重ねすまない。」
「良いから良いから。その分、みんなには頑張ってもらうわよ?」
『はい…』
妙なプレッシャーに返事をするオレたち。
各所との調整にアリスは欠かせないからな。戦闘能力は劣っていても、料理、裁縫、交渉とやれる事はあるのだ。
「北の果てと大珊瑚礁、どんな場所か楽しみね。」
「北の果てはバニラと特にアリスには厳しすぎるのがなぁ…」
「そうなの?」
「天然のフロストノヴァだ。」
『あぁ…』
フィオナの代名詞とも言える魔法で説明する。
あの魔法、使い手が優れていると魔法を阻害してくるので、生粋の魔導師である二人には逆境過ぎる環境だ。
「すぐには無理だが、その内わたしたちでも踏破できるような魔導具を考えよう。」
「冒険者を名乗る以上、自力で景色を見なくちゃね。」
今回は無理でも、必ず踏破するという決意を見せる二人。
この様子なら、留守番をさせてもへそを曲げたりという事もないだろう。
「問題は遥香だよなぁ…」
この場に居ない四女の事を話題に出す。
梓も居ないのだが、こちらは冬場は専念出来るからと明るい内は作業所に籠りっきり。
遥香は思春期の爆弾が爆発して、5年ほど家には顔を出す程度しかしていない。政略結婚目的で加入した西方エルフのリリと、伝説上の存在だと思われていたフリューゲルのヒルデを付けてはいるが、入ってくる遥香の話は顔を覆いたくなることも多く、オレたちが北部へ直接謝罪に赴くこともあった。リリとヒルデはそんな話は聞かないのだが…
「まあ、大丈夫だろう。遥香は理想と現実とのギャップでもがいているだけだからな。」
と言うバニラ。
心を許すと遠慮なしで物を言う所があるバニラと言い合いになり、飛び出したのが5年前。
それからは年に数度、決まった時期に帰ってくるだけだ。
「頭を下げに行く親の気持ちも考えて欲しいが…」
「娘の尻拭いが出来るのも今だけかもしれないぞ?」
「今のままじゃとてもじゃないが嫁に出せない…」
「まあ、わたしたちは貰い手が居るか怪しいけどな。」
「そう卑下するな。全員、魅力的な女性なんだから。」
「そういう!そういうとこだぞ!?」
顔を赤くして肩をバンバン叩いてくる。
どういう事かと思って柊の方を見るが、意味深な笑みを浮かべるフィオナしか居なかった。いなくなるならせめて一言欲しい。
「自慢の娘を嫁に出す前に、皆で世界を少しでも暴いておかないとな。」
「はあ…そうだな。遥香もそれには同意してくれると思うよ。」
タメ息1つ吐いて同意してくれる。
頭を軽く撫でてやってから立ち上がると、やって来たカトリーナが手を叩いた。
「皆、そろそろ夕飯の準備にしましょう。旦那様、今日もお手伝いをお願いしてもよろしいですか?」
「承った。」
「おとーしゃま、きょうもしかられるの?」
ノエミの無邪気な一言が心を大きく抉る!
「だ、だいじょうぶだ…アクアとメイプルが手伝ってくれるから…」
そう、片付けさえしなければ大丈夫なはずなのだ。
「旦那様の補佐は我々にお任せください。」
「家事全般なら旦那様に負けませんよー?」
頼りになるメイドが多くて助かる。
こうして吹雪の日の昼下がりはのんびりと幕を下ろす。
部屋から出て外を見ると吹雪は収まり、夕焼けで白い庭が茜色に染まっていた。
「この光景が見れるという事は、冬の終わりも近いかもしれませんね。」
「遥香もそろそろ帰ってくるか。」
「そうだと良いのですが…」
ガラスに映るカトリーナの顔は不安げで、声も力がない。実子のレオンより可愛がっている気もするが、午後からは息子達を鍛えていたので気がするだけだと思いたい。
娘は当然可愛いが、息子だって同じくらい愛しく、区別をしているつもりはないのだが、長男のアレックスからは妙に距離を取りたがられているのも悩みの種だ。
「子育ては難しいな…」
「ままならないものですね…」
「だが、元気ならそれで良いさ。」
尻拭い出来るのは今の内。
バニラに言われた事を心の中で反芻し、夕食の準備に向かうことにした。
自分の事情も周りの事情もゲームの時とは大きく異なり、最適解を当て嵌められる事柄も少なければ、リタマラや乱数調整も出来ない。
バニラの魔法や魔導具への反発、体がダメで不能者扱いされていた頃のオレへの風当たり等、子供達にはまだ語れないこともある。他にも今日まで多くの失敗も重ねてきたが、それでも概ね成功を収めていると言って良い。
だが、人生も冒険者としても道半ばで目指したい場所はたくさんあり、満足はしていなかった。
子供達の成長に時の流れを感じつつ、時代の芽生えにも確かな手応えを得て、やって来た事に間違いは無かったと信じている。
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