心霊整体師 東條ちずる

nori-neko

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悲しき魂の叫び

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医学者と科学捜査官達がビニールシートの中に入って行った。黒いビニール袋を巻き付けていたロープと重りを外し、ビニール袋を切り裂くと、その中から、もう既に白骨化した遺体が姿を現した。まだ、女性とも、男性とも分からなかつたが、残っていた衣類を見る限り女性の遺体ではないかと思われた。後は解剖やDNA鑑定、そして、復元によりこの遺体が誰なのかが、判明する。しかし、この遺体が何故にこの能反湖に沈んでいる事が分かったのだろうかと、疑問視する法医学者がいた。その法医学者の名は、原田京子。とことん真実を追及しなければ気が済まない性格なので、警察や同僚の仲間達には、鬼のお京と言われていた。京子は、周りの刑事たちを見渡してこう言った。
  「この湖の中にご遺体があると決めつけてのは、誰!」
きっと辺りを睨み付けていると、恐る恐る前に出たのが高木隼人である。
  「自分であります。」
  「貴方は、何処の署刑事」
  「自分は上野暑勤務の刑事です。」
  「そう。ならあなたに聞くけど、どうしてここに遺体が沈んでいる事が分かったの?」
  「え!あ、はい。まあ、刑事歴5年の勘ですかね。」
  「噓おっしゃい。上野暑の所長から伺っているけど、半年前に行方不明になっている女性の件で、何の情報
   もなくて、困ってたとおっしゃっていらしたわよ。」
  「え!所長そんなことを言ってたんですか?」
  「そうよ。長野なら地元の法医学者を頼めばいいのに、所長直々に私にお願いしたいと電話があったのよ」
  「そうなんですか。」
  「そうなんですかではないでしょう!だから、さっきから聞いてるんだけど、あなた方がどうしてこの場所に
   遺体がある事が分かったの」
  「先生は自分がこの遺体を湖に沈めたとでも言いたいのですか?それって自分が殺人犯ではないかと、疑って
   いるって事ですよね。」
  「そうはいってないでしょう。」
  「はい。」
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