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No.1 最強の魔法使い、最北の地にてその生涯を終える
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俺は今、荒廃した世界に立っている。
火が放たれすぎて黒ずみのようになった大地。
水魔法と火魔法で相殺し合った結果、一メートル先すらも見えにくい程に発生した水蒸気。
土魔法でそもそも変形しまくった、地形。
形容するなら地獄。
この、いままでに類をみない戦闘は後に、第一次全面戦争として、忘れられない歴史の一つとなる。
そして俺は、この世界で唯一の勇者持ちだ。勇者と言うのは一つの称号で、意味はそのまま、勇敢な者。
数々の戦争を生き延び、無数の人を救ってきた。
つまりだ、俺が、世界最強だと思っていた。目の前の化け物にあうまでは。
「おっす、貴様が勇者か」
黒いマントを翻して、ドラゴンの頭蓋骨を被り、あぐらをかいた細身の人間っぽい何かが、丘の上にちょこんと座っていた。
「そうだが、貴様は?」
「魔王だよ」
その魔王と名乗るなにかは、ボリボリと顔を掻き、手には鮮血滴る赤黒いナニカを持っている。
「えぇ……」
魔王の威厳も雰囲気もぶち壊すほどの想像との相違。まじでこいつが、魔王?
「七割方戦力が削がれちゃったからまた何百年も戦力溜めなおさなきゃいけなくなったじゃんかよー。お前のせいだぞ」
「なにっ……」
魔王はあっけらかんと言い放つ。まるで、自分の戦力をただの駒だと思っているかのような、軽すぎる口調で。
「貴様。仲間が死んでるんだぞ」
「いやぁ、別に、いなくなったら足すだけだから」
やれやれと言うかのように手を広げ、首を振ってみせる。仲間の事をなんとも思ってないのか?俺は、怒りと同時に不思議と恐怖を覚え始める。
何だろうこの落ち着きぶりは。奴は、とんでもない狂気を隠しているような、そんな雰囲気が感じ取れる程の、無。
底知れない不安を感じ、無意識的に後ろ手にある右手にマナを集中させる。
「やる気かい、この僕と」
「チッ」
一瞬でばれる。微弱なマナでさえも素早く反応される。こいつの感知能力は相当だ。
「あのさぁ」
「なっ……!?」
眼前に、魔王がいる。気づかなかった。魔力の流れも、魔王の動きも。
「お前どうせ死ぬし、一つ教えとく」
死んだ魚のような目をこちらに覗かせて魔王は言う。
「人間が持つ微量なマナ如きで、僕に叶うなんて思わないで欲しい」
魔王は右腕を前に出す。掌には超高密度に圧縮された火球。
「クソッ」
咄嗟に両腕にマナを集め、なんとかガードの体勢をとる。
声を出す間もなく、服が焼け、腕がひん曲がる。魔力放出があまりにも早すぎる。
「やっぱり勇者なだけあるね。魔力操作は人外レベルだ」
まだまだ余裕とでもいいたげな表情で魔王は語る。両腕が折れ、満身創痍な俺を一瞥すると
「ふふっ」
と、不適な笑みをうかべる。
「気分いいし、面白いから、もう一つ教えてやる」
突如、両手に溢れん限りの魔力を溜めながら魔王は囁く。
「僕の魔力は、僕だけの物じゃない」
見たことのない魔法。全てを混ぜたような、混沌の闇色。
俺は、最後の知識を得ることになった。それは、死という紛れもない真の恐怖。
「ばいばい」
両手が俺に当てられる。体中が焼けただれ、内臓は凍りつき、足は切断され血が噴き出す。全ての痛みという痛みが収束したかのような圧倒的暴力。
「ウァァァアアアアアア!!」
俺の意識は、ここで途切れる。
火が放たれすぎて黒ずみのようになった大地。
水魔法と火魔法で相殺し合った結果、一メートル先すらも見えにくい程に発生した水蒸気。
土魔法でそもそも変形しまくった、地形。
形容するなら地獄。
この、いままでに類をみない戦闘は後に、第一次全面戦争として、忘れられない歴史の一つとなる。
そして俺は、この世界で唯一の勇者持ちだ。勇者と言うのは一つの称号で、意味はそのまま、勇敢な者。
数々の戦争を生き延び、無数の人を救ってきた。
つまりだ、俺が、世界最強だと思っていた。目の前の化け物にあうまでは。
「おっす、貴様が勇者か」
黒いマントを翻して、ドラゴンの頭蓋骨を被り、あぐらをかいた細身の人間っぽい何かが、丘の上にちょこんと座っていた。
「そうだが、貴様は?」
「魔王だよ」
その魔王と名乗るなにかは、ボリボリと顔を掻き、手には鮮血滴る赤黒いナニカを持っている。
「えぇ……」
魔王の威厳も雰囲気もぶち壊すほどの想像との相違。まじでこいつが、魔王?
「七割方戦力が削がれちゃったからまた何百年も戦力溜めなおさなきゃいけなくなったじゃんかよー。お前のせいだぞ」
「なにっ……」
魔王はあっけらかんと言い放つ。まるで、自分の戦力をただの駒だと思っているかのような、軽すぎる口調で。
「貴様。仲間が死んでるんだぞ」
「いやぁ、別に、いなくなったら足すだけだから」
やれやれと言うかのように手を広げ、首を振ってみせる。仲間の事をなんとも思ってないのか?俺は、怒りと同時に不思議と恐怖を覚え始める。
何だろうこの落ち着きぶりは。奴は、とんでもない狂気を隠しているような、そんな雰囲気が感じ取れる程の、無。
底知れない不安を感じ、無意識的に後ろ手にある右手にマナを集中させる。
「やる気かい、この僕と」
「チッ」
一瞬でばれる。微弱なマナでさえも素早く反応される。こいつの感知能力は相当だ。
「あのさぁ」
「なっ……!?」
眼前に、魔王がいる。気づかなかった。魔力の流れも、魔王の動きも。
「お前どうせ死ぬし、一つ教えとく」
死んだ魚のような目をこちらに覗かせて魔王は言う。
「人間が持つ微量なマナ如きで、僕に叶うなんて思わないで欲しい」
魔王は右腕を前に出す。掌には超高密度に圧縮された火球。
「クソッ」
咄嗟に両腕にマナを集め、なんとかガードの体勢をとる。
声を出す間もなく、服が焼け、腕がひん曲がる。魔力放出があまりにも早すぎる。
「やっぱり勇者なだけあるね。魔力操作は人外レベルだ」
まだまだ余裕とでもいいたげな表情で魔王は語る。両腕が折れ、満身創痍な俺を一瞥すると
「ふふっ」
と、不適な笑みをうかべる。
「気分いいし、面白いから、もう一つ教えてやる」
突如、両手に溢れん限りの魔力を溜めながら魔王は囁く。
「僕の魔力は、僕だけの物じゃない」
見たことのない魔法。全てを混ぜたような、混沌の闇色。
俺は、最後の知識を得ることになった。それは、死という紛れもない真の恐怖。
「ばいばい」
両手が俺に当てられる。体中が焼けただれ、内臓は凍りつき、足は切断され血が噴き出す。全ての痛みという痛みが収束したかのような圧倒的暴力。
「ウァァァアアアアアア!!」
俺の意識は、ここで途切れる。
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