白い猫

re.unknown

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選択

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闇の中で、奏(かなで)は一人、立ち尽くしていた。全てを切り替える「選択」が目前に迫っているのを感じていたが、それが何を意味するのか、まだ完全には理解できていなかった。

その時、不意に白い光が浮かび上がり、再び猫が現れた。猫の瞳は深い青色に輝き、奏の心の奥底を見透かすようだった。

「ここが最後だ。」

猫が話しているのか、それともこの空間そのものが奏に語りかけているのか、分からない。それでも、その声はまっすぐに奏の心へ届いた。

「今ある町を守るか、それとも切り捨てた未来を蘇らせるか。お前が選んだ道が、再び世界の形を変える。」

再び、幼い頃の記憶がよみがえる。あの嵐の夜、白い猫に導かれて町を救う選択をした瞬間。奏はその時、目の前の家族や友人、町の人々を守りたくて、未来の可能性を犠牲にすることを選んだ。それが正しいと思っていた。

だが、今になって気づいたことがある。その選択は、目の前の安堵だけを見て決めたに過ぎなかったのではないか、と。

「俺がもう一度選べば、誰かが失われるのか?」

奏の問いに、猫は何も答えなかった。ただその瞳に、廃墟となった未来の世界と、今の穏やかな町の姿を映し出す。

ふと、猫の周囲に光が集まり始めた。その光の中に、奏は自分の家族、友人たち、そして町の人々の姿を見た。彼らは微笑み、話し、穏やかな生活を送っているようだった。しかしその一方で、荒廃した世界で途方に暮れる人々の幻影も映し出される。

「どちらかしか救えない……か。」

奏は深く息を吸い込んだ。今の町を選べば、この幸せな日常は続く。しかし、かつての未来を選べば、新たな可能性が広がり、別の命が救われるかもしれない。どちらも大切で、どちらも手放せないように思えた。

「でも……俺は知っている。」

奏はふと口にした。その言葉に自分でも驚いたが、胸の奥から何かが込み上げてきた。

「俺は、ここにいるみんなを失いたくない。そして、あの未来も放っておきたくないんだ。」

猫はじっと奏を見つめ、再び青い瞳を輝かせる。その時、奏の中に一つの答えが浮かび上がった。

「なら、両方を救う方法を探せばいい。」

猫は一瞬驚いたように目を細めたが、やがて満足げに一鳴きした。

「簡単な道ではないぞ。」

「分かってる。だけど、どちらも諦めるなんて俺にはできない。俺は、両方を救う方法を見つける。」

次の瞬間、白い光が奏を包み込んだ。風が吹き抜け、目を開けると、そこはいつもの町だった。瓦屋根の家々、川沿いの桜並木、そして目の前には白い猫が座っていた。

猫は一声鳴き、静かに町の奥へと歩き出す。その後ろ姿を見ながら、奏は決意を新たにする。

「この世界も、あの世界も。俺は、必ず両方を守ってみせる。」

どちらかを捨てる選択ではなく、両方を守るために進む選択。奏の心には、今までにない強い覚悟が宿っていた。白い猫はふと振り返り、奏に青い瞳を向ける。そして、にゃあと優しく鳴くと、竹林の奥へと消えていった。

それから数年後――奏は、町で廃墟となった未来について研究を重ね、どちらの世界も守るための行動を続けていた。その道のりは長く険しいものだったが、あの日の白い猫との出会いが、彼を支え続けたのだ。

白い猫はその後姿を見せることはなかったが、どこかで見守っているような気がしてならなかった。奏は振り返ることなく、未来へと歩み続けるのだった。
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