邪竜と聖竜に懐かれた黒騎士~設定してたイメージとは似て非なる異世界を管理中?~

フィーたら

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第1章 竜人の国

日本語って難しいですよね

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そうだ!
冒険者になろう!

異世界ものと言えばやはりこれ!
お金を手に入れるならまずは冒険者ギルドで登録するところから始めよう!

とはさすがにならないよな…
そもそも冒険者ギルドって本当にあるのか?
まぁ、この世界観ならありそうな気はするけど…
だけど、もし仮にあったとしても…って感じだしなぁ。


ふとそのような考えが頭をよぎったが、すぐに思考するのをやめた。
そしてオレは目の前のテーブルの上に置かれているベルを見つめる。

<お目覚めになられましたらこちらのベルをお鳴らし下さい>

と書かれたメモがベルの下に挟まれている。

そういや昨日の夜、ここまで連れてきてくれたリーゼロッテがそんなようなこと言ってたなぁ。
念には念を入れてきっとメモを残して行ったんだろう。


そうそう。
ちなみに昨晩発覚したことがあるんだけど…
実はオレ…
この世界の文字が読めます!
…なぜかは知らん!

昨日の夜、酒を飲んでいる時にオレはふと気付いてしまったのだ。
ワインの瓶に付いてるラベルの文字が読めることに!

これは今後この世界で暮らしていくことを想定すると、かなり有用な能力である。
それこそ冒険者ギルドの中に貼りだされている紙…依頼内容を知ることがきるからだ。
ただ残念なことに、自分が書くことができる文字は、声に出して話せる言葉と同様に魔族のものらしい。


ん?
これってよく考えてみたら…
昨日はほろ酔いとはいえ、酒に酔ってたから?
あの時はこんなこと思いつかなかったけど…

昨晩試しにオレが書いてみせたのは当然日本語なのだが、それは魔族の文字であると判定された。

つまり、魔族は日本語を使用する存在である可能性が…
それにあの場にいた者達の中で、その文章を難なく理解できた唯一の存在であるイングリッド…
そもそもオレが元いた世界…地球上でも日本語の習得は最高難易度…
もしかすると実は彼女も日本…もしくは地球からやって来た存在なのか?
或いは、そういった人物に所縁がある者とか?

いや、それとも…
こういった現象が起きているのはやっぱり夢の中だからなのか?


とりあえずこの問題は先送りにしよう。
1人で考えていたところで答えがでるわけでもない。

それにこれが夢の中だとしたら、物語のこんな序盤に核心っぽい謎に触れるのもなんだし…
って、ラノベ思考の悲しい性だな…

てか今の状況が現実だったとしても、イングリッドちゃんがすんなりとそんな重要なことを話してくれるかどうか?ってとこだな。
形式上は婚約したけど、実際は昨日出会ったばかりだしなぁ。
この世界のことをまだほとんど知らないうえ自分の存在理由やその力さえもわかってない。
そんな状態なのに距離感を間違えて詮索してしまった結果、彼女に警戒されたり反感を買うのは色んな意味でリスクが高すぎる。
ま、いずれにしても好感度や親密度は上げておくべきだな、かわいいし。


考えを終えたオレはベルを手にしてそれを鳴らす。
するとドアをノックする音が聞こえ、1人のメイドが部屋に入ってきた。

「おはようございます、使徒様」

彼女はオレに対し深い礼をして朝の挨拶を済ませると早速仕事を始める。
いきなりのことで状況が理解できていないオレはポカンとしたままその様子を見ていた。

まずはタンスから洋服を取り出しテーブルの上に置くと、今度は大きな窓のカーテンを開ける。
室内に入ってきた眩しい光を見て、もう朝ではなく既に昼近くになっていることをオレは理解した。

「使徒様。
お着替えになられた後、しばらくの間こちらの部屋でお待ち下さいませ」

彼女はオレにそう告げると再び最敬礼をして部屋から出て行った。
一言だけ「ありがとう」と言ったオレの言葉が通じてるかどうか?はわからないが。





それからしばらくした後、再度ドアをノックする音が聞こえてきた。
次に部屋にやって来たのはイングリッドである。


「おはよう。
昨日はよく眠れたようじゃの」

「おはよう、イングリッドちゃん。
お陰様で。
ぐっすり寝れたのは久しぶりに酒を飲んだせいかも」

「なるほど。
それは何よりじゃ。
二日酔いであれば話をするのもどうかと思っておったからのぅ」

「それはそうとオレ午前中ずっと寝てたみたいだけど…大丈夫?
実は何かしないといけないことがあった…とか?」

「いや、そのような事は何もない。
そなたは気にせず思うがままに振舞えば良い。
…と言おうと思ったのじゃが…
1つだけよいかのぅ?」

「ん?なに?」

「そなたが他の世界から来たことやその力など…
それらに関する話はそなたと我、リーゼロッテの間だけの秘密にしてはもらえぬか?
我も迂闊であったが、昨晩のような場では今後話さないでもらえると有難いのじゃが」

「全然構わないよ。
オレもそのほうが良いかなぁって思う」

「感謝する。
それと一応じゃが、昨晩城にいた者の中で魔族の言葉を理解できる者がいたかどうか?をリーゼロッテに調べさせておる。
おそらくそのような者はおらんじゃろうがな」

「魔族の言葉を知ってる人ってそんなに少ないの?
みんなオレが喋ってる言葉が魔族の言葉だってことは理解してるみたいだけど?」

「うむ。
意味はわからずとも魔族の言葉は発生の仕方や発音が独特じゃからのぅ」


う~ん…
それって例えるなら…あれか。
聞いてても全然意味不明だけど、それがフランス語とかドイツ語とか中国語っぽいって思えるのと同じようなものか?



「…というわけでじゃ。
朝、昼、夕の食事時には我とそなただけの場を用意することにしたが…問題はないじゃろうか?
時と場合によってはリーゼロッテも参加するかもしれぬが」

「全然問題ないよ。
あ、それとはちょっと別件になるかもだけど…
今日ちょっと試してみたいことがあるんだけど、それに付き合ってもらってもいい?」

「試したいこととは?」


一応、ドアの向こう側で誰かが聞き耳を立てている可能性を考慮したオレは彼女の耳元でこっそりと告げる。

「ほう…それは非常に興味深いのぅ。
早速リーゼロッテに手配させよう。
じゃがその前に、我と共に昼食でもとらぬか?」





そして昼食後、イングリッド立ち合いのもとでオレはあれを使うことになったのだ。

それが 聖魔法『召喚』 である。
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