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第1章 竜人の国
旅立ち
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旅に出るのはオレとイングリッド、リリーの3人。
女性2人は竜人だが、オレの見た目はヒューマン。
つまり、最初に訪れる国の候補としては、まず、竜人とヒューマンが一緒に行動していても普通に受け入れられる国にするべきだと判断した。
まぁ、オレが話す言葉は魔族のものだが、2人ともオレの通訳ができる上、リリーに関しては『念話』を通して意思疎通ができるので、ここと同じく最悪喋らなくても問題はない。
そして現状の移動手段。
ここは島国なので普通に考えれば船を使って海路を進むのが順当だろう。
となると、大陸でも海に面した国ということになる。
一気に内陸部にある国へ行こうとするなら、ドラゴン化したイングリッドに乗り空からという手段もあるにはあるが、邪竜認定されているのに目立ち過ぎる。
こちらには戦うつもりがなくても、敵意を向けてくる国…その規模ではないとしても街や村などはあるだろう。
実際に戦闘になる、ならないは別としても、少なくとも警戒はされることになるので、この案は却下だ。
もう1つの移動方法としては『転移』の魔法を使い、そこから陸路を歩いて進むという方法だ。
こちらに関しては未知な部分があるため今回は使わない。
というのも、転移先が現状は「魔の渓谷」しかないうえ、例えばオレに触れていると彼女たちも一緒に転移できるという保証もない。
そのつもりで魔法を発動したらオレだけ魔の渓谷に着いてしまった…なんて可能性もある。
仮にそうなったとしても、半日程独りで待っていれば彼女たちと合流できるにはできるのだろうが…
ただ、そうなるのであれば最初から空路で好きな場所に行っておいたほうが良かった、ということになりそうだ。
よって移動手段は船を使うことにした。
となると、最初に訪れるのは海に面した国に限定される。
その中でも、ドラゴネシアに近い大陸の西海岸に絞ることにした。
別に急ぐ旅ではないといっても、わざわざ遠い場所を目指して何日も船の上で過ごすことになってしまえば旅に出る意味があまりない。
これらの条件を満たす国ということで今回目指すことになったのは「メルフォーゼ」王国である。
この国はヒューマンが治める国ではあるが、亜人も暮らしている。
言い換えれば、この世界で言うところの「人間」だけで構成されている国である。
なので、ヒューマン?であるオレが竜人と一緒に行動していても奇異な目で見られることはない。
また、亜人が占める割合も大きいので、ヒューマン至上主義を掲げる教会も存在しない。
実際に竜人の国とは友好的な関係にあり、貿易の取引先にもなっている。
あと、これは極秘事項なのだが、ドラゴネシア諜報機関にとっての重要拠点も存在している。
大陸各地から得た情報は一度ここで集約され本国へ報告されるという仕組みになっている。
ちなみに、メルフォーゼはオレが設定していた国と同じ名前で、冒険者ギルドやダンジョンなどが存在する。
オレにとっては「これぞ異世界」って感じ、そんな予感がしてワクワクが止まらない。
つまり、行き先をメルフォーゼに決めた理由は心情的なものも大きいのである。
せっかくなので、候補には挙がったが選ばなかった国についても軽く触れておくことにしよう。
ドワーフの国「イストス」
大陸西海岸に存在する最も近い国で、住民のほとんどがドワーフである。
イングリッドがまだ「エデルガルト」と名乗っていた頃…約1500年前、この国の建国以前から交流がある国。
平地ではなく山岳地帯にあるので、そこから他国へ行こうと思うと山越えをしなければならない。
この地からやって来たという「るしふぁ~」について気になるところではあるので、いずれ訪れることになるだろう。
魔族領「エヴィルザード」
ドラゴネシアの北東、濃い魔素に覆われた地でほとんどが謎。
海に面している場所は全て断崖絶壁なので船での渡航は無理であり、陸路だと魔の渓谷を抜けなければ辿り着けない。
空からだと楽に行けそうだが、魔族領の中央に近づけば近づく程、あのイングリッドでさえ嫌な予感がするらしく未だに行ったことがないそうだ。
だが、どうやら魔族の話す言葉は日本語らしいので、最終的には行かなければならない地なのであろう、なんとなくそう感じている。
自由都市連合「ハイルブリード」
大陸の西というよりも南に近い地域。
メルフォーゼの国境より南にある各亜人種族で構成されている都市の集合体。
基本的にヒューマンはいない上、仮にそこに行ったとしても、どの種族の都市に行くか?でまた迷うと思う。
それに、ここには確実に闇の組織が存在する。
リリーも旅に同行するため訪れるには時期尚早という判断だ。
候補にはならなかったが一応。
法皇国「イルミローザ」は大陸の内陸部に存在する国家である。
行き先を決めたオレはそれをイングリッドとリリーに伝える。
二人とも二つ返事でOKを出してくれた。
イングリッドに関しては「ハイルブリード」で闇の組織を潰してから「イルミローザ」に乗り込む気満々だと思っていたがそうでも無いようだ。
彼女曰く、特に大きな被害があったわけでもないし、そこまで恨みもないとのこと。
ただ、前々から鬱陶しいのでいつか潰す、とは言っていた。
つまり、倒す気ではあるが、それほど急ぎではないらしい。
彼女たちの同意を得てから3日後、オレたちは港町までやって来た。
「これが海なんですね~!
なんだか思っていたよりも凄いですわ~
リリー、ちょっと感動しております~」
「お姉ちゃん、海見たことないの~?」
人生で初めて間近で海を見て感動しているリリーに見送りに来ていたアリスが尋ねる。
そう、今日は遂にドラゴネシアから旅立つ日なのだ。
見送りにはリーゼロッテを始めとした国の上層部の中でも選ばれた者のみが来ている。
もちろんアリスの母親であるメイド長は例外だ。
建前上はイングリッドとオレの婚前旅行だが、大々的に告知しているわけではなく寧ろ密やかにという感じ。
小さな港町に大勢の人々が押し寄せるのを防ぐためでもある。
貿易港ということでもあるため、ここには竜人以外の種族…ヒューマンやドワーフ、獣人という他国の人間も駐在しているため彼らにはあまり迷惑をかけたくない。
「リーゼロッテよ、国のことは任せたぞ」
「はい、お任せ下さい」
皆が居る手前このような感じのやり取りになっているが、実際はこれまでとあまり変わりない。
建国以来、国家の運営は実質ほとんどリーゼロッテが担ってきたからである。
もちろんイングリッドが無能というわけではない。
ただ、島国で平和な期間がかなり長く続いている中では彼女のような恐怖政治に近い体制は好ましくないと判断したからだそうだ。
元々カリスマ性のあるリーゼロッテ、比較的寛容な妹の政策のほうが実際に国民に受け入れられやすく国も発展した。
とはいえ、イングリッドが女王の座に就いているからこそ、彼女の過去の実績から反乱や暴動の抑止力になっていることもまた事実である。
というわけで、オレたちが乗り込んだ船は南東のメルフォーゼ王国に向けて出港。
ここからが異世界での旅、その本番である。
女性2人は竜人だが、オレの見た目はヒューマン。
つまり、最初に訪れる国の候補としては、まず、竜人とヒューマンが一緒に行動していても普通に受け入れられる国にするべきだと判断した。
まぁ、オレが話す言葉は魔族のものだが、2人ともオレの通訳ができる上、リリーに関しては『念話』を通して意思疎通ができるので、ここと同じく最悪喋らなくても問題はない。
そして現状の移動手段。
ここは島国なので普通に考えれば船を使って海路を進むのが順当だろう。
となると、大陸でも海に面した国ということになる。
一気に内陸部にある国へ行こうとするなら、ドラゴン化したイングリッドに乗り空からという手段もあるにはあるが、邪竜認定されているのに目立ち過ぎる。
こちらには戦うつもりがなくても、敵意を向けてくる国…その規模ではないとしても街や村などはあるだろう。
実際に戦闘になる、ならないは別としても、少なくとも警戒はされることになるので、この案は却下だ。
もう1つの移動方法としては『転移』の魔法を使い、そこから陸路を歩いて進むという方法だ。
こちらに関しては未知な部分があるため今回は使わない。
というのも、転移先が現状は「魔の渓谷」しかないうえ、例えばオレに触れていると彼女たちも一緒に転移できるという保証もない。
そのつもりで魔法を発動したらオレだけ魔の渓谷に着いてしまった…なんて可能性もある。
仮にそうなったとしても、半日程独りで待っていれば彼女たちと合流できるにはできるのだろうが…
ただ、そうなるのであれば最初から空路で好きな場所に行っておいたほうが良かった、ということになりそうだ。
よって移動手段は船を使うことにした。
となると、最初に訪れるのは海に面した国に限定される。
その中でも、ドラゴネシアに近い大陸の西海岸に絞ることにした。
別に急ぐ旅ではないといっても、わざわざ遠い場所を目指して何日も船の上で過ごすことになってしまえば旅に出る意味があまりない。
これらの条件を満たす国ということで今回目指すことになったのは「メルフォーゼ」王国である。
この国はヒューマンが治める国ではあるが、亜人も暮らしている。
言い換えれば、この世界で言うところの「人間」だけで構成されている国である。
なので、ヒューマン?であるオレが竜人と一緒に行動していても奇異な目で見られることはない。
また、亜人が占める割合も大きいので、ヒューマン至上主義を掲げる教会も存在しない。
実際に竜人の国とは友好的な関係にあり、貿易の取引先にもなっている。
あと、これは極秘事項なのだが、ドラゴネシア諜報機関にとっての重要拠点も存在している。
大陸各地から得た情報は一度ここで集約され本国へ報告されるという仕組みになっている。
ちなみに、メルフォーゼはオレが設定していた国と同じ名前で、冒険者ギルドやダンジョンなどが存在する。
オレにとっては「これぞ異世界」って感じ、そんな予感がしてワクワクが止まらない。
つまり、行き先をメルフォーゼに決めた理由は心情的なものも大きいのである。
せっかくなので、候補には挙がったが選ばなかった国についても軽く触れておくことにしよう。
ドワーフの国「イストス」
大陸西海岸に存在する最も近い国で、住民のほとんどがドワーフである。
イングリッドがまだ「エデルガルト」と名乗っていた頃…約1500年前、この国の建国以前から交流がある国。
平地ではなく山岳地帯にあるので、そこから他国へ行こうと思うと山越えをしなければならない。
この地からやって来たという「るしふぁ~」について気になるところではあるので、いずれ訪れることになるだろう。
魔族領「エヴィルザード」
ドラゴネシアの北東、濃い魔素に覆われた地でほとんどが謎。
海に面している場所は全て断崖絶壁なので船での渡航は無理であり、陸路だと魔の渓谷を抜けなければ辿り着けない。
空からだと楽に行けそうだが、魔族領の中央に近づけば近づく程、あのイングリッドでさえ嫌な予感がするらしく未だに行ったことがないそうだ。
だが、どうやら魔族の話す言葉は日本語らしいので、最終的には行かなければならない地なのであろう、なんとなくそう感じている。
自由都市連合「ハイルブリード」
大陸の西というよりも南に近い地域。
メルフォーゼの国境より南にある各亜人種族で構成されている都市の集合体。
基本的にヒューマンはいない上、仮にそこに行ったとしても、どの種族の都市に行くか?でまた迷うと思う。
それに、ここには確実に闇の組織が存在する。
リリーも旅に同行するため訪れるには時期尚早という判断だ。
候補にはならなかったが一応。
法皇国「イルミローザ」は大陸の内陸部に存在する国家である。
行き先を決めたオレはそれをイングリッドとリリーに伝える。
二人とも二つ返事でOKを出してくれた。
イングリッドに関しては「ハイルブリード」で闇の組織を潰してから「イルミローザ」に乗り込む気満々だと思っていたがそうでも無いようだ。
彼女曰く、特に大きな被害があったわけでもないし、そこまで恨みもないとのこと。
ただ、前々から鬱陶しいのでいつか潰す、とは言っていた。
つまり、倒す気ではあるが、それほど急ぎではないらしい。
彼女たちの同意を得てから3日後、オレたちは港町までやって来た。
「これが海なんですね~!
なんだか思っていたよりも凄いですわ~
リリー、ちょっと感動しております~」
「お姉ちゃん、海見たことないの~?」
人生で初めて間近で海を見て感動しているリリーに見送りに来ていたアリスが尋ねる。
そう、今日は遂にドラゴネシアから旅立つ日なのだ。
見送りにはリーゼロッテを始めとした国の上層部の中でも選ばれた者のみが来ている。
もちろんアリスの母親であるメイド長は例外だ。
建前上はイングリッドとオレの婚前旅行だが、大々的に告知しているわけではなく寧ろ密やかにという感じ。
小さな港町に大勢の人々が押し寄せるのを防ぐためでもある。
貿易港ということでもあるため、ここには竜人以外の種族…ヒューマンやドワーフ、獣人という他国の人間も駐在しているため彼らにはあまり迷惑をかけたくない。
「リーゼロッテよ、国のことは任せたぞ」
「はい、お任せ下さい」
皆が居る手前このような感じのやり取りになっているが、実際はこれまでとあまり変わりない。
建国以来、国家の運営は実質ほとんどリーゼロッテが担ってきたからである。
もちろんイングリッドが無能というわけではない。
ただ、島国で平和な期間がかなり長く続いている中では彼女のような恐怖政治に近い体制は好ましくないと判断したからだそうだ。
元々カリスマ性のあるリーゼロッテ、比較的寛容な妹の政策のほうが実際に国民に受け入れられやすく国も発展した。
とはいえ、イングリッドが女王の座に就いているからこそ、彼女の過去の実績から反乱や暴動の抑止力になっていることもまた事実である。
というわけで、オレたちが乗り込んだ船は南東のメルフォーゼ王国に向けて出港。
ここからが異世界での旅、その本番である。
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イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
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【作者より、感謝を込めて】
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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