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▶︎アン失踪事件
第2話 本音ダダモレクッキー(2)
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◇
「……」
もぐもぐもぐ。
眉をひそめたルカは、かみ砕いたクッキーをごくんと飲み込んでからポツリとこぼす。
「なにこれ」
「ふっふっふ。ヒミツ♡」
にやにや笑って答えると、ルカはよりいっそう顔をしかめてオレを見た。
いやぁ、だってさぁ。ルカ、オレと違って大人しいからあんまり自分のこと喋らないし、頭のいいヤツっていつもどんなことを考えてるのか、すっごく気になるんだよね。
あと、オレはルカのことマブダチだと思ってるけど、ルカはオレのこと、どう思ってるのかもよくわからないから気になるしさ。
「……」
てなわけで〝本音ダダモレクッキー〟を食べさせてみたわけなんだけども。
ルカはまず、説明を求めるようににゃすけを見た。
気まぐれなにゃすけは王様イスの上でごろんと横になり、
「金を出した奴にしかどんな性能か教えないにゃ」
と、気だるそうな一言。
相変わらずにゃすけは、店番のくせして気まぐれだしやる気がない。
諦めたようにため息をつくルカ。
「そう。【どうせまたへんてこりんなアイテムでしょ】」
ダダ漏れになった本音がバッチリと聞こえ、オレは思わず吹き出しそうになった。
もちろん当の本人・ルカは、『アレ?』みたいな顔してる。
「ぶ、ぶにゃー! へんてこりんなアイテムっていうにゃー!」
「ごめん……【でも、変なものは変だしな】」
「〝変〟じゃにゃい!〝ふしぎ〟って言うにゃ!」
「あ、あれ? 【なにこれ、口が勝手に……】」
「ぶはははは。やっぱりルカ、神商品のこと〝変なアイテム〟だと思ってたんだ! いやまあたしかに変は変だけどさあ、これ、にゃすけいわく一応は神様の力が宿った超激レア商品ってことになってっからさあ」
「ぐぬぬリト! 一応は余計にゃ! せっかく神の恩恵が詰まったアイテムだというのに、そもそもはおぬしがいっつもイタズラやふざけたことにばっかり使っているから『変な』アイテムだと思われるんにゃぞ! もっとまともな使い方をだにゃあ、」
「うははごめんごめん。でも悪いことばっかりじゃなくてちゃんといいことにだって使ってるから安心しろって! 今のこのクッキーだって、普段おとなしいルカの本音や悩みなんかがわかるかなーと思ってさ!」
「……【本音がわかるクッキーか。どうりで……】」
ぷんすかするにゃすけに渾身のアピールをするオレと、今、自分が食べさせられたアイテムの性能を会話の内容から分析するルカ。
相変わらずバラバラなオレたち三人(いや、二人と一匹か)が輪になってガヤガヤと賑わっていると、またしても店の戸がガラリと開き、見知った顔の二人組が店内を覗き込んだ。
「おいおい見ろよ~。アイツらまーた変ながらくた漁って猫と一緒に騒いでんぞ!」
クマ並に大きな体にくたびれたリュックを背負ったツンツン頭のハンゾーこと大門半蔵と――、
「ほっときなよハンゾー。アイツらに関わるとロクなことないから。絶対呪われてるってこの店」
小学六年生には思えないほど小柄な体に傷ひとつない高級ブランドのカバンを背負った、トマこと小金井兎丸。
どちらもオレのクラスメイトで学校でも有名な凸凹コンビだ。
「うわァ出たァハントマコンビ。なんだよおまえら、呼んでないしあっちいけよ!」
オレはこの世の終わりみたいにゲンナリした顔で、しっしと手を振る。
にゃすけも「呪われてるにゃとー! ぶれいものー!」と、尻尾を立てて怒ってはいたが、〝ふしぎ〟を信じないアイツらににゃすけの声は聞こえていないし、オレが持っている神商品もただのがらくたにしか見えていないはず。
だから二人は余計に面白がって店先から顔だけを出して、からかいの言葉を投げてきた。
「言われなくても寝グセ頭がうつったら困るからそばになんか寄らねえっての。森谷、お前もさあ、トマと一緒で頭いいんだからそんなガラクタ寝グセ野郎ほっといてこっち来いよ。俺らと一緒に大門マートで最新ゲームでもしようぜ」
「……」
「はあ⁉︎ うっさいなーもうあっちいけってば! っていうかオレのこれは寝グセじゃなくて無造作ヘアーだっつうの! それにここは心がキレイなヤツにはお宝の山に見えるけど、お前らみたいな心の薄汚れた奴らにはただのガラクタにしか見えないんだよ。店が悪いんじゃなくて、お前らの目が腐ってんの。わかる⁉︎」
「あんだとお⁉︎ なにがお宝の山だ! 最新商品が揃ったうちの大門マートの方がすげえって何度言ったらわかんだよ! いっつもわけのわかんねえインチキな手品道具でこっちに迷惑かけてきやがって!」
「インチキ手品じゃないですゥ。神商品に宿った神様のふしぎな力ですゥ。本当は気になって仕方ないくせにィ」
「きっ、気になんかなってねえよ! なに勘違いしてんの⁉︎ おいトマ、お前もなんか言ってやれよ! お前、弁護士一家のこどもなんだから口ゲンカ得意だろっ」
「まあね。でも僕、不毛な争いはしない主義なんだ。そもそも怪しいがらくたを〝神商品〟だなんて呼んじゃう幼稚なヤツと同レベルに見られるのは心外だしね。……森谷流加、君にもがっかりだ。君は唯一、この街で僕の頭脳と張り合える優秀なヤツだと思ってたけど、いい加減な風間吏斗なんかを友人に選ぶなんて。成績落ちるどころか素行不良で教師たちに目ぇつけられるよ?」
「……」
「かーっ! よくいうぜ兎丸! 一度だってルカに学力テストで勝てたことないくせに、なあにが『僕の頭脳と張り合える』だよ! 張り合う前に負けてるっての! っていうかおまえだっていっつも神商品にめちゃめちゃ興味津々のくせに! スカした顔してしれっとふしぎ堂の敷居またいでんじゃねえぞ! そうやって人をバカにしてばっかいるからおまえは身長が伸びねえんだぞ!」
「なっ、ち、チビっていうなチビって!」
「はん、『背が伸びない』とは言ったけど『チビ』とは言ってませんんん!」
「くそ、相変わらずむかつくヤツだな風間吏斗!」
「おうおうおう、なんならもう相撲で片つけるか⁉︎ 今から表でろよ寝グセ野郎!」
「望むところだ! おまえらなんかオレの神商品でけちょんけちょんにしてやるんだからなっ!」
毎度のごとく1対2となってぎゃあぎゃあ言い合うオレVSトマ&ハンゾーの三人。
そんなオレらの低レベルな争いを冷ややかな目で見たルカは、ツカツカとオレに歩み寄ってくると、
「ちょっとリト、これ貸して」
「へっ?」
オレの手の中から小瓶を掠め取り、なんだ? と思うヒマもなく、今度は入り口付近にいるハントマコンビの元まで歩み寄った。そして――、
「お、なんだァ森谷。おまえ、ついにあの寝グセ野郎を裏切ってオレらの仲間になる気になったか⁉︎」
「いい心がけじゃん。風間吏斗から君を引っこ抜けば、アイツはただのがらくた野郎だ。ちょっと癪だけど、頭の良い君なら僕らの仲間にしてやってもい――むぐっ」
「これ、あげる」
「むむ⁉︎ むぐむぐ……」
「あん⁉︎ おい森谷、おまえ、トマに何食わせて……んぐ」
「大門くんもどうぞ」
「???」
もぐもぐもぐ。
うるさい二人の口に、ルカは〝本音ダダモレクッキー〟を一枚ずつ放り込んだ。
二人は眉をひそめながらも、クッキーをうまそうに味わって食べている。
「あ、あんだよ、いきなり何食わせてん……【なにこれうっま! ふしぎ堂の新作駄菓子かっ⁉︎ やっべーうますぎるだろこれ! まじ神商品!】……って、アレ」
「ちょ、ちょっとハンゾー。たしかにウマイけど今は悠長にクッキーなんか食べてる場合じゃな……【いやでもほんと美味いなこれ。ふしぎ堂ってさあ、なんか怪しいけど意外に美味い駄菓子が揃ってんだよなあ。ハンゾーには内緒でもう一枚もらっちゃおうかな】……んん⁉︎」
もぐもぐ口を動かしながら、本音をダダモレにする二人。
思わずオレは、ふき出して笑ってしまった。
「ぶっ。なんだよおまえら、なんだかんだでばあちゃんの店絶賛してるしやっぱり神商品気になってたんじゃん」
「ぜっ、絶賛なんかしてねえしっっ!【気になるに決まってんじゃん! ふしぎ堂は大門マートのライバル店みたいなもんだし、こんなうめえ菓子、どこで仕入れたのかめっちゃ気になるじゃん!】」
「ちょ、ちょっとハンゾー。風間吏斗を冷やかしに〝ふしぎ堂〟へ行こうぜって言ってたのに、やっぱりここの商品が気になってただけなのか【いや、僕もこの店のヒミツが気になるし気持ちはわかるけど、正直にそれ言ったらなんか負けたみたいで癪……】……んぐぐ、な、なんだこれ! 口が勝手に!」
げっ、というような顔を付き合わせるハンゾーとトマ。
それからも二人は、「ムカつく!【でも気になる!】」「くそ、また変な呪いか!【この不思議な力はなんだ⁉︎ 魔法か⁉︎ やっぱりすごいな⁉︎】」と、見た目の態度とは正反対な〝ふしぎ堂〟への本音をダダモレにし、結局、
「くそっ。なんかおかしい! 一旦ひくぞトマ! 【これ以上格好悪いところ見せられない~!】」
「ちっ、了解だハンゾー! 変な呪いかけやがって……覚えてろよ! 【この不思議の秘密、いつか暴いてやる!】」
――と、最後の最後まで減らず口を叩きながら、尻尾を巻いて逃げていった。
「……」
もぐもぐもぐ。
眉をひそめたルカは、かみ砕いたクッキーをごくんと飲み込んでからポツリとこぼす。
「なにこれ」
「ふっふっふ。ヒミツ♡」
にやにや笑って答えると、ルカはよりいっそう顔をしかめてオレを見た。
いやぁ、だってさぁ。ルカ、オレと違って大人しいからあんまり自分のこと喋らないし、頭のいいヤツっていつもどんなことを考えてるのか、すっごく気になるんだよね。
あと、オレはルカのことマブダチだと思ってるけど、ルカはオレのこと、どう思ってるのかもよくわからないから気になるしさ。
「……」
てなわけで〝本音ダダモレクッキー〟を食べさせてみたわけなんだけども。
ルカはまず、説明を求めるようににゃすけを見た。
気まぐれなにゃすけは王様イスの上でごろんと横になり、
「金を出した奴にしかどんな性能か教えないにゃ」
と、気だるそうな一言。
相変わらずにゃすけは、店番のくせして気まぐれだしやる気がない。
諦めたようにため息をつくルカ。
「そう。【どうせまたへんてこりんなアイテムでしょ】」
ダダ漏れになった本音がバッチリと聞こえ、オレは思わず吹き出しそうになった。
もちろん当の本人・ルカは、『アレ?』みたいな顔してる。
「ぶ、ぶにゃー! へんてこりんなアイテムっていうにゃー!」
「ごめん……【でも、変なものは変だしな】」
「〝変〟じゃにゃい!〝ふしぎ〟って言うにゃ!」
「あ、あれ? 【なにこれ、口が勝手に……】」
「ぶはははは。やっぱりルカ、神商品のこと〝変なアイテム〟だと思ってたんだ! いやまあたしかに変は変だけどさあ、これ、にゃすけいわく一応は神様の力が宿った超激レア商品ってことになってっからさあ」
「ぐぬぬリト! 一応は余計にゃ! せっかく神の恩恵が詰まったアイテムだというのに、そもそもはおぬしがいっつもイタズラやふざけたことにばっかり使っているから『変な』アイテムだと思われるんにゃぞ! もっとまともな使い方をだにゃあ、」
「うははごめんごめん。でも悪いことばっかりじゃなくてちゃんといいことにだって使ってるから安心しろって! 今のこのクッキーだって、普段おとなしいルカの本音や悩みなんかがわかるかなーと思ってさ!」
「……【本音がわかるクッキーか。どうりで……】」
ぷんすかするにゃすけに渾身のアピールをするオレと、今、自分が食べさせられたアイテムの性能を会話の内容から分析するルカ。
相変わらずバラバラなオレたち三人(いや、二人と一匹か)が輪になってガヤガヤと賑わっていると、またしても店の戸がガラリと開き、見知った顔の二人組が店内を覗き込んだ。
「おいおい見ろよ~。アイツらまーた変ながらくた漁って猫と一緒に騒いでんぞ!」
クマ並に大きな体にくたびれたリュックを背負ったツンツン頭のハンゾーこと大門半蔵と――、
「ほっときなよハンゾー。アイツらに関わるとロクなことないから。絶対呪われてるってこの店」
小学六年生には思えないほど小柄な体に傷ひとつない高級ブランドのカバンを背負った、トマこと小金井兎丸。
どちらもオレのクラスメイトで学校でも有名な凸凹コンビだ。
「うわァ出たァハントマコンビ。なんだよおまえら、呼んでないしあっちいけよ!」
オレはこの世の終わりみたいにゲンナリした顔で、しっしと手を振る。
にゃすけも「呪われてるにゃとー! ぶれいものー!」と、尻尾を立てて怒ってはいたが、〝ふしぎ〟を信じないアイツらににゃすけの声は聞こえていないし、オレが持っている神商品もただのがらくたにしか見えていないはず。
だから二人は余計に面白がって店先から顔だけを出して、からかいの言葉を投げてきた。
「言われなくても寝グセ頭がうつったら困るからそばになんか寄らねえっての。森谷、お前もさあ、トマと一緒で頭いいんだからそんなガラクタ寝グセ野郎ほっといてこっち来いよ。俺らと一緒に大門マートで最新ゲームでもしようぜ」
「……」
「はあ⁉︎ うっさいなーもうあっちいけってば! っていうかオレのこれは寝グセじゃなくて無造作ヘアーだっつうの! それにここは心がキレイなヤツにはお宝の山に見えるけど、お前らみたいな心の薄汚れた奴らにはただのガラクタにしか見えないんだよ。店が悪いんじゃなくて、お前らの目が腐ってんの。わかる⁉︎」
「あんだとお⁉︎ なにがお宝の山だ! 最新商品が揃ったうちの大門マートの方がすげえって何度言ったらわかんだよ! いっつもわけのわかんねえインチキな手品道具でこっちに迷惑かけてきやがって!」
「インチキ手品じゃないですゥ。神商品に宿った神様のふしぎな力ですゥ。本当は気になって仕方ないくせにィ」
「きっ、気になんかなってねえよ! なに勘違いしてんの⁉︎ おいトマ、お前もなんか言ってやれよ! お前、弁護士一家のこどもなんだから口ゲンカ得意だろっ」
「まあね。でも僕、不毛な争いはしない主義なんだ。そもそも怪しいがらくたを〝神商品〟だなんて呼んじゃう幼稚なヤツと同レベルに見られるのは心外だしね。……森谷流加、君にもがっかりだ。君は唯一、この街で僕の頭脳と張り合える優秀なヤツだと思ってたけど、いい加減な風間吏斗なんかを友人に選ぶなんて。成績落ちるどころか素行不良で教師たちに目ぇつけられるよ?」
「……」
「かーっ! よくいうぜ兎丸! 一度だってルカに学力テストで勝てたことないくせに、なあにが『僕の頭脳と張り合える』だよ! 張り合う前に負けてるっての! っていうかおまえだっていっつも神商品にめちゃめちゃ興味津々のくせに! スカした顔してしれっとふしぎ堂の敷居またいでんじゃねえぞ! そうやって人をバカにしてばっかいるからおまえは身長が伸びねえんだぞ!」
「なっ、ち、チビっていうなチビって!」
「はん、『背が伸びない』とは言ったけど『チビ』とは言ってませんんん!」
「くそ、相変わらずむかつくヤツだな風間吏斗!」
「おうおうおう、なんならもう相撲で片つけるか⁉︎ 今から表でろよ寝グセ野郎!」
「望むところだ! おまえらなんかオレの神商品でけちょんけちょんにしてやるんだからなっ!」
毎度のごとく1対2となってぎゃあぎゃあ言い合うオレVSトマ&ハンゾーの三人。
そんなオレらの低レベルな争いを冷ややかな目で見たルカは、ツカツカとオレに歩み寄ってくると、
「ちょっとリト、これ貸して」
「へっ?」
オレの手の中から小瓶を掠め取り、なんだ? と思うヒマもなく、今度は入り口付近にいるハントマコンビの元まで歩み寄った。そして――、
「お、なんだァ森谷。おまえ、ついにあの寝グセ野郎を裏切ってオレらの仲間になる気になったか⁉︎」
「いい心がけじゃん。風間吏斗から君を引っこ抜けば、アイツはただのがらくた野郎だ。ちょっと癪だけど、頭の良い君なら僕らの仲間にしてやってもい――むぐっ」
「これ、あげる」
「むむ⁉︎ むぐむぐ……」
「あん⁉︎ おい森谷、おまえ、トマに何食わせて……んぐ」
「大門くんもどうぞ」
「???」
もぐもぐもぐ。
うるさい二人の口に、ルカは〝本音ダダモレクッキー〟を一枚ずつ放り込んだ。
二人は眉をひそめながらも、クッキーをうまそうに味わって食べている。
「あ、あんだよ、いきなり何食わせてん……【なにこれうっま! ふしぎ堂の新作駄菓子かっ⁉︎ やっべーうますぎるだろこれ! まじ神商品!】……って、アレ」
「ちょ、ちょっとハンゾー。たしかにウマイけど今は悠長にクッキーなんか食べてる場合じゃな……【いやでもほんと美味いなこれ。ふしぎ堂ってさあ、なんか怪しいけど意外に美味い駄菓子が揃ってんだよなあ。ハンゾーには内緒でもう一枚もらっちゃおうかな】……んん⁉︎」
もぐもぐ口を動かしながら、本音をダダモレにする二人。
思わずオレは、ふき出して笑ってしまった。
「ぶっ。なんだよおまえら、なんだかんだでばあちゃんの店絶賛してるしやっぱり神商品気になってたんじゃん」
「ぜっ、絶賛なんかしてねえしっっ!【気になるに決まってんじゃん! ふしぎ堂は大門マートのライバル店みたいなもんだし、こんなうめえ菓子、どこで仕入れたのかめっちゃ気になるじゃん!】」
「ちょ、ちょっとハンゾー。風間吏斗を冷やかしに〝ふしぎ堂〟へ行こうぜって言ってたのに、やっぱりここの商品が気になってただけなのか【いや、僕もこの店のヒミツが気になるし気持ちはわかるけど、正直にそれ言ったらなんか負けたみたいで癪……】……んぐぐ、な、なんだこれ! 口が勝手に!」
げっ、というような顔を付き合わせるハンゾーとトマ。
それからも二人は、「ムカつく!【でも気になる!】」「くそ、また変な呪いか!【この不思議な力はなんだ⁉︎ 魔法か⁉︎ やっぱりすごいな⁉︎】」と、見た目の態度とは正反対な〝ふしぎ堂〟への本音をダダモレにし、結局、
「くそっ。なんかおかしい! 一旦ひくぞトマ! 【これ以上格好悪いところ見せられない~!】」
「ちっ、了解だハンゾー! 変な呪いかけやがって……覚えてろよ! 【この不思議の秘密、いつか暴いてやる!】」
――と、最後の最後まで減らず口を叩きながら、尻尾を巻いて逃げていった。
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