聖女召喚でなぜか呼び出された、もう30のお兄さん(自称)ですが、異世界で聖人することにしました。

藜-LAI-

文字の大きさ
6 / 46

3.異世界サーチェス②

しおりを挟む
「改めてご挨拶を申し上げます。私はサーチェスが唯一神とする創造主アネス、神にお仕えするオーバル教会で最高神官を務めます、ジレーザ・アンナライルと申します」
「はあ、ご丁寧にどうも」
 依斗は丁寧な挨拶よりも、見目麗しいジレーザの容姿と彼が醸し出す気品のある雰囲気に、これならあの街で王子どころの騒ぎじゃなく稼げるなと、全く別のことを考えていた。
 褐色の肌に紅蓮に輝くカーマイン鮮やかな赤の髪は左側が紋様を刻んで刈り込まれ、編み込んだ前髪はアシンメトリーになった右側へと流してある。
 口元を隠していたのは神職に就く者の掟かなにかなのだろうが、布が取り払われた目鼻立ちは彫刻のようにバランスが良く美しく、イケメンを見慣れている依斗でも目を見張る美貌だ。
 そんな依斗の不躾な視線に気付いてはいるようだが、ジレーザはそれに構う様子なく淡々と説明を続ける。
「大変失礼ながら、貴方様とお呼びする前に、お名前をお聞かせ願えますでしょうか」
「ああ、申し遅れました。俺は網浜依斗。依斗が名前で、網浜は苗字です」
「ではヨリト様、改めてご説明させていただきます」
「お願いします」
「我らがサーチェスでは、一定の周期で瘴気が大地を覆う被害に見舞われ、それを阻止するべく救世主、聖女様を異世界より召喚して我らの大地を守り育んで参りました」
「救世主の召喚」
 依斗自身はそういった類のアニメを観たことがないが、顧客や後輩の中にその手の小説が好きな面々が居て、『異世界召喚』という突飛な設定を思いの外冷静に受け止める自分に驚く。
「異世界より召喚した聖女様に瘴気を祓っていただき、このサーチェスを救済いただくために、周期的に起こる禍いの前触れを感知した時、召喚の儀を執り行うもので御座います」
「なるほど。それで今回も何百年ぶりだかにその周期とやらが来たんですね。そして聖女を召喚したはずだったのに、男である俺が現れた。ということでしょうか」
「はい」
「なら召喚し直せば良い。俺をさっさと元の世界に帰らせてください」
 依斗はそう出来ないだろう事情を感じ取りつつも、今の説明を聞いて、必要なのは聖女なのだからと言葉を続ける。
「まさか召喚は出来ても送還は出来ない。ということかな」
「いえ、手立てが無い訳ではありません」
「なら帰らせてもらおうか」
「そういう訳にはいかないのです」
 ジレーザは立ち上がると事務机の方に移動して、机の上に置かれた一本の剣を恭しく依斗に差し出した。
「これは?」
「聖剣〈ネグロシス〉で御座います」
 見覚えのあるそれは、白をベースに金の細工が施された見事な鞘に収まった剣であり、プラチナのグリップ部分も眩いばかりに光っていて飾り物の類に見える。
「この剣がなんなんですか」
「御手に取って、鞘から剣を引き抜いてご覧になってください」
 ジレーザから剣を手渡されると、まずその軽さに驚き、更に鞘から引き抜いた剣はどういう原理なのか、刃の形に凝縮された光の刀身が現れた。
「なんだ、この剣。あの時と違う」
 依斗は召喚されたばかりの神殿の広間での出来事を思い出し、確かあの時はなんの変哲もない鋼の刀身だったじゃないかと付け加える。
「それが聖剣たる所以です。そして聖剣ネグロシスは、聖人にしか扱うことは出来ず、鞘から引き抜くことすら聖人様以外には出来ないことなのです」
「なんで形状が変わったんですか」
「禊をなさった後だからです」
「さっきの行水ですか」
「あれは特殊な祈りが捧げられた聖水。異世界より召喚された聖女様か、あるいはヨリト様、貴方様のような聖人でなければ身が灼かれ、全身に火傷を負うほど強力な聖水です」
「そんな危険な水に人を浸さないでくださいよ!」
「召喚の間でネグロシスが鞘から抜かれた時点で、ヨリト様が聖人であることは明白でしたから、問題は御座いません」
 ジレーザは悪びれた様子もなく、なぜこそまで目くじらを立てるのかと驚いたように目を丸くしている。
 依斗は聖剣だというネグロシスを鞘に収めると、二人の間にあるローテーブルの上に置いて再び口を開いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...