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3.異世界サーチェス②
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「改めてご挨拶を申し上げます。私はサーチェスが唯一神とする創造主アネス、神にお仕えするオーバル教会で最高神官を務めます、ジレーザ・アンナライルと申します」
「はあ、ご丁寧にどうも」
依斗は丁寧な挨拶よりも、見目麗しいジレーザの容姿と彼が醸し出す気品のある雰囲気に、これならあの街で王子どころの騒ぎじゃなく稼げるなと、全く別のことを考えていた。
褐色の肌に紅蓮に輝くカーマインの髪は左側が紋様を刻んで刈り込まれ、編み込んだ前髪はアシンメトリーになった右側へと流してある。
口元を隠していたのは神職に就く者の掟かなにかなのだろうが、布が取り払われた目鼻立ちは彫刻のようにバランスが良く美しく、イケメンを見慣れている依斗でも目を見張る美貌だ。
そんな依斗の不躾な視線に気付いてはいるようだが、ジレーザはそれに構う様子なく淡々と説明を続ける。
「大変失礼ながら、貴方様とお呼びする前に、お名前をお聞かせ願えますでしょうか」
「ああ、申し遅れました。俺は網浜依斗。依斗が名前で、網浜は苗字です」
「ではヨリト様、改めてご説明させていただきます」
「お願いします」
「我らがサーチェスでは、一定の周期で瘴気が大地を覆う被害に見舞われ、それを阻止するべく救世主、聖女様を異世界より召喚して我らの大地を守り育んで参りました」
「救世主の召喚」
依斗自身はそういった類のアニメを観たことがないが、顧客や後輩の中にその手の小説が好きな面々が居て、『異世界召喚』という突飛な設定を思いの外冷静に受け止める自分に驚く。
「異世界より召喚した聖女様に瘴気を祓っていただき、このサーチェスを救済いただくために、周期的に起こる禍いの前触れを感知した時、召喚の儀を執り行うもので御座います」
「なるほど。それで今回も何百年ぶりだかにその周期とやらが来たんですね。そして聖女を召喚したはずだったのに、男である俺が現れた。ということでしょうか」
「はい」
「なら召喚し直せば良い。俺をさっさと元の世界に帰らせてください」
依斗はそう出来ないだろう事情を感じ取りつつも、今の説明を聞いて、必要なのは聖女なのだからと言葉を続ける。
「まさか召喚は出来ても送還は出来ない。ということかな」
「いえ、手立てが無い訳ではありません」
「なら帰らせてもらおうか」
「そういう訳にはいかないのです」
ジレーザは立ち上がると事務机の方に移動して、机の上に置かれた一本の剣を恭しく依斗に差し出した。
「これは?」
「聖剣〈ネグロシス〉で御座います」
見覚えのあるそれは、白をベースに金の細工が施された見事な鞘に収まった剣であり、プラチナのグリップ部分も眩いばかりに光っていて飾り物の類に見える。
「この剣がなんなんですか」
「御手に取って、鞘から剣を引き抜いてご覧になってください」
ジレーザから剣を手渡されると、まずその軽さに驚き、更に鞘から引き抜いた剣はどういう原理なのか、刃の形に凝縮された光の刀身が現れた。
「なんだ、この剣。あの時と違う」
依斗は召喚されたばかりの神殿の広間での出来事を思い出し、確かあの時はなんの変哲もない鋼の刀身だったじゃないかと付け加える。
「それが聖剣たる所以です。そして聖剣ネグロシスは、聖人にしか扱うことは出来ず、鞘から引き抜くことすら聖人様以外には出来ないことなのです」
「なんで形状が変わったんですか」
「禊をなさった後だからです」
「さっきの行水ですか」
「あれは特殊な祈りが捧げられた聖水。異世界より召喚された聖女様か、あるいはヨリト様、貴方様のような聖人でなければ身が灼かれ、全身に火傷を負うほど強力な聖水です」
「そんな危険な水に人を浸さないでくださいよ!」
「召喚の間でネグロシスが鞘から抜かれた時点で、ヨリト様が聖人であることは明白でしたから、問題は御座いません」
ジレーザは悪びれた様子もなく、なぜこそまで目くじらを立てるのかと驚いたように目を丸くしている。
依斗は聖剣だというネグロシスを鞘に収めると、二人の間にあるローテーブルの上に置いて再び口を開いた。
「はあ、ご丁寧にどうも」
依斗は丁寧な挨拶よりも、見目麗しいジレーザの容姿と彼が醸し出す気品のある雰囲気に、これならあの街で王子どころの騒ぎじゃなく稼げるなと、全く別のことを考えていた。
褐色の肌に紅蓮に輝くカーマインの髪は左側が紋様を刻んで刈り込まれ、編み込んだ前髪はアシンメトリーになった右側へと流してある。
口元を隠していたのは神職に就く者の掟かなにかなのだろうが、布が取り払われた目鼻立ちは彫刻のようにバランスが良く美しく、イケメンを見慣れている依斗でも目を見張る美貌だ。
そんな依斗の不躾な視線に気付いてはいるようだが、ジレーザはそれに構う様子なく淡々と説明を続ける。
「大変失礼ながら、貴方様とお呼びする前に、お名前をお聞かせ願えますでしょうか」
「ああ、申し遅れました。俺は網浜依斗。依斗が名前で、網浜は苗字です」
「ではヨリト様、改めてご説明させていただきます」
「お願いします」
「我らがサーチェスでは、一定の周期で瘴気が大地を覆う被害に見舞われ、それを阻止するべく救世主、聖女様を異世界より召喚して我らの大地を守り育んで参りました」
「救世主の召喚」
依斗自身はそういった類のアニメを観たことがないが、顧客や後輩の中にその手の小説が好きな面々が居て、『異世界召喚』という突飛な設定を思いの外冷静に受け止める自分に驚く。
「異世界より召喚した聖女様に瘴気を祓っていただき、このサーチェスを救済いただくために、周期的に起こる禍いの前触れを感知した時、召喚の儀を執り行うもので御座います」
「なるほど。それで今回も何百年ぶりだかにその周期とやらが来たんですね。そして聖女を召喚したはずだったのに、男である俺が現れた。ということでしょうか」
「はい」
「なら召喚し直せば良い。俺をさっさと元の世界に帰らせてください」
依斗はそう出来ないだろう事情を感じ取りつつも、今の説明を聞いて、必要なのは聖女なのだからと言葉を続ける。
「まさか召喚は出来ても送還は出来ない。ということかな」
「いえ、手立てが無い訳ではありません」
「なら帰らせてもらおうか」
「そういう訳にはいかないのです」
ジレーザは立ち上がると事務机の方に移動して、机の上に置かれた一本の剣を恭しく依斗に差し出した。
「これは?」
「聖剣〈ネグロシス〉で御座います」
見覚えのあるそれは、白をベースに金の細工が施された見事な鞘に収まった剣であり、プラチナのグリップ部分も眩いばかりに光っていて飾り物の類に見える。
「この剣がなんなんですか」
「御手に取って、鞘から剣を引き抜いてご覧になってください」
ジレーザから剣を手渡されると、まずその軽さに驚き、更に鞘から引き抜いた剣はどういう原理なのか、刃の形に凝縮された光の刀身が現れた。
「なんだ、この剣。あの時と違う」
依斗は召喚されたばかりの神殿の広間での出来事を思い出し、確かあの時はなんの変哲もない鋼の刀身だったじゃないかと付け加える。
「それが聖剣たる所以です。そして聖剣ネグロシスは、聖人にしか扱うことは出来ず、鞘から引き抜くことすら聖人様以外には出来ないことなのです」
「なんで形状が変わったんですか」
「禊をなさった後だからです」
「さっきの行水ですか」
「あれは特殊な祈りが捧げられた聖水。異世界より召喚された聖女様か、あるいはヨリト様、貴方様のような聖人でなければ身が灼かれ、全身に火傷を負うほど強力な聖水です」
「そんな危険な水に人を浸さないでくださいよ!」
「召喚の間でネグロシスが鞘から抜かれた時点で、ヨリト様が聖人であることは明白でしたから、問題は御座いません」
ジレーザは悪びれた様子もなく、なぜこそまで目くじらを立てるのかと驚いたように目を丸くしている。
依斗は聖剣だというネグロシスを鞘に収めると、二人の間にあるローテーブルの上に置いて再び口を開いた。
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