聖女召喚でなぜか呼び出された、もう30のお兄さん(自称)ですが、異世界で聖人することにしました。

藜-LAI-

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7.聖人について③

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 ジレーザは禁書に大きく描かれた挿絵に侮蔑の眼差しを向けると、それから思い出したように依斗を見つめて、失言だったと顔を青褪めさせる。
「申し訳御座いません」
「いや、構わないけど。でもまあ、国を脅かす化け物を退治しても、色欲魔人が爆誕するってなると、もう少し先までちゃんと調べたいな」
「ヨリト様、それはどういう意味ですか」
「なんだよジレーザ、分かってなかったのか。これは聖人が力を行使した代償だろ」
「ではここに描かれたこの絵は、聖人様のお姿だと仰るのですか」
「だから禁書になったのかもな。媒介になる聖剣のせいなのか、聖人が持つ力のせいなのか、それとも魔物を退治したことがトリガーになるのか。読まないことには分からないけどね」
「そんな」
 ジレーザは真実を受け止めたくないといった風に、目元を険しくして本に描かれた挿絵を睨み付ける。
「悪いなジレーザ。俺はもう少し続きを調べてみる」
「でしたら私もお手伝いさせていただきます」
「大丈夫か? あんまり楽しそうな内容じゃないぞ」
「それはヨリト様にとっても同じこと。私にはヨリト様を聖人として召喚した責務が御座います」
「まあ別にいいけど」
 今度は隣に座り直したジレーザにそう答えると、依斗は禁書を広げて挿絵以降に書かれた文面から、単語を拾っていく。
 法則さえ掴めれば文章として読めるはずだが、今のところ単語の意味合いが断定的ではない使われ方が多く、文章として呑み込むのに時間が掛かる。
 拾った単語を文面に即した意味に変換し、噛み砕いた順にジレーザに引き渡して文章を完成させていく。
 その作業を繰り返し、ジレーザが文章にまとめた物を依斗の手で再構成すると、この禁書に記された内容がようやく明らかになってきた。
「やっぱりそうか」
 依斗はまとめ上げた書面を掴んで頭を抱える。
「これは誠に聖人様に起こったことなのでしょうか」
「だからこそタブーになったんだろうな」
 聖人の力を制御するには媒介となる聖剣が必要であり、しかしこの力を行使することで、聖人には代償としてある問題が発生する。
「しかし、聖剣使ったらムラムラするって、本当かよ」
「ムラムラ、ですか」
 そんな程度ではないだろうと、ジレーザは眉を顰めて依斗を凝視する。
 しかし実際この禁書にはそう書かれていて、過去に召喚された聖人は、この押し寄せる性欲を耐え抜いた結果、色欲魔人と化して何千もの女性と交わるまで理性を取り戻さなかった。
「小出しに性欲を処理すれば良いのかな」
「ヨリト様、みだりにそのようなお発言はお控えください」
「いや、俺は聖職者じゃないから。それに性欲は本能だろ。そりゃ俺だって節度ある大人だから、我慢は出来るけど、代償の大きさにもよるよな」
「聖職者でないと仰いますが、貴方は歴とした聖人様なのですよ。そのことを今一度お心に留め置きください」
「だからってお前も男だろ。生理現象はどうにも出来ないだろ。それこそ排泄とかさ」
 依斗が続けると、ジレーザは明らかに嫌そうな顔をして、それとこれとは話が違うと机を叩く。
「いかにヨリト様のご発言であろうとも、そのようなお考えに賛同は致しかねます。生理現象と一括りにして、淫らで独りよがりな考えを強いることがあってはなりません」
「いや、別に今すぐ誰かをどうこうしたいとは言ってないよ」
「いけません。たかが性欲のために乙女の純潔を散らすなど。しかも何千もの女性と……穢らわしいことこの上ない!」
「いやいや、フル勃起で生殺しの状態はエグいだろ。ましてやそれ我慢して聖剣使い続けたら性欲が爆発するだろ。結果的にそうなって何千人斬りの伝説を作った訳だろ」
「そのような不道徳が伝説などである訳ないでしょう!」
 ジレーザはまたも机を叩くと、あからさまに頭が痛いと額に手を当てて大きな溜め息を吐き出した。
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