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15.ココロもカラダも①
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暴風と叩きつけるように降りしきる雨粒が容赦なく窓を揺らし、この時期には珍しい嵐の中、依斗はベッドに寝転んで天井を見つめていた。
禁書庫でジレーザとやり取りをして二節。
あの後も幾つか瘴気騒ぎを鎮圧して、やはり依斗の魔力は増大し、その分苛烈な魔力の枯渇を起こして正気を保つのが難しい状態は悪化の一途を辿っている。
「こんなになるまで相手しやがって」
隣でぐったりとして眠り込むジレーザを見つめると、依斗は体を起こして眉を寄せ溜め息を吐く。
いよいよ聖剣を使ってからの記憶が一切なく、ジレーザと肌を重ねたことすら思い出せなくなり、気が付いた時にはベッドに横になっていた。
横たわるジレーザの肌には夥しい鬱血痕があり、後孔は爛れたように腫れ上がって、どれだけの乱暴を強いたのか想像も付かないほどだ。
「ごめんな」
顔に掛かる髪を掻き上げてジレーザの頬を撫でると、目に見えて傷付いたその体を見て、これから更に過酷なことを強いることに罪悪感を覚えずにはいられない。
依斗は立ち上がって薬を探すと、手桶に汲んだ水を温めてジレーザの体を丁寧に拭く。
「ん……」
「悪い、起こしたか」
僅かに眉を寄せて声を出したジレーザに声を掛けると、再び額や頬を撫でてから寝てろと言い聞かせるように呟く。
柔らかく絞った布で後孔の周りを丁寧に拭き取ると、薬を指で掬って、痛々しく腫れ上がったそこにそっと触れる。
「うっ」
「痛むよな」
浅瀬まで薬を塗り込んで指を引き抜くと、痛みを緩和させるために治癒魔法を唱えて様子を見る。
回復や治癒の魔法を使えば、何事もなかったように体は元に戻るが、ジレーザがそれを嫌うので依斗はその意見を尊重して滅多に魔法を使わない。
「ヨリト」
「ん? どうした」
力なく伸ばすジレーザの手を取ると、ベッドに上がって隣に寝転び、瞼すら重そうにする疲れ切った頬をもう一度撫でる。
「良かった」
「なにが」
「意識をなくしていたんだろ」
「ジレーザ」
依斗は握った手の甲にキスをすると、そのままジレーザを抱き寄せて腕の中に閉じ込めるように抱き締める。
「ごめんな」
「構わない。気にするな」
「しない訳ないだろ」
「ヨリトに聖剣を使うことを強いたのは私だ」
「だとしても俺が決めたことだよ。それに、お前の罪悪感に漬け込んで身体を開かせた。全部俺が悪いんだよ」
「だとしたら私も同罪だ。ヨリトが謝ることではない」
ジレーザはそう答えると、珍しく自分から唇を寄せて甘えるようなキスをする。
すぐに離れた唇を依斗が驚いたように見つめると、なにかおかしいかとジレーザは困ったような笑顔を浮かべる。
「どうしたんだよ」
「どうもしない。ただ、私は罪悪感に苛まれても体を開け渡すような性格ではない」
「お前それ」
「好きでしてることだ。ヨリトが負担に感じる必要はない」
そう答えてまたジレーザは依斗の唇に、触れるだけの優しいキスをする。
その唇を逃さないように啄んで甘噛みすると、依斗はジレーザの目を見つめて動きを止めた。
「意識が保てなくなってきてる俺に同情してるのか」
「そんな慈悲深い人間だと思うか」
「最高神官だからな、お前」
「フッ、まあ立場はそうだな」
ジレーザは可笑しそうに肩を揺らし、依斗の頬に手を添えて親指で頬骨の辺りを撫で、嫌いだったしなと悪戯っぽく笑う。
「だった、って。そんな言い方したら都合よく解釈するぞ」
「すれば良かろう」
「後で落ち込まされるの嫌だし、嫌いじゃなくなったくらいに受け止めとくよ」
「随分と弱気だな」
「俺にも心はあるんだよ」
禁書庫でジレーザとやり取りをして二節。
あの後も幾つか瘴気騒ぎを鎮圧して、やはり依斗の魔力は増大し、その分苛烈な魔力の枯渇を起こして正気を保つのが難しい状態は悪化の一途を辿っている。
「こんなになるまで相手しやがって」
隣でぐったりとして眠り込むジレーザを見つめると、依斗は体を起こして眉を寄せ溜め息を吐く。
いよいよ聖剣を使ってからの記憶が一切なく、ジレーザと肌を重ねたことすら思い出せなくなり、気が付いた時にはベッドに横になっていた。
横たわるジレーザの肌には夥しい鬱血痕があり、後孔は爛れたように腫れ上がって、どれだけの乱暴を強いたのか想像も付かないほどだ。
「ごめんな」
顔に掛かる髪を掻き上げてジレーザの頬を撫でると、目に見えて傷付いたその体を見て、これから更に過酷なことを強いることに罪悪感を覚えずにはいられない。
依斗は立ち上がって薬を探すと、手桶に汲んだ水を温めてジレーザの体を丁寧に拭く。
「ん……」
「悪い、起こしたか」
僅かに眉を寄せて声を出したジレーザに声を掛けると、再び額や頬を撫でてから寝てろと言い聞かせるように呟く。
柔らかく絞った布で後孔の周りを丁寧に拭き取ると、薬を指で掬って、痛々しく腫れ上がったそこにそっと触れる。
「うっ」
「痛むよな」
浅瀬まで薬を塗り込んで指を引き抜くと、痛みを緩和させるために治癒魔法を唱えて様子を見る。
回復や治癒の魔法を使えば、何事もなかったように体は元に戻るが、ジレーザがそれを嫌うので依斗はその意見を尊重して滅多に魔法を使わない。
「ヨリト」
「ん? どうした」
力なく伸ばすジレーザの手を取ると、ベッドに上がって隣に寝転び、瞼すら重そうにする疲れ切った頬をもう一度撫でる。
「良かった」
「なにが」
「意識をなくしていたんだろ」
「ジレーザ」
依斗は握った手の甲にキスをすると、そのままジレーザを抱き寄せて腕の中に閉じ込めるように抱き締める。
「ごめんな」
「構わない。気にするな」
「しない訳ないだろ」
「ヨリトに聖剣を使うことを強いたのは私だ」
「だとしても俺が決めたことだよ。それに、お前の罪悪感に漬け込んで身体を開かせた。全部俺が悪いんだよ」
「だとしたら私も同罪だ。ヨリトが謝ることではない」
ジレーザはそう答えると、珍しく自分から唇を寄せて甘えるようなキスをする。
すぐに離れた唇を依斗が驚いたように見つめると、なにかおかしいかとジレーザは困ったような笑顔を浮かべる。
「どうしたんだよ」
「どうもしない。ただ、私は罪悪感に苛まれても体を開け渡すような性格ではない」
「お前それ」
「好きでしてることだ。ヨリトが負担に感じる必要はない」
そう答えてまたジレーザは依斗の唇に、触れるだけの優しいキスをする。
その唇を逃さないように啄んで甘噛みすると、依斗はジレーザの目を見つめて動きを止めた。
「意識が保てなくなってきてる俺に同情してるのか」
「そんな慈悲深い人間だと思うか」
「最高神官だからな、お前」
「フッ、まあ立場はそうだな」
ジレーザは可笑しそうに肩を揺らし、依斗の頬に手を添えて親指で頬骨の辺りを撫で、嫌いだったしなと悪戯っぽく笑う。
「だった、って。そんな言い方したら都合よく解釈するぞ」
「すれば良かろう」
「後で落ち込まされるの嫌だし、嫌いじゃなくなったくらいに受け止めとくよ」
「随分と弱気だな」
「俺にも心はあるんだよ」
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