上 下
39 / 428
1

39

しおりを挟む
「あ、ああ、わかった。じゃあ土曜の午後、駅前で」
玲からの電話を受けた鷹文は、デートの日を決めて話を終えた。
電話を終えた鷹文が、夕食の支度をしている彩香のところにやってきた。
「なあ、彩香」
「なに?鷹文くん」
「この前の話・・・今度の土曜になった」
「あー、デート誘えたんだ。よかったね」
彩香は、料理の手を止めずに話を続けた。
「ああ、でさ、女子とのデートってどんなことするんだ?」
「えっ、そこから⁉︎」
彩香は少し驚いた様子だったが、まじめに考え始めた。
「うーん。今回はたくさんお話することが目的なわけだから・・・どこかそれっぽい場所二人で散歩しながら、カフェとかによったりしてゆっくりすればいいんじゃない?」
「・・・そっか。どこかいい場所とか知らないか?俺、デートなんてしたことないから」
「そうねえ、相手の女の子ってどんな人?」
「1組の横山玲。うーん、大和曰く、女王様?」
「・・・それじゃよくわからないんだけど」
「前に見た感じだと、派手め?目鼻立ちは割とくっきりしてたかな?」
「それで?」
「・・・将来芸能界的なことしたいとか聞いたような」
「そっか。じゃあ、少しおしゃれなとこの方がいいかもね」
「おしゃれ・・・」
「代官山とか自由が丘とか」
「遠くないか?」
「あのねぇ。一応こっちから誘ったんだから、それくらいは相手に合わせようよ」
「そ、そうか。わかった少し調べてみるよ」
「そうして。ところで鷹文くん。デートの服装とか考えてる?」
「・・・いや、特には・・・」
「ねえ・・・まさかとは思うけど、今の服装のままいくつもり?」
鷹文は、特徴のないダークな服装をしていた。
「・・・ああ、まあそんな感じかな」
「ちょっと!それ女の子に失礼よ!なんかこう、もう少しお出かけっぽい洋服ないの?」
「・・・どうだったかな?」
「鷹文くん。ちょっと部屋、見せてもらっていい?」
と言い切る前から、彩香は鷹文の部屋へ向かい始めていた。
「お、おい、待てよ」
慌てて彩香の後を追う鷹文。彩香はためらうことなく鷹文の部屋のドアを開け、中に入った。
「へー、意外と片付いてるのね」
彩香は鷹文の部屋に入りクローゼットを物色し始めた。
それからしばらくして、
「うーん・・・ねえ、明日時間ある?」
「まあ、あるけど・・・」
「ならさ、明日、服買いに行きましょ。私も付き合うから。ここにあるのじゃちょっとデートには・・・相手の女の子に悪いよ」
「そんなもん・・・適当でいいだろ」
「そう言うわけにいかないの!女の子だって一緒にいる相手が変な格好してたら恥ずかしいじゃない!」
「変な格好って・・・」
「いい。明日行くからね。逃げないでよ!」
彩香はいつもより語気を強めてそう言い残すと、鷹文の部屋を出て行った。彩香が出て行った後、部屋の中がすっかり整理されていたことに鷹文は気づいた。
「あいつ・・・すげえな」
しおりを挟む

処理中です...