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「玲ちゃんしのちゃん。今いいかしら?」
和泉が部屋に入ってきた。
「さっき車の中で話した、明日のことなんだけどね・・・」
と二人を側に寄せた和泉は、少し小声になって続けた。
「いい、しのちゃんはゆずちゃんを、玲ちゃんは彩香ちゃんを外に連れ出して」
「ほ、ほんとにそれ、わたしがやるんですか?」
「そうよ!今これできるの玲ちゃんしかいないの!他の子じゃ怪しまれちゃうから」
と春に明衣ちゃん使っちゃったからなぁと思い出しながら、和泉が玲の顔を見つめた。
「い、和泉さんがそういうなら・・・」
玲は不承不承といった感じではあるが、頷いた。
「わわわ、わたし、は・・・」
「ああ、しのちゃんはスケッチブック持って外に出れば、きっと付いてくるわよ、ゆずちゃん」
「そ、そうですね」
しのは和泉の言葉にホッと安心したようだった。
「ゆずちゃんの衣装は車の中にあるんだけど、彩香ちゃんはメイド服着て仕事してるから、そのまま連れて来ればいいわ。決行は明日の朝食後よ!10時までには会場入りするから、よろしくね!あ、それから玲ちゃん!」
「はい。なんですか?和泉さん」
「玲ちゃんもこれ着て出演だから」
と和泉は、真っ赤なメイド服を玲に渡した。
「え?わ、私もイベント出るんですか?」
「うん。しのちゃん説明できる?」
「は、はい。れ、玲さんは『にゃんパラ』の新キャラ『秋山玲花』さん、です」
「秋山玲花。またしっかり本名絡めてきてるわねぇ」
呆れ顔の和泉がしのを見た。
「は、はい。でも、今回は、ちょ、ちょっとアレンジしたんですよ」
「え?どこ?」
アレンジポイントが全くわからない和泉だった。
「彩奈の時は、遠、彩、どっちも前、使ってるじゃないですか。でも、こ、今回は『山』を使いました」
「あー苗字は後ろの文字!」
「そ、そうです」
「・・・それ、アレンジっていうの?」
「うっ・・・だ、だめ、ですか?」
不安そうな顔になるしの。
「そ、そんなことないわよ、しのちゃん。うん、とってもいいと思うわ!」
すかさずフォローを入れる和泉。
作家のモチベーション維持も編集者の大切な仕事である。
「よ、よかった、です」
嬉しそうな顔になったしのを横目に、ホッとした和泉は玲に、話を続けた。
「でね、金髪ツインテツンデレ美少女っていう枠で、にゃんパラに登場するの。実はもう次号には登場するのよ。しのちゃんに玲ちゃんの写真見せたら乗り気になっちゃってね。彩奈のライバルキャラって設定なの。あ、これ実際もそうよね?それにアニメ二期ももう決まってて、そっちはレギュラー枠で入ることになってるわ。なんなら声優もやってみる?玲ちゃん」
と、想像を超えた話をどんどん入れ込まれた玲は、
「は、はい・・・」と頷くだけだった。
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