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その日の夕方、いつものように和泉が盛雄のところに来ていた。
盛雄のところ、というよりは『彩香の夕食目当て』と言った方が正しいが。
「先生、発売しましたよ!」
和泉は盛雄に見本誌を渡した。
「ありがとうございます」
と盛雄は受け取った見本誌をパラパラとめくった。
「編集部内でも好評だったんですよ。今回の短編」
「ほう。それはよかったです」
盛雄は満足そうな顔をした。
「あとは読者の感想次第ですけど、次の短編集にも入れられそうですね」
「そうですね。考えておきましょう」
「・・・今日は鷹文くんは?」
和泉が二階の方を見た。
「さあ、午前中に出かけていたようですが」
「そうですか・・・ちょっと見てきますね」
和泉は鷹文の部屋へ向かった。
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