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それから、舞菜と彩香はそれぞれのペアに分かれて海沿いやレンガの壁の前など、色々なところで撮影していった。
「彩香ちゃん、そっちはどう?」
「そうですね。これくらいでいいかな?」
声をかけられた彩香は、笑顔で答えた。
「みんな、お疲れ様。そろそろお昼行きましょうか?今日は彩乃ちゃんのバイト代がわりにみんなの分も奢っちゃうわよ!」
「え、私もいいんですか?」
とゆず。
「もちろん!ゆずちゃんもレフ持ってくれたし、大助かりよ」
「ありがとうございます!」
「私は・・・」
「彩香ちゃんも遠慮しないで。全部パパに請求するから大丈夫よ」
舞菜はいたずらっぽい笑顔で言った。
「どこがいいかなぁ・・・」
彩乃は、近くにあったフロアガイドを熱心に見ていた。
「うふふ。実はね、もう予約しちゃってるんだ」
「よ、予約ですか⁉︎」
彩香はびっくりして舞菜を見た。
「うん。さ、行きましょ!」
「はーい!」
一行は2号館へ入っていった。

一通り食事も終わり、飲み物を飲みながらくつろいでいた。
「天気のいい日はテラス席っていいですね」
「中は暖かいしねぇ」
舞菜はホットコーヒーを一口飲んだ。
「舞菜さん、ありがとうございました」
「海も見えてなんか贅沢気分でした!お料理も美味しかったし」
彩乃は料理を撮影したスマホを見ている。どうやらSNSにアップしているようだ。
「おなか、いっぱい・・・」
「ゆずちゃん大丈夫?」
「はい、少し歩けば・・・」
「そう、よかった。次は山下公園よね。ねえ、シーバスで行かない?」
「シーバス?」
「うん。あっちに乗り場あるんだけど、見えるかな?」
と舞菜が海の方を指差した。
「15分くらいなんだけどね。船に乗るの楽しいわよ」
「お姉ちゃん、シーバスなんて初めてだよね!」
「そうね。楽しみね」
「時間ちょっとしかないけど、いいところに座れたら撮影もできるわよ」
舞菜が時刻表を確認した。
「あと30分くらいで来るみたい。混んじゃうと乗れないかもしれないから、そろそろ行きましょうか」
舞菜に促されて、みんなでシーバス乗り場へ向かった。

「どう、楽しかったでしょ?」
「はい!海から陸の方眺めるのって、なんか不思議でした!」
山下公園についた4人は、短い船旅のことを話していた。
「そうよね、なかなかそういう経験ってできないものね」
「ゆずも彩乃も、ずっと外見てたね」
「うん。大桟橋ってほんとに大きいんだなぁって」
ゆずは遠くなった大桟橋を見つめていた。
大桟橋は、山下公園から見てもかなりの大きさだった。
「今日は行けなかったけど、大桟橋の上も広場みたいになっててデートなんかにもいいのよ。くじらのせなかっていう名前でね、周り全部海だから、ほんとにくじらの背中に乗ってるみたいな感じなの」
「お姉ちゃんデートだって。今度行こうよ!」
彩乃が彩香の腕に絡みついた。
「そうね。あ、写真撮るから・・・」
「わかった、ちゃんとしたの着てくね」
姉妹は阿吽の呼吸だった。

それから彩香たちは山下公園やの様々な場所で撮影していった。
「もう、だいぶ日も落ちて来ましたね」
「そうね。今日はこれくらいにしときましょうか」
「はい、お疲れ様でした」
「こちらこそ。ゆずちゃんも彩乃ちゃんもありがとう。いい写真たくさん撮れたわ」
「よかったです」
「いろんなところ見られて、すっごく楽しかった!」
「そうよね、公園とかって意外と通り過ぎちゃうもんね」
「はい。あのおっきい船も、中もおっきくってすごかったです!」
「彩乃、氷川丸ね」
「氷川丸、楽しかった!」
「海からも撮影してみたいですね」
彩香がなんとなく呟いた。
「山下公園の乗り場から遊覧船も出てるわよ」
「そうなんですか?」
「ええ。シーバスよりも大きな船でデッキにも出られるから、海から横浜の街を眺めることができてとってもステキよ。また今度来ましょう」
「はい。ぜひ!」
「それと・・・今日のページできたらサイトにあげる前に連絡するからチェックお願いね」
「はい。彩乃と一緒に見ます」
・・・

後日、彩香たちのチェックの後、彩乃の写真がネットショップのレビュー記事として掲載された。
彩乃は、自分がアイドルになったみたいで嬉しくなり、友達に宣伝しまくったらしい。
そのおかげか、サイト開設以来のアクセス数を誇るページになったと舞菜から連絡があった。
「・・・それからもう一つ。ごめんね、この前言うの忘れちゃったけど、うちのレビューページ、荒田先生の影響もあって業界では結構注目されてるみたいなの。ひょっとしたら彩乃ちゃん、本職の人たちからも依頼来ちゃうかも・・・」
という内容だった。掲載後に・・・
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