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翌々日の放課後。
といっても期末試験も終わり、すでに午前中授業になっているため、午後のまだ早い時間だった。
彩香は、明衣たちと近くのファミレスでランチした後、斉藤の家にやってきた。
門をくぐると、鷹文が玄関脇の駐車スペースで、何かゴソゴソやっていた。
「鷹文くん、こんにちは。あれ、バイク?」
「ああ、昨日、別荘から持ってきたんだ」
鷹文は、バイクの清掃をしていた。
「先生が?」
「いや、俺が。3日前に免許取ったから」
「えっ?教習所行ってたの⁉︎」
驚く彩香。
「ああ、学校帰りにちょこちょこ通ってな」
「全然気づかなかった・・・」
そういえば最近いつもより帰りが遅かったなぁ、と彩香は思い出した。
「で、免許も取れたし、せっかくだから乗ってみたくてな」
鷹文は愛おしそうに、ハンドルに手を置いた。
「そっか、そうだよね。免許あるんなら乗りたいよね・・・あれ?高速道路も?」
彩香は、別荘からの道筋を思い出していた。
「ああ、初めてだった」
「・・・怖く、なかった?」
彩香が恐る恐る尋ねた。
「最初はな。インターって結構ぐるって回るだろ。あれも緊張感あったし、そのあと、本線で他の車の間に入るのは・・・」
「や、やめて!なんか怖い」
愛の勢いの良い運転を思い出し、彩香は悪寒がして耳を塞いだ。
「ま、まあこうしてここまで来れたわけだし」
鷹文も、初日からよくやったもんだと心の中で自分を褒めていた。
「運転、気をつけてね」
彩香が心配そうな目で、鷹文を見た。
「ああ、無理はしないよ」
「それだけじゃなくって!絶対安全運転、ね」
彩香の瞳は憂いに満ちていた。
「お、おい。まだ事故ったわけじゃ・・・」
「じこ・・・」
彩香が呆然として動かなくなってしまった。
「さ、彩香。大丈夫か?」
「・・・う、うん・・・大丈夫」
少し顔色の悪くなった彩香は、フラフラと家の中に入っていった。
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