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若者チームは、準備のできた料理たちの前で手持ち無沙汰だった。
そんな時、明衣のスマホがブルブル鳴った。
「あ、鷹文からだ。あと5分くらいで戻るって」
明衣がみんなに伝えた。
「あら、彩香たちはどこかに行ってるの?」
「はい、鷹文に連れ出してもらってます」
奈緒の問いかけに明衣が答えた。
「そうなの。二人でお散歩なんていいわね」
並んで歩く二人を想像して、奈緒は微笑んだ。
「おばさん、お買い物デートですよ!」
明衣がツッコんだ。
「そうね。あの二人がまたデートできてるなんて、なんか嬉しいわ」
「・・・やっぱりそうだったんですね、彩香って・・・」
明衣が呟いた。
「明衣ちゃんも、久しぶりね」
奈緒は改めて明衣に挨拶した。
「小さい頃、すごく仲よかったですよね。あの二人」
昔のことを思い出しながら明衣が続けた。
「ええ」
「なんか私、二人が一緒にいるの邪魔しちゃいけないって子供心に思ってました」
「あら、ごめんなさい。そんなに気を使ってくれたのね」
「いえ。そういうんじゃなくって。二人でいるの見てると私も幸せな気分になれたっていうか・・・」
「そうね。私たちもそうだったわ」
「だから、ずっと見てたんです。近寄らずに」
「そうなの。本当にありがとうね。明衣ちゃん」
奈緒の目は優しかった。
「おばさんは、私のこと覚えてますか?」
「もちろんよ。小さい頃は髪の毛長かったわよね」
「はい。鷹文と遊びまわるのにじゃまだったから短くしちゃいました」
明衣は、今は短くなっている自分の髪に触れた。
「長い髪の明衣ちゃんもかわいかったわよ」
「ありがとうございます。でも、彩香には負けます」
「そう?ありがとう」
奈緒が微笑んだ。
「そういえば彩乃ちゃんと学園祭来てくれてましたよね」
「ええ」
「あの時結構大変だったんですよ。あちこちから、ちっちゃい彩香がいるって噂になって、ほら」
明衣のスマホには彩乃と奈緒が歩いている姿が写っていた。
「あら、私たち、有名人みたいね」
「あの日は芸能人以上でしたよ。謎のミニ彩香って」
「そうよね。彩香と彩乃そっくりだものね」
奈緒は彩乃の方を見た。
「髪型まで一緒なんでみんなびっくりしてました。なのに私服だし」
「そうなの。彩乃、彩香のこと大好きみたいで、彩香のちょっとした変化もすぐに見つけて真似しちゃうの」
「へえ。なんかかわいいですね」
「そうね」
明衣も奈緒につられるように、結衣たちと楽しそうに話している彩乃を見た。
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