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週末の午後、彩香は佳奈たちを連れて町田の量販店に来ていた。
カメラ売り場で、彩香は梅と佳奈に前もって調べておいたおすすめ機種を手渡した。
「ううっ、これ2万円もするんですか・・・?」
佳奈はコンデジの前にある値札を見てうろたえた。
「もう少し安いのもあるんだけどね。ほら、テーマパークとか行ったら夜も撮りたいでしょ?それを考えるとやっぱりこっちの方がね・・・」
彩香が『やっぱり高いよね』と思いながらもカメラの特徴を説明した。
「あっ!そういう違いもあるんですね。じゃあやっぱりこっちなんだ」
佳奈はデザインもほとんど違わない1万円代前半の機種と2万円代の機種をじっと見比べている。
「彩香さん、これとそれってどう違うの?」
梅は佳奈持っているカメラを見ながら、自分が渡されたカメラを持ち上げた。
「こっちはレンズが取り替えられるんです。写真部の顧問って考えるとやっぱりそういうカメラの方がいいかなって」
「彩香さんたちのもそうなの?」
「はい。同じ本体でレンズを変えると色々な撮影に対応できるんですよ。
例えば・・・16mmとか20mmって言うふうに小さい数字のは広角レンズって言って、広々とした風景やホームパーティーとかで撮るのに便利なんです。
それから、200mmとか300mmみたいに大きな数字のものは遠くのもの、野鳥とか飛行機とかを大写しするの使うんです」
「へぇー、そんなふうになってるんだ。じゃあレンズ選ぶのも大変ね」
「先生に渡したキットには15-45mmっていうズームレンズがついていて、色々な場面で使いやすいんですよ。同じシリーズのズームレンズがあって・・・4万円くらいしますけど」
彩香は値札を見て申し訳なさそうに言った。
「うっ・・・併せて10万円くらいになっちゃうのね・・・ボーナスも併用しようかしら」
やはり梅も値段が気になるようだ。
「よかったら一回わたしのカメラで撮影してみますか?それか、もしそこまで必要ないってことならレンズ交換しないタイプでも・・・」
「う、ううん。やっぱり交換するのがいいわ。じゃないとこの先ちゃんと説明できないかもだし」
そういうところは至って真面目な梅だった。
「ところで、彩香さんのってどのカメラ?」
「私のですか?私のは・・・これです」
彩香は自分の持っているカメラを手にした。
「えっ・・・レンズ込みで25万越え・・・」
梅はもう何も言えなかった。
「さいちゃんのってそんなすごいのだったんだ」
「金額的にはすごいけど、私のはまだ普通のレベルなんだよ。舞菜さんのだったらほらこっち」
「えっ、60万・・・カメラおっきいなって思ってたけど、値段も凄いことになるんだね」
「まあね、これプロ用だし」
「さいちゃんのは違うの?」
「あれは一応アマチュア向けってことになってるのかな。プロの人も使ってるけどね。それにこれ、レンズは別売なんだよ」
と彩香は嬉しそうにD5のファインダーを覗き込んだ。
「カメラってすごいんだね。・・・」
「レンズ別ってことは60万使っても写真撮れないの?」
「まあそうなりますね。レンズは値段だけなら2万円くらいからありますけど、画質を考えるとまあ安くて5万円くらいから。中には100万円超えちゃうのもありますよ」
「ひゃ、ひゃくまんえん・・・」
話を聞いていた梅は、気を失いそうになった。

なんとか持ち直した梅は、支払いのことをじっくり考えて、彩香が最初に見せてくれた5万円代のレンズ交換が可能なデジカメと交換レンズを買った。支払いは考えた末にボーナス一括を選んだ。
「ふわぁ、夏のボーナスが消えたぁ・・・」
「だ、大丈夫ですか、先生?」
「あっ、だ、大丈夫よ!彩香さん、ありがとう。今度は撮り方も教えてね」
「はい。もちろんです!」
彩香は嬉しそうに答えた。
「そういえば、まとめ先輩、今年は合宿もしたいとか言ってたよね」
ゆずがぽろっと呟いた。
「えっ、ほんと⁉︎」
梅の顔が青くなった。
「はい。近場でいいからできたら2泊くらいしたいなって」
「そう、なの・・・私、ボーナス使っちゃったんだけど・・・」

「いいなぁ。私もほしかったなぁ」
「芹沢さんは頑張ってアルバイトしてね。あっ、ちゃんと申請するのよ」
「はーい。ぱちっと」
佳奈は彩香とゆずが楽しそうに話しているところを激写した。
「か、佳奈ちゃん、いきなりはやめてよ」
「すいませぇん。だってぇ、先輩かわいいんだもん」
「か、かわいいって・・・」
後輩にかわいいと言われて素直に赤くなる彩香だった。
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